その日は一応平和に過ごし、夕食を終えた俺たちは寝間着に着替えて寝る準備を始めた。
女オークの寝間着は俺のもの(取り調べ官がどこかから調達してきた)を貸した。
「こういうヒラヒラしたものは好かん」と言っていたが。
「さて、ワシは明日も早いから寝るぞ」
取り調べ官がさっさとこの部屋に一つしかないベッドに入る。
「はあ、じゃあ私も早起きしてごはんの準備しなきゃ」
「そこまでせんでも大丈夫だぞ」
「そんな訳にいかないでしょ」
俺は同じベッドに座る。
ギシ、とやや古い木製のベッドが軋む。
いつの間にかこの部屋の家具にも、暮らしにも慣れてきた気がする。
この体は……まだ慣れちゃいけない気もするが。
「明日も肉がいい。肉を食わせろ」
遠慮なくベッドの中に潜り込む女オーク。
少し大きめとはいえ、一つのベッドで三人寝るのだから窮屈ではないと言えばウソになる。
取り調べ官は(一応)女性の二人に気を使って、いつも端の方に身を寄せている。
「はいはい、お肉も付けますからね」
まるでデカい子供が出来たようだ。
俺は明日の献立を脳内で組み立てながら返事する。
「どうだ、いい加減ここの暮らしには慣れたか」
ゴロリと向きを変えた取り調べ官が言う。
女オークは答えず、布団を鼻のあたりまで上げて天井を見る。
「ん」
それを気にする様子もなく、取り調べ官は再び向きを変えて目を閉じた。
「………まだ終わりじゃない」
だしぬけに、女オークの声。
「え?」
思わず聞いたのは俺だった。
女オークはチラリとこちらを見たあと、再び天井に視線を戻し、呟くように続ける。
「……我々オークの軍は、魔王の依頼を受けてお前たちを攻撃した」
「……魔王の依頼……?」
コクリ、と女オークが頷く。
「元々人間を襲っても、あんまり旨味は無いんだ。 最近のオークは寿命も延びたから、別に100年に1度以外は人間の女を襲って繁殖する必要も無い」
黙って聞く俺たち。
「だが、魔王軍から遣いが来て、お前たちの城を攻めるように依頼が来た」
「……依頼? 命令じゃなくて?」
「……オークは誇り高いんだ。 魔王に命令されたからやったんじゃない。願いを聞いてやっただけだ」
プイ、とそっぽを向く女オーク。
そこには、人間種には分からないプライドがあるのだろう。
「……報酬に肉と、別の森の支配権もやると言われた。 だから、我々全員でお前たちを攻めた。 …私以外、全員ヤられてしまったがな」
「……ごめん」
自然と、謝ってしまう。
「フン……。 オークは皆誇り高く戦って死ぬんだ。 負けたら死ぬ。当たり前だ。」
そう言って目を閉じる女オーク。
数秒経つと、あっという間に寝息を立て始めた。
気丈に振る舞っても、不慣れな敵地の緊張は疲労を積んでいたのだろう。
俺はそっと布団をかけなおしてやる。
「……寝ちゃった」
「そうだな……」
「ほんと、まるで子供みたい」
「……だが、気になるな」
「え?」
「こいつは言った……『まだ終わりじゃない』と」
「……」
「……こいつには、まだ色々聞かねばならんな」
そう言って、取り調べ官は再び寝入ろうと目を閉じた。
俺は複雑な顔をしながら、そっと布団に入るのだった。
つづく