どうにかこうにか、俺はひとまず村の入り口に着いた。
【ハジマリー村】
「服もビリビリのボロボロだしな……とりあえずここで色々調達するか」
「ようこそハジマリー村へ!」
「うわっ!?」
急に話しかけられ、思わず驚いた声が出る。
「あっ、ごめんなさい。急に話かけちゃって」
ペコリとお辞儀をする黒髪のボーイ。
日焼けした少年然とした顔。
「ええと、私は旅人で……その……君は村の子?」
「ああはい。…年下に見られがちだけど、僕は18歳ですよ。童顔で小っちゃいけど18歳です」
「そうなんだ。身長130cm台で短パン履いてるから年下かと思っちゃった。(俺も18歳だけど。) それで、その…」
思わずもじもじしてしまう。
体は女になったとはいえ、心はバリバリの男のままだ。
露出度の高い……まるで露出狂のような恰好に身をよじってしまう。
「ふ、服を買いたくて…」
「ああ、お姉さん服を……そういえば、すっごい恰好だね…」ゴクリ
「み、見ないでっ!」
思わず後ろを向いて隠した。
「あ、ご、ごめんなさい。すぐ服屋に案内しますっ!」
【ハジマリー服屋】
「いらっしゃい。あら、ショータ。お客さん連れてきてくれたのかい?」
「うん」
「ど、どうも……」
店主のおばさんと彼…ショータと言ったか、は顔見知りのようだ。
小さな村だから当たり前か。
「おばさん、このお姉さんに合う服を見繕ってあげてよ」
「ああ、それだったら、今唯一残ってる女物の服があるよ!お客さん運がいいねぇ!」
「あ、ありがとうございます……」
● ● ● 数分後
「って…… 何じゃこりゃぁ───ッ!!?!」
「よくお似合いですよ。 艶桃メイド騎士の夏服フリル仕立て。」
「お似合いって、ええぇぇえぇェェ!!?!」
桃色を基調とした騎士服……それはいい。
しかしメイド風の名の通り、ところどころフリルとリボンの装飾があしらわれている。
胸の部分はしっかり谷間が露出しているし、超ミニのスカートから伸びた艶めかしい足と、フリル調のニーソックスが絶対領域を作り出している。
これじゃ少しかがんだだけで下着(余りもののレース生地のピンクのものを買った)まで丸見えだ。
ピッチリした黒いソックスが妙に性的なツヤを放っており、なんとも淫猥な見た目である。
「な、なんだよこの服ぅ……」
そりゃ、さっきの破り破れたボロ布よりはマシといえばマシだが……
うう……俺は男なのに……。
「よ、よくお似合いですよ、お姉さん…」
こちらをチラチラと見ながらショータが言う。
何やら顔を赤らめてモジモジしている。
こいつまさか発情してんのか。男の俺を見て。
「はぁ……とりあえずはこれ着て過ごすしかないか……」
「そういえばお姉さん、今日泊まるところは決まってるんですか」
「いや、決まってないけど……」
「そうですか! それだったら、ウチに来てくださいよ! ウチ、宿屋なんです!」
「そうなんだ。 それじゃ、アテも無いしショータのとこのお世話になろうかなぁ…」
そう言った瞬間、
ドカーン!!と凄まじい音がして地面が揺れた。
「な、何だ!?」
「広場の方からです! …まさか!」
そう言ってショータは飛び出した。
俺も慌てて後を追って店を出る。
「な゛ッ!?」
俺は思わず大声を上げた。
なんと、巨大な竜(ドラゴン)が村の広場に爪を立てて立ちはだかっていたのだ。
「り、竜だ!? そんな、人の里が竜に襲われるなんて、500年に一度あるかないか…」
「なんてこった…」
竜はらんらんと目を光らせ、口元には炎の端が立ち上る。
俺はゴクリと唾を飲んだ。
「も、もうダメだ……村の皆焼き殺される…もうおしまいだぁ!」
ショータが目に涙を浮かべる。
(どうしたら……どうしたら……!)
今の俺は…無力だ……貧弱な女の細腕で何ができる? こんな……
「っ……!」
俺は咽び泣くショータを見た。
そして奥歯を噛みしめ、拳を握りしめた。
「ショータ! ちょっとこっち来て!」
「え?」
俺はショータの手を引き、近くにあった薄暗い倉庫の中へ連れ込んだ。
「お、お姉さん、何?」
ショータが潤んだ目でこちらを見上げる。
俺はゴクリと唾を飲みこむと、ゆっくりとショータに顔を近づけていく。
「お、ねえ、さ」
ショータが戸惑いながらも声変わり前の高い声を絞り出す。
更に二人の顔が近づいた。
ムワッ、と何か汗ばんだ香りが鼻についた。でも不快じゃない。
「ショータ…」
「おねえ、さ……んむっ」
二人の唇が重なる。
俺の唇に、しっとりした感触が沈む。
張りのある、瑞々しい花びらのような、不思議な感触。
唇ごしでも分かる。
ショータが微かに震えているのだ。
彼の顔が火が出そうなくらい熱くなっているのが。
俺は男だけど、
男だけど、
こいつにエロい目で見てもらわなきゃならない。
つづく