「くっ……者ども!怯むな!」
取り調べ官が檄を飛ばす。
一瞬たじろいでいた兵士たちが気を取り戻し、剣を振りかざして戦いに戻った。
とはいえ、劣勢であることに変わりはない。
とうとう城壁にたどり着いた巨人が、手にした棍棒を大きく振りかぶる。
「っ…!」
全員が息をのむ。
次の瞬間、巨人のこん棒が振り下ろされる。
耳をつんざくような轟音が響き、石造りの城壁は積木細工のように崩れた。
「……バカな」
半ば茫然と、取り調べ官がこぼす。
俺も耳を手で塞ぎながら、目を丸くして崩れた城壁を見るしか無かった。
「やはり危険だ……! この城も…持つか分からん!」
そう言うと、取り調べ官は空を仰いだ。
そして、
「パックンちゃん!!!」
叫んだ。
ガシャーン!とガラスが割れる音がして、何かが城の窓から飛び出して来た。
見覚えのある草のような何かのような生き物は、パックン草だ。
犬のように少しハシャぎ気味にこちらへ来る。
「シュルルルッ!フシュルルルッ!」
ハッハッと本当に犬のような息遣いをしてパックン草が足元にじゃれつく。
「…で、なんでパックン呼んだの?」
「パックン! ヘリコプターモード!」
取り調べ官が叫ぶやいなや、パックン草が葉っぱを伸ばしグルグルと回転させ始めた。
どんどんその回転数は増し、やがて凄まじい風を巻き起こし始めた。
そもそもなんで異世界でヘリコプターという言葉が存在しているのか。謎だ。
「パックン! この女を連れて城の外へ逃げよ!」
「え?」
「フシュルルルッ!」
パックン草が首を伸ばして俺の肩を掴む。不思議と痛くない。
「え?逃げ?え?」
俺がわたわたと慌てている間に、次第にパックン草が宙に浮かぶ上がる。
当然、掴まれている俺も。
「ちょっ…嫌だ! 私も戦うよ!」
俺は既に宙に浮いた足をバタつかせながら反抗する。
「女のお前に何ができる!!」
「そ、そんなこと言ったって……私は捕虜なんだから、ここで戦う!」
自分でも何を言っているのか分からない。
そんな俺を見上げると取り調べ官の目は、なんだか優しかった。
「……お前は、生き延びろ」
回転数を上げたパックンが一気に空へ舞い上がる。
俺は「うおおぉぉぉぉぉ」と声を残しながら引きずられる。
見ればもう城は小さくなり、兵士やオークたちも豆粒のようだ。
そして巨人は上から見ても存在感がある。
俺は「下ろして!」と叫んだが、パックン草は主人の命令に忠実だ。
そのままフワフワと空中を城の外へと飛んでいく。
俺はもどかしい思いでしばらく思案した後……
「そうだ!」
あることを思いついた。
「パックン! 主人の命令には従っていい! ただ、私のお願いも聞いて!」
パックンが少し首をかしげたように見えた。
つづく