核戦争前に原作を読んだジャギが取り敢えず何とかしてみるようです。 作:ヘルメット助教授
誤字報告、いつもありがとうございますm(._.)m
アイリはマダラに担がれ、山中を疾走していた
牙一族マダラは縦横無尽に急斜面を登り降り、それになんとか振り落とされないよう、力一杯しがみつくアイリの姿が確認できる
洞窟内で2人は突然現れたヒャッハー!に襲われた
明らかにアイリを目的にしたヒャッハー!に、立ちはだかったマダラは数人を蹴散らすが、敵が多過ぎた為にアイリを伴って洞窟を脱出した
ヒャッハー!の目的がアイリならば彼女を見殺しにして自分だけ助かれば良い、しかしマダラはそれをしなかった
あまりに牙一族らしくないマダラの行動だが、親父である牙大王からは常々、女は殺さず犯さず献上しろと厳しく躾られているせいなのか
それとも、もしかしたらマダラは暗く狭い洞窟内で心細さを埋めてくれたアイリへ、野性児なりに情を抱いたのかもしれない…
しかし二人にバイク集団が迫る
「おらぁ待ちやがれ可愛い嬢ちゃん!
大人しく俺達に股を開きなって!」
「牙一族なんかより、よっぽど極楽みせてやるっての!」
「その毛玉のお友達は絨毯にして、その上で可愛がってあげるからさー!」
「ぎゃはははははははははは!」
「げひゃひゃひゃひゃひゃ!」
「にしゃしゃしゃしゃ!」
諦めずにバイクで追い回し続けるヒャッハー!
ここまでは野性児マダラの脚力で、なんとかバイク集団から逃れられていたが、流石のマダラにも体力の限界がみられる
呼吸は乱れ、足ももつれ、汗は滝のようだ
速度が落ちているのはアイリを担ぎながらであり、そのせいでマダラは戦闘はおろか、反撃すら満足に出来ないので、無数のボーガンの矢がマダラの逞しい体に刺さっている
横付けしたバイカーが金属バットでマダラを殴打、苦悶の表情を浮かべるもアイリを守るこの若い狼は止まらない
その替わり、彼の頑張りのお陰かアイリは無傷である
だが
「ガッ……!」
「あっ!」
頭部に一撃を貰ったマダラは昏倒して倒れ、投げ出されたアイリが地面に転がる
バイク集団が二人の回りを下卑た笑いをしながら囲む
「ひひっ、や~っとくたばったかよ
さてと、リーダーに献上する前に楽しませて貰うぜぇ」
「そりゃそうだ、ここまで手間かけさせてくれたんだ、そのくらいの事は許されるだろうよ」
「このご時世、ガキは暇潰しに初体験しちまうからな
例え初物じゃなくてもこの美貌なら、ぐふふ…」
アイリは言葉なく体を震わせる
これから降りかかる悲劇に抗いたくとも、非力な彼女には今まで己を守ってくれた傷だらけの狼を、その腕に抱き締める事しか出来なかった
「……ん?」
「どした?」
「いや…なんか聞こえないか?これは…げぇ!!」
驚くヒャッハー!の視線の先から、闇夜を切り裂く車やバイクのヘッドライトの群れがやってきた
爆音が周囲を更に囲む
仲間だろう、アイリを犯そうとした者達は必死に、小娘を捕らえようと今まで頑張っていただの、自分達はまだ手を出していないだの、くたばった牙一族の最後の生き残りがどうだのと、土下座をしながら特に大きな車に向かって弁明している
ピクッ…
アイリの腕の中で、牙一族の生き残りというワードにマダラは無意識に反応すると、その逞しい体を強張らせる
マダラの意識が戻る
頭部を殴られ、矢で射たれ、体力が限界を超えていようと、まだ抗おうとするのか牙一族の若き狼よ
だがアイリは小さく、動かないでとマダラに囁いて制止させる
これ以上の無理は命に関わると判断したアイリ
自分の貞操の危機でありながら、マダラを思う気持ちがそれを上回っているというのか
耳元で囁かれ、マダラの体の強張りが少し緩む
チラリと周囲を確認したアイリは、隙を見て彼に指示を出すと、マダラは死体のように脱力をして動かなくなった
ヘッドライトに遮られて、車に乗っているリーダーらしき人物の姿は把握できないが、剣呑な雰囲気はアイリにも感じ取れる
「おらぁ立て!」
「あっ!」
いきなり腕を引かれたアイリはマダラと引き離され、また目隠しと猿轡を噛まされると、再び拘束された状態にされた
そして車の荷台へと、無理やり押し込められる
その最中にアイリを犯そうとしたヒャッハー!は殺されたようだ
あまりに悲痛な断末魔が辺りを覆ったので、視界を遮られたアイリにすらはっきり分かる程の大声で
爆音を上げ、その場から立ち去るバイクと車
残されたのは殺されたヒャッハー!の死体と、マダラのみであった
数分は誰も身動きしなかったが、マダラだけは力を振り絞って立ち上がると、フラフラとした足取りで残されていたヒャッハー!の懐中や、バイクに積まれた物を漁り、少量の食料を確保
貪るように食料を喰らい尽くすと、今度は慣れない手つきでバイクに跨がり、マダラは何処かへと出発するのであった
牙大王や牙一族の死体が残された地に、数人の男達の姿がある
(この死体の有り様は…南斗聖拳、それにしては)
ジャギの視線の先に転がっている死体には、南斗聖拳の特徴である外部から鋭利な刃物で裂かれた跡がある
だがジャギは腑に落ちない様子だ
南斗聖拳なのは間違いない、しかし普通の南斗聖拳とは何かが違うのだ
切り口はどれも鮮やかで、真っ二つにパックリと割れている
突き刺したり、切り裂いたりするのが主体の南斗聖拳であるが、死体にはどれも刺し貫いた痕跡が無いのだ
斬撃を飛ばしたような痕跡、といった方が正しい
「……この拳筋は『南斗紅鶴拳』の『伝衝裂波』!
間違いない、ユダめ……っ!よくも!」
流れる長髪に、涼しげで端正な顔立ちの男がジャギの言葉に付け足して言い切り、憎々しげに顔を歪ませて拳を握っている
(ああ……ユダか、どうりで刺し貫いた痕跡が無いと思ったぜ
これは全て、南斗紅鶴拳の伝衝裂波って訳か……へぇ、大した威力じゃないか
終始この伝衝裂波だけで済ませたのは大方、服が汚れるのが嫌だから、もしくは手も足も出ない相手を嘲笑う為にってとこだろ)
ジャギは心の中で納得すると、拳を握る男を見た
その人物は南斗水鳥拳の伝承者、アイリの実兄レイであった
帰還したレイはアイリが拐われた事を知るや、瞬間的に怒りを爆発させ、単独で追跡をしようとしたのだが、そこはジャギやレイの両親に止められる
怒りの収まらないレイ、その矛先をジャギが捕らえた牙一族の捕虜に向けた彼は、怒髪天を貫く勢いで牙一族の逃げた先を殺す勢いで尋ねる
見せしめにと数人の捕虜を水鳥拳で斬殺しても、レイはまだまだ収まらない
牙一族は圧倒的な恐怖に震え、ジャギが北斗神拳を使う事も、御嬢が体に聞くまでもなく、全てを白状した後に案内人としてレイに連れ出されたのであった
こうしてジャギはレイと牙一族の捕虜、村の若者数人を連れてやって来たのである
ジャギの手下のメリケン・御嬢・キッドの三人衆は、シンの元に護衛部隊の派遣依頼に伝令として出ているので、この場には来ていない
ここにアイリが居たのかは不明だ
レイは頭に血が登っているので、車輪の跡をつけると息巻いているが、捕虜の牙一族は『酷く濃い化粧の匂いはあるが、肝心の女の匂いはしない』と言っているので、アイリはここに連れて来なかったのでは?とジャギが言う
アイリの匂いの着いた私物を、嗅覚に優れた捕虜に確認させたので間違いないだろう
その行動はレイを苛立たせるが、こればっかりは仕方ない
他の理由としては、種の存続に拘る牙大王が、誰かの命令であろうと捕らえた女を誰かに渡す真似をするのか
そしてレイの喫茶店を襲った牙一族の捕虜は、本隊とは別行動を命令された唯一の分隊だと自ら自白している
アイリ誘拐は、別の組織の犯行の可能性が浮上した
牙一族とユダ、双方が違うとなれば、それ以外の組織の可能性をジャギは考える
この世紀末ならば人拐いをし、それで日々を食い繋ぐヒャッハー!など大勢いる
ましてアイリは美女、原作漫画でも指折りの美人だ
欲しがる連中は大勢いるだろう
牙一族クラスの規模が動けば、漁夫の利を狙う組織がいても不思議じゃない
だが考えるのは後、今は行動だ
とにかくこの惨状を見るに、襲撃に失敗した牙一族がここまでやって来た所で、レイの言う南斗紅鶴拳の使い手ユダに遭遇、もしくは待ち伏せされ
そのまま殺されたと判断するのが普通だと、ジャギは回りに告げるも
(争いの経緯は不明だが、牙一族の襲撃にユダが何か絡んでいるのは間違いないがよ)
それは決して口に出さないジャギであった
レイの性格ならば、アイリがユダの手中に落ちた裏付けもせずに飛び出して、ユダの罠に簡単に嵌まるだろう
事実、原作でも余命いくばもないレイはユダに翻弄されているのだから
「とにかく……今はもっと情報が必要だ
捕虜の話が本当なら、アイリ誘拐はそのユダって奴の犯行じゃないかもしれないし、ユダの力は御覧のとおり危険な男だから闇雲に動くべきじゃない
よし次は、牙一族の隠しアジトに行ってみるとするか」
ジャギの提案で、捜索を再開する一同であった
バイクを飛ばしながら、ジャギはユダとの対決はなるべく避けたいと思っている
ユダは原作ではラオウとサウザー、世紀末のツートップとの間を立ち回り、中盤を引っ掻き回した奸物
レイを貶める為ならば、ユダは特に生き生きするタイプなので、あんなにも暴走気味のレイではアイリが居ようが居まいがホイホイと遊ばれるのがオチ
レイが嵌まった罠に巻き込まれるのは勘弁だ
ユダがもし本当にアイリを手に入れたなら、ユダはレイの苦しむ様を見るのが何より好むので、アイリはレイを誘導する餌になるだけでなく、格好の見世物にもするだろう
ジャギとしては最悪の場合ユダと対峙するならば、アイリの行方を探すのに苦労するより、最初からユダの所に居てくれた方が回収も対応もしやすくて有難い思っている
探さずにほっといても、アイリはこのユダが預かっているぞとワザワザあちらから教えてくれるだろう……と
チラリと視線を向ければ、先頭を走るレイの後ろ姿から殺意が駄々漏れているのをジャギは感じた
ユダをよく知るレイだからこそ、怒りや焦りが倍増しているのだろう
悠長にやっててはこっちが殺されかねんなと、ヘルメットの下でヤレヤレといった顔になるのだった
傷だらけで不恰好な動作のバイカー、マダラを発見したのはそれから直ぐの事であった
フラフラとした運転の一台のバイクは、闇夜の中でも酷く目立っていた
兄弟である牙一族の捕虜がマダラに寄り添い、声をかけて再会を喜んでいると、マダラは息も絶え絶えになりながら、アイリの名前を呼んでいた
直後、レイがマダラに掴みかかってアイリの事を乱暴に尋ねる
アイリは何処だ!アイリを何処にやった!と殺さんばかりだ
ジャギと捕虜によってレイはマダラから引き離されるが、マダラはなおもアイリの名を繰り返すだけ
まさか牙一族のマダラがアイリを心配するとは
ジャギはヘルメットの下で驚いていた
原作のマダラはケンシロウの殺意に反応して颯爽と現れて、直ぐに退場させられた
獣みたいな風貌の、やられ役でしかなかった筈
それがアイリアイリと魘されている、どうしてこうなった
「このままじゃ死んじまう、村に運ぶぞ」
気持ちを切り替え、重症のマダラからはこれ以上を聞き出させないと判断したジャギは彼を背負い、そのままバイクに乗るとレイの村へと急ぐ
マダラはアイリの行き先を知る唯一の手掛かり、死なす訳にはいかない
後ろからレイの怒鳴り声や、村の男や捕虜達が慌てて追い掛けて来ているが、ジャギは知らぬ顔
背中から時々、マダラがアイリの名前を呼び続けているのを聞きながら、ジャギはバイクを飛ばすのであった
数日後、意識が回復したマダラはジャギ達を呼ぶと、覚えている限りを話しだす
自分は若く、自制心の無さを理由に襲撃部隊に入れてもらえず、途方に暮れていた事
慣れない匂いに釣られて訪れた洞窟で、拘束されたアイリと、外まで響く高笑いをしていた男と遭遇した事
男がナイフを取り出して襲い掛かった所を返り討ちにした事
アイリと話していた時、外から男の仲間と思われる連中の襲撃を受け、アイリを担いで逃げ回ったが、捕まり、アイリが拐われた事
それから自分は村に行って、村人に助けを求めて欲しいとアイリから頼まれた事を告げた
そしてマダラは、アイリと同じ匂いのするレイに気付くと、アイリを助けて欲しいと懇願したのである
「てめぇ……調子の良い事を……!」
「おい、だから早まるなっての!」
しかし妹を守れず、おめおめと生き永らえたマダラを殺そうとしたレイを制止するジャギだが、レイもレイの両親も悲痛な表情を崩せずにいる
なにせアイリを拐った真犯人が、自分達が信頼していた婚約者なのではないかと言う可能性が浮上していた所で、マダラの証言を聞いてしまったのだ
マダラが目覚める前に色々と動いていたジャギは、捕虜から聞き出した牙一族の隠れアジトに向かうと、そこには数人の死体が散乱しており、中にはアイリの婚約者ゲーレッツも含まれていた
誘拐に使用したと思われる長さに結われた縄や猿轡も発見、ゲーレッツの死体とそれらの証拠を持って帰って来たジャギに、いくら牙一族の襲撃を受けたと言ってもワザワザ村から離れてそんな洞窟にアイリを連れて行くのは怪しい。と言われたレイの家族の心境はいかばかりか
「ったく……何度も言ったろ、こいつはおめーの妹さんを守ってくれた上に、恥も捨てて村に助けを求めに行ったんだ
そのマダラを殺すのは、妹さんへの裏切り行為になるんじゃねぇか?ってよ」
「ぐっ……」
「レイ、妹さんを心配しているのはよく分かるが、その直ぐにカッカして独断専行を好む癖を直さないと、後で痛い目を見ると思うぜ?
もしかしたらお前の言ってた、ユダってヤツと戦わなきゃならんかもしれないんだからよ
さて、それはさておき俺の手下も護衛部隊を率いて戻ってきたし、村の引っ越しの準備も完了、こうしてマダラも目が覚めた
俺は俺でマダラと合流した地点から捜索し、アイリが拐われた箇所と行き先はだいたい目星がついてる
助けたいなら、俺達も出発しようや
その怒りはアイリを取り戻すまで取っときな」
ジャギはレイにそう言って部屋を出ると、表に停めてあったバイクに歩みより、出発の最終チェックをしながら思案する
(マダラの回復力は予想以上、あと二日も寝れば歩けるまでに回復するだろうが、レイのあの調子では直ぐに出た方が良いだろう
マダラは同行させるべきだろうか、無理やりシェルターに向かわせても、あれだけアイリを心配してるから自分の足で探しに出るかもしれねえ
これ以上、探し物が増えるのは面倒くせぇし、しゃーねぇ連れてくか)
それにしても、とジャギは続けてレイの事を思う
(血の通った兄妹か……なんだかねぇ)
やや呆れた様子のジャギ
妹どころか両親もいないジャギに、レイの気持ちは欠片も理解できないが、家族というのはあれほどの達人でさえも心を容易く乱す存在なのだと知った
ではこれを利用できないかと、心の中で企みだす
「……ジャギ様、悪い顔してるッスよ」
ライダースーツを着た、いかにも血の気が多そうな若者が悪巧みをしていたジャギに注意するが元々、人相が悪いジャギであるので、彼を見慣れてない人間にはその感情の変化は見抜けないであろう
「おっ、帰って来たなメリケン、伝令ご苦労さん」
うっすと返事をするのはジャギの手下のメリケン
三人衆がシェルターより援軍の、ハート隊を連れてジャギの元へと帰還したのだ
「ところでメリケン、御嬢とキッドの方は?」
「どっちも準備オーケーッスよ」
「分かった
メリケンすまねぇが、怪我人のマダラをジープに乗せてやんな、まごついてると徒歩でアイリを探しに行きそうだしよ」
「あ~……確かに」
メリケンは命令に従い、包帯が巻かれたフラフラのマダラを、改造ジープに乗せるのであった
「では村人さん達の護衛は私めにお任せを、ジャギさん達やレイさんは、どうぞアイリさんの捜索に向かって下さい」
隊長である巨体のハートはにこやかにそう告げて、村人全員を護送用の車に乗せてシェルターに向かった
ジャギ達に振り返ったのは喫茶店を営んでいたレイの両親のみ
レイの両親がジャギに、娘を頼みますと必死に頼み込んでいたのが印象に残る
護衛はハート、シン自らは流石に来なかったがハートは強く、更には拳法殺しの異名を持ち、シンの幹部の中では一番の強者だから大丈夫だろう
普段は穏やかな性格なので、村人の受けはまあまあだ
しかしジャギはハートの特徴を知っていたので出発前には村人達へ、絶対にハートの体に切り傷を付けるなと、その理由を込めて警告している
また、恐らく近隣では最大の驚異である牙一族の壊滅により、小規模のヒャッハー!の襲撃に関しても問題ないだろう
(ハートに任せておけば護衛は問題ない
さて、俺達は俺達の仕事をするまでだ)
「おい、もういいだろう?」
殺気だったレイがジャギに告げる
彼も充分に堪えた筈、しかしもう限界であった
「分かってるレイ
さあて、これから俺達はある人物に会う為に、とある場所に向かう
おっとレイ、早まるなよ、話は最後まで聞きな
そいつは近隣の組織に顔が利く上に、結構な情報屋でな、人拐いや人身売買の組織にも詳しいときた
アイリほどの美人なら、間違いなく組織に情報が入る、それをそいつから聞くって訳さ」
「…聞かせろ、そいつは悪党か?」
レイが無表情で尋ねる
「ああ、悪党も悪党だ
だが、そういったヤツの方が俺達より遥かに悪党に詳いだろ?
もう近くの交番に行って、お巡りさんに聞いて解決するような時代じゃねぇからな」
「どこで知り合った?」
「ふふふ、蛇の道は蛇、ってやつだ
このご時世、道を歩けば悪党に当たるのが常識だからな」
「……チッ」
舌打ちで会話が終わる
どうもレイには妹を拐った奴と同類である、悪党の力を借りる事に強い拒否感があるようだ
だがそんな事はどうでもいいと、ジャギは捨て置く
宛もなく荒野をさ迷って時間を浪費するのは、本当に賢い選択なのかを知っているからだ
こうしてジャギ、レイ、マダラ、三人衆が空っぽになった村から出発する
牙一族の捕虜は逃がした
頭である牙大王亡き今、マダラ同様、彼等は自由だとジャギの提案で解放すると全員はレイに怯えていたので、二度と目の前に現れないと誓って一目散に駆けていった
バイクとジープが荒野を走り続け、とある目的地に到着すると彼等は悪党の到着を待つのであった
土埃が前方から舞い上がり、数十人のバイカー達がジャギ達の前に停車
どこをどう見ても、ヒャッハー!の団体である
彼等は好色な眼光を隠しもせず、今日も胸の谷間を露出する御嬢や一見、美少女にしか見えないキッドをガン見しているが、当の本人達はヒャッハー達に不自然な動きがないか厳しく見張っている
リーダーらしき髭を蓄えた強面の男がバイクから降りて、ジャギに歩み寄った
無言で睨み合う両雄、先に口を開いたのはジャギ
「さて……ここに来たって事は、俺との取引に応じるって事で良いんだな?」
ジャギがその男『ジャッカル』に問う
「ふっ、俺には断る理由がねぇ位のデカい取引だからな」
「それで、女は?」
「一度しか言わねぇぞ
その女の行き先はゴッドランド、ここから先、オアシスの村を越えた先にアジトを構えている
頭の名前はカーネルで、百人以上の手下を率いてるそうだ
奴等は元々は軍の特殊部隊だったが、核戦争の後に生き残った自分達は神に選ばれた存在だと信じ、暴徒化しやがった
しかも奴等全員、特殊部隊の出身で、その一人一人の戦闘力は普通の連中じゃ到底太刀打ちできねぇときた
おまけに幼女から人妻まで、女なら構わずに拐いまくって自分達の嫁にし、神の子を産ませる道具にしてるんだとよ
だが当然、取り返そうとする夫や親父連中はいて奪還を試みるが、ゴッドランドの連中に全員殺されてる
また連中は女が足りなくなればその戦闘力で、タダで女を寄越せとその筋の連中を脅すから、人身売買組織から相当恨まれてるが、これはあんたには関係ねぇか
とにかく奴等の本拠地に先日、とんでもない美女が連れてこられたって俺の耳には入った
時期的に見て、ほぼそいつで間違いないだろう」
そう言ってジャッカルは持っていた葉巻に火を着け、スパスパと紫煙を吹かしだした
「ゴッドランド……!、よし直ぐに向かうぞ!」
「レイ、待ちな
俺はまだこのジャッカルと報酬の話があるから、お前達はこっちが纏まるまでそっちで休んでろ」
飛び出そうとするレイを止める
それだけでなく、暇なら三人衆の相手になってやってくれと頼めば、レイは憂さ晴らしにと彼等をまとめて相手しだす
三人衆は普段から頭である自分に対する、レイの態度を憎々しく思っていたのはジャギは知っていた
なので、この先ずっと苛々した関係を続けるより、ここいらで南斗水鳥拳レイの真の強さを知れば良いと判断したからである
「まとめて掛かってきな、お前ら等ものの数じゃねぇ」
メリケン、御嬢、キッドと相対するレイ
「このヤロー、ジャギ様に散々なめた態度とりやがってこの場で俺がボコボコにしてやる!
行っっっっっくぜぇ!」
「あんたみたいな綺麗な顔の男を、手駒に出来たらなんて……嗚呼♥️たまんない……」
「……僕は、いいや……武器がもったいないし
……肉弾戦なんてそもそも柄じゃない……」
キッドは一人ジープに戻り、スヤスヤと昼寝を始めた
幌を張ったジープにはマダラも乗ってるとはいえ、ジャッカルの一団を前にして、この図太い神経は大したものである
キッドを除いた三人衆は、レイと戦闘を開始している
ジャブ、フック、フェイントを交えた動きや、御嬢の巧みな鞭さばき、それらを余裕の表情で避けるレイの姿が見える
戦っていた方が嫌なことを忘れられ、僅かに良い顔をするレイだが、水鳥拳に手加減はない
流石にメリケン達をバラバラにする事はないが、何度も二人の体を掠めるに留める技の冴えに、相対する二人の服が何ヵ所か切られている
するとライダースーツの二人、主に御嬢が切られる度にジャッカルの手下が野太い歓声を上げた
(おいおい……相手してやれとは言ったが、まさかレイの奴、公然の場で御嬢を……)
ジャギとジャッカルも三人の戦いを見ている
それだけレイや、レイに食らい付く二人が人目を惹いたのだろう
しかしジャギは別の意味で視線を向けていた
なにせ原作では女戦士を自称したマミヤを、公然でパン一にひん剥いたレイであるので、御嬢をヒャッハー!の前で真っ裸にするのではと、密かに心配するジャギであった
レイ達の方は終わったらしい
メリケンは相手との実力差に驚愕し、休憩の後に自主練を開始
裸一歩手前まで剥かれた御嬢は、レイに平手打ちをしたが、それすら避けるレイと口論になっている
キッドはマダラと共に川の字になり、ジープの中でスヤスヤと寝息を立て続けていた
「さて、見せ物も終わったし、そろそろ本題に入るといこうかい」
ジャギはジャッカルと共に二人だけでその場から離れ、会話をしだす
それは取引の報酬の話らしい
だが報酬と言っても水だの食料だのではない、ジャギがジャッカルにアイリを探させた依頼に対し、ジャッカルがジャギに提示した報酬とは、自分達をシェルターに迎え入れる事であった
普通ならヒャッハー!を招き入れるのは火薬庫に点火したダイナマイトを放り込むような愚行
しかしジャギはジャッカルの予想の遥か上を行く報酬を出してきた
「……風俗街?」
「ああ、これから聖母軍は新たに街を建設するのは知ってるな?」
「確か……サンクチュアリとかって名前だろ」
「ほぅ流石はジャッカル、耳が早いな
蓄えた資材を使って、この世紀末を乗り切るに相応しい街を作るって訳よ
そこでお前には、風俗街を取り仕切るドンになって貰いてぇのさ」
「ほほぅ」
「今はシェルターでタダ飯食ってる連中も、働きだせば色々と溜まってくるだろう?
そこで必要なのは酒、賭博、女遊びのある環境よ
そいつをお前が全て管理しな、上がりの四割は街に入れて、後は懐に仕舞うと良い」
「取り分は六割か……悪くねぇ
それにしても聖母の街で堂々と風俗街を開くなんて、本当にやれるのか?」
「なぁに、問題は無いさ
幾ら綺麗事を並べた街でも、過去の歴史を紐解いていけば必ず光の影に闇がある
まして他所で発散して面倒を招くより、そういった場を設けてやれば良いとでも言って納得させてやるさ」
「だがよ、それはお前自身に発言力があってこそ、だろう?」
「うん?」
「俺が聞いた限りじゃ、世間でのお前の評価は『聖母の使い走り』って認知されてんだぜ?
いくらサンクチュアリ創設の一人とはいえ、実績の無い奴の言い分が通るとは思えねぇがな」
「鋭いな、まあそうだ、今の俺には実績は無い」
(こいつ、あっさり認めやがった)
「なら、誰にも文句を言われない実績をブッ立てりゃ良いんだろう?」
「……標的の目星はついてんのか?まさかゴッドランドを壊滅させただけで良いとか思ってねぇよな?
あいつらじゃ……」
「ちげぇよ、もっとデカい奴を狙う
その為にジャッカルには、ある人物と接触して貰いてぇ」
「……誰だ?」
「ユダ」
「ブッ!!……おいおいマジか、よりにもよってアイツかよ……だが確かに、ユダの首なら世間も納得するか」
「おい勝手に話を進めんな、獲物はユダじゃねぇ、奴はあくまでもメッセンジャーとして利用するだけだ
本当の俺の狙いは、その後ろにいる奴よ」
「ユダの後ろ……ま、まさか!」
「その、まさかだが口には出すなよジャッカル
まだ死にたくはないだろう?」
「お、おめ~馬鹿か?…イカれてるぜ」
「イカれてて大いに結構、この世紀末にまともな奴は不要だ」
「はぁ~……勝算はあるのか?」
「半々だな、奴の強さは間違いなくこの世界で最強クラスだが、やり方次第じゃ倒せる」
「半々っておい……」
「お前もカジノで50%なら賭けるだろ?」
「カジノ……ふっ、ふははははは!
おもしれぇ!乗った!
クックックック……それで?
俺はユダに何て言えば良いんだよ?」
「簡単だ、南斗水鳥拳のレイがゴッドランドに妹を誘拐され、北斗神拳の使い手がそれに協力している。そう伝えれば良い
そうしたら間違いなく、ユダは勢力を率いてゴッドランドに出向いて来るだろう
ゴッドランドの連中、ユダの到来に慌てるだろうぜ
そりゃもう急いで荷物を纏めて逃げる位に、な」
「あ~なるほど、そこを狙うって訳か」
「なにも正面から敵の罠に飛び込むような、馬鹿な真似をする必要はねぇって事よ
お前は言伝てが終わったらユダに付いて来るなり、成り行きを傍観するなり好きにして、とにかく巻き込まれないように用心するんだな
……あ~それとユダから、本当にそいつはレイなのかと聞かれるだろうから、お前はさっき見た戦闘の光景を伝えれば、ユダもあっさり納得するだろうぜ」
(なるほど……って待てよ
まさかこいつ、俺に見せる為だけに手下を南斗聖拳の男にぶつけたの…か?
ふむ……聖母軍のジャギ、あの聖帝を狙うとか馬鹿な奴だと思ったが、意外や意外、先を見る目はあるようだ
こりゃ、本当に面白い奴に出会えたかもしれねぇ)
「質問が無いなら、俺達はお前の言ったオアシスの村に向かうぜ」
「おう、そっちも上手くやるんだな」
「あ、そうだジャッカルよ
俺は久しぶりに有意義な会話が出来て嬉しい限りだ」
「こっちもだぜ、だがなジャギ、ユダは並みの悪じゃねぇぜ?それだけは注意するんだな」
そう言ってジャッカルとジャギは、それぞれの方向へと手下を率いて、ジャギ達はオアシスの村へ、ジャッカル達はユダのアジトへと出発する
この場での出会いは、世紀末を力だけでなく、謀を用いた知略で乗り切る男と男が巡り合った瞬間だった
ジャッカル、個人的にですが北斗の拳の序盤では初めて知謀を用いてケンシロウを翻弄したキャラな事もあり、結構気に入ってます
常に一歩引いて相手を観察し、確実な勝利を目指す頭脳派ヒャッハー!
時には手下を簡単に切り捨て、時にはハリウッドスター顔負けの演技力でデビルリバースを騙したり、危機を感じれば子供の服の中にダイナマイトを入れて見事ケンシロウから逃げたりと、臨機応変さも充分
なのでジャギと絡ませてみたのですが、その結果
すっごく楽しかった
とにかく悪党同士の会話って幾らでも書いてられるんですよ
劇場版ではジャッカルはジャギの手下扱いにされてますし、想像しやすかった
ジャッカルとジャギ、ジャ同盟ここに爆誕の予感
街の名前は『サンクチュアリ』、黄金聖闘士は出てこない!キッパリ
レイ……まぁアイリを救出するまでは大体こんな感じですので、レイのファンの方、石は投げないで下さい
ほ、ほら彼ってアイリの事に関しては、とことん突っ走るキャラじゃないですか!震え声
ハート様、初登場!でも出番少ない
マダラ、後半は影うすめ、でも一途
アイリ、キャラが安定しない、難しい、けど良い子
マミヤ、ひん剥かれた時は、素直に殴っても良いと思う
リクエスト、感想、補正、いつでも募集しております、お気軽にどうぞ♪
ありがとうございました!
追伸、仕事がゴールデンウィーク?コロナ?なにそれ美味しいの状態の繁忙期に突入しますので、次の投稿は5月の中旬になると思います
申し訳ありません
ジャギの子供は有りか否か
-
有り
-
否! 断じて否である!
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結婚相手によるな
-
そんなことより世紀末バスケやろうぜ