「お、下ろしてっ!おろしてっ!」
俺が足をバタつかせていると、次第に高度が下がっていき、やがて一個の町が見えてきた。
あれがサキュバスの里……?
俺はてっきり、モンスターたちが村を作っているような、小規模な集落なようなものを思い浮かべていたが……。
「そう! あれがアタイたちの里!」
俺を攫み上げているサキュバスが元気よく答える。
「魔王様の支援もあって、立派な街さ! すごいだろう?」
「う、うん……」
見ればレンガ作りの建物も見えるし、一部だが石造りの道路や橋も見える。
人里離れた場所に突然出現した街のようで、チグハグな印象を受けた。
人間界のテーマパークぐらいの大きさ……というか、本当に、郊外に突然建てられたテーマパークのような印象だ。
「さて、着いたよ!」
そう言って広場のようなところへ下ろされる。
「っとと……て、普通に下ろすんだな」
「ねえキミ、めっちゃくちゃ強いって聞いたけど、意外と抵抗せずに連れてこられたね」
あっけらかんと言い放つサキュバス。
確かに、俺はジャイアントを倒した女兵士として知られているはずなのだが。
こいつ、あっさりと捕まえに来ていたな。
勇気ある行動というよりは、ニカッと屈託なく笑う
「来ましたか」
後ろから凛とした声が響く。
俺が慌てて振り向くと、鮮やかな金髪をたなびかせた……後ろに羽が生えている……サキュバスがこちらへ歩み進めていた。
「あ、あなたは……?」
精一杯気丈な声を出す。
「このサキュバスの里でまとめ役をしております。ビッチーネと申します。どうぞよろしく」
ニコ……とたおやかな笑みを返すビッチーネ。
ということは、こいつがサキュバスの頭領か……。
「あの……なんで、私をここに?」
何となく想像は付くが、一応聞いてみる。
「それは簡単なことです」
笑みを崩さないビッチーネ。
「あなたは強大な力を持った、人間界の最終兵器であると認められました」
「いや……それは誤解……」
そんな人間にとって都合の良い存在となった覚えは無い。
「なので……」
まっすぐにこちらを見るサキュバス。
「あなたをサキュバスの里で、洗脳することになりました」
「洗脳!!?」
物騒なワードに大声が出てしまう。
「はい。 あなたを我々サキュバスが全身全霊を持ってご奉仕し、エッチなこと以外考えられない体にします。もう二度と、戦えないぐらいに」
「な゛っ!?」
何だか、こう、どう判断していいものか、一瞬迷う提案をされてしまった。
しかし、ここは抵抗すべきなのだろう。
「い、いや! ほら! 俺、いや私、女だし……!」
「ご安心を。 我々サキュバスは性的満足のスペシャリスト……女の体もお手の物です」
何も安心できない。
俺は城の人間の救援を一瞬期待し……一瞬で取り下げた。
つづく