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……ゴシゴシ。ゴシゴシ。
「うん、その調子その調子」
隣に立つ少女が、私の野菜を洗う手つきを見てそう言う。
「ちゃんと泥落としてね」
「分かってるッ!」
私は声を大にして言い返した。
なぜ私がこのようなことを……私は誇り高いオークの戦士だぞ!
「それ洗い終わったら皮むきね」
「……チッ」
せめてもの抵抗で舌打ちで反抗する。
本当なら大暴れしたいところだが、いかんせん私は魔力の込められた腕輪で行動を封じられている。
とりあえずは従ったフリをして、隙を見て逃げ出すしかない……!
「……うん、いい味」
少女が小皿にスープを取って味見している。
鳥の骨を煮込んだスープか……なんだかいい匂い……って違う!私はここから脱出するのだ!惑わされるな!
「うん?」
少女がこちらを見てほほ笑む。
正直、人間のメスを見るのは初めてだった。
村に討伐に来る無謀な輩はオスばかりであったし……。
そもそもオークに女が生まれるのは50年に一人と言われている。
故に、私は貴重な女オークとして君臨していたのだが……。
ゴシゴシ
今は野菜の皮むきだと……!?
この屈辱……万倍にして返してくれようぞ……!
「ふー」
少女が額の汗を拭っている。
すぐ隣で作業する少女から、何だか嗅いだことのない、不思議な香りがしてくる。
花のような、かぐわしい……
何だか頭がクラクラしてくる香りだ。
これが人間のメスの香りなのか?
私は草のような獣のような……野性的な体臭だというのに……。
ええい、なぜだか無性に腹が立ってきた!
「洗い終わったね。 それじゃ、皮むきお願いしていいかな?」
そう言って少女は小さい包丁を渡してくる。
私はよっぽどこの刃物を使って反抗しようかとも思ったが、そう思った瞬間に腕輪が魔力を発して、腕の力を奪う。
くっ……この腕輪が取れた暁には大立ち回りを見せてくれる!
「フン!皮むきなあど朝飯前だ!」
村で散々猪の皮を剥いできたのだ!
こんな野菜の皮など……。
「痛った!?」
不覚。
皮をむこうとして自分の指を切ってしまった。
緑の肌に赤い点がにじむ。
「わ、大変!」
「フン、こんなかすり傷……」
「貸して!」
そう言って少女はためらいなく私の指を咥えた。
「な゛っ!? 何をしている!?」
「うごはないれ」
少女が指を咥えてちゅうちゅうと音を立てている。
止血のつもりなのだろうか。
口腔内のぬらりとした感触と、舌のざらついた感触が指にまとわりつく。
その初めての感触に、背筋にゾクゾクとした感覚が走る。
「チュパ……うん、血は止まったみたい。 バンソーコー貼ろうね」
そう言って少女は部屋の救急箱を取りに行く。
私は少しボーっとしながら自分の指を見ていた。
なんだか胸がドキドキする。
全てが初めての感覚だった。
一体何が起きているんだ……!?
つづく