【IF】現代にTS転生したけど馴染めないから旅に出た【ガチ百合】 作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)
「ホントにいいの?」
念を押すように、わたしは何度目かの問いかけをした。
姉さんは、ふわりと微笑んでから小さく頷く。
もう抗う理由も、言い訳も残っていない。
横浜のデート、二人で過ごしたホテル。あの夜を境に、わたしたちの間にあった不可侵の境界線は、まるで熱に溶けたロウのように形を失った。
ここは二人の寝室。窓にはブラインドが降りているけれど、部屋の中は午後の一時を告げる鈍い陽光で満たされている。
振動をオフにしたスマホの画面は、時計の針が13時21分を指していることを無機質に告げていた。
薄いタオルケットを脇に寄せ、わたしたちはベッドの上で向かい合っている。
互いに女の子座り。纏っているのは、銀座の百貨店で選んだお揃いのシルクのランジェリーだけ。
「なんだか……夢を見てるみたい」
「うん。わたしも、現実感がなくて……おかしくなりそう」
掠れた声での同意。姉さんの瞳が潤んでいる。
向かい合ってから、もう随分と時間が過ぎた。
「頑張るよ。……姉さん、口を開けて」
「……んむっ、はむ……っ」
噎せ返るような気まずさと、それを上回る渇望に背中を押され、わたしは姉さんの肩を抱き寄せた。
唇を重ねる。
鏡写しのような二人。舌を侵入させることもなく、ただ触れ合い、互いの輪郭を確かめるような、不器用で、しかし甘美な接触。
「んんっ、さくらちゃん……ちゅ、美味しいね」
「姉さん、んっ……美味しいよ」
キスのまま、わたしは姉さんをベッドへ押し倒した。
上半分が大胆にカットされたブラから、姉さんの豊かな胸が溢れている。
天然モノの膨らみは、どうあがいてもわたしの手には余る。けれど、今のわたしには劣等感がない。この身体の主として、彼女を支配しているという歪んだ充足感が、わたしの背骨を熱く支配しているからだ。
「そんなに見つめないで……」
姉さんが眉を八の字にし、物足りないとばかりに唇を尖らせる。
そのあどけなさと妖艶さが混在した表情に、喉の奥が鳴った。
「姉さんって、本当にわたしが好きなんだね」
「好きだよ」
迷いのない即答。
北海道の開陽台で、地球の丸さを確認し合ったあの時と同じ。彼女にとっての愛の言葉は、呼吸をするのと同じくらい当たり前の事実なのだ。
そのまっすぐさに、先ほどまで倫理観と戦っていた自分の理性が、ひどくあっさりと瓦解していく。白旗を上げるのは、いつもわたしの方だ。
「……大好きなの」
銀色の長い髪がシーツに散らばる。細い首筋、鎖骨の窪み、きゅっとくびれたウエスト。
わたしは彼女の腰の上に跨り、その景色を独占していた。
「姉さんっ……」
見下ろす視界が滲む。愛おしすぎて泣きそうなのに、同時に黒い欲望が腹の底で渦を巻く。
姉妹だという事実は、もう遠い世界の出来事のようだ。
「さくら、ちゃん……あむっ、もっと、食べてぇ……」
彼女は半開きの口から唾液を零し、わたしの愛撫を待っている。
わたしは姉さんの両頬を包み込み、そのまま深い口付けを貪った。
わたしの乳首が、痛いくらいに張り詰める。
下腹部が熱い。ショーツ越しに感じる湿度。わたしの身体は、理性とは無関係に、雄の記憶を引き摺ったまま雌として成熟していく。
「姉さんの匂い、好きだよ」
口から溢れる唾液を絡め取り、喉元を舐め上げる。冷えたそれは甘露のように感じられ、わたしをより一層、獣じみた興奮へと突き落とす。
「嗅いで……私の事、全部知ってぇ……」
彼女はわたしの髪を掻き乱し、反り返るようにして悦びを露わにする。
わたしはフロントホックを片手で外した。
「わたしね、姉さんを独占したいって、ずっと考えてた」
「……んんっ、いやらしいこと言いながら、クリ、撫でられてる……さくらちゃん、もっと……」
耳元で、かつての記憶――女を組み敷き、快楽の淵へ沈めていた頃の所作をなぞりながら囁く。
右手はすでにクロッチを突き抜け、彼女の熱源を直接いじくり回していた。
「やっ……んんんんっ、はっんっ……!」
姉さんの身体が跳ねる。
その時、突然視界が反転した。
姉さんがわたしのブラを強引にずらし、はちきれんばかりの胸元に吸い付く。
「あっ……ああっ……!」
自分でも驚くような嬌声が漏れる。
これは、自分自身では決して到達できない領域だ。彼女の温もり、彼女の舌の感触。すべてが他人事ではなく、わたしの身体を焼き尽くす快楽としてダイレクトに脳に響く。
「恥ずかしい……どんな顔していいか、わかんないよ……」
「じゃあ、教えてあげる」
姉さんはわたしの足の間に滑り込み、躊躇いなくショーツを剥ぎ取った。
「わぁ……さくらちゃんのここ、すごく綺麗。ぬるぬるで、腫れてるのに、ぴっちり閉じてる……私のと全然違う」
羞恥に顔を覆う。けれど、指先がわたしの一番敏感な場所をこじ開け、愛液を塗りたくられる感覚に、指先が勝手に腰を浮かせた。
「汚して、汚されて、全部私の物にしたいって思っちゃうんだ……」
「……姉さん、わたしだって、貴女を全部、俺の色に染めたいよ。独占したくて、狂いそうだった」
「嬉しいっ……全部、全部味わって……生臭くて、熱くて、美味しいの……」
頭が真っ白になる。
姉さんの舌が、指が、生き物のように這い回り、わたしの中枢を支配していく。
足元から駆け上がってくる震えは、一人で満たしていた孤独な夜とは比べ物にならないほど鮮烈で、抗いようのない熱さだった。
「さくらちゃんごめんね、おまんこ舐めながら、自分でも弄っちゃって……我慢できないのぉ……」
「いいよ、姉さん……わたしも、貴女を舐めたいっ……こっちに、顔を、見せて……」
わたしたちは互い違いに重なり合い、舌と指で愛を刻み合った。
熟れた果実が弾けたように、互いの悦びが混ざり合う。
かつて男として女を抱いていた時の矜持など、とうに捨てた。
ここは底なし沼だ。
一度足を踏み入れたら、二度と戻れない、愛欲の泥沼。
深夜。
事後の余韻に浸りながら、わたしは腕枕の中で眠りにつく姉さんの頭を撫でていた。
「姉さん」
「んっ……なあに?」
先ほどまでの痴態が嘘のように、彼女はとろんとした瞳で微笑む。
「生えてない方が、こんなに満足できるなんて……」
彼女は照れ隠しのようにタオルケットを被って隠れてしまう。
それが可愛くて、指先で突くと、毛布の中からくぐもった声が聞こえた。
「……その表情、まだ男っぽくてダメ。照れるよぉ……」
嗚呼、まだ俺(直人)はここに残っているのかもね。
そんなことを考えながら、わたしは再び愛おしい姉さんの柔肌へと手を伸ばした。
この堕落と救済の夜は、まだまだ終わりそうになかった。