核戦争前に原作を読んだジャギが取り敢えず何とかしてみるようです。 作:ヘルメット助教授
いつも誤字報告ありがとうございます
※本文に僅かながらエロ描写あり
「おい、本当にやるのか?」
「お前の実力をしかと見て、私が納得できねば動こうにも動けまい?
まして私に負けるようであれば、到底サウザーに勝てる見込みは欠片もなかろう、ならば策を労する時間が惜しい
…それに私には、この街や、慕ってくれる部下や民衆を守る為に、盟を結ぶ相手を慎重に選ばねばならない
易々とお前の口車に乗るわけにはいかないな」
ドレスから原作でも着ていた赤い戦闘服に着替えたユダ(女)が、荒野でジャギと対峙している
ここまでに至った経緯としては、まずジャギは聖母軍の使者として街同士の同盟を促しに来たとユダに言う
ただの拳士でなく、使者として統治者ユダに会いに来たと言うジャギの話に、ユダは興味を引かれた
交渉相手の興味を引けたら、あとは押せ押せだ
そこからジャギは同盟となった場合の、互いへの利点を挙げ続けるが、 ユダが一番興味を引いたのは『廃ビルの森』を、シェルターで保持している重機で更地にし、土地と、この街の安全を確保してやると言う内容であった
にわかには信じられない話だが、本当であれば統治者ユダとして、是非ともお願いしたい所
キラキラヒャッハーも瓦礫の撤去作業をしてくれているが、そこに蔓延るヒャッハーの妨害もあって上手くいってない
もしジャギが本当に重機を手配してくれれば、自分達が重機を護衛すれば作業は大いに捗る
しかし拳王軍とは同盟を破棄したばかりで、サウザーとは今でも裏で結託をしている
聖母軍との同盟は魅力的、だがそれはラオウとサウザーを同時に敵に回す行為に等しい
ラオウはホイホイと同盟相手を変える自分を許さないだろうし、特にサウザーは前々から聖母軍の存在そのものが気に入らないのをユダは知っている
実に下らない話だが、聖母軍と聖帝軍では、名前が被っているのがサウザーは気に入らないらしい
またサウザーが聖帝を名乗った時には既に、聖母軍が存在した事であり、完全に二番煎じ扱いにされたと思っているのだ
逆恨みも甚だしいが、言って聞く相手ではない
数ある南斗聖拳において鳳凰拳は文字通り最強
それが分かっているから、ユダは聖母軍との同盟に今一歩、踏み出せない
悩むユダに、ジャギはその目でシェルターに確認しに来て、自分達の保持している物資を見れば決心もつくと告げる
それでも悩むなら、親睦を深める名目での敵情視察だと回りに言っておけば、面倒な奴の目を誤魔化せるぞと
成る程、それも手かとユダは思う
面倒な奴とはサウザーの事か?とユダが素直に聞いてやれば、ジャギはニヤリと笑って頷く
こやつ、私がサウザーと未だに繋がっていると知っていたのか?とユダは思うが、ジャギには原作の知識があるとは知る由もない
急には決められない話だとユダが言えば、ジャギは
俺がサウザーを倒し、聖帝軍を潰せば、同盟への障害は無くなるか?と尋ねる
ユダは一瞬、呆気にとられ、次に場所も弁えずに大笑いをした
馬鹿め、お前のような拳士にサウザーが討てるものか
奴こそは南斗聖拳最強、南斗鳳凰拳の伝承者だ
討てる相手なら苦労はせぬと、ユダが言えば
ジャギもジャギで、北斗神拳に不可能はないと反論
ならば腕前を見てやるとユダは決闘を申し入れ、ジャギは二つ返事で了承したのである
荒野で向かい合う両者、しかしユダはかつての筋肉質な体格ではない
それはそれは美しい女体になっているので、これでは戦闘は無理だとジャギは思っている
いくらユダが南斗紅鶴拳の伝承者でも、統治者としての風格が増したとあっても、女は女
女と戦うのはジャギでも苦手だ
三人衆の御嬢とは何度か戦っているが、ガチの戦いは経験がない
女を殴るのは趣味じゃない、女はベッドで愛でてこそ楽しいのだ
ユダ(女)を女に入れるべきかはこの際は忘れて、ジャギとしては出来ることなら辞めて欲しいのが本音
「無茶は止めた方が良いと思うぜユダ
お前はもう女、その細い体つきじゃ南斗紅鶴拳も」
「……ふっ」
不適な笑みを浮かべたユダが、その細い腕で手刀を振るうと、ジャギに何かが高速で迫る
(で、伝衝裂波!?)
「あぶねっ!!」
驚くも、間一髪で避けたジャギ
通過した何か、南斗紅鶴拳の伝衝裂波は、渇いた地面をバックリと割る程の威力があった
(…あの姿になったも技のキレは変わらず、いや前よりも数段は上がってやがる
威力が増した理由は、いったい何だ?)
ユダは男だった頃より、数倍は技の冴えが増していた
「私からの贈り物は気に入らなかったか?
今のはこないだの、お礼の意味もあったのだがな
アリサは気に入ったか?ヘルメットの侵入者め」
(何だ、気付いてやがったのかよ)
「へっ、そういったお礼は遠慮しとくぜ
しかし俺としては、アリサを捨ててくれてありがとよって気分なんでな、ふふふ…手加減は、しねぇぞ」
「私を相手に出来るものならやってみろ、聖母軍の三下め」
表情を引き締めたジャギが構えれば、ユダも構えた
そこから二人は異次元の戦いを展開する
先攻はユダ
伝衝裂波を無数に飛ばし、ジャギを切り裂きに掛かる
大地が割れるが、恐れないジャギはそれを間一髪で避けつつ突進、ユダへ接近戦を持ち込む
(わざわざ懐に入って来よったか…ならば)
「死ね…南斗紅鶴拳奥義、血粧嘴!」
(そら来た!)
「う、うおおおおお!」
冷笑を浮かべたユダが、自身の最高の技を出す
鋭利なユダの爪擊の嵐、この開幕早々の奥義の到来を狙ってはいたが、いざ目の当たりにすれば幾らジャギでもかなり堪える
全身から無駄な筋肉が無くなり、拳にスピードが増したユダの紅鶴の切れ味は凄まじく、ジャギは柔の拳を用いてもその全てを捌ききれないでいる
急所への爪撃は免れているがその分、他の箇所への爪撃にジャギの服は数秒でバラバラにされ、その見事な上半身が露にされると、ユダの爪がジャギの皮と肉を食らえば、飛沫となった血が大地を赤く塗らす
だが折角、懐に入ったのだ
紅鶴に啄まれる事を嫌い、迂闊に距離を空ければ、即座に中距離・遠距離にはもってこいの伝衝裂波が、まるで五月雨のように襲い掛かるので離れる事も出来ない
(手数が多く、なによりスピードはレイ以上か!)
ユダの真の実力にジャギは防戦を重ねて、見切りを続ける
ここは我慢比べ、勝機はある
どんなに凄い拳士でも、疲れは必ずくるもの
ユダにスピードが増した分、体力とスタミナ、そして攻撃力はこちらに分がある
またジャギに攻めれば攻めるほど、相手は手の内を教える事になるのだ
(頼むぜ…水影心)
相手の拳を己のモノとし、自在に使うことができる北斗神拳の奥義で、ジャギはユダの拳筋、呼吸、フットワーク、僅かな視線や筋肉の動き、気配や心境までも敏感に読み取り始める
ジャギはどんなに血を流そうと、どんなに一方的にやられようと、表情一つ変えずにユダの動き一つを見逃すまいと刮目し続けた
ジャギの水影心は、他の義兄弟に比べれば遥かに劣る見切りのスピードだが、ジャギも北斗神拳伝承者の最終レースに残った実力者、次第にユダの爪撃を捌く回数が増え始める
己の紅鶴拳が読まれ始めた事に、ユダに僅かな焦りが生まれる
当初はジャギの想定した通り、乱撃をひたすら繰り出して、嫌がった相手が後に下がったら伝衝裂波の嵐で一気に決着をつける筈だった
しかし三下と思っていた男に奥義である血粧嘴を披露しても一切、後に下がる気配がない
それよりも、爪撃が当たらなくなってきた
伸ばしたユダの腕の手首にジャギは、そっと手を掛けて、爪撃の軌道を自身に当たらぬように逸らしているのだ
(これは…読まれている?
馬鹿な、この短期間に血粧嘴を?
不味い…いつまでも攻め続ける訳には…くっ!)
疲労が増して、ユダの腕の速度がガクンと落ちると、ジャギの眼が反撃開始とばかりに煌めく
ゾクッと寒気を感じたユダは、本能的にジャギから距離を取ってしまった
「ふんっ!」
距離を詰める事もせず、ジャギは渾身の力で手刀を上段から振り下ろした
すると
「なっ!?」
狙っていた筈の伝衝裂波がジャギから発せられ、彼女に襲い掛かった
しかし直ぐにユダも残る力で伝衝裂波を繰り出し、ジャギの伝衝裂波と相殺させる
地表で激突する互いの衝撃波
結果、ジャギの渾身の一発はユダには届かなかった
伝衝裂波とは相手に近ければ近いほどに威力を増す技、その特性を理解している南斗紅鶴拳の伝承者ユダに対応が出来ない筈もなし
だがユダのプライドはズタズタだ
「貴様…俺の伝衝裂波を…」
「へっ、言ったろ、北斗神拳に不可能は無いと」
驚きのあまりに一人称が思わず、『私』から『俺』に戻ってしまったユダ
しかしそれも一瞬、直ぐに女王の貫禄を取り戻す
「…悔しいな、あれだけ苦労して会得した技をこうも簡単に奪われるとは、拳士として立つ瀬がない」
「必死なだけさ、俺はまだ死ぬわけにはいかん」
構えを解くユダに、ジャギも構えを解く
戦いは終わった
「貴様のやったそれは、一種の見切りか?」
「ああ、これが北斗神拳の奥義よ
だがこれ以上は企業秘密なんでね、悪いな」
「その見切りがサウザーへの切り札なのだろうが、奴の一撃は私の爪撃の比では無い
それこそ一撃で相手を葬るだろう
いかにその見切りと、他の北斗神拳を駆使してもサウザーは倒せぬ、何故なら奴の体は生まれついての帝王の体で、いかなる拳法でも奴を倒す事は出来ない不思議な体を持っている
いくら南斗聖拳と対極に位置する北斗神拳でも、サウザーに通用するかな?」
「女王に心配して貰えるとは光栄のいたり、ってか
安心しろ、その秘密がサウザーの最大の弱点でもあるのさ」
「…勝てるのか?」
「お前はただ、俺とサウザーの戦いをマッチアップしてくれれば良い
聖母軍の使者が聖帝軍に降伏を進めてきたとでも言って、サウザーを誘い出せ
それとも南斗六星拳は南斗最後の将を擁立し、天帝を北斗神拳と共に支える立場、なのにその責務を放置する愚か者は成敗すると北斗神拳の使い手が言ってた、とでも伝えてやれば傲慢なサウザーの事」
「奴は大群を率いて聖母軍の領土に進攻し、聖母を殺すだろう」
「ふっふっふ…」
「そうまでして、サウザーに拘る理由はなんだ?」
「俺は『生き残れば良い、それが全てだ』と言う言葉を信条に生きてきて、これからもソレを変える気はない
ただ…サウザーの目には世界を掌握することしかない。それは目先の欲を満たすためだけの行動でしかなく、奴には未来が見えて無い
天を欲する拳王も動機は似たり寄ったりだが、あれは義理とは言え兄だ、暴走する兄を止めるのは兄弟の役目、しかし俺では力不足でな
そこは二番目の兄者に譲って、俺は俺のやり方でこの世界に名を轟かせ、世界の未来を少しはマシにしてやりたいと思ってる
少なくとも、また手下共と楽しくキャンプが出来る位にはな…ふふふ」
「待て、ラオウがお前の義兄だと?
ラオウ、トキ、そしてケンシロウという若造
私は北斗の伝承者は三兄弟だと聞いたが?」
『ブチッ』
「…てめぇ、嫁にいけねぇ体にされてぇかコラ」
会話モードになっていたジャギ、しかしユダが不意に口にした『北斗は三兄弟』の発言がジャギの逆鱗に触れると、ドス黒い殺気がジャギの体から瞬時に溢れ出す
数分後
「おかえりなさいませ、ユダ様
おや?使者殿は冥土に向かわれましたかな?」
「ダガール、サウザーに使者を出すから書状の準備をしろ
それと近い内に聖母軍のシェルターに外交目的で向かう、親衛隊から兵士を厳選しておけ」
「仰せのままに…、ではユダ様、女達が湯浴みの用意をしておりますので直接そちらに向かって下さいませ
書状と親衛隊の選び抜きはその内に済ませておきまする…」
「分かった、助かる」
執事ダガールがユダを出迎えると、ユダはサウザーへの手紙やらの準備をさせる
どうやらこれは、ジャギの提案に乗り気なようだ
(奴が放った最後の殺気ならば、サウザーの放つ帝王の圧にも耐えられるかもしれん
あとは北斗神拳の可能性に賭けてみるしかあるまい
失敗しても、知らぬ存ぜぬを貫き、その上でシェルターの物資は私が有効に使わせて貰うとしよう
ジャギ、悪く思うてくれるなよ)
「あ!ジャギおかえり、大丈夫だった…って!
傷だらけじゃないの!」
アリサが嬉しそうにジャギを迎え入れ、次に体を見て慌て出す
しかしジャギは彼女を制す
「アリサ、支度をしろ、明日の朝には此処を出る」
「え?また引っ越しをするの?」
「行き先はオアシスの村、そこで俺の手下と合流し、またこの街に戻り、ユダ軍と聖母軍のシェルターに向かう
長旅になるからな、覚悟しとけ」
「…うん…分かった
でも、その前に!」
「うぉ!」
アリサはジャギの腕を引いて椅子に座らせると、傷の手当てを始める
放って置いても大丈夫だと、ジャギが幾ら言っても彼女は止めない、むしろ動かないでと叱る有り様
仕方なくジャギはされるがままとなり、手当てが終わるのを待つ
「……よし、終わり」
その言葉を聞き、ふわりと良い匂いに気が付けば、アリサの整った顔が割りと近い事にも気付く
「おい」
「え?……んっ、」
ユダとの決闘で気持ちが昂ったのか、それとも強敵である南斗紅鶴拳の使い手と合間見え、こうして生き残れたことに安堵したのか
ジャギは献身的な態度で手当てをしてくれたアリサに深々と口付けし、そのまま彼女をベッドに運んだのであった
「なぁ、その額の傷の事、聞いても良いか?」
ピーロートークも終盤になった頃、ジャギはアリサの傷が前から気掛かりだったので、その経緯を尋ねてみた
なにしろあのユダが、女を拐う時に傷の有無を確認しない筈がない
特にアリサのは額だ、幾ら髪で隠そうにも無理がある
となるとユダに囲われた後に付いた、もしくは付けられた傷と考えるのが妥当なのだ
犯人の動機次第で、ジャギは動く(相手は死ぬ)かもしれないが…
「この傷はね、一人の子を庇った時に付いた傷なの」
「…ほう…」
「その子は今、聖帝軍に労働力として連れていかれちゃったんだけど、とても良い子で儚げだったから、来た当初から私が守ってあげなきゃって」
「……」
「健気で一生懸命、いつも誰かの為に尽くしていたわ
ユダ様や執事ダガールも一目置く程に
けど、そんな子に限ってジェラシーを感じる人っているの
特に、誰かが自分の地位を脅かしかねないと日頃から他人を恐れる人間に」
(そりゃあ、飽きたらヒャッハー共にポイされちまう世界だからな、そりゃそうよ)
「……」
「いつしかその子は数人の心無い人達から、酷い仕打ちをされ初めて、そしたら私や、他にもその子を良く思ってきた人達と、仕打ちをしていた人達とで、小さな争いまで発展しちゃってた
結局、その子の顔に傷を付けようとしてた場面に出くわして、つい体が動いたら…………」
「そうか……その傷付けた女は?」
「……」
目を閉じ、ふるふると首を横に振るアリサ
どうやらアリサを傷付けた女は消された様だ
こうなるとジャギの出番はない
「しかし…アリサの生きていた世界と、俺の生きてきた世界は少し似てるな
俺は暗殺者として物心つく前から修行をしていて、毎日の中で血も繋がってない父や兄の機嫌を伺い、弟からの突き上げにハラハラし、それこそ息つく暇もなかった
どんなに辛くても修行を続けたが、その差は一向に縮まらず、いつしか実力は天と地になっていた
俺はヤケクソになって、手下を連れて暴れまわって…悪いアリサ、話を続けてくれ」
「私の話はそれで終わり
その子は居なくなり、私は傷が治る前に捨てられた
……今度はジャギの話が聞きたいな」
「血生臭い話しかねぇぞ?」
「う~ん…じゃあ、手下の人達はどんな人達?
ジャギみたいに強くて、優しい人達かな?」
「優しい…と言うより、面白い奴等かな
核戦争の前にはキャンプ三昧だったし」
「キャンプ……、良いなぁ
今じゃ、とても無理だね」
「と言うよりも、ほぼ毎日がキャンプだろうが」
「あははっ、確かにそうか」
少し笑い合った後にジャギは昔話をした
思い立って故郷を大勢の手下を引き連れて飛び出し、世間で暴れまわってた日々
警察(死語)やヤクザ(死語)に追われた日々
山や海で雲隠れをしながら盛大にキャンプをし、移動にはバイクでツーリング感覚で楽しんだ日々
核戦争が始まると聞いて、違法シェルターを乗っ取り、そこに手下と共に生き残る為にと、物資集めに奔走した日々
ジャギは悪党として生き始めた頃の話も、アリサには隠し事をせずに話す
こいつなら話しても大丈夫、そんな感じがした
「うわぁ~ジャギってやっぱりワルだったんだね」
「核戦争の前から俺は俺だった、って事よ
世界が勝手に壊れただけで、俺はそれに乗っかっただけさ」
「とにかく、楽しそうな人達なんだね、安心した
話している時のジャギ、凄く嬉しそうだったし」
「ん?そうか?顔に出てたのか…」
「うふふ…、ところでその人達は今はオアシスの村で何をしているの?
悪さとかしてない…?」
「ああ、それは……」
「……は?」
「いや、だから」
「ただ待ってろとだけ書いて、その場に置いてきたの?何をしろとも言わず?手紙だけを書いて?
しかも、そんなにジャギを思ってくれている三人に?」
「アリサ?」
「ジャギ…、ちょっとそこに座って」
言われるがまま、床に着座するジャギは無意識に正座をして背筋を伸ばしていた
アリサが、怖い
アリサが、怒っている
義理の家族の中で培ってきた、他人の感情を読み取る事に長けたジャギの本能が、警戒信号を鳴らしていた
「ジャギ」
「はい」
にっこり笑うアリサ、しかしその目は一切笑ってなかった
それからジャギは、自分を心から慕ってくれている人達に、なんて裏切りをしたのかと叱咤される
何処に行くのかを伝えられず、彼等は心配で心配で、夜もまともに寝れてないだろう
一言も言っても貰えず、自分達は力不足でそんなに頼りないのかと、落ち込んでいるだろう
他にもジャギは手下の配慮の至らなさ具合を、こっぴどく叱られた
それに、がっつり凹んだジャギ
しかしアリサは激励や助言も忘れない
城へ侵入するという特別な状況であっても、同行はさせても良かったかもね
どのみち三人の事を思っての事なら、ちゃんとそこは伝えなくちゃ、相手に悪いよ
そんな時は、こうしたらどう?
どんな些細な事でも良いから、感謝の言葉を普段から言ってみてはどうかな?
そこからはジャギも一緒になって考え出し、熱が収まった頃には三人衆への罪悪感が増してきたジャギに、アリサは荷造りはしておくから、今すぐに三人衆に謝りに行ってみては?と提案
敢えて命令せずに、自発的にジャギを送り込むアリサは女房としての手腕にも長けている様だ
「ちょっくら行ってくる!あっ、誰も部屋に入れるなよ、あと火の元の確認と、重いものは帰ってから俺が」
「はいはい解ってるわ、気を付けてね」
「おう!」
急ぎバイクに跨がり、ジャギはオアシスの村を目指して出発するのであった
三人衆は困惑の極みであった
眼帯美女のカーネルは副官としての立場から、残ったゴッドランドの兵士を鍛える毎日だったので、気にはしていたが他の連中ほど凹んではいなかった
だが長年の付き合いであるジャギに見捨てられたと思っていた、メリケンとキッドの落ち込み具合は半端ではなく
お姉さん役を買って出たアイリと御嬢の存在に、二人は精神を繋ぎ止めるのがやっとの状況であった
たまにレイも三人衆に稽古をつけつつ、何をやってるんだあの男はと内心で怒り
マダラはいつもより多めにキッドに絡まれ(八つ当たり)、水洗いされたりしているが、それには何も言わず、ただ耐えるのみ
そんな時にジャギが帰って来た
そして三人衆や、三人衆を気遣ってくれたレイ達に、すまなかった!と腰を九十度に曲げて謝罪したのである
あの、ジャギが頭を下げた
『あの』ジャギがである
これが世紀末なのか……
ジャギは己の心配りが足らず、全員にいらぬ心配をさせてすまなかったと理解した上で、謝罪をしている
何があった?自分達と離れている間に何があった?
「その手当ては…女か…?女ができたんだな?」
キッドの言葉に皆が一斉に度肝を抜かれる
成る程、言われてみれば確かにジャギにしては珍しく体中に怪我をしているし、その包帯の巻き方は自分では到底むりな巻き方で、しかも他人がやったにしては丁寧すぎる
キッドの目から光りが消える
「…へぇ、僕らを放っておいて女を作ってたんだぁ」
ヤバいと思い、御嬢やメリケンがキッドを押さえようとするが、ジャギがそれを止めさせた
「ああ、そうだ
俺はお前らが死んだらヤバいと思って単身で、ユダの所に殴り込みをかけに行ったら、アリサという女がヒャッハーに輪姦されそうになっててな、助けたらユダの秘密を話してくれると思い、助けた
確かに女を作ったよ、それがどうした?」
「…は?…どうって」
「俺はアリサも、お前らも大切だ
離れてる手下も、シェルターも、トキやケンシロウ、ユリア、シン、ハートやらの自警団の奴ら、レイ、アイリ、マダラ、カーネル、新兵、技術者ども
その全部が全部、まとめて俺のもんだ!
順位なんぞありゃしねぇ!
おまけに今回の相手は南斗聖拳のユダだ、一歩間違えたら全滅すっかもしれねぇ……
だから俺のもんを大切に、奪われないようにしたんだ文句あっか!?」
『…………』
後半は完全に逆ギレだが、内容は実にジャギらしい心情の吐露
傲慢で勝手、ジャイアニズム全開
しかしジャギは何気に手下の前で心情を漏らす事は、この世紀末に入ってから一度も無く、それが返って三人衆を黙らせる結果になった
近くで見てきたからジャギが強くなっている事は知っていた、しかし自分達を敢えて避け、痛々しい手傷を負い、心情を吐いた男を手下として責められようかと
しかし納得できない男が居た
「言いたいことはそれだけか?」
そう言って、レイがゆっくりと近付いて来た
彼の回りの空気が冷たく張り詰めている
「ジャギ、お前には確かに理由があった、ユダは手強い事はこの場に残された誰よりも、俺が知っている
残していって正解だ、集団で行ってたらユダの狡猾な罠に嵌まっていたかもしれん
しかし現にこいつらを心配させ、苦しめた代償をお前は払ってねぇ…お前も謝って済むとは思ってない、そうだろ?」
「…そうだな」
「なら、分かるだろ?」
「ああ、受けて立つぜ」
怪我をしたジャギに、レイが決闘を申し込んだ
メリケンや御嬢がジャギを、アイリがレイを止めようとするが、二人は既に臨戦態勢に入っており、近付けば巻き込まれると思う程に殺気立っていた
「皆、離レル、二人ノ意識、変ワラナイ」
獣の本能がジャギとレイの覚悟を感じ取ったか、マダラが全員に退避を促す
決闘をする二人は被害がでない荒野へと出て、構える
何だ何だとギャラリーも集まり、その中でバットが逞しくも賭け事を行っているが、当の本人達は彼等に見向きもしない
「殺す気で行くぜ、欲しがりの下衆野郎」
「さっさと来いよ、万年シスコン野郎」
「「南斗水鳥拳!」」
大地を蹴り、天空を飛翔する二羽の水鳥が、空中で激しく斬り合う
レイは南斗水鳥拳の本領を発揮し、水影心で得ただけの範囲で攻めるジャギを圧倒する
アリサに巻かれた包帯は見るも無惨にバラバラにされ、その下から南斗紅鶴拳奥義『血粧嘴』によって啄まれた傷跡が陽の元に晒された
(ちっ!やっぱり本家相手に真似事はキツいか)
実際に立ち会ってみれば、やはり水鳥拳は鋭く、手強い
水鳥拳ではやはり敵わないと、今度は最初に覚えた南斗聖拳『南斗邪狼擊』で迎え撃つ
スロー過ぎると言われていた南斗聖拳が、水鳥拳に食い下がる
「そんな基本的な南斗聖拳で、この俺が倒せるものかよ!」
ジャギの攻撃を余裕で受け止め、腹部に蹴りを入れて地面に叩き落とす
「ぐぉ!」
「しゃおおぉぉ!
南斗水鳥拳奥義、飛翔白麗!」
落下エネルギーと渾身の手刀の振り下ろしによる斬擊技、飛翔白麗がジャギの両肩に迫る
「遅い!」
高速の手刀により発生した衝撃波が天空に放たれ、落下体勢で無防備なレイの体を斬る
「うぐっ!」
激痛に顔を歪めつつも、なんとか地面に着地した水鳥は、ジャギが放った斬擊に驚く
「それは、ユダの伝衝裂波だな!?」
「へっ、なんだよレイ、俺がただユダにボコボコにされただけだと勘違いしてたのか?
しっかり盗んでやったよ、伝衝裂波
つ~か、お前の南斗水鳥拳も使った俺なんだ、南斗紅鶴拳を盗んでない訳がね~だろ」
鼻で笑うジャギだが、ユダに付けられた傷口が開き、そこにレイの斬擊が加えられた事で、その出血は相当なもの
レイも飛翔白麗の体制で、まさかの伝衝裂波に驚き、まともに食らってしまい服の下から出血をしている
だが、まだだ、北斗神拳と南斗聖拳の使い手同士が、この程度では終われない
「こっからは南斗聖拳は無しだ、俺はやっぱり北斗神拳でテメーをボコボコにしてやるぜ」
「ふん、無理をしないでショットガンや含み針を使った方が良いんじゃないのか?」
インターバルは終わりだと、二人は間合いを詰め、接近戦を展開
出血し、互いにアドレナリンが分泌された二人は止まらない
心の炎がレイの斬擊に切れ味や、振りの素早さを増加させ、ジャギの体を斬りまくる
ジャギは怒りで体を硬質化させ、レイの斬擊をものともせずに北斗百烈拳
二人の戦いは一時間にも及ぶのであった
「…おい何度言えば分かる…間違えるなよ、当たった手数の多さでこの決闘は俺の勝ちだ…」
「バカぬかせ、いつからポイント制の試合形式になったんだよ!
ユダとの決闘、お前との決闘、合わせたダメージ量で考えれば俺様の勝ちだ……」
「ユダとのダメージ量を俺の南斗水鳥拳と同じにするな!
やはり、貴様はこの場で細切れにしてやろう」
「ひゃははっ!肉片に成り損ねた水鳥が、ネギ背負ってきやがったってか!
拳の速さでユダに劣るテメーが、まともな状態の俺に勝てるもんかよ!」
「何だと!この万年、手下泣かせの男が!
ちゃんと下の面倒をみろ!」
「るせぇ!テメーこそいつもいつもスカしてやがる癖に、決闘決闘と暑苦しいんだよ!
あと、たまには女の一人でも家族に紹介して、安心させて見やがれっての!」
『ギャンギャンギャンギャン!!』
もはや指一本動かせない状態で地面に突っ伏しながら、懲りずに口喧嘩をしている二人
結果としては、勝敗は付かなかった
既に辺りは夕暮れになり、ギャラリーも居ない
しかし、地に落ちた鳥と、這いつくばった野良犬の口喧嘩はまだまだ終わらない
「…バカ…」
「懲りないッスね~」
「これだけボロボロなら簡単に調教できそ♥️」
「兄さん、ジャギさん、しっかり!」
「アイリ、心配イラナイ、二人、トテモ強イ」
三人衆やアイリ達が駆け寄って、二人の手当てをするのであった
そこにカーネル(女)がやって来てジャギに告げる
「ジャギ様、戻ってきた理由はまさか謝罪の為だけでしょうか?」
「あ……」
「はぁはぁはぁ……」
急いで三人衆とカーネル、レイ達に事情を説明し、明日には出立の準備をさせるように命じたジャギは、バイクを全力でスッ飛ばし、荒野を爆走
途中でヒャッハーがジャギに襲い掛かってくるも、ショットガンの弾が惜しいと、そこは中距離・遠距離なんでもござれな『伝衝裂波』で綺麗に真っ二つにされている
弾を消費せずに遠くから敵を片腕で始末できる、この南斗紅鶴拳の奥義は大変に便利であった
しかしそんな事はどうでもいい
ジャギは焦っていた
(すっかり遅くなっちまった!
くそっ!急げ、急げ、急げ)
待たせている人が居る
もしかしたら、不在の中で拐われているかも知れない
遅いと怒っているかも、心配しているかも
様々な『かも』が頭をよぎり、ジャギの心を乱す
そしてジャギは、待たせている人が居る部屋の前に到着すると、おもいっきり扉を開き、名前を呼んだ
「アリサ!」
部屋の中はすっかり片付けられ、物資ごとにキチンと纏められている
静かだ
人の気配もない程に
「ア、アリサ……?」
名前を再び呼んだジャギ、しかし反応がない
(ま、マジかよ……おい、嘘だろ
……一体、どこのどいつだ!俺のアリサを)
「うぅ~ん……あ、おかえり、遅かったね」
なんとも間の抜けた声で荷物の山の中から、アリサが現れたではないか
あれ?荷物を纏めてたら眠っちゃった。と少しおどけるアリサにジャギは静かに歩み寄り、優しく抱き締めたのであった
「……ん?どうしたの?」
いきなりの行動に驚くアリサ、その場の雰囲気で抱かれる事はあったが、こういった抱き締められ方は初めてで、僅かに困惑する
「……なんでもねぇよ……」
ボソッと耳元で強がる強面の男に少しだけ心の中で微笑ましさを覚え、その広く、少し震える背中にアリサも腕を回すと
「大好きだよ、ジャギ」
そう言ったのであった
大切な人が居なくなって、初めて気付く事って人間なら誰しも経験ある事です
悪逆非道の輩・ジャギにもそんな経験をすれば、必ず気付く事があると思い、今回の最後はこうなりました
極悪ノ華のアンナとも、こんな感じで原作関係なしにジャギと幸せになって欲しかった…いやマジで
補足ですが、遅れた理由を聞かれたジャギはレイと戦って遅れたと素直を言うと、少しだけ怒られたそう
ただし三人衆や、悪かったと男に戻したカーネル(レイとアイリには同意済)とは和解したと知り、アリサもジャギを褒めてます
そして二人は荷造りした部屋の中で…。後は想像に任せます
三人衆、これまで色々とジャギに振り回されたけど、アリサのファインプレーで少しは仕事環境が改善されるかな?
カーネルは男に戻しました。何度もスイマセン
やっぱり男の兵士が、上官が異性だとモチベーションも上がらんと思いまして、スイマセン
今回の序盤は、思ったよりも作者の中でユダがハマーン様に染まってしまった。
やり過ぎない程度にアレンジしていきますね
拳士ユダにでなく、統治者ユダにジャギは会いに行き、同盟を促すなんてのは原作の両者では絶対にないシーンですね(笑)
本作ジャギは、中途半端な拳士なぞいらねぇ、こっから先は、ある程度は信用できなくとも頭が良い統治者が世紀末には必要だとし、ユダは殺さないと決めているそうです
あくまでもユダは、ですか
では、メディスンシティーの犬好きなオッサンは?
ジャギ『知らん!死ね!』
だそうです
サウザーが聖母軍をよく思ってないの下りは、どことなく、いやほんの僅かに、イチゴ味のかほりが、しなくもない……いや、きっと気のせいだ
うん、気のせいだ
そしてユダVSジャギ、レイVSジャギは、書いてて本当に楽しかった
武器を使わないジャギに違和感を覚えますが、それでも強いんですよ!
ウチのジャギは!強いんです!
その場で打ち合う我慢比べに、あのジャギが根気で勝ちをもぎ取り、使い所は未定ですが血粧嘴を覚えられたのも大きい
ユダが弱体化せず、むしろ街や民衆を守る為に心を強化させてみました
もののけのエボシ様の様に身内に優しく、されど危害を加えてくる者には圧倒的な強者に、そんな感じの女性(ユダだけど)って格好いいなぁ。ユダだけど
毎度毎度、水影心って便利だわ。しみじみ
『北斗は三兄弟』この発言にジャギがキレるシーンの元ネタが分かる人、ニヤニヤしてくれただろうか
アリサの傷の経緯は完全に本作品のオリジナルですが、原作でも『あの』ユダに献上するなら額の傷くらいは。しっかりとチェックしないと、それこそバレたら真っ二つにされそうなんですがね
聖帝軍に連れてかれた女の子、まあ誰なのかしら?
分からないなぁ……
そう言えば、マミヤの存在を忘れてました
……どないしよ
しかし、揃いも揃ってユダ軍はアホばかりなのか?
コマクも大変だぁ……。他人事
アリサとえっちぃ描写ですが、今回はこんな感じで流してみましたが、如何だったでしょうか?
リクエスト沢山いただきました、ありがとうございます!
番外編の次は胃潰瘍アミバにし、番外編の中で時系列やらをそれなりに守りつつ、楽しく作ってまいりますので、まだまだお気軽にメッセください!
いつかはイチゴ味の聖帝様を番外編に……。
感想、補足ありましたらお気軽にどうぞ♪
ありがとうございました!
ジャギの子供は有りか否か
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有り
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否! 断じて否である!
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結婚相手によるな
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そんなことより世紀末バスケやろうぜ