好奇心は猫をも殺す。
猫は昔から九つの命を持ち、中々死なない動物だと言われてきた。
その猫ですら、過ぎた好奇心を持つと身を滅ぼす。
だから、好奇心もほどほどにしな?
そういう諺。
全くもってその通りだと、つくづく思う。
知らぬが仏。そんな言葉もあったか。知らなくていいこと、知っちゃ駄目なこと、知ってしまうと取り返しがつかなくなること。
そんな恐ろしいことが世の中には沢山溢れているのに、其れでも尚、知りたくなる。
知識を搔き集めだす。無駄に、無意味に、無遠慮に。
そうして集めた中に爆弾が混じっていて、ある日、爆発するんだ。ドカンと、愉快に。
知的好奇心。知的欲求。三大欲求に含まれていないはずのソレが、どうして我々をこんなに突き動かすのか。どうして我々は知りたい衝動に駆られるのか。
それが知りたいな。知りたい。知りた・・・・・・・・・・あ。
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気づいたら俺は、知らない町中にいた。
昨日まで目にしていた森の木々は、一本も無く。
代わりに不思議な建造物が乱立している。
知らない土地に突然飛ばされるのは、これで二回目になる。
でもだからと言って慣れるわけもない。
一歩道に出れば沢山の人が歩いていた。
もちろん話しかけてみた。でも全員無視。もしくは拒否。
ここの人達は皆、自分のことしか考えていないようだった。
人酔いするほど大勢いるはずなのに、孤独感を感じずにはいられなかった。
斯くして、軽い絶望感を味わった俺は裏路地をふらふらと徘徊している。
裏路地、とは言ってもその道には塵一つ落ちておらず、ゴミ箱すら設置されていない。
先ほどの大通りも同様だったが、そのあまりに徹底され過ぎた衛生管理には、逆に気色悪さを覚えるほどだ。
人間が社会を築く際に必ず発生するであろう綻びや、雑味といったものが全く感じられないこの町はとても薄気味が悪く、先ほど目にした人間達は全てロボットだ、とでも言ってもらった方が、まだ納得できる。
とにかくこの町は肌に合わない。そう思いながら、その細い路地を歩く。
何処に行けばいいかなんて分からない。でも歩く。
やがて路地を抜けると、バカでっかい塀があった。それに沿って進む。
すると、これまた大きな門があった。
しかしこの門、何と表現すればいいのか・・・とても特異なデザインをしていた。
すごく奇妙だ。一目見たら忘れることはないであろうデザイン。
でも言葉で表現するのがこの上なく難しい。もどかしいことに。
非常に好奇心を擽られる。
こんな門のついた屋敷に住む、奇特な奴の顔が拝みたくなった。
もっと門に近づく、すると突然
ウイィィィィィィィィィィィィィン
駆動音と共に、門の上から先端にカメラのようなものが備え付けられたロボットアームが下りてきた。ソレは無機質なレンズで俺の姿を補足すると
ピカッ!!!!!!
と、眩いフラッシュを焚いた。
それはもう強い光で、俺は咄嗟に目をつぶる。
そして目を開けた時・・・
俺は研究室にいた。
俺の半径一メートル四方はガラスのような透明な壁で囲われている。
その壁の向こうにはフラスコやビーカーの類が机に並べられており、ボタンの幾つも付いた機械も確認できる。
今分かるのは俺が捕まってしまったこと。
先ほどの光でここに転移させられた可能性が高い。
「こんにちは。」
声がした。見れば、物陰から人が出てくる。今の状況に吃驚しすぎて気が付かなかったが先程からそこに居たらしい。
「言葉は通じるかしら。」
出てきたのは女性。
銀色の長髪を後ろで三つ編みにし、瞳からは聡明な光を感じる。
鼻筋の通った綺麗な顔は、大人の女性の雰囲気を醸し出す。
何しろ目立つのがその服。
先程俺が見た門は、この人の趣味だろうなと、すぐに判る奇妙なデザイン。
その服は左右で色が分かれており、上は右が赤で、左は青。下のスカートは上の服と左右逆の配色になっている。更に服のあちらこちらに星座が描かれており、上の服の右側にカシオペヤ座、左に北斗七星があり、それを彼女の胸が押し上げる形で・・・・・・胸が、
胸が・・・・・・・・・・・・・・でかい。
ムネが、デカい。 おおきいおっぱい。 おっぱいいっぱい。
・・・・・・・・失礼、取り乱した。
えーっと、どこまで言ったっけ。あ、おっぱいか。
そう、彼女の胸は豊満であった。もうスカートの星座とかどうでもよくなるくらい。
ホントにどうでもよくない?星座とか。それより胸だ、胸。
此処までの巨乳になると寧ろ見ない方が失礼に当たるというか。
嫌でも目に入るというか。
もうおっぱい側も見られようとしてるでしょ。これ。そのためにこんなに主張してるんだろうし。
だからこれを目に焼き付けておきなさい、ワトソン君。ウンワカッター。
「えーっと、聞いてるかしら。それとも本当に言葉が分からない?」
なんかおっぱいちゃんが話しかけてきた。これは気を引き締めて応対しないといけない。
俺はこれまでにないくらいキリッとした顔を作る。
「いえ、聞こえてますし、言葉も分かるようです。」
「そう、よかったわ。・・・・ところで、私の目を見て話してくれない?」
おっと、これは失礼なことをした。
俺は目線をおっぱいの本体の方に移動させる。
「それじゃあ、貴方に質問していいかしら。」
そうして彼女の尋問は始まった・・・
「・・・と、いうことになるわね。」
「成る程」
俺は彼女―――名は永琳というらしい―――の質問に答え、自分の身に起きたことを正直に話した後、今度は逆に、俺の方が彼女にこの町について訊いた。
この町・・・永琳の言葉を借りるなら『都市』は、
ここら一帯の人間達が、妖怪や穢れから身を守るために作った安全地帯。
いわば要塞。
永琳と高名な神が協力して展開した、ドーム状の結界に守られている。
妖怪だけでなく、寿命の原因となる穢れも寄せ付けない。
さらに、永琳の作る薬が疫病、難病の類を根こそぎ殲滅したために、人々は病魔に怯える心配もなくなった。
さらにさらに、永琳の知能により都市は大いに発展し、永琳の開発した技術により人々の生活が豊かになり、永琳の整備した社会システムは人々の争いを極限まで無くし、永琳の・・・・・・・・・・・・・・・・
いや、もういいよ。永琳どんだけ働いてんだよ。
まあ、流石に冗談だろう。人間一人でそんなにたくさんの事ができるわけがない。そんなに万能な人は、稀代の天才だ。天才。
彼女は真顔で冗談を言う人のようだ。
兎も角、彼女は俺の話を大方信じてくれたし、俺もこの都市のことは大体わかった。
ただ、俺にはどこにも行く当てがなかった。
彼女はそのことを察してくれたのか
「貴方、私の助手になりなさい。」
という、とてもありがたい提案をしてくれたのだ。
こうして俺は彼女の助手になった。
「そこの試験管取って。」
「これか?」
「そう、それ。」
「はい」
「ありがとう。」
俺は永琳の研究所で、助手として働いていた。
とは言っても、仕事の殆どは彼女の横に座っているだけ。後は二人分の料理を作るくらい。他の家事は全てロボットがやってくれる。
初めの方は彼女に敬語を使っていたのだが、やめてほしいと言われ、やめた。
「ふう、一寸疲れたわね。休憩。」
お、数少ない助手としての仕事が来たようだ。
椅子に座っている彼女の肩を揉む。このマッサージが今の俺にとっての最重要任務。
脊椎と肩甲骨の間の筋肉を揉み解していく。
この位置関係だと彼女の胸を上から見れるのがイイ。
うなじの辺りもやらせてもらう。
彼女は後ろ髪を三つ編みに纏めているため、項がよく見えるのだ。エロい。
続いて頭、彼女の研究は頭を使うものなので気持ち念入りに。
頭を両手で包むようにしてグイーっと頭皮を上に引っ張る感じ。
相当気持ち良かったようで、彼女の口からあぁ、と声が漏れた。
こういう時、自分の手が人より大きくてよかったと思える。
「ちょっとどころか、相当疲れてるみたいだけど。」
「んん・・・」
「ベッドに行った方が良いんじゃないか。」
「ええ、、、、そうするわ・・・」
ああ、こりゃあ疲れてるな。声に元気がない。
取り敢えず肩を貸して、彼女が椅子から立ち上がるのをサポートする。
部屋に備え付けのベッドまで連れて行くと、彼女はバタンキュー、と糸の切れた操り人形みたいにうつ伏せに倒れこんだ。ベッドと体の間でおっぱいが形を変えるのが見えた。
「背中。」
彼女の上に着ていた服とブラジャーが消えた。服は突然消えるもの。これ常識。
背中のマッサージをしてもらいやすいように、彼女が自分で消したんだろう。
手にオイルをつけ、背中全体に塗り広げるようにマッサージする。
スベスベしてて肌がきめ細かい。
その手の流れで、脇と脇腹にオイルを塗りこんでいく。ブラすらないので、横乳が触り放題だ。ただ残念なことに、胸を触りまくると不自然に思われるので、間をとってスペンス乳腺を多めに撫でておく。
んあ、と可愛らしい声が漏れるのも聞き逃さない。
彼女のマッサージをするときに、毎回ここを撫でているから、そろそろ感じるようになってきたらしい。
次に首か腰だが、どちらを先にやろうか。昨日は腰だったから、今日は首が良いだろうか。でも首はさっきやったからなあ・・・
「・・・・・」
「あれ、寝た?」
マッサージ中に永琳が寝てしまった。
普段は聡明で落ち着いている彼女も、寝ている顔はあどけない。
実際、永琳は子供っぽいところがある。何か新しいものを研究している時なんてまさにそうで、目がキラキラと輝いている。意外とかわいいものが好きな所とか、あと結構甘党な所とか、実は少し根に持つタイプだったりする。
例えばこの前の事とか・・・・・・
「永琳。この紐、何だ?」
研究室に見慣れない紐があった。一見すると、どこにでもありそうな麻紐。細くて、すぐ千切れそう。
この紐が気になったのは、永琳は研究室に余計なものは置かないから。紐という存在が浮いていたのだ。
手に取るといきなりニュルニュルとひとりでに動き出した。そして俺の両手が手錠をかけられたように、紐に拘束された。小さな蝶結び。かわいい。
遅れて、研究に没頭していた永琳が返事をする。
「その紐は、登録者以外を捕縛するフェムトファイバー製の防犯グッズの試作品。フェムトは時間の最小単位である須臾を表していて、連続した、組成に隙間のない、最大強度の紐よ。絶対に触らないでね。月夜見様でも抜け出せないかr・・・・遅かったみたいね。」
「・・・どうすれば外せる?」
「無理ね。外す機能をつけてないもの。」
嘘だろ・・・欠陥品じゃん。いや、でもそう簡単に外せたらわざわざそんなに強い素材を使う意味がないのか。
瞬間接着剤に似てるかもしれない。なんか納得。
・・・いや、全然納得じゃないよ!!!!!不味いじゃん!!!
一生このままじゃあないか!!!
タダでさえあんまり役に立たない俺が!!このままだと世のボンデージマニアの女性を満足させることにしか使い道が無くなってしまう!
このかわいらしい蝶結びと共に、夜の雄蝶『ナイトバタフライ』の二つ名で生計を立てていかねばならなくなる!! クソ!!羽は何色にしようかな!!!!
「まったく・・・いつも言ってるでしょう。ここにあるものは勝手に触っちゃダメだって」
「ごめん」
「じゃあ外すから、腕出しなさい」
え?外せんの?無理なのでは?
「言ったでしょう?『試作品』だって。やっぱり欠陥があってね。取り外せる方法があるのよ」
あ、そうなのか。安心した。
同時に意外だ。永琳の作るもので欠陥品があるなんて。
永琳は胸元に付けていたペンを抜いた。そのペンはぐにゃりと変形して、小さい手持ちの電動ドリルみたいな形になる。先についているのは・・・ドリルじゃなく、針?
プシュッ プシュッ
と俺の左右の前腕部に一か所ずつ突き刺せば、急に肘から先の感覚が鈍くなる。
麻酔の類だろうか。
次に麻酔器から食事用ナイフのような形に。・・・正直嫌な予感がする。
俺の予感は見事的中し、ナイフが添えられた俺の左腕が
スルッ
と何の抵抗も見せずに切り落とされた。
熱を持ったナイフがバターの塊を削ぎ落すかの如き、鋭い切れ味。
スルッ
もう一方の腕も切られる。
先程の麻酔にそういった作用があるのか、血が一滴も出ていなかった。
見えたのは俺の腕の断面図。自分の腕の輪切りを見る事なんて人生でそうあることじゃないだろう。一回も無い方が良いと断言できる。気持ち悪いからだ。
血が漏れていない分、はっきり見えるのが嫌だ。目を凝らせば毛細血管の一つ一つが見えるんじゃあないか?静脈と動脈は確り見えた。あ、骨って案外スカスカなんだな。皮膚ってそんなに薄いのか。ああ、駄目だこれ以上は吐き気が。
腕の先の喪失感と違和感、それにグロい断面図。俺のSAN値がゴリゴリ減る音が聞こえてくるようだ。
「まったく、人の話を聞かないんだから・・・」
そう言いながら永琳は切断された方から紐をスルリと取る。うん、ごめん。謝るから切断面をこちらに見せるのを止めてはもらえないだろうか。
「はい、終わり。」
彼女が切れた手を俺の腕に近づけたら、 カチッ カチッ と、磁石のS極とN極みたいに元の状態にはまった。
恐る恐る動かしてみれば、俺の指先はちゃんと動いてくれた。
あぁ良かった。いつの間にか感覚も元に戻っている。
「これで少しは懲りたかしら。」
「・・・え? ・・・もしかしてわざと?」
「本当は意識を昏睡状態にさせたまま手術することもできたんだけどね。」
俺は少しの非難の意味を込めて永琳を睨む。
ひどいじゃないか。俺が何したっていうんだ。
「先週、実験用の人面兎がケージから脱走した時、あなたの部屋でフェラチオしてたことがあったじゃない。」
いや、違うんだよ。あれはあの兎が勝手に・・・・ちなみに結構気持ち良かった。
「先月は、子供になる薬をラムネと勘違いして飲んじゃったし。
・・・あれは結構可愛かったからいいけど。」
ママ永琳はなかなか板についてて良かったぞ。授乳プレイが最高だった。
「兎も角、お仕置きは成功ね。あぁスッキリした。」
彼女は笑顔で仕事に戻った。いたずらが成功した、子供みたいな笑顔だった。
まったく、と、言いたいのはこちらの方だ。
そんな顔されたら怒るに怒れないじゃないか。そんなに可愛い顔されたら。
以上が、俺が体験した永琳の可愛いポイント・・・じゃない、永琳にも子供っぽいところあるよエピソードだ。ご拝聴感謝。
あれ、こうして振り返ってみると、大概俺が悪い気がする。
好奇心を抑えきれずに、自分から進んで危険に突っ込んでいった、俺の自業自得じゃあないか。
まあいいか。危険な目にも遭ったけど、良い事も割とあったし。
どちらかと言えば、±プラスな気がする。
「すぅ・・・すぅ・・・」
永琳の三つ編みがひとりでに解けて、寝易い格好になる。
俺はその髪を撫でる。サラサラ、と指の隙間に髪が流れていく。
彼女の体に塗ったオイルは、直ぐに肌に馴染んだ。
俺は彼女に布団を掛ける
俺は永琳の事が知りたい。
どんな危険な目に遭ったとしても、知りたいのだ。
嗚呼、俺も永琳の事を研究に憑かれた人種、なんて言えないよなあ。
俺だって彼女の研究者だろう。
「おやすみ、永琳。」
そう言って研究室から出ていく
俺の後ろを、カメラ付きナノマシンが追っていることに、暫くは気付けないだろう。
きっと。多分。
どーも。
後書きに書くのは初めてです。
作者のつゆだくめしべといいます。
今回の話の補足を少し
「永琳は子供っぽいところがある。~ 実は少し根に持つタイプだったりする。」
らへんの伏線回収についてです。
「何か新しいものを研究している時なんてまさにそうで、目がキラキラと輝いている」
→主人公の問いかけに遅れて返事をするところ。
「意外とかわいいものが好きな所とか」
→フェムトファイバー製の防犯グッズが蝶結びになるように作られているところ。
「あと結構甘党な所とか」
→子供になる薬をラムネに似せて作るところ。
「実は少し根に持つタイプ」
→言うこと聞かない主人公にお仕置きするところ。
自分で読み返しててクソ分かりにくいな、と思ったので補足させていただきました。
あと今回、説明不足の小道具や機械の登場が多かったのも、
テーマである「好奇心」を意識した感じです。
人面兎は・・・まあ分かると思います。
・・・はい。どうでもいいですね、ごめんちゃい。