キュィィィィン……と耳鳴りのような音が響く。
青い光に包まれたゲートをくぐると、一瞬光と闇が交互に瞬き……気づけば、見慣れた部屋……城の中の取り調べ官の自室に居た。
目の前には、鎧やら武器やらをガチャガチャと言わせて用意している取り調べ官の姿があった。
その姿に急に懐かしさが込み上げてくる。
「よっ!」
手を上げ、声を掛ける。
こちらを振り向いた取り調べ官は、目を丸くし、ゴシゴシと手でこすってから改めてこちらを食い入るように見つめ……。
「帰って、きた、のか……?」
絞り出すようにそう言った。
「うん、どうにか帰ってき…」
言いかけた時、既に取り調べ官に抱擁されていた。
女の体なので、男の体躯に抱きしめられるとその力強さにびっくりする。
「良かった……! 無事、帰って来れて……! 良かった……!」
ギュウと抱きしめながら取り調べ官がそう言う。
俺は予想していなかった展開にドギマギしながら、
「サキュバスに連れて行かれたんだけど……なんやかんやあって、帰ることを許されてね」
と言った。
「そうか……サキュバスに……」
「ところで、その鎧と武器は……? 戦争でも始めるつもり?」
「おお、これは…… お前を奪還するために、攻め入るつもりだったんだよ、ちょうど。」
「へっ!?」
俺は驚いて間抜けな声を出してしまう。
「お前が何者かに連れ去られていったのを目撃した兵士がいてな。 ひとまず本国への許可などは置いといて、この城の独断で、お前を助けにいくつもりだった」
「そ、それは……いいの? 勝手にやっちゃって」
「ああ。 本国にこの支部が目を付けられることよりも、お前の方が大事だからな」
サラッと取り調べ官は言う。
俺はポリポリと頬をかき、「ありがとう」とだけ呟いた。
「この城の兵士たちも、お前の奪還作戦には我先にと志願していた。 お前はこの城の華だったからな」
華と言われると悪い気はしない。
むしろ股間から竿の生えた身で愛でられているならまあ恵まれた待遇だろう。
あとで兵士たちにもお礼を言っておこう。
「で、あのゲートで戻ってきたのか」
「うん」
俺はまだ残っている青い光のゲートを指さした。
「どこでもドヤァの魔法だな。 確かにサキュバス等の高等魔法生物しか使えない高度な魔法だな」
「ねえ、あのゲートいつまで残ってるものなの?」
「ふむ……普通は目的を達したら消えるものだが……」
と、その時ゲートから滑らかな女性の脚がニョッキリと生えてきた。
なんともセクシーで艶めかしい美脚……
俺はどこか見覚えがあった。
「ん??」
と、そのうち脚、腰、全身とその姿が現れる。
ビッチーネだった。
「サキュバス!?」
取り調べ官が剣を構える。
俺はそれを慌てて止める。
「あ、この人は! 私をここに帰してくれたサキュバスなんだよ!」
「む、そうなのか? しかし、お前を攫ったのもサキュバスだろう?」
取り調べ官は剣を構え続ける。
「もしかしたら、お前を取り返しに来たのかもしれん」
それはない、とも言い切れなかった。
気が変わって、また俺を攫いに来たとしたら……
ビッチーネは優雅な動きでこちら二人を見る。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「感動の別れから幾ばくも経っておりませんが……ごきげんよう、姫様」
ニッコリと嗤うビッチーネ。
俺は真意を掴みかねていた。
つづく