「行ってらっしゃーい」
朝、俺は取り調べ官と女オークを見送った。
今日は二人で森の地図について話し合いだそうだ。
「協力してやるもんか」と女オークは鼻息を荒くしていたが、なだめすかす取り調べ官に誘導されて結局共に行くことになったようだ。
出発間際、女オークが俺の方を振り向いた。
「お前、狙われてるぞ」
「はへ?」
思わず間抜けな声が出る。
狙われる? 何に?
「お前、あの戦いのとき、ジャイアントを倒しただろう」
見ていたのか……。
あの日、俺は巨人の頭を吹き飛ばした……今でも鮮明に覚えている。
「おそらく、我々オークは囮だ」
「囮?」
「人間側の戦力を見極めるためのな」
フン、と鼻息を荒らす女オーク。
「それで、お前がそれなりの戦力だとバレている、はずだ」
「私が……?」
「つまり、お前は狙われているだろう」
「そんな……狙われるなんて……」
エロパワーもほとんど偶然の産物みたいなものだ。
便利な兵器みたいに思われては困る。
「とにかく、せいぜい気を付けることだな」
そう言って、女オークは取り調べ官の後を追った。
取り残された俺は、「気をつけろ」の言葉だけが頭の中に繰り返し響いた。
────
──
─
「さて、と」
俺は中庭に出て、洗濯物を干していた。
女オークの分も増えたから、それなりに量がある。
今日は晴れているから上手くいけば午前中には乾きそうだ……と、一瞬暗くなり、また明るくなった。
「ん?」
空を見上げたが、何もいない。
飛行機でも通り過ぎたのか? いや、この世界に飛行機なんてあるはずが……。
突風。
一陣の風が吹いたと思った次の瞬間、俺は足が地面から離れていることを感じた。
「ええええええええええっ!!?」
絶叫。
足をバタつかせるが、グングンと地面が遠ざかっていく。
俺は肩を何かに捕まれていることに気づいた。
「なっ、なっ!!?」
パニックになる。
見上げると、
「やーっははははー 目標ゲット~♪」
赤髪でショートカットの……巨乳で露出度の高い女が、羽をはばたかせて俺を掴み上げている。
髪から覗く羊のようなツノ。生えている尻尾。そしてこのセクシーな恰好。
この姿は……
「サキュバス!?」
「おっ、せいか~い♪ でも、下ろしてあーげない♪」
サキュバスは楽しそうにそう告げると、一気に高度を上げる。
「なっ、なああぁぁっ!?」
見下ろすと、城ははるかに小さく豆粒のようになっていた。
「お、下ろしてぇっ!」
「やーだよっ♪ 大事なエモノだもん♪」
「エモノ!?」
捕って食われるとでもいうのだろうか。
「そ。 これからサキュバスの里まで一気に行くよ~!」
そう言って翼をバサッと勢いよく一振り。
一気にスピードを上げると、グングンと風を切って空を進んでいく。
俺は「気をつけろよ」という女オークの声を思い出していた。
つづく