現実はこんな時期ですが、どうせ原作は未来の話だと思うのでガンガン飲み会ができます。
「――つかれた」
倒れこむようにして玄関のドアを開ける。築25年、都心近くの2DKが、重くなった私の体を優しく包み込んでくれた。
私、白峯理沙は親友である本条楓とルームシェアをしている。彼女はまだ帰ってきていないはずだ。会社で飲み会があると言っていたので、帰りは遅くなるだろう。
風呂に入ってすぐベッドに倒れこむ。普段は絶対髪を乾かすが、納期というレイドボスを倒した私は一刻も早く休みたい。
少し寝るくらいなら問題はないはず。日付が変わる前には起きるつもりだが、それでもベッドを横断するように寝たら帰ってきた楓に申し訳ない。姿勢を変えて、体を端に寄せておく。
心地よい微睡みが、私の意識を落としていった。
「たらいま〜〜」
楓の声がして、意識が戻った。帰ってきたようだが、かなり酔った声色をしている。顔を合わせるなら水でも持っていくべきだろう。冷蔵庫からペットボトルを取り、玄関へと向かう。
「おかえり。はい水、これ飲んで酔い覚まして」
「ありがとりさ〜。すきー」
ラブコールをされたが無視。酔ってるときに言われても嬉しくない。荷物を無理矢理受け取って、楓を風呂へ押し込む。
「ねーりさー、ふくぬがせてー」
「子供みたいな事言わない「――だめ?」…早く入って。私眠いから」
「けちー」
楓は酒癖が悪い上に、酔うと子供みたいになる。そのくせやたら色気があるから対処がしにくい。襲われても知らないぞ。
シャワーの音を聴きながら、私も寝る用意を進める。目が悪くなったせいでかけ始めた眼鏡を置き、歯を磨いてパジャマに着替え楓を待つ。寝るなら一緒が良い。
束の間、時間に空白が生まれた。
そういえばユイちゃんマイちゃんは大学生になったんだったか。落ち着いたら久しぶりに会いたい。
クロムさんは元気だろうか。転職して、今はイズさんと服飾関係に勤めていると聞いたがどうだろう。
ゆったりと、しばらく顔を見ていない人達へ思考が廻っていく。ダメだ眠い。楓はまだ風呂場にいるらしい。意識を沈める眠気に、目頭を揉んで抵抗する。
脳内で悪魔同士が喧嘩し合う。諦めて寝てしまおうか。でも、な。
結局のところ、私が勝手に期待して勝手に待っているだけなのだ。一人相撲の果てに、
「お待たせ理沙ー。寝よー」
「ん、おやすみ」
気恥ずかしくてやっぱり寝ることにした。期待するのと、実際に誘えるかは別問題だ。仕事もあるし。
私の体に、向かい合わせで丸まった楓がすっぽり収まる。寝るときはいつもこの体勢だ。背骨が歪むから止めろと何度も言ったけど、一向に止めようとしない。まったくこいつは。
「ねぇ、理沙?」
上目遣いで、楓が話しかけてくる。その目は少しだけ潤んでいた。僅かに揺らぐ。ダメだ。
「ん?」
声が期待を孕んでしまう。ダメだ。二人とも明日会社がある。今はダメだ。
「――キス、しないの?」
理性に、ヒビが入る音がした。疼く。私の足の間に楓の足が入ってくる。ホントにダメだ。明らかに誘われてる。よし、聞こえなかったことにしよう。それが良い。今シたら、明日起きれる気がしない。
「ねぇ」
耳元で囁かれた。明らかに、私が我慢してると分かって誘ってる。
「ダメ」
いけない。シたらいけない、耐えよう。深呼吸して落ち着こう。彼女だって酔ってるだけなん「えいっ」!?
耳を甘噛みされた。そこが弱いって分かってて。理性のヒビが大きくなった。シたい。
楓の甘い匂いが、頭を麻痺させていく。ダメ、シたい。自分へのブレーキが緩む。
「ごめんね、疲れてるはずなのに」
そうだ私は疲れているんだ。急いで寝なきゃいけない。
「でも」
寝よう寝よう寝ようシたいシたいシたいダメだ。
「こんなに欲しそうな顔してるんだし、いいよね?」
ふわり、と煽るように笑みをうかべて
理性が、弾けた。
私は楓の上に覆いかぶさって、動けないようにする。
「楓のせいだから」
知ってる、と楓が私の背中に手を回してくる。逃さないつもりみたいだ。上等、こっちだってもう我慢しない。全部楓のせいだ。
啄むようにバードキスを繰り返す。それからより深く、長く。舌を絡めて、お互いの息が苦しくなるくらいまでずっと。
キスの間、楓はずっと私の耳を弄っていた。理性はすでに無くて、前戯に満たないものによってですら、欲が膨らんでいく。足りない。キスなんかじゃ全然、もっとシたい。止まらない。互いの服を脱がしあう。
臍の辺りをゆっくり触られ、それだけで体が痙攣する。下着が意味を成さなくなってきた。
仕事のことなんて忘れて、目の前の楓だけが世界の全てになって。
跳ねる腰を押さえながら小さな歯を舌でなぞる。
惜しむように途切れる唾液が、蕩けた表情の楓を鮮明に引き立てた。
「…続きは?」
返事の代わりに抱き寄せて、少しづつ最奥へと指を進める。
嬉しそうに首筋を喰まれる度、甘い痺れが脊椎を駆けた。
そのまま互いの境が分からなくなるくらい重なって。互いを交わし続けて。
裂くように注ぐ陽光が、一瞬二人の手を止めた。
「ねぇ、休みが取れたらさ、外に朝ご飯食べに行かない?」
「…なんでこのタイミング?行くけどさ」
「だって最近、理沙と二人っきりで話せてなかったから。訊ける内に聞きたくて。」
そういえばたしかにそうだ。ここニ週間程は修羅場だったから、家に帰るとすぐに寝てしまっていた。私だって話せず悶々としてたが、まさか楓も?
「寂しかった。忙しいのは分かってるけど、でもさ…」
マジで最近はヤバかった。寝ないと死ぬような仕事量で、寝たら終わりの短い期日。楓を蔑ろにしていたと言われても、否定できない。
「ごめん」
「謝らないでよ。しょうがなかったし、私のワガママなんだから」
スマホで当面の予定を確認する。画面の光が目に刺さり、頭が起きてしまったので布団からでる。
春とはいえ朝はまだ寒い。パジャマを着直しとくんだった。
「次の日曜休みだし、その日どう?」
楓も空いているようなので、その日に決定。
「コーヒー淹れよ…理沙も飲む?」
「頂戴。濃いめで」
今の時間は早朝四時。いつもより早い起床だが、これから寝るには時間的に厳しい。なら完全に目覚めるべきだろう。
「――ねぇ」
「ん?」
改まった様子で楓が口を開く。
「こんな私と一緒に居てくれて、ありがとう」
ふ、と少し笑ってしまう。
「こちらこそ」
抱きしめて、サラサラとした髪を撫でる。こんな
人を振り回して、少し抜けてて、なのに傷つきやすい楓を、私は愛している。
どうでした?
-
面白かった
-
普通だな!
-
は?(威圧)
-
もっと尊くできる