飛龍、その淫らな裏の顔…なお、微妙にポンコツな模様 作:dn88k
自分の性的嗜好が世間の平均的なものと比べるとほんの少し、いや、大分ずれてしまっているというのは飛龍も自覚している。だが、それと提督の事が好きだというのとはまた別の問題である。ただし、自分の性癖を知って欲しくはない、というのは当然ながらある。だから彼女の提督に対する気持ちというのは心の奥深くにしまい込んで大事に温存せざるを得ない訳だ。
そんな日々を過ごしていた時、飛龍は他の艦娘達と共に自分の艦載機の整備を行っていた。やはり正規空母だから自前で面倒を見てあげなければいけない艦載機の数はそこそこにある。飛龍はそれらの機体を一機一機、こまめに目を通し、仮に損傷や磨耗している箇所があれば丁寧に補修する、という事を繰り返していた。
その途中で、他の艦娘の一人がこんな事を言い出した。
「やっぱり提督って優しいよねー。みんなの事大切にしてくれるしさあ」
うんうん、私もそう思うよ、と心の中で返答しながら艦載機の整備を続ける飛龍。そして、その艦娘は更にこう言った。
「思い切って告白してみようかなあ。ああいう人なら付き合ってみても良いけど」
これには流石の飛龍も内心慌てた。いや、告白されると先越されるんだけど、でも、私の性癖がバレても、などと思っていると、別の艦娘がこんな事を言い出した。
「えー? でもあの人って意外と女にだらしないって聞いたけど、そんなんでも良いの?」
その言葉を聞いて、どういう事だと顔をあげる飛龍。そして、先ほど提督に告白してみようかなどと言っていた艦娘がこう質問する。
「女にだらしないって、あの人って今付き合ってる人とかいるの?」
それに対して、もう一人の艦娘は、
「んー、なんかね。先週の木曜だったかなあ。運動場の見えにくい場所で別の子とエッチしてたみたいよ。外なのに結構激しかったみたいでさ。艦娘の方は凄い声してたみたい」
飛龍は内心で驚くと共に、その顔が青ざめていくように感じていた。そんな彼女をよそに、最初に発言した艦娘は、
「外でしてたの? あの人って意外と大胆なんだね……その子って提督の彼女なの?」
と顔を少しばかり赤くしながら聞いた。聞かれた方の艦娘は首をひねりながら、
「うーん、それが良く分かんないんだよねえ……なんでも、他にもエッチしてる子がいるみたいとかでさあ」
と言う。
「なーんだ……そういう事なら、私はパスかな。やっぱり誠実な人がいいもん」
と最初に発言した艦娘はさっさと諦めてしまった。しかし、提督を日常的にオナニーのオカズにまでしてしまっている飛龍にしてみれば、とんでもない話である。
(そんな……提督って特定の彼女とか無しにエッチしまくってるの……?)
更に飛龍にとって堪えるのは、仮に提督がそうであっても、自分に対しては一切声をかけてくれないというところにもある。すなわち、女としての自分は彼の視界に入っていない事を意味するのである。
それからの飛龍は暗い気分で過ごす事が多くなった。仕事に影響を及ぼす事は無いものの、その表情は冴えない。
今日も出撃任務を無事に終えて鎮守府へと帰投する最中であったが、その時に艦隊のとある艦娘がこんな事を言い出した。
「提督なんだけどさー、工廠でエッチしてたって話、本当なのかな?」
(……は?)
飛龍は内心自分の耳を疑った。しかし、艦隊の他の艦娘が言う。
「ああ、なんか本当らしいよそれ。勤務時間中に服も脱いで結構大きな声出てたみたい」
その艦娘と飛龍を除いた艦隊のほぼ全員から、「ええー」と言う声があがる。
「前に外でしてたらしいって話は聞いたけど、大胆過ぎない?」
と別の艦娘が言った。
「それっていつ頃の話なの?」
たまらず飛龍が聞く。
「ん? 確か先月末とかそんな話だったと思ったけど。まあ、いろんな子とあっちこっちでしてるみたいだし、工廠もありなのかもね」
と、提督が工廠で致していたと発言した艦娘は肩をすくめながら言った。
「そっかあ…」
そう答える飛龍は、表情にこそその内面を出す事はなかったが、やはり傷付かざるを得なかった。
それから更に数日。相変わらず飛龍の気分は暗いままだ。その日は一人、食堂で昼食を摂っていたが、食事がうまく喉を通ってくれない。大食らいなはずの飛龍が満足に物を食べられなくなっているのであるから、提督の噂がいかに彼女の心に重くのしかかっているか、容易に想像が出来るというものだ。そんな時、一人の艦娘が食堂に飛び込んできた。その艦娘はさながら、飛龍に致命的な宣告を加える、いわば地獄の使者と呼んでも差し支えない存在だったのかもしれない。
「ねえねえ、大ニュース!! 提督がケッコンするんだって!!」
その場にいる艦娘たちは驚いたような表情で一斉に報告した艦娘を見る。飛龍も思わず持っていた箸を落としていた。
「え、それ、マジ?」
先に食堂にいた艦娘の一人が聞いた。
「マジらしいよ? 今日は午後に会議があるから言えないけど、明日の朝の朝礼で発表するとか、そんな話になってるみたい」
報告した艦娘はそう答えた。
「それで、相手って誰なの?」
別の艦娘が聞く。
「先週ずっと秘書艦やってた子いるでしょ? あの子なんだって」
その返答に対して周囲は納得したかのような雰囲気を醸し出した。
「ああー……確かにあの子と提督って最近なんかやたらと話し込んだりしてたもんねえ」
「それも会議室とかで二人っきりでさ? そういう事なら分かるよねえ。そっかそっか」
楽しげに語り合う艦娘達。しかし、彼女達は食堂のすみで飛龍がすっかり青ざめた表情になって震えていた事にまでは気が回らなかった。固形物が喉を通りそうに無いから、せめてお茶だけでもと思い、震える手でグラス内の麦茶を一口飲み込む。しかし、それが本当に麦茶の味なのかどうかすら、今の彼女には分からなかった。
(結局、私なんて完全に提督の対象外なんだ……そっか……)
確かにショックは大きかった。しかし、瞬時に自覚する事は出来なかったが、その時の飛龍の絶望感はすぐに全てを自覚出来るようなものではなく、さながらボディブローのようにじわじわと彼女の心を侵食した。
その日の午後の会議の内容は鎮守府の今後の運営体制についての検討で、飛龍が出席者として呼ばれていた他、例の、提督とケッコンすると言う噂が流れている艦娘も出席していた。プロジェクターには、主要メンバーをはじめとする鎮守府の艦娘達の名前と顔が次々と映し出され、その役割などが提督の手で説明されたが、肝心のケッコンする予定の艦娘については、結局顔も名前も出て来なかった。ここから推測されるのは、彼女はおそらく艦隊から退き、軍からも退役するのだろうという事だ。そして、その理由が提督とのケッコンなのである。飛龍はそう考え、どんどんと沈み込んでゆく思考の中、結局は会議の内容が頭に入る事などほとんどなかった。ただし、どういう訳か、その足元をモゾモゾと頻繁に動かしていた。
そして会議が終わると、出席した艦娘達は会議室から続々と退室して行った。提督はにこやかな表情をケッコンする予定の艦娘に向けて、
「じゃあ、あの話はまた後でな」
と言っている。言われた方の艦娘も微笑を浮かべながらうなずき、会議室から退室した。
そんな状況を死んだような目つきで見つめているのは飛龍である。
いかにもらしく無い表情をした彼女はこんな事を考えていた。どうせもう既に何人も艦娘を喰っている男じゃないか、今更喰われる艦娘が一人増えた所で変わらない。そんな事を考えた飛龍は半ばヤケになってしまっていたのかも知れない。あるいは、何重ものダメージを喰らってしまった結果、もはや彼女の心はブレーキをすっかり喪失してしまっていたと言ってもいいだろう。
「ねえ提督、待って、くれる?」
二人だけ残された会議室。飛龍は退室しようとした提督に低いトーンでそう声をかけた。
「うん? どうかしたか?」
呑気な表情でそんな返事を返す提督。そんな彼に対して飛龍は聞く。
「提督ってさあ、艦娘の事、大好きだよね?」
「ん? まあ、好きっちゃ好きだが……」
そう言われた途端、提督は不審そうな表情になりそう答える。飛龍は会議室のドアを改めて閉め、そこに鍵をかける。
「エッチな事、しちゃいたいくらい、好きだよね……?」
「……え?」
飛龍の言葉に唖然とする。彼女の言っている事が一気に分からなくなる。
「ねえ、提督って、私の事、どう思ってる? 艦娘じゃなくて、一人の女の子として」
相変わらず死んだ魚のような目をした飛龍はそう聞くが、それに対して提督は素直に、
「まあ、可愛いと思ってるけど……」
と答えると、
「ふうん。でも、みんなにそう言ってるんでしょ? そう言いながら目星立ててるんじゃないの?」
と、おかしな質問が返ってくる。
「会議中も他の子と楽しそーにしちゃってさあ、どうせあの子の事も喰べてるんでしょ?」
提督に向かってゆっくりと歩いて近づき、その眼前に立った飛龍はそう聞く。
「おい、飛龍。喰べるって、一体どういう……」
提督も彼女の放つ不気味な雰囲気にようやく気づく。
「だって、艦娘が好きなんでしょ? エッチな事しちゃいたいくらい、好きなんでしょ?」
「待ってくれ、お前の言ってる事がさっぱり……」
そういう提督から視線を外さず、テーブルの上に腰掛けた飛龍は不気味な微笑みとともに、
「私でも、喰べてくれるのかなあ……?」
と言いつつ、片足を持ち上げ、その足をテーブルの上に乗せてスカートの中を見せつける。だが、そこにあるのは、普通ならば股間を覆い隠しているはずの布切れのはずだが、そんな物はなく、実際には全く隠されていない女性器だけがあった。百歩譲ってそれだけならまだ良いとしよう、問題なのはその女性器がすっかり粘液で潤ってしまっており、飛龍が発情しているのは明らかな点だ。
「今まで一人でして誤魔化してきたけど、もう限界……」
薄笑いを浮かべながらそう言う飛龍は更にこう続けた。
「抱いてよ……私の事可愛いって言ってくれたんだし、そういう事も出来るでしょ?」
状況が理解出来ず、黙り込んだままの提督だが、飛龍はゆっくりと、静かに言葉をぶつける。
「色んな子と、エッチしまくってるくせに、今更真面目ぶっても、遅いよ?」
「お前、何言って……」
「……とぼけ、ないで」
提督の事を睨む飛龍。提督はと言えば、さっぱり事情が飲み込めないといった表情である。
「あのさ、お前、何で下履いてないんだ?」
「んー? ふふ、趣味だから、だよ? 特にさあ、提督の前ですると、とっても興奮出来ちゃうの」
濡れちゃってるでしょ、と言いつつ、片手を股間に添え、その指で陰唇をクパリと広げる。
「提督の前でするとヤバイんだよね。濡れ方とかさ。それで戻ったらオナニーするの。すっごく、気持ち良いんだ」
陰唇にそえた手でそこをゆっくりといじりながら飛龍は続ける。微妙に粘膜のこすれる音が聞こえた。
「でもね、さっき決めたんだ、私。今日ここで、提督とエッチしちゃおうって。自分だけ我慢してるの、バカみたいなんだもん」
無言で硬直している提督。彼の態度はいかにも訳が分からないと言いたげだが、それだって今の飛龍にしてみればシラを切っているようにしか見えなかった。
「ねえ、他の子が普段どうしてるのか知らないけどさあ、女の子が一人、目の前でここまでしてるんだよ? それを見てるだけって、酷くない?」
言葉を続ける飛龍。
「ほら早く、エッチ、して……? もう準備だって出来てるのに、それを放ったらかしにしちゃう訳……?」
そう言ってから、悲しそうな表情になった飛龍はこうも続けた。
「それとも、私って、可愛げも無いから、どうでも良いって言うのかな……?」
「お前は……」
提督がゆっくりと近づいてくる。
「ここまでされておいて恥なんかかかせらんねえ……」
「だよ、ね? ヤリチンなんだから、そうじゃないとね?」
提督は飛龍のその台詞には答えず、黙って彼女に唇を重ねた。
(ふあ、あったかい、気持ち良い……)
提督の唇が自分の唇に触れている感触はとても甘美であった。しかし、それで満足出来なくなった彼女は舌を伸ばす。と、その意図が分かった提督は口を半開きにして彼女の舌を迎え入れ、そして自分の口腔内をねっとりと動き回るそれに自らの舌を絡ませる。
「んちゅ、んちゅ、ん、ん……」
提督の背中に腕を回してその口の中を犯し、感触を味わう飛龍。その表情はすっかり発情しきった肉食動物のようである。とにかく、提督と唇を重ねる以外については不規則な動きが目立っていたが、その動きがだんだん激しくなってきたかと思うと、突然、
「んぶっ! んうううううっ!!」
と、叫んだかのように抱きつき、唇を重ねたままその体が激しく痙攣した。提督からは見えなかったが、その女陰もプシュプシュと粘液を外部へ吐き出していた。少し体を離してみると、彼女はトロンとした顔をしつつも、息が荒いのが確認出来る。
「え? 飛龍、お前まさかイッたのか?」
「ぅん…っちゃった。イっちゃったよぉ……!」
「キスしかしてないぞ?」
「キス、だけ、でもおっ! イっちゃったのぉ……! だからぁ……キスゥ……!」
飛龍は更なる口づけを求めてきた。もはや、彼女の頭の中には提督を求める以外の思考など、何も残っていないのかもしれない。
「ふむうっ! はむっ! んんんっ!」
二度目のディープキス。目をつむった飛龍はまたも提督の口の感触を味わっているようだ。しかし、口からの刺激がかなり強烈なのだろうか、片方がテーブルの上に置かれた足もモゾモゾと動き回っていた。
すると突然、飛龍は口を離し、
「な、膣内をなでなでしないでえっ!!」
と叫んだ。
提督の手の指が二本、飛龍の淫道の深くまで侵入し、グチュグチュという音と共にそこをかき回していたのである。当初より濡れに濡れきっていた場所である。挿入そのものはスムーズこの上なかった。
「ここもずいぶん感じやすいなあ。オナニーで鍛えまくってたのか?」
微妙に意地悪な表情を浮かべて提督は聞く。
「そ、それは聞かないでえっ!」
「肯定って事で良いのかな?」
「それで、良いからあっ! だから、やめっ……!」
「いや、一度手だけでイくところって見てみたいんだよね。ちょっと続けるな?」
そう言って提督は更に手マンを継続する。
ヒイヒイと喘いでいた飛龍はやがて、
「ねえ、もう危ないから、許し……」
と言いつつ、その途中で激しく腰回りを痙攣させた。元々愛液塗れだったその陰唇は更にドロドロと粘液を吹き出した。
「あああっ! ああっ! あっ……!」
激しい息を繰り返しながらそのオーガズムの快感に耐える飛龍。もはやその顔も涙とよだれでとろけていた。
「エッロい女だなあ」
そう言った提督は自分のズボンのベルトを外し、チャックを下ろしてペニスを取り出し、
「お前、抱けって言ったよな? 挿れちまって、良いんだよな?」
と言い、その先端を陰唇へとあてがった。飛龍は快感で腑抜けたような表情ながらも、その目には強い期待を宿らせて、言った。
「うん、挿れて? 薬飲んでるし、生でも大丈夫だから」
それを聞いた提督はズブリと、剛直を一気に飛龍の女性器にねじ込ませた。
「あああああんっ!」
その快感に思わず反射的に背をのけ反らせる飛龍。その熱く硬い肉棒のもたらす感覚が、彼女の下半身はもちろん、その全身をも、もう一段階上の悦楽に導くには十分であった。
(何このオチンチン、すっごく気持ち良くて、どうにかなりそう……!)
奥の方まで一切の空虚さを覚えさせないその存在感と心地よい圧力と熱感。これまで生きてきて経験した事のないその感覚に驚きさえ覚える。それは彼女の膣肉も同感だったようだ、その生まれて初めて出会う素敵な来訪者に大いに喜び、それを絶妙に締め付ける事で心地良くもてなした。
(くっ、コイツん中、すげ……!)
一方、提督の方は快感に染まりつつも、若干慌ててもいた。というのも、彼の経験上、飛龍の膣内はかなりの名器に思えたからだ。手で内部を触っていた時から何となく想像はついていたものの、実際に挿れてみれば相当に刺激的である。服の上からでは少し分かりづらいというだけで、実際には男受けも良く、その劣情を煽りかねない極めて肉感的な体型をしていて、しかも今日のようにノーパンで会議に出席するような大胆な性格でもあり、その上女性器に至っては挿入するだけでも果ててしまいかねないほど気持ち良い。もはや提督にとって、飛龍と言う女は男から精液を絞り取る為に心と体が構成されているようにも思えてきてしまう。
「動かすけどさ、すぐ出ちまうかも……」
提督は正直な心情を吐露する。だが、飛龍はそれを気にする事なく、
「すぐ出しちゃって良いからあっ! 私の奥にも提督のしるし、つけてよねっ!」
と言って足を回し、提督が自分から離れないようにした。もはやここまできたら膣内射精ありきで進むしかない。
グッグッ、と腰を前後に動かし、最奥部を繰り返し圧迫する形でピストン運動をする提督。その過程で男性器を刺激するよう、巧妙にその形状を構成された膣肉は、提督のペニスを絶妙にすって快感を送り込む。もはや提督にしてみれば、飛龍に一方的に喰べられているのではないかという錯覚さえ覚えるが、実は飛龍は飛龍で余裕など全く無いのであった。かつてない充実感をもたらすその提督の剛直は、実際には飛龍にとってはかつて無い程に極めて刺激的な代物であり、身も心も満たされたかのような状態で体の奥深くにて、快感をまき散らすかのように暴れられている感覚を覚えてしまい、速やかに絶頂に至ってしまいそうだったのである。むしろ自分だけが果ててしまい、提督は射精に至れないのではないかという不安さえあるのが飛龍の現状であった。
「……っ、出そうだ!」
提督がうめくと、
「早く出してえっ! 私がイっちゃうのお!」
と飛龍も余裕が無い事を白状した。
そしてピストン運動はしばらく続いたが、突如として提督が飛龍を抱きしめ、
「出るっ!!」
とだけ叫んだ。途端、その快感の証である白い粘液が飛龍の胎内に放出される。
「ああああっ!」
と焦点の定まらない目でそう叫んでいる飛龍は、実はこの時点で既にオーガズムに達していた。彼女の膣肉は大喜びで提督のペニスを絞りあげ、精液を吸い出そうとしている。自分の身体で、それも、自分と同じタイミングで絶頂に至ってくれた。この感動は彼女の中にあったそれまでのネガティブな感情を一気に吹き飛ばしかねないものだったのである。快感で思考も視界もぼやけてしまう中、その悦びによって自分が泣いている事だけは自覚出来た。
「あ、は……やったあ……」
提督にしがみついて惚けたような表情をしながら、飛龍はそう呟くのであった。
会議室での情事が終わって一息ついた後、飛龍の声がその室内に響いた。
「え? 違うの!?」
唖然とする彼女に対して、いまいち状況が把握出来ていないといった感じの提督はこう言う。
「なんでそんな話になるのか逆に聞きたいんだけど……」
彼にしてみれば、飛龍の言っていたような、艦娘を喰べまくっているという話には全く心当たりが無いのだという。
「あれ? あれ?」
すっかり混乱してしまった飛龍。しかし、はっきりと分かっていることが一つだけある。周囲の噂に振り回されたせいで飛龍は完全に勘違いしていたが、今現在、提督はフリーなのであった。
だが、納得し切れていない飛龍はこう聞く。
「だって、あの子と運動場の隅っこでエッチしてたって……」
そう言われた提督は不審げな顔付きをして、
「んー? それっていつの話だ? 具体的な時期とか分かる?」
と聞いた。
「えっと、先週の、確か木曜の……」
「先週の木曜……?」
そう呟いた提督は視線を上げて記憶を辿っていたようだが、やがて、
「……ああっ! あれってただアイツのストレッチの手伝いしてただけだぜ? 手伝ってくれそうなのが全員出払ってたとか言うんで俺が呼ばれたんだよ。加減分かんなくて向こう悲鳴上げちゃってさ。悪い事したよな」
と言い、飛龍を見て苦笑いした。運動場の件については実情は異なっていたらしい。しかし、飛龍にしてみれば、まだ提督に対する疑惑が消えた訳では無い。
「じゃあ、工廠でイチャついてたとか言うのは……」
と飛龍が聞くと、
「それもいつの話よ?」
と、提督からはまた逆質問が返ってきた。
「それは……先月の末日辺りで、なんか提督が服脱いでたとかいう話があって……」
それを聞かされて訝しげに考え込んでいた提督が、やがて思い出したような表情をしてこう言った。
「あ、もしかしてそれって誰かがミスって重油を工廠の床にぶちまけたとかいうヤツじゃないか? よりによってC重油でよお。掃除するの大変だったなあ」
C重油は原油から生成される燃料の中でも、ガソリンや灯油といったまともな燃料の成分を全て取り尽くした後に残される、原油の絞りカスのような燃料で、A重油などと異なりその性質は劣悪である。一般的な石油のイメージと異なり粘度が高い上、硫黄分を始めとする腐食性の高い不純物も多いから使用後にはその機材の洗浄が不可欠。ガソリンなどよりは発火しづらいものの、一旦発火してしまうと燃焼温度が高いせいで他の燃料よりも消火が難しい、という性質はA重油とさほど変わらないときている。原価が安いから民間の大型船舶向けの燃料などとして重宝されてはいるものの、逆に言えば安さぐらいしか取り柄が無く、その安い燃料という立場すら燃焼装置の技術革新によってアスファルトに取って代わられつつある。とはいえ、燃料は燃料なので鎮守府で保管されていてもおかしくない代物ではある。
C重油の始末など本来なら作業着を着込んでやった方がいいのだろうが、可燃性の液体が溢れてしまったのなら出来るかぎり速やかに片付けた方が良い訳で、駆けつけた提督がその場で上着とシャツを脱いで除去作業に取りかかったという事のようだ。
そして、飛龍の中に残っている最後の疑問。
「じゃあ、ケッコンするっていうのは……?」
そう聞くと、提督はポカンとしたような表情をして、こう言った。
「誰が?」
「提督と、あの子が……」
途端、提督は意味が分からないとでも言いたげにこう言う。
「いや? アイツが結婚する相手って民間人だぞ?」
これには飛龍も驚きである。
「ええっ!?」
「まあ、確かに正式な話はまだここのみんなにはしてないけどな。それで退役するかどうかって話は確かにしてたなあ。こっちの都合だけ考えりゃ前線に出せなくなるのは惜しいんだが、優先させなきゃいけないのはあくまで本人の意思だからな。アイツもこっちでの仕事にやりがい持っててくれたみたいでさ。残るべきかどうかってところも含めて結構詰めた話し合いしてたんだわ。とりあえず予備役に収まるって事で話がまとまったよ」
提督はそう説明する。
結局の所、飛龍が提督に対して抱いていた疑問は、その全てが事実無根の物だったのである。とは言え、今度は提督の方が疑問を抱く番であった。艦娘だって女の子だから、噂ぐらいはするだろうが、ここまで突き抜けた話が飛び交っているのは考えものだし、そうなった経緯が不可解そのものだ。
「なんか変な噂が立っちまってるなあ……」
提督はいかにも困ったように言う。
「えっと、じ、じゃあ、色んな子とエッチしてるって話は、本当に……」
「だから、無いんだって。むしろそういう噂が出てきた原因をこっちが教えて欲しいぐらいなんだっての」
不安そうな飛龍に対して提督は呆れたようにそう言う。
結局の所、これは飛龍の空回りだったのである。ただし、彼女の抱えていた不安は、彼女自身の力だけでは解消のしようなど無かったであろう。とは言え、つい先ほど、半ば強引に提督の事を誘って事に及んだというのは事実だし、それだけは消す事など出来ようもない。
「ごめん、こんな変態な事する女なんて、嫌だよね?」
「まあ、少なくとも不安ではあるな」
自分の行動を詫びた所、提督からあっさりと飛び出た言葉がグサリと飛龍の心に突き刺さる。しかしながら結局のところは自業自得な訳で、一瞬だけ見えた希望はやはり捨てざるを得ないだろう。
飛龍が暗い気分でそんな事を考えていると、
「こんな危なっかしいヤツ放置する訳にいかないからな。変な事しないように近くに置いておかないとな」
と、提督は言った。
「…………へっ?」
顔をあげた飛龍はこれ以上ないマヌケな顔をしている。それに対して、
「まあ、あんな大胆な事しちまうヤツがよそで同じ事しないとは限らねえしなあ」
と言う提督の顔は微妙に赤い。
「え、えっとそれって、どう言う事?」
「だからあ、ここまで言って分かんねえかなあ?」
そう言って提督は飛龍の事を抱き寄せた。
(えっ!? 本当!? 何この展開!?)
軽く混乱しながらも提督の体温が感じ取れてしまい、反射的に心拍数は上昇していく。そして、モゾリと動いた後、ゆっくりと顔を上げて提督を見つめ、
「いいの?」
とだけ聞いた。提督も、
「おう」
とだけ答える。そして、飛龍は無言のまま提督の背中に腕を回した。
それから、だいぶ時間が経った後、提督は気まずそうにこう言った。
「あのー、飛龍さんや、いい加減離れてくれませんかね……?」
それに対して、
「ごめん、もうちょっとだけ……」
と言う飛龍の顔はすっかりにやけてしまっており、それが止まらないのであった。