第5特異点へのつなぎ的な話です。欠片もエロ要素はないので、ストーリーに興味なしという方はブラウザバックを推奨します。
ライネスからの依頼も全て片が付き、今日ようやく聖杯を受け取って街とおさらばする。
「これまでよくやってくれた、君たちには感謝しているよ。……グレイでも侵入できなかった最深部。何が待ち構えているか分からないが、君たちなら乗り越えられると信じている」
「……ありがとう、ライネス」
藤丸の声は冷たい。
あれだけのことをされてさも味方面されれば仕方がないし、被害者として同情するつもりも全くないが。
「最深部の近くまでは皆さまとご一緒に調査したのでご存知でしょう。そこから先は拙もあまり踏み込めませんでしたが、それまでと比べて対侵入者用のトラップが増えていました」
横からひょっこり出てきたグレイが、俺たちが踏み込まなかった領域の説明をしてくれる。
やや早口なのは罪悪感か、それとも何か別の理由があるのか。
「ではカルデアの諸君――健闘を祈る。どうか人理を焼き払った者の
「つっっっかれた~~~…………」
最深部してマキリを倒してニコラ・テスラも倒して、最後にソロモンこと■■■■■と対峙して帰還。概ね原作と変わらない展開だった。
いつの間に出会っていたのか、藤丸のためにとモードレットが来てくれたし、ゴールデンや良妻狐も来てくれた。終局特異点にも来てくれるだろう。
「……にしてもあいつのあれはどういう意味なんだ?」
ソロモンが俺を興味なさげに一瞥した瞬間、奴は目を見開いて驚き、そして心底侮蔑しきった顔で妙な事を呟いたのだ。
『やたら虫が目に付くと思ったら、巣があったのか。……では次で水を流し込むとしよう』
虫、ねえ……。異物なのは間違いないけど、なぜ虫と評したんだ?
今の惨状を照らし合わせての発言なら納得できる。フランスの段階で原作はもう目も当てられない状態になってるし、認めたくはないが、俺は物語を食い荒らした害虫と言っても過言ではない。
だけど俺が転生者である事をあいつが知っているとは思えない。本気で調べたのならともかく、あのときのソロモンは俺を藤丸同様、見る価値のない存在として認識しているようだった。転生者だと知っているならもっと警戒してもいいのに。
最後の水を流し込むってのも気にかかる。俺を始末するって意味なんだろうが、今のところカルデアに異常はない。ていうか水を流し込むって、蟻かっての。
「あ~~~やめやめ。今日はもう寝よう」
いくら考えても分からないことを考えても疲れるだけと判断し、枕に顔を埋めて睡魔の国へ直行することを選んだ。
――そういえばなんでロンドン特異点を維持できなかったんだ?
眠りにつく前特有のぼんやりとした意識の水面に疑問が浮上する。
手にした聖杯を使った特異点維持がなぜかうまくいかず、あっさり消滅してしまった。約束していたマシュも非常に悲しそうな顔をし、「慰めてもらってきます」と性欲を持て余し気味の職員のもとに向かった。
――何というか、あのときは。そう、聖杯の力が弾かれるとかそういうのじゃなくって、そもそも起動すらできなかったような……。
「――やっぱりだ。キミの言う通りだったよ、ロマニ」
「やはり彼女たちは……」
「ああ、普通の英霊でも、ましてや疑似サーヴァントなんて真っ当な存在じゃない。もっと歪なナニカだ」
人払いを済ませた会議室。そこでカルデアの指揮官を代行するロマニ・アーキマンと英霊、レオナルド・ダ・ヴィンチは言葉を交わす。
「彼女たちの状態は言わば疑似サーヴァントの逆……
「信じがたいね……。一体どうやってそんなことを可能にしているのか……」
「さあね。少なくとも愉快な気分にさせてくれる方法じゃなさそうだ」
吐き捨てるようにダ・ヴィンチは言う。
原理は違えど、デミ・サーヴァントと似たような代物であるこれを彼/彼女が好意的に見れるわけもない。
「まがい物のライネスが言っていた沙条愛歌についてだけど、器薄くんと何か関係が?」
「そこまでは分からないよ。情報が全くないからね。私たちを混乱させるための欺瞞情報の可能性もある」
最初に名前が数回上がっただけでそれ以降、何一つ痕跡もない魔術師の存在に2人が疑念を抱く。
まあ情報が皆無となれば出任せかなにかと判断するのは当然だろう。
「……それよりも気になることがあるんだ」
ダ・ヴィンチはコンソールを操作して壁に設置された画面にとあるグラフを映す。
「これは……!」
グラフが意味するものに気がついたロマニは顔を険しくする。
隣で同じ表情をしているダ・ヴィンチ。彼/彼女の口からカルデアの事実上トップ2が共有することとなった疑問が語られた。
「――ロンドン特異点は本当に消滅したのかな?」
地震に慣れた日本人でも驚くほどの激しい揺れがロンドン特異点を襲う。
それはライネスが統治する地下街も例外ではなかった。
「いやっははは! 想定通りとはいえ酷い揺れだ! 全ての建物を日本基準の耐震設計にしておいてよかった!」
世界有数の地震多発地帯である日本。その現代日本の建築物の多くは(きちんと造れば)地震などの揺れで壊れにくいよう設計されている。
「笑ってますけど、建物は大丈夫でも家具などが倒れている場所もあるんじゃないですか? 監視用魔術で分かるんですから、早くホムンクルスを向かわせてください」
「もちろんだとも、ホムンクルスも大切な部下だが住人のほうが大事だからね。既に各所に配置した者が向かっているよ」
事前に救助要員として大量のホムンクルスを街の各所に配置しており、ライネスの命令一つで動ける状態となっている。
この特異点の住人たちは、もう少しだけ生きてもらわねばならないのだから。
「しかし本当によく揺れるねぇ……。これ、実は崩壊寸前の揺れだったりするのかな?」
「今さらそんなこと言わないでください。というか自信満々に行ける、と断言したのは貴女では?」
「いやぁ、確かに自信はあるんだが。私、魔術はそんなに得意じゃないから……」
「どの口がいいますか。それに針の筵のなか、陣の作成を担った拙の身にもなってください」
恨めし気にライネスを睨むグレイ。
藤丸以下、カルデア陣営の冷たい目線に晒されながらも最後まで同行したのは、ライネスの命令のためだ。彼女は藤丸たちの監視と護衛をしつつ、魔術儀式を執り行うための魔法陣作成を行った。
地下通路と水路を用いたロンドン――すなわちこの特異点そのものを巨大魔法陣としたのだ。
「これでライネスとグレイはお役御免となるわけだが……、我々の出番はまだあるだろう。さあ沙条器薄、覚悟したまえよ? ここから先は我々も参戦する。ハーレムルートがない以上、選ばれるのは1人だけだ」
“ライネス”は笑いながらもうここにはいない、カルデア――かつて自身も身を置いていた星見台へ帰還した少女に聞こえることのない宣戦布告を行う。
「君は我々より優位なメインヒロインだ。サブヒロインにハンデがあっても文句は言うまい?」
彼女の体から光が漏れだし、粒子となって天に昇る。やがて彼女の体が透けていき――
「いや、キリッと決めようとしてますけど私……じゃなくて拙たち、後任への引継ぎ業務とかまだ仕事残ってますからね?」
相方の冷静なツッコミでスンッと光が消えて元通りとなった。
「…………ちょっとくらいカッコよく決めさせてくれてもいいと思うんだが」
「自分だけサボろうなんて許しません。ちゃんと最後まで仕事してください、飛ぶ鳥跡を濁さずって言うじゃないですか」
「その姿で言われると違和感あるなあ……」
ぼやきながらも揺れが収まったのを機に、通信用魔術でホムンクルスと連絡を取り、状況の把握を始める。
――――数時間後、第四特異点ロンドンの反応は消滅。人理の一部がまた修復された。
消滅までにやや時間がかかったことと、消滅前の一瞬に起きた異常な魔力反応以外におかしな点はなく、約2名を除いて疑問を抱く人間はいなかった。
その数少ない2名も第5特異点発見に伴う慌ただしくなった日常の中で頭の片隅にへと追いやってしまった。
彼らがそれを後悔するのは、もっと先。