ドカーン!
ドゴーン!
景気の良い音が外から聞こえてくる。
これが祭か花火なら良いが、オーク軍…明らかに仲良く出来なそうな集団が襲撃しているというのだから一大事だ。
「オ、オーク軍が攻めてきたってどういうことだよ…!」
「恐れていたことが起きた…」
領主がアゴを撫でながらどこか遠い目をしている。
「この城は魔王軍の侵略を防ぐ防波堤のような役割の城……いずれこの日が来ると思っていた」
「だ、大丈夫なのかよ!?」
「無論、楽観はできん」
しかし、と領主は続ける。
「我々とて日々、この日のために訓練を積んできたのだ!」
そう言って窓を開け、中庭に集合した兵士たちに檄を飛ばす。
「いいか兵士共! ついにこの日が来た!」
兵士たちが一斉に領主を見上げる。
「オーク共を殲滅し、我々の国を護るのだ!!」
オー!とときの声を上げる兵士たち。
「領主様」
取り調べ官の低い声。
「私も行って参ります」
「うむ」
「え……お前も行くのか?」
そこまで戦えるようにも見えない。
理由は分からないが、このオッサンを心配してしまう。
「どのみち城が落ちれば我々は終わりだ。全員で戦う」
取り調べ官がこれまでに見たことのない、難しい顔をしている。
「では」
そう言って取り調べ官も部屋を出て行った。
これからオーク達の群れに立ち向かって行くのだろう。
残されたのは女捕虜である俺と、この領主。
「……たしも」
「ん?」
「私も、戦いに出ます!」
自分でも何を言っているのか分からなかった。
ただ、何だかこのまま見ているのも辛い。
何かせずにはいられなかった。
「しかし、女が戦場に出てもなぁ」
領主は難しい顔をしている。
「何か、手伝えることがあるかもしれない!行きます!」
「まあ、別に止めないけど」
いい加減だなこの領主。
「ただ、オークは人間のメスを孕ませる性質があるから、気をつけなさいよ」
サラッと恐ろしいことを言う。
俺は聞かなかったことにして部屋を出た。
────
──
─
「うわ、すげぇ」
思わず声が出る。
鎧を着て剣を携え外に出た。
目の前に広がっていたのは、剣を振る兵士たちと、棍棒を振り回すオークたちの群れ。
見れば兵士たちはオークと互角に戦っていた。
日々訓練を積んでいたというのはハッタリではないらしい。
俺は女の細腕で参戦するのは足手まといになるのではないかと思った。
どうしたものかと逡巡していると、
「お前、なぜここにいる」
振り向くと、取り調べ官がシブい顔をして背後に立っていた。
「なぜって……私も戦おうと…」
イタズラが見つかった子供のようなバツの悪さ。
「女に戦場は危険だ。戻りなさい」
「でも……」
「ここは我々だけで何とか……」
と、その時、
「何だアレはぁ───ッ!!!」
だしぬけに、兵士の絶叫が響いた。
ズシン… ズシン…
地響き。
見れば、身長5メートルはあろうかという巨大なオークがのしのしと城壁に迫っているではないか。
「!? でかッ!?」
「ッチィ…! ジャイアントか!! 奴らめ、とんでもないモノを連れてきおった…!」
取り調べ官が歯ぎしりする。
地響きを鳴らしながら近づいてくる巨人。
人間側の勝ち目は、限りなくゼロに近づいた。
つづく