妹という魔力に魅了される男(あに)達 作:チャンドラ=グプタ
謎の女性と出会ってから一週間が過ぎた。あれから特に変わったこともなく、俺はいつものように仕事に終われる毎日を送っていた。
「ああ、疲れた……」
ポツリと呟くと、家に前にある電柱からひょっこりと人影が現れた。
「やぁ!」
突如として現れた何者かに話しかけられ、驚いた俺は「うわ!」という間抜けな声を出してしまった。
人影の正体は以前、俺が部屋に連れてきた女性であった。
「あははは! 『うわ!』って、驚き過ぎでしょ」
彼女は小馬鹿にするように笑顔を綻ばせた。
「だって急に突然……どうしてここに?」
「うーん、まぁ。なんとなくっていうか。ねぇ、上がってもいい?」
「えぇ!? そ、それはちょっと……」
しばらくの間、部屋を掃除していないため、部屋の中は結構散らかっていた。その為、彼女を家に上げるのに抵抗があった。もっとも付き合ってもいない女性を家に上げること自体、割と気が引けるのだが。
「えー! なんでダメなの? エロDVDでもあるの?」
「な、ないよ。そんなのは……」
ちなみに本当にない。そういうのは全てパソコンに保存されている。恥ずかしながら、妹もののエロコンテンツがぎっしり保存されている為、絶対に見られたくはない。
「ならいいじゃん。お邪魔するね!」
「ちょ……おい!」
彼女は半ば強引に俺の部屋へと向かった。俺は彼女の後を追うように付いていく。
「全くしょうがねぇな……」
渋々、俺は彼女を部屋に上げることにした。
「うっわ……想像以上に散らかってるねー」
彼女は俺の部屋を見るなり、そんな感想を漏らす。床には漫画や空き缶などが転がっていた。
「まぁな。ちょっと、軽く掃除するよ」
「私も手伝うよ!」
彼女と協力して、部屋を掃除することにした。三十分もすると、結構綺麗になった。
「ふー……やっと綺麗になったね。ねぇ、お酒とかってある?」
「ああ、確か冷蔵庫にビールがあったはず……」
「それじゃ、飲も!」
俺は冷蔵庫からビールを二缶取り出し、テーブルの上に置いた。蓋を開けると、『プシュッ』という弾ける泡の音が聞こえてきた。
「それじゃ私達の再会を祝してと、掃除お疲れ様ってことで、かんぱーい!」
「お、おぉ……乾杯」
テンション高めの彼女と乾杯し、ビールを喉に流し込む。疲れているせいか、すぐに酔いが回ってきた。
「なぁ、あの日。どうしてあんなところで倒れてたんだ?」
俺は彼女を見つけた日、どうして彼女がコンクリート塀のところで酔い潰れていたのか訊いた。
「えーと、確かその……仕事が行き詰まって、気晴らしに行きつけのバーでお酒を飲んでいたら意識が無くなっちゃんだよねー。私ってたくさんお酒を飲むと結構記憶無くすんだ」
記憶を無くすまで飲むってそりゃ、かなりストレスが溜まっているな。
俺も仕事でストレスを抱えることはあるが、酔いつぶれるまで飲んだりはしない。
「そ、そうか……一体、何の仕事をしているんだ」
「小説家だよ」
「小説家……」
職業を訊き、随分と変わった仕事をしているものだなと思った。見た目的に普通にOLをしているものだと勝手に思いこんでいた。というのも、自分のイメージ的に小説家というのはなんとなく古風というか硬派なイメージがある。
「そうだよ。驚いた?」
「まぁな。どんな話を描いているんだ?」
「えっとね、ジャンル的には官能小説かな」
「えぇ!?」
一瞬、聞き間違えたかと思った。官能小説ってあれだよな……性描写がたくさん出てくるあの小説だよな。
俗に言うエロ小説。
「だから、官能小説だよ。読んだことない?」
「な、ないな……」
そもそも俺は小説自体、あまり読まない。漫画であれば比較的読んでいるが。
「ふーん、まぁ。あれだね。どうせ動画派なんでしょ」
「いやぁ、別にそういうわけじゃ……」
否定しかけたが、俺はどっちかといえば、エロコンテンツは動画派である。とてもじゃないが、文字だけでヌケる気がしない。
「そっちは仕事、何してるの?」
「俺か? 俺は普通に営業の仕事をしてるよ」
「そっかぁ。営業か。大変そうだね」
「まぁな」
実際かなり大変である。入社前はバリバリ契約を取ってやると意気込んでいたものであるが、現実は一件契約を取ってくるのにかなり手こずっている状態である。
「ねぇ、そういえばさ。前に私の名前知りたがってたよね?」
前に彼女を連れ込んだ時、俺は彼女の名前を尋ねた。しかし、彼女は名前を告げずにそのまま帰ってしまった。
「ああ。もしかして教えてくれるのか?」
「うーん、どうしようかな……」
彼女は唇に指を当て、首を傾げ、大袈裟に考え込むような仕草を取る。
すると、彼女は突然立ち上がり、俺の背後に回り込むと、俺の肩に腕を回し、背中に自身の大きめな胸を押し付けてきた。
「ちょ……おい、何してるんだ?」
「実はさ……今、描いている作品が行き詰まっててさ、性行為のシーンなんだけど……取材に協力してくれないかな?」
「しゅ、取材……それって!?」
彼女は耳元でこう囁いてきた。
「うん……私と『エッチ』して欲しいんだ」
彼女の口から発せられる『エッチ』という言葉に全身から鳥肌が立ってきた。彼女とエッチをする……そのような卑猥な妄想を思い浮かべると、全身のドス黒い血が股間に集まっていくようであった。
「うふふ……もしかして、興奮したの?」
「い、いや……そんなこと……」
「協力してくれたら名前を教えてあげるからさ。後、連絡先もね……」
「いや、いいよ。そこまで知りたいっていうわけじゃないし」
「そっかぁ……私としたいと思わないんだね」
その実、かなりしたいという思いはある。あるのだが……
「君はもっと自分を大事にするべきだ。仕事の為とはいえ、自分の身体をそう簡単に売るもんじゃない。それこそ、自分が本当に好きな人とすべきだと思うぞ」
「……優しいんだね」
「別に優しくなんかないよ」
そうだ。俺は身勝手な男だ。だからこそ家族をバラバラにするキッカケを作ってしまった。
「分かった。それじゃ、逆に私があなたの名前を訊いてもいい?」
「ああ、別にいいぞ。樋渡悟だ。よろしくな」
彼女に名前を告げると、突然彼女は手に持っていた缶を床に落とした。床はビールで濡れてしまった。
「お、おい。どうしたんだ。急に……」
俺は布巾を持ってきようと椅子から立ち上がった。彼女は無表情のまま俺を見上げていた。
「お兄ちゃん……」
「え?」
彼女は俺のことを『お兄ちゃん』と言った。確かにそう聞こえた。まさか……本当に。
「結衣……お前、まさか結衣なのか?」
彼女は立ち上がると、ものすごい勢いで俺に抱きついてきた。
「お、お兄ちゃん……会いたかった。私、すっごく会いたかったよ……」
結衣の瞳から涙が流れている。柔らかく、この暖かな温もり――間違いない、結衣である。
「結衣……本当に結衣だったんだな。会いたかったよ」
「私もだよ。お兄ちゃん。お兄ちゃんと離れ離れになってからずっと、辛かったんだよ。お母さんは再婚しちゃって、新しく父親になった人は私をイヤらしい目で見てくるし……大学生になって、一人暮らしを始めてから小説家になってさ、兄と妹の近親相愛ものの官能小説を描くようになったんだよね。もしかしたら、お兄ちゃんが気づいてくれるんじゃないかって思ってさ」
「そ、そうだったのか」
「まぁ、お兄ちゃんは全然読んでないみたいだけど。ペンネームもわざわざ『結衣』って本名にしてたのに」
「う……そ、それは」
「まぁ、でもいいや。会えて本当に嬉しいよ。お兄ちゃん!」
「ああ、俺もだよ」
長年、離れ離れになっていた妹と再会できてこんなに嬉しいことはない。結衣は俺の手首を掴むと、自身の胸に誘導し、たわわに実る果実を触らせてきた。
「どうですか? お兄ちゃん。久々の妹のおっぱいの感触は?」
一気に股間が膨張した。柔らかい……俺の掌では収まりきらないほど大きく弾力あり、ずっと触っていられそうなくらい気持ち良い。
「き、気持ち良いよ……」
「そっかぁ。お兄ちゃんは今も相変わらずシスコンですなー。うふふふ……前よりも大きくなったでしょ?」
「そ、そうだな……それより、さっきこぼしたビールを拭くから待っててくれ」
「はーい」
台所から布巾を持ってくると、床に溢れたビールを拭くことにした。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「良かったら一緒にお風呂に入らない?」
俺はピタリと床を拭いている手の動きを止めた。
「な、なんだって?」
「だからさ、一緒にお風呂に入ろうって言ってるの。嫌かな?」
「い、嫌じゃないけど……」
「オーケーってことね! それじゃ、先に風呂場に行ってるから。バスタオル、適当に借りるね。準備が出来たら適当に入って来て!」
そう言い残すと、結衣は駆け足で風呂場へと向かっていった。俺は結衣の背中を見つめた。
「ゆ、結衣とお風呂か……」
俺の脳内はピンク色で染まっている。だが、その反面、かなり緊張しており、心臓が激しく鼓動していた。