人間は考える葦である。とは誰の言葉だったか。・・・誰が言ったんだっけ、忘れた。
納得のいく言葉だ。特に、人間は一本の葦のように弱い存在だ、という部分が。
人間は弱い。非常に弱い。火で焼けて死ぬ。水で溺れて死ぬ。怪我で血が出て死ぬ。毒で、病気で、暑さで、寒さで、老衰で、栄養不足で、ストレスで・・・なんて脆弱で繊細な生き物なんだろうか。種が絶滅しないか心配になってくる。
力の強い神や妖怪から見れば
人間を殺すことは、小さな虫を殺すようなものである
あってはならないのだ
そうした人ならざる者が、人間に依存するなんてことは。
目を覚ました。
・・・はずなのだが、俺の視界に一切の光はなかった。どこまでも続くのかと思われる闇に、本当は自分がまだ目を開けていないんじゃあないか、と早朝特有の間抜けな思考が頭をよぎる。
もちろんそんなわけはなく、ただ明かりも何もない洞窟の中で一晩を過ごしただけに過ぎない。加えて、隣で寝ている彼女から闇が放出されているのもある。周りを暗くできる能力というのは寝るときにはとても良いものだが、起きるときに周りが真っ暗だと驚いてしまう。
まあそんなことどうでもよくて・・・
「すー・・・すー・・・」
隣から聞こえる規則的で穏やかな寝息は、何も見えない暗闇の中で彼女の安眠を俺に教えてくれた。
きっと可愛らしい顔して寝ているんだろう。本当に暗すぎて、体温を感じ取れるほど近くにいる彼女のご尊顔を拝めないのは少し残念だが、想像力で補うというのも乙なものかもしれない。
「すー・・・すー・・・」
・・・・・・いや、しかし、起きないなあ。
数十分ほど待ってみたが、彼女は全く起きる気配がなかった。
俺自身、そこまで早起きというほどではなく、
たとえ寝る時間がまちまちであっても起きる時間はいつもほぼ寸分の狂いもなく同じ、という驚異の体内時計を持っているため。
これだけ待っても起きないというのは、あれだ。ルーミアはお寝坊さんに違いない。
朝が弱いというのは神綺にも共通することだったが・・・・・
そろそろ起こしてみようか。ルーミアが起きないことには俺も動けないだろうし。
ただでさえ慣れていない洞窟の中で、この暗さで動くのは危険だと思う。
「おーい、ルーミアー、起きろー」
そう言って彼女を揺さぶる。
「ん・・・んぅ・・・・・・」
お、ようやく彼女が起動し始めたみたいだ。まったく、寝坊助だなあルーミ
「んん・・・・・・・・・・すー・・・」
「っておい」
一瞬、薄目を開けたので起きたと思ったけど。
全然起きてなかった。
・・・・・・まあ、二度寝ぐらいは神綺もやってたからな。慣れてる。
そのあと、ルーミアを起こすのに七回のトライを要した。
「んん・・・んあ・・・・・・・・・・・・おはよう」
「あはようルーミア。・・・ぜんぜん早くはないけど」
ようやく彼女が起きた。
お寝坊さんどころじゃない、神綺の方が十倍は早く起きる。あまりにも起きなかったのでさっきまで彼女にいたずらしていたほどだ。
触っても、撫でても、揉んでも、舐っても、彼女は目を覚まさなかった。
あと数回分遅れていたらそのまま睡姦しちゃうところだったぞ。ルーミアにはこれから俺以外の男とは、絶対寝ないでほしい。
「ねえ」
「ん?」
どうした。と言おうとした俺の口を、何かが塞いだ。
「!?」
だがすぐにその正体は判った。彼女の唇だ。
瞬時に理解した俺は一切の抵抗なく、彼女からのキスを受け入れる。
それは数十秒ほど続いた。 舌を絡めた濃厚なキス、ではなく、
唇どうしが触れ合うだけの
相手の唇に自分の唇を軽く触れさせたい。くらいの
相手の体温を直に確かめたくなって、それがたまたま唇だった。その程度の
そんなキスだった。 でも、悪くはない。
キスの最中に俺は、
そういえばルーミアは暗くても俺の位置がわかるのか。そうだよな、自分の出した闇で自分の視界がつぶれるほどバカバカしいこともないよな。
というどうでもいいことと一緒に、神綺のことも考えていた。
神綺も起きてすぐに、同じようなキスをしてくれたっけ・・・
とんでもなく失礼なことだ。目の前にいる女性とは違う女性のことを想うのは。
彼女達、どちらに対しても。
「・・・・・・おはよう」
改めておはようを言った彼女が、
してやったり、といった風にいたずらっぽく笑うのが、
顔は見えなかったけど、はっきりと分かった。
「おはようルーミア」
そしてごめんな、ルーミア。
おはようのキスは、さっきもうしたんだよ。君が寝てる間に。
そのあとは特に何もなかった。
強いて言うなら、朝から一発ヤッたくらいだ。
いや、ほら、朝勃ちの処理とか。眠気を覚ますための軽い運動にもなるし。うん。
実に合理的な判断だったと思う。
暗闇の中での性行為もイイもんだ。やはり彼女は闇の中でも見えている、というか俺の動きを完璧に把握できているらしい。
彼女によれば、闇の妖怪にとって闇というのは自分の手に等しいと。通りで一方的になるわけだ。方や目隠しをされたに等しい状態で、方や自分の手中にある相手が目隠しをしているのだ。つまり、さっきの俺は
視界を封じられ、
全身を掌握され、
彼女のテリトリーで何の抵抗もできずに滅茶苦茶にされたと。
素晴らしい。最高。
「もう昼前か・・・」
外に出てみると、太陽が高く昇っていた。ピロートークに花を咲かせすぎてしまったらしい。喋ってたのはほとんど俺だったが。
二人とも朝食を抜いたくらいでは何ともないからいいけど。
時間に追われる身でもないし。
そんなことより今の俺には気になることが・・・
「汗がべたべたして気持ち悪い・・・」
朝から『激しい運動』をしたので汗で服が体に引っ付いて、俺に不快感を与えていた。
臭いについては彼女から「全然気にならない」といわれたので問題ない・・と思いたい。
行為の最中、やたらと俺の体のニオイを嗅いでいたのは少し気になったけど。
悪く思われてないことは確かなのだが・・・
ルーミアの方は、近くにある湖で水浴びをしているらしい。覗く予定だ。
しかし水浴びか・・・それも悪くないんだが、もっとこう、何というか、
リラックスしたいというか。
「あー風呂入りたいなー」
だから、そんな呟きが俺の口から出るのも仕方のないことだった。
「『フロ』って何よ」
いつの間にか、水浴びから帰ってきたらしい彼女がそう言った。はぁ、覗き損ねた。
「風呂っていうのはな、こんな感じのでっかい容器に水を入れて、それを温めて・・」
地面に木の枝で図を描いて説明する。水浴びは知ってても、風呂は知らなかったらしい。これを機に彼女に風呂に対して興味を持ってもらい、いつか混浴をしたい。作るのは相当時間がかかるだろうけど、時間だけなら余るほどあるし、出来上がったら少しは彼女も俺に憧憬の念を抱いてくれたりしないだろうか
「ふーん。・・・それってここで作れるの?」
「ん?あぁ、材料は木でいいから、作れると思うけど・・・」
それを聞くと彼女は立ち上がって、周囲を見回し始めた。何かを吟味しているような・・
その内、辺りで一際目を引く大木を見つめると
「うん。あれがいいわね。」
そういうとその木に近づいて、ゆっくりとした動作で左手を樹に添えると迷いなく―――
――――――横薙ぎに一閃。
一瞬の静寂の後、重心が偏っていたのかその馬鹿でかい樹は、時間が遅くなったのかと思うほど緩慢に傾き始め、太い幹が、枝が、葉が、大気と擦れ唸りながら倒壊してゆく。
無数の枝が折れる際、雷鳴に酷似した轟を生み、
本幹が地に倒れ伏す衝撃は、局所的な地震を巻き起こした。
倒れる方角にあった木々が、受け止める形ではあったがそれでも、
質量の暴力と言うにふさわしいそれの前では緩衝材にすら成り得ず
横転を許してしまうのだった。
俺は暫し言葉を失っていた。
樹齢三桁は優に超えていると思われた、しかしながら老木と云うには憚られる程に
青々とした葉と、豊かな水を湛えていた幹。
森を見渡し堂々とその威容をほこっていた大樹が
華奢な彼女の手刀の一振りによって、切断され、地に沈んだのが信じ難いことであった。
俺が呆然としている間に彼女の足元からあの黒くて大きな手が現れ、幹の根元に近い方を解体し始めたのだった。
壊す・・・いや、溶かすといった方が正しいのか。黒手は樹を溶かした。
ちょうど生クリームを指の腹で掬うような、そんな作業だった。
一連の流れは時間にして一分もないだろう。
我に返った時には既に彼女が木の風呂桶を作り終えた後であった。
即興で作ったとは思えない程綺麗な、二人で入るのにちょうどいいぐらいの浴槽の形になったそれを、彼女は軽々と持ち上げていた。片手で。
「これでいいんでしょ?」
「・・・・・・ああ、ばっちりだ。」
それを聞くと彼女は水を汲みに行く、とだけ言って湖の方に向かっていった。
その横顔が満足気であったのは、気のせいではないはずだ。
先の出来事がまだ信じられなかった俺は、無意識の内に倒れ伏した樹に近づいた。
ごつごつした岩のような樹皮。切断面に画かれた年輪は幾重にも層が重なっていて、
その半径だけで俺の身長よりも長い。
先ほどまさに、異様とも言うべき力を見せた彼女に俺が抱いた思いは、
恐怖でも、畏敬の念でもなく 感動。
俺の呟きを聞いて、ここまでのことをしてくれたのが嬉しかった。
「俺もなんかやんないとな。」
取り敢えず、目下最大の問題であった湯舟が、
図らずも迅速に完成してしまったので、
俺は湯を沸かすための可燃材や、土台となりそうな石を集めに行こうと立った。
遂に風呂が完成した。
三百六十度周囲を見渡せる露天風呂が遂に完成だ。野晒しになっているだけだが。
遂に、というほど時間はかかってないし、俺はほぼ何もしていないが。
湯加減はどうだろうか。指で触って確かめる。
うん、ちょっと熱いがこれくらいなら問題なし。昨日の焚き火の跡に火種が残っていたのが幸いだった。
「よし、もう入っていいな。」
「そうね」
そうして俺は服を脱ぐ。
まず上を脱ぐ。畳んで岩の上に置く。
続いて下も脱・・・ごうとしたところで、ふとルーミアの方を盗み見れば、
俺の目に映ったのは裸体。一糸纏わぬ彼女の裸体である。
闇の妖怪である彼女にこんな言い方をするのも変かもしれないが、とても、眩しかった。
白くて、水を弾く珠の肌。そしてやはり彼女はスタイルがいい。昨日会ったばかりではあるが既に数回、その肢体を目にしている俺でも見る度に見惚れてしまう。エロいというより美しい、という感想が先に出てくる。体のラインは見事な曲線美を描き女性らしさを表現している。指先、つま先、どれほど細かい部分を切り取って見ても文句のつけようが無く、それでいて全身でまとまりがあり、完成されている。彼女をそのまま石像にしたら世界中から絶賛の嵐になると確信できる、完璧な美。この世の美しさに占有率というものがあったとしたら、きっと彼女だけでその何十%も占めてしまうだろう。
そしてその顔は、ほんのりと赤く上気し、目は俺の上裸を捉えていた。
止まっていた手を動かし、ズボンを脱ぎ始める。
彼女の視線はやがて下がり、俺の手がパンツに手をかけた時には、一点に集中していた。
彼女の裸でそそり立った俺のイチモツが露になると、彼女の興奮は最高潮に達し、
パンツを畳み終えるころには、間近に迫って来て、その場でしゃがみ込んで自慰をし始めていたのだった。
「ルーミア・・?」
「・・・・・・・・・・・ハッ!」
我に返ったらしい彼女は立ち上がり、くるりと踵を返すと、
さあ、入りましょうか。といった感じで自分の体に湯をかけ始めた。
・・・今、完全に無かったことにしようとしたよな・・・?
しかし、珍しい。彼女が取り乱すのは。初めて見たかもしれない。
まあ、俺も人の痴態を笑えるような品行方正聖人君子ではないので。
彼女を咎めることもなく、湯を体にかけて待ちに待った湯船に浸かる。
足先から入る。そこから、脚、腿、腰にかけて熱を感じ―――――
「「あぁぁぁぁぁ―――――――――――」」
思わず二人して声を漏らす。
これだ。これ。風呂に浸かった時の全身の鳥肌が総出で立つこの快感。
いやぁ、やっぱりいいな、風呂は。生きてることを実感できる。
命の洗濯とはよく言ったものだ。体だけでなく心まで洗われるようだ。
幽霊が入ったら成仏するかもしれない。これで成仏できるなら本望だろうが。
ふと、隣を見やる。
ふにゃぁ~、と効果音の出てそうな溶け具合。
ルーミアは、彼女にとって初めてとなる風呂をしっかり堪能していた。
頬は赤く染まり、目を瞑って時たま ほうっ、とため息をつく彼女の顔は、誰がどう見てもこの風呂に満足しているとわかる具合だった。
而して、その、体の方は。
絶景なり。
眼福である。
立ち上る湯気と、小さな波による光の屈折で、入浴前ほどはっきり視認できるわけじゃあないが。
逆にその曖昧さが俺の興奮を誘っていた。
そのまま数分ほど凝視していると、流石の彼女も視線に気づいたようで目を開けて
横目で俺を確認すると、
一瞬で顔を背けた。
その後チラッ、チラッ、と俺の方を盗み見ては、俺に見られていることを確認した瞬間、また顔を背ける、というわけのわからない遊びを何回かやった後、
彼女は観念したように、開き直ったかのように、俺の方をじっと見つめてきた。
別に俺はルーミアに裸を見られても気にしないのだが、彼女には彼女なりの何かがあるんだろう。
そうして互いに相手の体を見つめあうこと数十分。
そろそろ良い頃合いだと思い、彼女との距離を詰める。
彼女の腿に手を置き、擦れば、ビクリと可愛らしい反応が返ってきた。
「ん・・・ぁ・・・ちょ、ちょっとぉ・・・・だめだってばぁ・・・・・・」
とても甘い声でそんなことを言う。
言葉とは裏腹に、彼女は手と顔を俺の肩に乗せてきた。
――――――この時の俺はとても調子に乗っていたんだと思う。―――――――――――
「んん・・・やだぁ・・・や、めなさぃ・・・・」
声が小さすぎて聞こえないぞ。心の中でそう言いながら、
俺の手は内腿に差し掛かっていた。
風呂で体が温まって、いつもより敏感になっているのだろう、と。
声が弱弱しいのはそのせいだ、と。
――――勘違いも甚だしい。本当に、この時やめておくべきだった。―――――――
「もぉ、だめぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・でちゃう」
「ゑ?」
消え入りそうな彼女の声が出るのと同時に、
今まで彼女の腿を擦っていた俺の手に水の流れを感じた。
生温かい、水の流れ。
その水の流れが止まると、彼女は一度ブルリ、と身震いをした。
「・・・・・・ルーミア、さん・・・?」
「・・・」
肩に置かれた顔は、彼女の俯き加減で表情を見る事は叶わなかったが、
彼女の耳は大層真っ赤に染まっていらっしゃったので、
顔の色は見る必要もなく・・・
・・・とてつもなく気まずい沈黙が場を支配する。
俺は彼女の腿から手を離し、空を見仰ぐ。
つまり、そう、つまり、俺の手にかかったのは、、、彼女の、、聖水で・・・・
俺の手で感じていたとかじゃあなく、漏らすのを我慢していたと・・・・・・・・・・
「・・・じゃあ、おれはそろそろ」
あがるよ、の言葉を言う前にガッッッと、
肩甲骨を粉微塵にせんばかりの握力が俺を否応なしに引き留める。
隣に目をやると、やはりまだ茹でダコの彼女が、全身からドス黒い闇を放出していた。
「闇まで漏れちゃうんだな」とか冗談言おうもんなら、その瞬間俺の首から上がサヨナラするのは確実。
いつも見ている闇よりも、今日は特に、黒々としているような気がした。
この後俺がどうなったかは想像にお任せしようと思う。
------------------------------------------------------------------------
妖怪は人間の恐怖を糧に生きる。
人間の恐怖を集めれば集めるほど妖怪としての存在が強いものになっていく。
では、人間が最も恐れるものとは一体何だろうか。
その答えの一つとしてあるのが 闇 であるだろう。
日陰、暗がり、そして夜。
五感から得られる認識情報の大半が視覚からのものである、人間は
視覚が機能しなくなる状況に恐れを抱く。それは太古から変わらないことだ。
もし、闇の妖怪が居たら、これほど強いものはないだろう。
神をも凌ぐ、絶大な力を持つ妖怪に違いない。
そして、それほどまでの力を持つのなら
きっと、独りに違いない。 ずっと、独りに違いない。
『彼』が肉を焼いてくれている。
今日は新月。
月明かりのない中で、彼が肉を焼く熾火だけがトロトロと赤い光を放っている。
新月の日、私は気分がイイ。大体私は月明かりが嫌いだ。月は日の光を反射して光っているから。夜は私の時間だ。そこに日の光なんて持ち込まないでほしい。
熾火がパチパチと音を出す。
私は彼が肉を焼く時のこの音が好き。出会ったばかりの頃は自分の肉は自分で焼くようにしていたけど、すぐに気づいた。彼の焼いてくれた肉のほうが美味しいことに。
彼の焼き方と私の焼き方で何が違うのか全く分からないけど、以来、彼に全部焼かせている。私が面倒くさがりなのもある。
パチパチ。火の粉が飛んできた。能力で払い落とす。
彼に出会って、いろいろ変わった。
まず彼が教えてくれたこと。焼いた肉が美味しいこと。風呂が気持ちいいってこと。
次に私の生活リズム。彼に合わせて、夜に寝るようになった。
最後に人間に対する見方が変わった。
人間なんて脆弱で、取るに足りないただの餌だと思ってた。
でも彼は強かった。初めて会った、私を怖がらない人。
怖がるどころか、私に欲情したのだ。
だからこそ、心配にもなる。彼は男のくせに無防備過ぎる。服を脱ぐのに何の抵抗もない。女の体なんかに欲情するし、よく触ってくる。すぐ勃つし。
そのせいで、私が初めての風呂であんな大恥をかく事に・・・このことは思い出さずに胸にしまっておきましょう。それがいいわ。うん。
有り体に言えば、彼はビッチね。性欲が強くて、体が大きくて、そこそこ鍛えてて、顔もよくて、イチモツも大きくて、キスも、舐めるのも、指でやるのも、もちろん本番も。
若々しくて、純情そうな見た目してるくせに滅茶苦茶テクニシャンだし。
後は、優しくて、話も面白くて、変わったこと知ってるけど、適度にものを知らなくて、ちょっとおバカな所もすっごくかわいいし・・・・挙げればきりがないがとにかく
女の欲望を詰め込んだ男ってこと。
パチパチ。火の粉が彼に飛んだ。すぐに能力で払い落とす。彼は気づいてない。
・・・もう焼けたかしら。
「ルーミア。焼けたぞ。」
「・・・ありがと」
彼に礼も言える。前の私なら、人間に礼なんて有り得ない。
・・・うん。いつも通りおいしい。
「おいしいか?」
「まあまあね」
いつものやりとり。このやりとりも好き。
これが終わった後はいつも
「そっか。そりゃあよかった。」
彼が笑ってくれる。
その笑顔を他の誰にも渡したくない。
でも無理なことだ。だって彼には、彼の帰りを待っている人がいる。
彼から直接聞いたわけじゃないけど、彼が私を見る時たまに、昔の女に重ねて見ているときがある。彼の目にその女と過ごした記憶が映っている。その目には、愛がある。
私を見る彼の目にも愛はある。でもそれは本当に愛なの?肉欲と愛を混同させてるかもしれない。いつか彼の目から愛がなくなるんじゃないかと、不安で仕方ない。
パチパチ。
・・・熾火がトロトロと赤く燃える。
周りはどこも真っ暗なのに、これだけが闇を照らす。
この、熾火だけが。
「ルーミア。焼けたぞ。」
「ありがと」
肉を受け取る。おいしい。
「おいしいか?」
「まあまあね」
いつも通り。きっと私はこのいつも通りを繰り返すんだ。これからも。
でもそれじゃあきっと、彼は昔の女のところに帰るだろう。
どこかで変えなくちゃいけない。変えなくちゃ。
パチパチ。火の粉が飛んできた。そのまま、フワリフワリと落ちてきて、
それを私は、手で受け止めた。
闇を照らす熾火からの、贈り物。
それが背中を押してくれたかは分からない
「ねえ」
「どうした?」
もしかしたら、悪い方に転ぶかもしれない
「これ、とってもおいしいわ」
でも言わなくちゃいけない
「毎日食べたいくらいね」
愛してるって。