※この作品はR-18です。

異世界転性!TS!   作:とりえあえず郎

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第八十三話

 

「ビッチーネ……!? どうして……」

 

 言いかけた俺の前に、盾になるように取り調べ官が入り込む。

 

「こいつを取り戻しに来たのか」

 

 それを見てビッチーネはくすりと笑う。

 

「……そうだとしたらぁ? どうしますぅ?」

 

 剣を構える取り調べ官。

 

「こいつは城の大事な女捕虜だ。 また渡す訳にはいかんな」

 

「あら、サキュバスのだーじな姫様なのですけど」

 

 何だか不穏な雰囲気になりそうだったので、俺は慌てて声をあげた。

 

「ビ、ビッチーネは私を連れ戻しに来たの? 私、いずれはちゃんと戻ろうと……」

 

「うふふ……すぐにでも姫様が戻ってきてくれれば喜ばしいことですが……。 今回お邪魔したのは、連れ戻しに来たわけではありません」

 

 ビッチーネが含みのある微笑みを見せる。

 連れ戻しに来たわけではない、とのことで、俺は少し胸を撫で下ろした。

 少なくとも、ここで知り合い二人が争いを始めるのは見たくない。

 

「では、どういった用件で?」

 

 剣は下ろしたものの、いぶかし気に尋ねる取り調べ官。

 

「私が用事があるのは……むしろ姫様以外の人間」

 

「どういうことだ?」

 

「人間側に提案しに来たのですよ」

 

「提案?」

 

「人間側が……生き残るための、ね?」

 

「……つまりどういうことだ」

 

「魔王軍から、人間側が生き残るための知恵を授けようというわけです」

 

「魔王軍!?」

 

 俺は素っ頓狂な声を上げた。

 

───

 

 ビッチーネは言った。

 魔王軍から人間側が生き残るための方法を提案したいと。

 

 つまりは、サキュバス側が魔王軍を裏切るということだ。

 流石の俺にも、ことの大きさは分かった。

 

 そして、人間側としてもありがたいことのはずだ。

 

 俺は取り調べ官を見る。

 が、当の取り調べ官は難しい顔をして顎をさすっている。

 

「なんでそんな難しい顔をしてるの? ビッチーネは人間側の味方をしてくれるっていうのに……」

 

「……サキュバス側が、急に魔王軍を裏切るというのが唐突すぎる。 理由を聞かせてもらえないか。そうでなければ納得できない」

 

 それを聞いたビッチーネが口を開く。

 

「理由?」

 

 両手を広げ、小馬鹿にしたように答える。

 

「だって……人間が滅ぶということは、姫様もいなくなってしまうということでしょう?」

 

 分かり切ったことを聞くなというような口調だ。

 

「え、私?」

 

 急に名前を挙げられ、俺は戸惑いながら尋ね返す。

 

「ええ。 姫様がいなくなってしまったら、サキュバス界にとって大きな損失です」

 

「サキュバス界?」

 

「こんな上質のペニスを持った美少女なんて……この先千年経とうとも現れないでしょう。この存在を護るため……我々サキュバスは人間側に就きます」

 

「そんな理由!?」

 

 俺は驚愕する。

 

「なるほど。納得した」

 

 頷く取り調べ官。

 

「納得するの!?」

 

 騒いでいるのは俺だけで、既に二人の間には妙な共感が通じているようだった。

 

 つづく

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