「今日は挨拶と見回りだから三人で回るぞ」
朝食時に取り調べ官が言った。
そう言えば前もこいつと外を回ったことがあったな、と思い出しながら、俺はふんふんと頷いた。
横の女オークは朝から鶏もも肉にがっついている。
「ねえ、聞いてた? オークちゃんにも関係あることだよ」
俺はそれとなく声を掛けてやった。
「ふぁんだ?」
ムグムグと肉を噛みながら聞き返す女オーク。
野性的というかワイルドというか、平たく言や犬みたいな奴だ。
「今日は領主様のとこに挨拶に行くんだって。 だからオークちゃんも一緒ね」
「ふん。 なぜ私がわざわざ人間に挨拶など……」
こいつは囚われの身だという自覚が無いのか。
俺も一応は従っていたというのに。
「ほら、取り調べ官が出世したらもっとイイお肉食べられるかもしんないよ」
「! 肉、か…」
もしゃもしゃと咀嚼しながら女オークは腕組みして考えている。
なんかこいつの扱い方が分かってきた気がする。
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「や、わざわざご苦労」
領主がキザっぽく手を挙げて挨拶する。
少しムカつく。
「領主様。 こちらが件の女オークです」
軽く頭を下げる取り調べ官。
俺たち三人は領主の部屋を訪ねていた。
女オークは鼻を鳴らして部屋を見渡している。
「捕虜二人目か。お前も色々大変だな」
「いえ、まあ」
俺の存在は大変じゃないだろうが、オークが増えたのは大変だろうな。
まあ、特に義理も無いが、少しは協力してやるか。
俺はいつの間にか炊事洗濯係になっていたが、最近オークの世話係にもなっている気がする。
捕虜ってなんだっけ。
「オークの生態は分からんことが多い。 女オーク殿、是非協力をお願いしたい」
領主がヒゲを撫でながら言う。ハナから期待していないのであろう。
「誰が人間に協力などするか!」
噛みつかんばかりに女オークが大声で返す。
まあ、仲間をほとんど倒されたのだ。無理もない。
領主はため息をつくと、取り調べ官の肩を叩く。
「まあ、ひとつ頼んだよ」
「はあ……」
そうは言ってもなぁ、という中間管理職然としたアンニュイな表情を浮かべて取り調べ官は額を掻いた。
「まあ、この女捕虜がかなりオークと仲良くなっているみたいですので……」
「ほう」
「心も体もつながっているようで」
「ほう? 詳しく? お願いできるかの?」
俺は取り調べ官のケツを蹴り飛ばすようにして部屋を出た。
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「なんで早速バラすんだよ!」
「領主様は女同士もイケるんだよ」
「知るか!!」
何だこいつらは、という女オークの視線を受けながら、俺は取り調べ官を小突き回す。
これが束の間の平和だったことは、この時まだ知らなかった。
つづく