妹という魔力に魅了される男(あに)達 作:チャンドラ=グプタ
人工知能『sister』 ――タイプA ①
「お兄ちゃん、だーいすき!」
PC画面からエロゲの萌えボイスが流れる。
都内の大学に通っている今年で二十一歳になるこの俺、山口大雅(やまぐちたいが)は一人暮らし用の部屋で妹モノのエロゲをプレイしていた。
「おぉ……なかなか抜けるな」
PC画面に表示されているイラストはとても流麗でエロティックである。
金髪ツインテールの髪をした胸の大きい妹が絶頂に達しているイラストは萌えボイスと相まってとても興奮させるものとなっている。
「いやー、なかなか面白かったな」
エンディングを終え、クレジットロールが流れた。
丸三日間、家に引きこもりプレイしていたがクリアしてとても清々しい思いで満たされた。
妹とというのはなんと良いものなのだろうか。
俺には三つ歳の離れた姉がいるが、奴は性格がとてもきつく、小さい頃は散々意地悪され、姉という存在自体に嫌悪感を抱いている。
一方で妹というものに対しては憧れのような感情を抱いている。高校生になってからは妹がヒロインのラノベやアニメを見てきた。
「それにしても妹が欲しいなぁ……」
そんな叶いもしない願いを呟く。
ネットで『妹 欲しい』と検索を掛けてみた。
勿論、本当に妹が出来るなどと思っていたわけではない。
冗談のつもりで検索したつもりだったのだが、ひとつ気になるサイトを見つけた。
「人工知能『sister』?」
そのサイトにアクセスしてみると、そこには『妹が欲しいというあなたの願い、人口知能が叶えます!』と大きな文字で記載されていた。
下にスクロールして内容を確認すると、どうやら人工知能が搭載されているロボットを購入できるらしかった。
「すっげぇな……本物の人間にしか見えない」
サンプル画像を見たが、どう見ても人間そのものである。
以前、興味本位でラブドールの画像を見たことがあるが、それとは比較にならないほどの人間らしさを感じる。
「でも、高いんだろうなぁ……」
値段を確認すると、案の定高額であった。
一体につき最低でも百万円以上掛かる。学生の俺が到底手を出せるようなものではない。
だが、よく読んでみるとお試しコースなるものがあった。
一週間限定で無料お試し体験が出来るらしい。期間内に返却すれば料金は掛からないそうだ。
「お試しコースか……」
俺はお試しコースを申し込んでみたいと思った。
人工知能『sister』は四種類のコースから選ぶことが出来る。
タイプA――普通の人間の姿をしており、普通に妹とイチャラブしたい人にオススメとのこと。
タイプB――吸血鬼や獣人、エルフといった亜人をモチーフにした姿をしており、ファンタジーが好きな人におすすめとのこと。
タイプC――宇宙人をモチーフにした姿をしており、SFが好きな人におすすめとのこと……サンプルの中にはなかなかSAN値が減りそうなのもあるが、果たして選ぶ人がいるのだろうか。
タイプAからタイプCまでは自分の好みの妹を簡単なチェックリストから選んでいき、その情報を元にsisterの製造を行う。
タイプDもあるが、これは自分が希望する妹の条件を詳細に指定することができ、その分値段も割高になっている。
このタイプDはお試しコースの対象外になるらしかった。
「タイプAにするか……」
タイプBもいいなと思ったが、やはり普通に人間の妹が良い。
『タイプA』と記載されたボタンをクリックし、申し込みフォームへと移り、チェックリストを埋めていく。
「性格はおしとやか系、胸は大きめ、髪は金髪のツインテールと……」
独り言を呟きながらチェックリストを埋めた後、送信ボタンを押した。
『送信しました』という画面に切り替わる。十日後にsisterがこの家にやって来るらしい。
本当にやって来るのだろうか?
そんな期待と不安を膨らまさせながら俺は十日間過ごすことにした。
お試しコースを申し込んでからちょうど十日が経過した朝。
リビングで朝食を食べながら過ごしていると、『ピンポーン』というインターホンの音が聞こえてきた。
まさか――来たのか。
ドキドキしながら玄関へと向かい、扉を開ける。
「はーい」
玄関の外には金髪ツインテールのピンク色のTシャツとショートパンツを履いた少女が立っていた。
黒いカバンを背負い、右手には何やら小さな紙箱を持っている。
「おはよう、お兄ちゃん!」
この少女がsisterか。本当に普通の人間にしか見えない。それにとても可愛らしい容姿をしている。
設定した通り胸はとても大きく、ピンク色のTシャツを大きく押し上げていた。
好き勝手出来るなら、今すぐにでも彼女に抱きつきたい。そんな思いを必死に押さえ込んだ。
「お、おぉ……入ってくれ」
俺はsisterをリビングへと案内した。
「お兄ちゃん、食事中だったの?」
「ああ、そうだ」
「そっか。良かったらさ、これも食べて!」
sisterは俺に小さな紙箱を渡してきた。
「中身見ても良いか?」
「うん!」
中身を確認すると、クッキーが入っていた。甘い香りが漂ってきた。とても美味しそうだ。
「お兄ちゃんに食べて欲しくて頑張って作ったんだよ!」
「そっか……ありがとうsister」
お礼を述べると、なぜかsisterは不機嫌そうに頬を膨らませた。
「私の名前はsisterじゃないよ! 花音(かのん)だよ! 花に音って書いて花音。分かった、お兄ちゃん?」
sisterは自分の名前を花音だと主張した。
「あ、あぁ……分かったよ」
「それより、クッキー食べてみてお兄ちゃん!」
「うん」
箱から一枚クッキーを取り出し、口に入れる。とても美味しかった。
本当に花音が作ったのか、お店で販売されている物を作ったと主張しているのかは不明であるが。
多分、後者なんだろうな……って、いかんいかん。そんなことを考えちゃダメだ! 今は妹がいる生活をとことん楽しまねば。
「どう? お兄ちゃん」
「うん、すごく美味しいよ」
「そっか。良かった! 食べ終わった食器、台所に持っていくね。残りの食器も洗ってあげるから、食べ終わったら持ってきてね」
「分かった。ありがとう」
朝食を食べ終えた後は花音が持ってきてくれたクッキーを食べた。
「しかし、本当に美味しいなこれ……」
ちょうどクッキーを全て食べ終えたタイミングで、花音がリビングに戻ってきた。
「洗い物終わったよ! お兄ちゃん」
「そうか、助かったよ。ありがとうな」
「どういたしまして! ねぇ、お兄ちゃん。今日は何か予定あるの?」
「いや、特にはないが……」
「そっか。なら一緒にお出かけしよ!」
花音からお出かけしたいと提案されたが、一体どこにいくべきか迷った。
「お出かけか……花音、行きたいところはあるか?」
「お兄ちゃんの行きたいところならどこでも良いよ!」
どこでもいいと言われて、俺はとても戸惑ってしまった。これは一番悩むパターンである。
「えっと、その……おすすめスポットとか検索する機能とかないのか?」
「機能? 何それ。お兄ちゃんったら、変なの」
花音が不思議そうな首を傾げた。
あくまで自分は人間であるという装うという風にプログラミングされているようだ。
しょうがない。自分で行く場所を見繕うか。
「いや、なんでもない。ちょっと準備するから待っててくれ」
「うん!」
髭剃り機で髭を剃り、寝癖を直し、外出用の服に着替える。
三分ほどスマホで都内のおすすめスポットを調べた。
「それじゃ、行こうか」
俺は花音を連れ出し、外に出た。
眩しい光が容赦無く俺を照りつける。
「良い天気だね、お兄ちゃん」
「そうだな」
晴天など引きこもり体質である俺にとっては悪天候も同然であるが、ここは花音に同意することにした。
「お兄ちゃんとおっ出かけ、おっ出かけ……」
花音は嬉しそうに口ずさんでいた。しかし、本当に可愛らしい妹だ。
出来ることならずっと一緒にいて欲しいと思った。
「お兄ちゃん! 手繋いでもいい?」
「え……あ、あぁ。いいぞ」
すかさず花音がぎゅっと手を繋いでくる。
ロボットとは思えないほどの暖かな温もりが自分の手から伝わってくる。
やばい……なんだかすっごくドキドキするな。
「お兄ちゃん、どこに行くの?」
「お台場に行こうと思うんだが良いか?」
俺が住んでいるアパートの最寄駅はお台場からアクセスが良い。
といっても、大学では友人はほとんどおらず、お台場に行く機会はほとんどないのだが。
「うん! 花音、すっごい楽しみ!」
花音は嬉しそうに笑顔を綻ばせる。なんて純粋で良い子なのだろう。
よし、今日は俺の妹である花音を思いっきり楽しませてやろう。