※この作品はR-18です。

核戦争前に原作を読んだジャギが取り敢えず何とかしてみるようです。   作:ヘルメット助教授

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誤字脱字ありましたらスイマセン

前回の誤字報告、誠にありがとうございました


3話

「シン、よく来てくれました

貴方にはシェルターと、これから新たに建設される街の警備隊の隊長として務めて頂きます、よろしいですね?」

 

「分かっているユリア、この南斗孤鷲拳のシンが隊の長として、お前の街を守ると誓おう」

 

大勢の部隊を率いたシンはシェルターにやって来た

 

ハート、スペード、ダイヤ、クラブといった面々も、ジャギに負わされた傷も癒えないままだが、シンの後ろに控えている

 

謁見の間にてシンはユリアに跪き、主従の関係を大勢の人間の前で誓ったのだがいくら形式とはいえ、端から見れば見せ物とも取れる構図

 

だがこれで堂々とユリアを命ある限り守れると吹っ切れた様子で、何処か満足した感じである

 

ユリアの隣にはケンシロウが立ち、久方ぶりとなる親友との再会に顔を綻ばせてもいた

 

だがユリアは、本来シンと共に帰ってくる筈の男の姿が無いと気付く

 

「……時にシン、ジャギはどうしました?

一緒に戻ると思っていたのですが……」

 

「ああ、あの男はな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着だ、ここでお前達は待ってな」

 

「はいジャギ様……」

 

大型の改造バイクから降りるヘルメットの男は、世紀末仕様のジープに乗った手下と思われる男女に待機命令をし、その特徴的なヘルメットを外した

 

ヘルメットの男、ジャギはシェルターに戻らなかった

 

シンが部隊を率いてユリアの元へ向かったので、当分シェルターは大丈夫だと判断したジャギは、更なる人材の発掘や暴力に怯える村の探索を本格的に開始したのだ

 

 

 

手始めに南斗聖拳トップクラスのシンに、他の南斗六星拳の情報を聞けば、いきなり南斗水鳥拳のレイの所在が分かった

 

他の六星拳の行方までは分からなかったが、原作でも頼りになるレイを早期発見できたのは幸運だとジャギはほくそ笑む

 

この地からそれほど遠くないので、食料や燃料の面でも節約になる、ありがたい事づくしだ

 

ジャギはシンが治めていた街から男女3人の手下だけを連れ、残りをまだ見ぬ村の探索に出すと、改造バイクを飛ばした

 

そして目的の村に到着すると、世紀末には場違いな赴きのある喫茶店を訪ねたのであった

 

 

 

「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」

 

煉瓦積みの外観と、木造をベースとした喫茶店の内部は、今が世紀末だと忘れさせてくれる程に雰囲気が良かった

 

テーブルや椅子、食器棚に飾られたコーヒーカップのどれもが使い込まれているが、手入れがしっかり行き届いているのが素人目でも分かる

 

店内BGMはレコードか、ほどよい音量が耳に心地よい

 

思わずカウンターに座りそうになるが、ジャギはそれを寸前で堪え、ダンディーなマスターに立ったまま話し掛ける

 

「すまない、客じゃないんだ

俺は聖母軍のジャギ、ここに南斗聖拳のレイが居るって聞いてな、是非彼に会わせて欲しい」

 

「レイ、息子に……?」

 

「ああ、居るのかい?」

 

マスターはレイの父親だった

 

しかしジャギは彼から、息子は私用で村を離れているので会わせられないと言われ、更には息子に一体なんの用なのだと尋ねられる

 

ジャギはここへ来た理由を明かす

 

自分は聖母軍の一員としてレイを丁重に招き、彼とその家族や、この村の人をも聖母軍に迎えに来たのだと

 

 

 

いきなり村をまるごと移転させると言う男に、レイの父親は驚く

 

なにせこの世界で一番安全で、快適なシェルター生活を提案されたのだ無理もない

 

ジャギは更に畳み込む

 

使者という立場であるので野蛮な口調は隠すが、概ねこんな感じである

 

 

 

この先、ヒャッハー!程度の団体ならば、レイや村の小さな警備隊だけで何とかなるかもしれない

 

だがそれがゴッドランドや牙一族クラス、中々に統率された連中が相手ならレイがいてもある程度の被害は免れまい

 

この程度の規模の村、一度やられれば後は全て奪われるだろうな

 

なにせ今は世紀末、弱い奴等は食われるか非力なりに結託するか、それとも万札より価値の無いプライドを捨てて強い奴に膝を折るしか、この先で生き延びる方法は無い

 

そしてさっき言った、ある程度の被害が、この村の誰に該当する事になるのか

 

そこをよく考えてみてくれ

 

だから、手遅れになる前にと我等が慈母ユリアが、そういった悲劇が起こる前にこうして慈悲の手を差し伸べたいと、俺を使者にしたって訳よ

 

言ってしまえば、実力者であるレイをこの小さな村だけに留め置くのは勿体ない

 

あんたの息子は千や万の苦しむ人々を救える、数少ない人間なんだぜ?

 

俺に着いてくれば、安全に隔離された世界で家族を失う事なく、好きなだけコーヒーを淹れられるぞ?

 

さぁ……どうする?

 

 

 

 

「… じゃあレイが帰る迄はこの村に寝泊まりしてる、戻ったら宿屋まで教えてくれ」

 

残念だが、レイの父親は了承しなかった

喫茶店と言う店を切り盛りする彼は聖母軍の存在や、その評判を客つてに知ってはいたが、それでも返事はNO

 

そこにレイの母親と思われる美しい女性が現れ、ジャギから諸々の話を聞くが、彼女も断りをいれた

 

幾らなんでもいきなり過ぎたか、それとも何かこの村でやり残した事があるのか?

 

どちらにしても、欲しいのはレイだ

その父親と母親には興味がない

 

最悪の場合、妹の首に見えない縄をかけてレイを操るだけだ

 

ジャギはそう思い、今日は退散すると言うと、コーヒーを一つ注文、それを飲み干すと店を後にした

 

 

 

ジャギは外に待たせている3人の手下と合流し、村の宿屋へと向かおうとする

 

店を出て少し歩いているとジャギの前方から、なんとも仲睦まじい美男美女のカップルが歩いてきた

 

整った顔面に優しげな雰囲気の男は知らない、だが娘の方は面識は無いが、ジャギはそれが誰だかは知っている

 

(あれはアイリか、原作と違ってまだ年若い娘って感じだ

な~んとも…嬉しそうに笑ってるぜ

う~ん…美女だわ、ありゃ母親に似たな

それにしても…きっしょーめ、あのヤロー良い女と付き合いやがってぇ)

 

レイの実妹、アイリ

 

原作では結婚式を前に世紀末verのジャギによって拐われ、その際に自身の両親と結婚相手をジャギに殺された

そしてその美貌からか様々な買い主の手に渡ったアイリは、世紀末の荒波に耐えられずに両目の光を失うという、まさに世紀末で生きる女のお手本のような存在であった

 

だが、ケンシロウの仕業に見せ掛けて悪事を働くジャギはもういない

つまりアイリの幸せを邪魔する者は存在しない、少なくとも今のところはである……

 

幸せそうなアイリ達と擦れ違い、簡素な宿屋に到着したジャギ達

 

手下とは別の部屋に入り、簡素な椅子に腰掛けるとジャギはふと思う

 

それにしても肝心のレイは何処だ?

 

暇潰しに宿屋の女将や付近の子供にレイの事を聞けば、どうも彼は私用で村を離れているそうだ

 

ただアイリの結婚式が近いので、近い内に帰ってくるらしい

 

(あちゃ~、入れ違いになっちまったか

ふん……だったら帰ってくるまでの間、こっちはこっちで外堀を埋めさせて貰おうか)

 

思い立ったジャギは直ぐに村長の家を訪ねると、聖母軍の使者として村の重鎮達を相手に説得を開始する

 

先にレイの元に向かったのはジャギにとって、この村の人間全てを救うつもりが無く、レイ以外は穀潰しとしか捉えていないからだ

 

まだ街も農地も工場も鉱山も道路整備も未開拓のまま、シンの部隊が到着して護衛部隊の編成が終わり次第、漸く付近の瓦礫除去に重機が出動する手筈になっている

 

瓦礫を退けたら、やれ土地の測量、やれ地層の確認、やれ放射能レベルが、やれ水道管や電線だ、やれ区間が、やれ道路だ

 

施設の建設が開始されるのはまだまだ先のことで、技術者でないジャギにはチンプンカンプンだが仕方がない、餅は餅屋

 

任せるより他に無し

 

なので働く場所の無い、増えすぎた人間は食料を無意味に消費する寄生虫でしかなく

 

その寄生虫は今のところ、ユリアやケンシロウ、トキにシンを手元に置いおくためだけの価値しかないとジャギは思っていた

 

 

 

慈悲深いユリアと豊富な資源を持つ聖母軍の噂はこの村にも届いており、籠絡するのにはそれほど苦労しなかった

 

この村にも多数のヒャッハー!が来襲しており、

全てレイに倒されているが、やはり数人の犠牲者は出ており、重鎮達の中には聖母軍のシェルターに逃れては?という話も出ていたので、ジャギの到来は正に渡りに舟であった

 

ただ彼らはジャギに対し、村人全員を無事に送り届け、尚且つ住居を与える事を条件に移転案を承諾する

 

そんな事は想定内、ジャギは二つ返事で了承すれば説得は完了である

 

 

 

村人の説得は任せてくれと、重鎮達はさっさと出ていってしまう

 

こうしてジャギはレイやレイの家族を飛び越えて、村人全員の了承を得てしまったのである

 

(ふぅ……流石に村長の決断となれば、レイとその家族も首を縦に振るしかあるまいて

早く帰ってこいレイ、そしてお前の南斗水鳥拳を俺の街の為に存分に使いやがれ

…まてよ、もしかしたらアイリの結婚式が終わるまで俺はこの村で待機かよ

……待て待て、それは時間の無駄だ

明日、手下の三人だけでもシェルターに向かわせとくか

護衛部隊を送って貰わなきゃ、俺一人で村人全員を守るなんて到底無理だしよ)

 

 

 

次の日、村長と共にレイの両親を訪ねるジャギ

村を離れたがらない彼等に、村の決定を告げる為であった

 

しかしそれは、突然の騒ぎによって阻まれた

 

 

 

『大変だあああ!き、牙一族だぁ!』

 

村人の叫びが村を震撼させたのである

 

 

 

少し前、村の外の丘の上で二本足の獣の群れが、獰猛な眼差して村を見下ろしていた

 

「親父!親父!あそこ、あそこ

あそこが噂の村!村!村!」

 

「は、腹~へった~、食い物食い物食い物ぉぉぉ!」

 

「ぐふふふ……情報通りだわい、そら息子達よ女を連れてこい、獲物を食らい尽くせ!」

 

『うおおおぉぉぉん!!!』

 

獣の如き風体に動物の毛皮を被り、鋭い爪や牙を持つ集団『牙一族』が、頭である『牙大王』の号令直下、一斉に村へと襲い掛かる

 

ただの野盗ではない、狼のように統率の取れた手強い略奪集団だ

 

並の警備隊では彼等に太刀打ちできない、レイが不在のこんなちっぽけな村ではひと溜まりもないだろう

 

ジャギは、漫画内で自分が襲ったレイの村を自分が襲わなければ、争いや問題は起きないだろうと高を括っていたが、まさか牙一族の襲撃を受けるとは予想外だった

 

牙一族は雑魚を倒しても倒しても、頭である大王が撤退を口にしない限り執拗に襲い掛かってくるので、油断すれば手下がやられてしまう事も多々あった

 

おまけに牙大王が拐ってきた女を孕ませると、子供は必ず牙一族の風貌を持った赤子になるので、大王曰く

『ワシが生きておれば、お前等の替わりはなんぼでも作れる』と豪語するので、奴を倒さなければ牙一族は不滅である

 

かなり厄介な相手だ

 

(ちっ!よりにもよって牙一族かよ!

だが……使者として来ていて村長を前に逃げる訳にはいかねぇ、やるしかねぇか!)

 

ジャギは内心で毒づくも、村長に喫茶店の中に入ってろと言い、自身は手下を連れて村の入り口へと走り出すのであった

 

 

 

阻む警備隊をバラバラに引き裂き、さあ略奪だと息巻く牙一族の元にジャギがふらりと現れると、直ぐにジャギは五人の牙一族を爆散させて略奪の足止めをした

 

いつも首を鳴らす仕草をする牙大王が、首を傾けたまま驚く

 

「き…貴様は!何故この村にいる!?」

 

ジャギは牙大王にとっては忘れられぬ相手で、これまでの聖母軍のシェルターの戦いでは北斗三兄弟、特にジャギには離れればボーガンや銃火器、近づけば北斗神拳や南斗聖拳で翻弄され続け、何度も辛酸をなめさせられてきた

 

「ふん、こんな村まで家族で遠足ってか?

だがそろそろ、お前達の顔も見飽きていた所だ、この場で死んできやがれ

死に水くらいはくれてやるよ」

 

「くそっ……怯むな息子達よ!

手強いのは一人だけだ、一斉に掛かれ!」

 

『がぉぉぉおおおお!』

 

襲い来る狼の群れ、こちらは戦力になりそうなのは手下の3人だけ

 

「てめえら、無茶はせずに目の前の敵だけに集中してろ

決して深追いはするな」

 

『はい!』

 

 

 

男女のライダースーツの若者達がそれぞれの武器を構え、牙一族と対峙

 

「おらおら行くぜぇ!」

 

『メリケンサック』を装着した、手下で一番血の気が多そうな男が牙一族に躍りかかって肉薄

ボクサー上がりだろうか、怒涛のコンビネーションと華麗なフットワークを見せる

 

 

 

「うふふ♥️楽しくなってきた♥️」

 

大胆な谷間をジャケットから露出させた、豊満なバストを持つ美女が妖艶な笑みで鞭を構え、音速の鞭さばきで中距離からメリケンサックの男を援護、嬉々として牙一族の調教をする様はまさに『女王様』

 

 

 

「…はい、シュ~…」

 

警棒、催涙スプレー、スタンガンといった大量の護身用の道具を持った、やる気の無い雰囲気の『少年』だけは、ただただ無気力に自分に迫る牙一族だけを追い払っており、容赦せずに敵の鼻先に催涙スプレーをかけまくっている

美少年とも呼べる風貌で、中々にえげつない事をする

 

 

 

「おごっ、ぐべっ、がびゅ!」

「あひぃんっ♥️」

「目がぁ!目がぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「こ、こいつら雑魚じゃねぇ!?」

 

牙一族はジャギの手下の、その予想外な抵抗に驚く

 

(はっ!当たり前だ

どいつも元から一癖も二癖もある上に、俺が直々にビジビシ鍛えた連中なんだぜ?

その辺の雑魚と一緒にするな!)

 

 

 

若者達『三人衆』はジャギが長距離の探索をする為、特別に集められた強者達だ

 

メリケンサックの『メリケン』は、世界で最も層の厚いライト級の元ボクサー、その才能で末は世界だと囁かれた実力者だったが、妬みを買ったジム仲間によって裏切られてライセンスを永久剥奪、彼は街の喧嘩屋に堕落した

核戦争の前、誰構わずに追い剥ぎをしていた所を無謀にもジャギに喧嘩を吹っ掛けるも逆に瞬く間に倒されている

夢を剥奪され、堕落したメリケンに親近感を覚えたのか、面白いヤツだとジャギに拾われて以降、メリケンは常にジャギに付き従っている元モヒカンだ

恐れを知らないタフなメリケンは戦闘ではまさに狂犬の戦いぶりだが、平時はジャギに心から忠誠を誓う犬気質な所があるので、その姿から女王様に『メリ犬』と呼ばれているらしい

因みに、トキを助けたジャギに電話をし、うるさいと怒られたのは彼である

 

女王様の『御嬢』は、とある位の高い女子大に通っていた生粋の御嬢様

金持ちの家に生まれ、箱入り娘でもあった彼女は本来おっとりとした性格で、目立つ事を嫌うスタイル抜群の美女

三人衆の中では一番年上であり、メリケンや少年にとってはお姉さん的な存在である

しかしその顔に化粧を施し、ライダースーツに着替えてヒールブーツを履き、その手に鞭を持つと一変

御嬢は身も心も『女王様』に変身する

二重人格かと思われがちだが、彼女曰く『憑依』というヤツらしい、要するにノリだそうだ

その鞭さばきは一流で、範囲内ならば蝿に当てる事も造作もないと豪語しており、実際に御嬢様が標的を外す姿はジャギすら見たことがない

そんな御嬢の最も得意とするのは尋問と称した拷問で、どんな屈強で頑固な男でも御嬢によって一晩かけて尋問されれば、次の日には彼女の命令に何でも従う下僕ができるとか……

ただジャギには一突きで情報を聞き出せる北斗神拳があるので、彼女の出番は最近ないらしく、現在はその溜まったストレスを牙一族で解消している

だが鞭を取られると女王様は引っ込み、元の恥ずかしがり屋な御嬢様に戻るので、戦闘での扱いには要注意である

ジャギとの出会いは核戦争前に、とあるSMクラブを所有していた『ヤ』の自営業の人を襲った時だ

それがなんともタイミングが悪く、乗り込んだら『お楽しみ中』であったが為に、プレイを邪魔され怒った御嬢が鞭を打つが、ジャギをそれを難なくキャッチ

プライドを傷つけられた御嬢はジャギを必ず下僕にすると誓い、手っ取り早く成就させる為にと手下になった

ジャギには毎回軽く撃退されているが、それでも全くこりないどころか、やけに嬉しそうなのは御嬢に根性があるからだけだと思う…

 

様々な道具を扱う無気力な少年『キッド』は、ヒャッハー!によって未婚の母にされた女性より生を受けたが、母親には愛されていたそうだ

キッドは産まれも育ちも世紀末、平和を知らない子供で、シェルターでは人付き合いよりも機械弄りが好き

その手先が器用な所に目を付けた技術者達に護身用の道具や、機械の基盤の修理を頼まれているそうだ

小柄で、その中性的な顔立ちはよく少女と間違えられる

そして世紀末には珍しい色白の華奢な体を持ったが為に、過去に特殊な性癖の有力者によって母から無理やりに離されたキッドは、長い間ハーレムに囚われていた

ただその無気力な性格が所有者の癇気に触れ、キッドは様々な性的な虐待を受ける

それがますますキッドの心に影を落とし、他人への無関心に拍車をかけさせた

だがキッドの母親が聖母軍の噂を聞き付け、意を決し単身でシェルターに向かう

途中でヒャッハー!に襲われながらも、荒野を踏破した母親は、死の間際に息子を頼むとジャギに伝え、形見のブローチを渡して静かに息を引き取った

こうして怒りを爆発させた北斗三兄弟によって、有力者はアジトごと木っ端微塵にされキッドは救われた

しかしユリアやトキがどんなに優しくメンタルケアを施そうと、キッドは一言の言葉すら発せず食事も取らず、段々と骨と皮になっていく

しかしジャギがキッドの母親から授かったブローチと、その最期を伝えた時、目線すら合わせなかった少年の双眸から涙が止め止めなく流れ出した

経験のない涙に激しく戸惑う少年を、ジャギは慣れない手で己の逞しい胸元に抱き寄せ、こっそりと感情に素直になれる秘孔を突き、思う存分キッドに内なる感情を爆発させてやった

以来、キッドは他人への無関心さは相変わらずだが、ジャギの視界の何処かに居る事が常となっている

過酷な環境に慣れ、道具の修理に長けたこの少年ならばこの遠征に耐えうるとジャギは判断し、同行を許したのである

 

 

 

彼等の方は問題ない

当然だが、彼らの頭であるジャギの方もだ

 

既にジャギの周囲には物言わぬ牙一族が散乱している

 

だが牙大王は健在であり、その息子達もまだまだ数が多い

 

(まだまだ大勢控えている…勢いでどうにかするのも疲れるし……となれば)

 

ジャギは全身の力を抜くと、トキより学んだ柔の拳を発動させた

 

全身をリラックスさせ、無用な意思を捨て去る

 

(柔拳の真髄は……激流に身を任せ、同化する事

そして水のように変幻自在に、型を持たずして、敵を突く)

 

それは本家であるトキより不恰好でぎこちないが、師匠譲りの流れる体の動きは滑らかで無駄がない

 

ゆらり、ゆらりと佇むジャギに牙一族は構わず特攻するが、切り裂くどころか触れる事も出来ない

ならばと大男と小男による上下からの連携攻撃にも、ジャギは惑わされず秘孔を突いて撃破していく

 

その中でケマダ、ギバラ、ゴジバと言った牙一族の実力者が一斉に襲い掛かるも、柔拳の最中であるジャギによっていつの間にか秘孔を突かれ、その場で無惨にも爆散して果てた所で、ようやく牙一族の猛攻が止む

 

爆散した3人は牙一族の中でも実力者だった事もあり、牙大王は旗色が悪いとし、あっさり撤退を宣言したのであった

 

土埃を上げて退散する牙一族

 

逃がさねぇとジャギは近くに停めていた自身の大型バイクに跨がり、ダブルバレルショットガンを握り締めて追撃しようとするがそれは叶わなかった

 

喫茶店が牙一族に囲まれている、助けてくれとジャギは村人に頼まれたのだ

 

あそこには村長やレイの両親が居る、もしかしたらアイリと、アイリの未来の旦那までいるかも知れない

 

手遅れになればレイが手に入らなくなる

それは不味いと、ジャギはバイクを喫茶店に向けて全速力で飛ばすのであった

 

 

 

村をバイクで疾走して来たジャギ、その甲斐あってか喫茶店はかろうじて持ちこたえていた

 

もしもこれが徒歩をこよなく愛する、どこかの世紀末救世主なら襲撃に間に合わず、レイの父親と村長は殺されているか手傷を負っており、中にいたアイリとその母親は展開的に間違いなく牙一族に拐われていただろう

 

速度はそのままに、ジャギはバイクのシートの上に乗ると、シートを力強く蹴って高々と空へと飛翔

操縦者を失った大型バイクはそのまま、入り口を破らんと殺到する牙一族の中へ突っ込んだ

 

そしてジャギは喫茶店の上空を勢いよく『通過』

ただし、空中から愛用のダブルバレルショットガンを乱射し、喫茶店を襲う牙一族を蜂の巣にしながらである

 

地面に着地したジャギに、残っていた牙一族が後ろから襲い掛かる

 

次弾を装填させる前に叩こうと判断したからであろう

 

判断は悪くないが、それは相手による

 

「甘ぇ!」

 

『ぐぺぺぺぺぺ』

『ひひゃあがそらヴぁ』

『まみったぁ!』

 

秘孔を突かれ、断末魔の叫びを上げて散る牙一族

 

(多少は捕虜にして、牙大王が逃げた先を聞き出してやるか)

 

ジャギは数人の牙一族に身動きを止める秘孔を使用し、残りは爆散させる事なく綺麗に仕留めた

 

なにせここは飲食をする喫茶店の前だ、飛び散った牙一族のモノが営業妨害になりかねないからと言う、ジャギなりの心配りである

 

終わると、喫茶店の中の様子を確認する

 

レイの父親と村長には軽傷が見られるが、母親には目立った外傷が見られない

おそらく父親が牙一族を相手にしても怯まずに、己の妻を庇ったのだろう、一般人ながらも大した胆力である

 

ジャギは安堵するが、母親が血相を変えてすがり付いてくるとその表情が一変した

 

「アイリは!娘は何処ですか!?』

 

(なんだと、まさか……)

 

 

 

 

村から離れた山の麓、そこには小さな洞窟があった

 

内部には若い男女の姿がある

 

アイリと、その婚約者だ

 

 

 

しかしアイリは目隠しと猿轡を噛まされ、両手を後ろ手で縛られている

 

視界を奪われ、地べたに転がされたアイリは恐怖に震え、泣いていた

 

犯人は牙一族……ではない

 

レイの妹、アイリを誘拐した犯人は『アイリの婚約者』だったのである

 

 

 

アイリの婚約者、本当の名前をゲーレッツ

 

彼は元は有名な繁華街のNo.1ホスト、容姿は優れているがその品行は最悪で、目星を付けた経験不足な客に対して、長年鍛え上げた舌先三寸で熱心に結婚を迫る

 

そしてゲーレッツにのぼせ上がった女が苦労して集めた金を、まんまと強奪した彼はその上で女を薬漬けにし、『ヤ』の自営業に売り渡して更に金を得るという、正に外道な男であった

 

世界が世紀末になってもゲーレッツは相変わらずで、堕とした女を様々な人物に売り捌いて暮らすという生活を続けており、今度の標的はアイリだったのである

 

アイリは身も心も美しいが、なにぶん世間知らずが過ぎた小娘

 

簡単にゲーレッツの掌の上で転がされ、あわや財産まで奪われそうになる寸前で、ジャギと牙一族が到来して戦闘を開始

 

当初は喫茶店に逃げ込もうとしたのだが、コーヒー豆の匂いに釣られたか、店には牙一族が殺到しており、巻き添えを食らうなんて冗談じゃないとゲーレッツは急遽アイリを縛り、ひそかに村を脱したのであった

 

財産は惜しかったがアイリ程の美女ならば引く手は数多、こいつならどれだけの報酬が得られるか、そう考えるだけでゲーレッツは笑いが止まらない

 

アイリの滑らかな頬を撫でると

『そのうち沢山の御主人様を紹介してやるからな

その体で連中を喜ばせる性技でも考えてろ』そうゲーレッツは吐き捨てるように言って、また笑いだすのだ

 

狭い洞窟内に響く下卑た笑い

 

気が大きくなっていたゲーレッツ、だが彼は今自分が潜んでいる場所が、牙一族の縄張りだと死ぬ瞬間に思い知らされる事になる

 

 

 

ゲーレッツは死んだ

 

洞窟に戻ってきた一人の牙一族はゲーレッツに驚き、ゲーレッツも咄嗟にナイフを抜いた事によって、牙一族は敵と認識、即座にゲーレッツを殺したのである

 

牙一族はチラリと地面を見れば、そこには未だ拘束され、恐怖のあまり気絶していたアイリが居た

 

見慣れぬ女の寝姿に、牙一族の男は状況がいまいち把握出来ていない

 

生きているのか確認する為に、その牙一族はアイリの目隠しと猿轡を恐る恐る外した所で、アイリの意識が戻るのを察し、唸りを上げだす

 

「…………」

 

『グルルルルル……』

 

「うっ……うぅ……?」

 

『ガァッ!!』

 

「ひぃ!」

 

アイリは突然の獣の咆哮によって目覚めさせられた

 

(こ、ここは……?)

 

まだ目覚めたばかりで、状況が全く理解できないアイリはキョロキョロと周囲を見回す

 

洞窟の外は暗く、時刻は夜と分かる

 

場所は分からない、何処かの山の中だ

 

アイリを拐った男は、変わり果てた姿で地面に転がっている

その代わりに目の前に居たのは……

 

「グルルルルル……」

 

「ひぃ……!」

(虎!?狼!?熊!?

いえ……この格好は牙一族!?)

 

アイリの眼前に居たソレは、野性味溢れる牙一族の中で最も野性が強く、最も獣に近い風貌を持つ『マダラ』であった

 

瞬間的に距離をとるも、手の拘束で立つ事も出来ず、狭い洞窟内では大した距離を稼げない

震えるアイリに、ガチガチと犬歯を鳴らして威嚇をしながらマダラは近付くのであった

 

 

 

あと一歩まで近付くマダラ

 

しかしマダラは一向にアイリに襲い掛かる様子は無く、どちらかと言うとマダラの方が、この場所でどうしたら良いか分からなくなっている様子であった

 

団体で行動するのが牙一族なのだが、マダラ以外には牙大王も、他の仲間一人も洞窟の中にも外にも見当たらないのだ

 

アイリが脅威にならないと分かったマダラは、キョロキョロと辺りを見回し、鼻息荒くウロウロと洞窟を徘徊し、何度も外に出て夜空に向かい切なげな遠吠えを繰り返している

 

それはまるで母犬から離された事で助けを求めつつ、孤独に怯える子犬のようだ

 

マダラ、図体はデカいがまだまだ幼い狼であった

 

「あ、あの私はアイリ

貴方の御名前は?」

 

「…グガ…?

ナ…マ…エ?」

 

アイリは意を決し、目の前のマダラとコンタクトを図る

 

会話が成り立つかは未知数だったが、危害を加える気配がないと、勇気を出して切り出した甲斐があったのか、マダラはアイリの問いに反応した

 

「はい、名前です

私はアイリ、貴方は?」

 

「ナ…マ…エ…………マ…ダ…ラ」

 

「マダラ……さん

はじめましてマダラさん、私はアイリ」

 

「ア…イ……リ、アイリ、オレ、マダラ

アイリ、コイツ……ダレ?

コイツ、知リ合イ?」

 

コイツとはアイリを騙し、人買いに売り付けようとしたゲーレッツの事である

 

問われたアイリの心中は複雑だが、事情をマダラに分かるように説明してあげた

 

置かれている立場と精神の揺らぎを、現状確認をして落ち着かせる意味を込めて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイリとマダラが会話をしている時、村を襲った牙大王とその息子達は、とある人物とのランデブーポイントへと、息も絶え絶えになりながらも到達した

 

「ぜぇぜぇ……き、貴様っ!

なぜあの男があの村に居ると教えなかった!

お陰で息子達は殺され、目的の女も拐い損ねてしまったではないか!」

 

牙大王は吠えた

問い詰めた先、そこにいた男は派手な衣装を身に纏って優雅に佇んでいた

 

絶世の美女と豊富な食料があると噂を流してきた男に、牙一族が非難の声を上げる

 

ただ彼は牙一族が匂うのだろうか、口元を上等なシルクのハンカチで覆っているが、目元は自分の失敗を他人のせいにする、牙大王に呆れているのはバレバレだ

 

「ふん、黙れ無能の虫けらめ

小娘一人、満足に捕らえられない分際で口を開くな

あと貴様らはとても臭う、風上に立つな」

 

「な、なぁにぃぃぃぃ?」

 

男の無礼な言葉に激怒した牙大王が、地響きを上げて襲い掛かる

 

しかし謎の男は迫る牙大王の巨体に怯む事なく近くまで引き付け、素早く己の手刀を上段から勢いよく振り下ろした

 

地面付近まで振り下ろされた手刀、その直後、何かが土埃を巻き上げて猛烈な勢いで進む

 

その何かとは、裂風

 

凄まじい程の速度で振り下ろされた手刀によって、鋭利な鎌鼬が発生したのだ

 

それが牙大王に当たり、そのまま後ろまで通過した

 

牙大王の表面に変化は見られない

なんだそれは、埃を巻き上げるだけか?と鼻で笑う牙大王

 

しかし

 

「……むっ?ぎっ?ぐぎゃああああ!」

 

「お、親父の体っ」

「せ、背中から裂けたっ!?」

「この野郎!」

 

牙大王を葬った後、謎の男は次々と牙一族を惨殺していく

 

男の手刀が裂風を発生させれば、月光に照らされる真紅の花吹雪が闇夜で舞い、謎の男を妖しく彩るのであった

 

男が動きを止めた時、彼以外は物言わぬ骸と化す

 

己の手に付着した真紅の花の蜜、それを月光に照らした彼は、実にうっとりと呟いた

 

「俺は誰よりも強く、そして……美しい」

 

 

 

 

 




マダラ『わんわんお(U^ω^)』
アイリ(可愛い…一緒にシェルターに連れて行きたい…)
レイ『ファッ!?』

ゲーレッツは本作品だけのオリキャラです
ジャギに殺されないならと、当初は牙一族に殺されるだけのキャラにしようと思ってましたが、それだと作者が好きなマダラを仲間にするフラグが立たないので、どうせ名前の無いキャラだからクソ野郎にしちまえと、ノリでこんな感じに仕上げてみました

もう少し遊べるキャラだったかも知れませんが、考えるのが面倒、なんかムカつく、という理由で速攻抹殺してやりました

ジャギの性格ですが、トキとの傾向を経てもそんなに変えてませんので口は悪いです
現時点では愛も悲しみも知らない、ただ強いだけの拳士ですが、原作の世紀末verよりはマシ程度に思って下さい

ウダ……もといユダ様、ちょっとだけ出現させました

原作ジャギの替わりに牙一族をアイリ強奪に送り込んだのですが、もう一枚噛ませてみたかったので、急遽ウダ様を入れてみました

ウダ様曰く、レイが苦しむ姿が見たいから。だそうです

牙一族を動かし、レイを怒らせ、潰し合いをさせて、自分は離れた所から見学して高笑いをする

これぞウダ様だと思います

ただ再登場はもう少し後になると思います、ジャギには南斗聖拳のトップクラスは後回しに、ゴッドランドも片付けなきゃ脳にしてますので

にしてもウダ様、この人は本当にブレないなぁ…書いていて凄く楽しい
ハイテンションな自惚れキャラって、いいわぁ~

そして三人衆、もちろん本作だけのオリキャラですが、なんか設定盛り過ぎた気が…

メリケンサックを使うから、メリケン
女王様な御嬢様だから、 御嬢
少年だから、キッド

…ネーミングセンス無い
ちゃんとした名前を考えたら、呼ぶようにします
…変わらないかも

リクエスト、補足、コメントありましたらお気軽にどうぞ♪

ありがとうございました!

ジャギの子供は有りか否か

  • 有り
  • 否! 断じて否である!
  • 結婚相手によるな
  • そんなことより世紀末バスケやろうぜ
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