欲望。
「欲」して「望」むと書く。
人間誰しも欲を持つものだ。
別に、八百年前の錬金術師の話を掘り起こそうってわけじゃあない。
ただ少しの疑問がある。
世に聖人と言われ、あまつさえ神になった人間がいる。それも複数。
彼ら聖人には、薄汚い欲望は無かったのだろうか。
どす黒い執着が本当に無かったのだろうか。
生に執着のない奴が、死んだ三日後に生き返ったりするだろうか。
神のみぞ知るところである。 あ、聖人が神なのか。
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聖徳太子。
突如として政治の場に現れた彼女は、メキメキとその頭角を現し
圧倒的カリスマ性と、指導者としての能力をもってして
正に向かうところ敵なし。新進気鋭の人物。
更にはその人柄も高い評価を受けており、公平、公正を絵に描いたような人物だとか。
民のために力を尽くすその姿から、聖人としてこの世に生を受けたに相違ない、と実しやかに巷では囁かれているらしい。
いやあ、仮にも自分の仕えている御人が、そのように、世間様から認められていると思うと、俺も鼻高々というもんだ。
言い遅れたが、俺は今、政(まつりごと)を執り行う宮で働いている。
とはいえ、「政は女がやるもんだ。男は家で飯でも作っとれ!! 男体盛りをな!!
ハ―ッハッハッハ!!!!!」とか言われるこの時代で、俺が政治なんてするわけがない。
俺がやるのは上官だとか高貴な身分の方のお世話だけ。宮内の掃除とか、色々と簡単な仕事ではある。 最も、かなり重要な仕事もあるが・・・
「よう。大男、こんなところに居ったか。」
俺が廊下の掃除をしている折、声のかかる方を見やれば
其処ら辺の童(わっぱ)と変わらぬ背丈。
其れを僅かでも高く見せようというのか、高い烏帽子を被り、
狩衣のような、よく分からぬ装束を着て、紺のスカートを穿いた、天真爛漫を体現したような少女がやって来た。
「布都様、お早う御座います。」
物部布都。こんななりをしていても彼女、物部氏でも折り紙付きの実力者である。
神道、道教を信奉しており、仏教に対して強い敵対心を持っている。
「おう、お早う。・・・今は掃除の最中であったか?」
「はい。何か御用でしたか?」
「いや、まあ、用事というほどではないな。
・・・しかし、相変わらず良い体をしとるのう。お主は。」
「お褒めに与り、光栄です。」
布都様は俺の体をジロジロと見た後、
徐に、左腕に抱き着いてきた。
そのまま厭らしい手つきで腕を擦る。
「あっ、布都様、 困ります、そんなこと・・・」
「ふふふ・・・よいではないか、よいではないか。」
一応言っておくと、別に本当に俺が困っているわけではない。
布都様も俺が嫌がっていたら、こんなことは絶対にしてこない。
お約束というやつだ。
プレイの一環として、こういうのを事前に決めておくと興が乗るというか。
非日常の刺激が、一寸の演技で生み出せるならやっておいた方が良いだろう。
政治というお堅い仕事をされている布都様には、偶のこうした悪ふざけが、息抜きには丁度いいものらしい。
「そろそろお部屋に行きましょうか。」
「うむ!」
布都様がせがむので、俗にいうお姫様抱っこでお部屋まで運ぶ。
この流れもいつも通り。
その背丈の事もあるのか、普段子ども扱いをすれば、臍を曲げて口を聞いてくれなくなる布都様ではあるが、この時だけは童女に対する扱いで正解なのだ。
中々、扱いの難しい方である。
布都様のお部屋に入ると、まず気になるのが、調度品の数の多さである。
瓶、壺、液体の入った壺、皿、米の入った皿、掛け軸、皿、花の活けてある瓶、皿、茶碗、皿、粟の入った皿、短剣、皿、皿、皿、皿、・・・・・・・
足の踏み場もない、というほどの事もないが、とにかく物が多い。
これというのも、彼女が風水を修めているからである。
風水とは、周囲の環境に手を加え、「気」の流れを人為的に変える秘術で・・・
まあ、本当に効果の有るおまじないみたいなものらしい。
だから、足元に無造作に置いてあるように見える皿なんかも、実際には意味のある配置らしく、触って動かさないように、気を付けなければいけない。
布都様の風水の効果は凄まじく、このだだっ広い宮の気の流れ全てを、この部屋で操作しているというのだから、そのすごさがわかる。
兎に角、それだけ重要な部屋である。
俺がこの部屋で、今から何をするかお教えしよう、
赤ちゃんプレイだ。
布都様が服を全てお脱ぎになる。俺は上の服だけはだけさせて、正座で畳に座る。
布都様が俺の膝に横向きに座る。
俺は左腕で布都様の頭を抱え、右手は布都様の秘部に添える。
布都様が胸に顔を埋めるのを確認して、右手の中指と薬指をゆっくり動かす。
皆さんお気づきの事とは思うが、俺の重要な仕事というのは、この様に、仕事でお疲れになった為政者の方々を『癒す』事だ。
「んん・・・・兄上ぇ・・・よしよししてくれぇ・・・」
「よしよし、布都はえらいね。」
ただの赤ちゃんプレイではない。
母親でも父親でもなく、兄になる必要がある。
言うまでもなく、俺は布都様の兄ではない。
布都様には実兄がいらっしゃって、小さい頃はその御方に甘えていたらしい。
それで、俺を使うときも兄の代わりをさせているということ。
序に性処理もしちゃえばいいじゃん!我天才!!ってな感じで
今のこの形に落ち着いた。
俺としても、可愛い妹が甘えてきているようで楽しい。
でも、男の乳首をチュウチュウ吸うのは何か意味があるのだろうか。神綺にも言える事だったけど。
布都様、吸っても何も出ませんよ。
「んんっ!・・・あっ、そこ・・・・はぁっ」
同時進行で手でシているので、布都様の口から喘ぎ声も漏れる。
快楽から逃れようと、必死で身をよじる姿は可愛らしい。でも、体格が二回りほども違う俺の腕に抱きかかえられているから、逃げることはできない。
観念してイって下さい、布都様。
俺、この後も色んな御方のお相手をしなくちゃあならないんです。
指のストロークを早める。
「あぁ!! 兄上っ!!兄上ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
布都様が絶頂をお迎えになる。
そのちんまい足先がピンと伸び、痙攣する。
身体相応に小さい花弁から、身体不相応に愛液が溢れ出す。
「上手に達せたね。えらいね、布都は。」
よしよし、と頭を撫でれば、目を細めなさる。
布都様は終わった後、必ず睡魔に襲われるのだ。
今回は早朝という事もあってか、睡魔には勝てないようだ。
「布都、眠いのか?」
「ぅん・・・おふとんつれてってくれぇ・・・」
じゃあ、兄と一緒に寝ようねー、と言って布団に連れていく。
二度寝は子供の特権。
本当に布都様は寝付きが良く、布団に寝かせて頭を撫でるだけで・・・ほら寝た。
布都様はプレイをなるべく長く楽しもうと思っているようだけど、この寝付きの良さも含めて、あまり時間が掛からない人だから、俺としても助かっている。
俺がお相手をする人数というのは、他の下男に比べて特段多いってわけじゃないが、俺の場合はちょっと特殊だからな・・・
自分の部屋に戻る。
下男にも小さい部屋が与えられている、素晴らしい職場だ。此処は。
まあ、自分の部屋を使いにくい御偉方のための部屋でもあるんだけど。
いきなり他人の部屋に押しかけてくるのはどうかと思う。
さて、布都様のお相手も終わったことだし、休憩・・・とは、いかない。
俺の場合、本来休憩に充てる時間にも、一仕事あるからだ。
「出ていいぞ。ルーミア。」
言うが早いか、俺の影からにゅっと人の上半身が現れる。
ルーミア。闇を操る妖怪。
現在は俺の影の中に隠れて人目を避ける生活をしている。
《離れたくない》 そう言ったあの日からずっと。
まさか本当に離れなくなるとは思わなかった。
「はぁー・・・・・・疲れた」
「・・・風水か?」
「ええ。あいつの部屋、魔除けの気が流れてるんだもの。息苦しいわ。
まあ、あいつ自体が早漏だから助かってるけど。」
布都様の部屋、魔除けの気も流れてたのか。
ルーミアに効くんだったら、相当凄いんだな。
「さて、じゃあいつも通り、やってもらおうかしら。」
「ああ、わかってるよ。」
ルーミアが、俺がこんな仕事をするのを許してくれた条件。
壱、『癒す』仕事が終わる毎にルーミアにも奉仕すること。
弐、他の女と本番行為をしないこと。
参、他の女に絶対に「愛してる」と言わないこと。
以上の三点。
今の所、全部守れてるから問題ない。
妖怪のルーミアが人間に見つかるわけにはいかないので、ルーミアへの奉仕は俺の休憩時間を使って行っている。
「何をすればいい?」
「んー、そうね、舐めてもらおうかしら。」
ルーミアがスカートをたくし上げる。
もう脱いだのか、下には何も穿いてない。彼女の秘部が露になっている。
俺は屈んで、いそいそとスカートの中に頭を入れる。
途端、鼻腔に広がるルーミアの匂い。
嗅ぎ慣れた匂い。
でも何時嗅いでも、雄の部分が首をもたげる匂い。
ダメだ。早朝からおっぱじめたら、今日一日持たないぞ、と自分に言い聞かせる。
御偉方との特殊プレイの数々を賢者モードで乗り切るのは無理だ。精神的にキツイ。
更にダメ押しに、その都度、ルーミアとのアディショナルタイムも有る。体力と精神力を十分に残しておく必要がある。
自分は抑えて。且つ、ルーミアには満足してもらえるように。これを意識していかないとこの仕事は続けられない。
肝に銘じてルーミアの陰唇に舌を這わせる。
「ん・・・はぁ・・・・・やっぱイイわね・・・これ、好き・・・」
ルーミアも最近、というか俺がこの仕事を始めてから、本番行為以外にも興味を持ち始めたようだ。
他の人間と俺のプレイを見ていろいろ勉強しているらしい。
近頃は特にクンニリングスを要求してくることが多くなった。
俺が射精しなくて済むのは有難い。
丁寧に、陰唇を隅から隅まで舐め続ける。
・・・そろそろ舌が痛くなってきた。
「アアッ!! ンーー!! ―――――――ッ!!!」
ルーミアは俺の頭をガッシリ掴んで、自分の股間に押し当てる。
両腿にも顔が挟まれて全く動けなくなる。息もできない。
その状態でルーミアが達した。
口では受け止めきれなかった愛液が鼻や目にもかかり、
それでも受け止めきれなかった分が畳に滴る。
少しの余韻の後、スカートの中から頭を出した俺に
「はぁ・・・はぁ・・・ごめんなさい、痛かったでしょ・・?」
ルーミアがそんなことを言ってくる。
でもその表情は恍惚を浮かべ、口元にはほんの少し笑みを湛えている。
ルーミアの愛でマーキングされた俺の顔を見てそんな貌をする辺り、彼女にも妖怪らしい一面を窺える。
俺も微笑みを返してこう言う
「大丈夫。それより・・・癖になりそうだ、この匂い。」
実際、問題は無かった。
ルーミアがその気になれば、俺の頭なんてスイカ割の西瓜みたいに弾け飛ぶんだが、そうならないってことは、彼女がある程度気を使ってくれているという事だ。
やっぱりルーミアは優しい。
それはそれとして
「顔と床を早く拭かないと、誰が来るか分かったもんじゃない。」
此処での性活は、スリル満点だった。
「入っていいよ」
「太子様、失礼します。」
襖を開けて部屋に入る。
俺みたいな下男とは違う、大きい部屋。
しかし、無駄なものは殆ど置かれてなく、装飾なども無く生活するためだけの質素な部屋という印象。
正に太子様のお人柄が出ているというか、仁者楽山の御方は上辺のみの飾り気を持つことがないのだなあと、しみじみ思う。
「やあ、わざわざすまないね。呼び出したりして。」
「とんでも御座いません。太子様から呼ばれれば、直ぐに駆けつけます。」
加えて、知崇礼卑ときている。
誰に対しても偉ぶる事無く、平等に接される御方。
太子様の召されている着物は紫を基調としている。
紫。
それは、冠位十二階における最高位を示す色。
太子様は実質的に国の指導者であるという事。
其れほど偉い御方の御用件は、もう判ってはいる。
「ふふ・・・そんなに固くならなくてもいいよ。
私と君の仲だ。」
太子様はニッコリと笑う。
「一緒に酒でも飲もうじゃないか。
・・・おっと、私が酒を飲むことは秘密だよ」
酒まで持ち出して上機嫌だ。
「そう緊張することも無いだろう。だって
男同士じゃないか、私達は。」
太子様は男である。
「いやぁ~、君が来てくれてホントに良かったよ。」
「光栄の極みです」
太子様が実は男だという事は、宮内では既に公然の秘密となっている。
元々、その中性的な美貌で女としてやっていたらしいのだが、如何にも精神的に参ってしまっていたようだ。
それで苦しんでいる時に、俺が下男として雇われて宮内の性意識が変わった。
男性を見下す風潮は鳴りを潜め、自分が男だと言い出すきっかけになった。
結果、何も問題なく受け入れられた。
・・・というのが太子様の弁であるが、別に俺は何もしていない。
ただ仕事をしていただけだ。
俺のせいで性意識が変わったのは確からしいが・・・
別に、俺が居なくても太子様が男だという事は受け入れられていたと思う。
性別の一つや二つ偽っていた所で、今迄の太子様の功績を見れば、文句をつけれる輩は誰一人としていないだろう。
それに、功績だけじゃない。
太子様には性別の壁なんて軽々と超えるカリスマ性がある。
知ってますか、太子様。最近宮内で太子様のファンクラブが出来たそうですよ。
女ばかりじゃなく、男も結構入ってるらしいですよ。
・・・まあとにかく、太子様は俺に感謝しているらしいのだが、別に大したことはしてないという話だ。
それにしても、太子様と二人きりで晩酌とか、俺が女だったらファンに刺されてるまである。
・・・男でも危ないんじゃないか?
「うーん、それにしても君はあまり酒を飲まないね。」
「あんまり酒は強くないんですよ。
太子様だって全然飲まないじゃないですか」
そう、さっきから全く酒が減ってない。
先程の言い方からして、太子様はかなりイケる口だと思っていたけど。
「何を言ってるんだ、君のために用意した酒だよ?」
「え?」
いや、だってさっき、秘密にしてくれって・・・
「あぁ、あれは方便だ。酒が飲めるのは確かだけど。
表向きとはいえ、仏教を崇拝してるんだ。私が酒を飲むと示しがつかない。」
太子様は、表向きは仏教を民に広めていることになっている。
しかしその実、太子様は道教を信仰する。
何でも、仙人になり寿命に縛られることのない人生を送りたいらしい。
前に俺が不老である事を見抜かれた時、やたらと訊いてきたのは、やはり不老の体に興味があるからだろうか。
あれ?もしかして俺のせい?
「そうだね。君のせいだ。」
一息、
「君と共に長生きしたくなった。」
ああ、もう。
マジで惚れるじゃないか。そんなこと言われたら。
「ははは、冗談だよ。」
「太子様、冗談でも惚れるんで、やめてください・・・」
「はっはっは!」
太子様、そういうとこですよ。
酒の下りからそのコンボはたとえ政敵であっても惚れます。
・・・そういえば、太子様の性別が明らかになった時に、政敵がそれを利用しなかったのはもしかしてそういう事ですか? 政敵すら誑しちゃったんですか?
「誑すことに関しては、君の方が得意じゃないかい。」
「え?俺ですか?」
「ああ、君の資質はとんでもないね。
強い存在であればあるほど、君という男に惹かれるものらしい。
布都の奴も、君に大分欲を向けてたよ。相当刺激の強いことをやったんじゃないかい。」
そうなんですか?心当たりが無いですね。
「ものを言う時は、人の目を見て言うものだよ。それにしても、
今も女が、君の直ぐ傍で君の事を想っているような気がするんだが・・・」
ドキッとした。ルーミアの事がばれたかと思った。
ジッと俺の事を見つめる太子様の瞳が、全てを見透かしているような気がして
俺はなるべく早く部屋に戻ろうと思った。
去り際に太子様は、残りの酒をくれた。
俺は酒は得意じゃないから、ルーミアに飲ませようと思う。
その夜、酔ったルーミアに滅茶苦茶にされた。
それから数か月後
布都様がお亡くなりになった。
表向きはそういう事になってる。
太子様に聞いた所によると、尸解仙に成って復活するために、一度死ぬ必要があったらしい。
復活するのか、それなら良かった。
次いで、太子様もその後を追うようだが・・・・
最近、太子様の様子がおかしい。
前ほど俺に会ってくれなくなった。
俺だけしか気づいていないようだが、匂いも違う。
前よりも太子様の匂いを敏感に感じ取れるようになった。
なぜだろうか・・・俺の嗅覚が良くなったわけでもないのに。
ほら、今も匂ってきた。
恐らく俺の部屋の直ぐそばに立っている。襖の向こう。
不遜ではあるが、此方から声を掛けようか。
「太子様、いらっしゃるんですか?」
「・・・驚いたな。本当に分かるとは。」
本当に?どういう意味だ?
「いや、此方の話だ。
すまないが、今夜、私の部屋に来てくれないか」
「・・・ええ。参ります」
匂いが遠ざかった。
「太子様、参りました。」
「あぁ・・・入ってくれ」
夜、太子様の部屋に入る。
・・・凄まじい匂いだ。くらくらする。
「お久しぶりです」
「あぁ・・・」
本当に久しぶりに太子様の姿を見た。
そして見た途端確信した。
その御姿は、やはり前とは違う。
「太子様、無礼を承知で申し上げます・・・
あなたは本当に以前の太子様と同じですか?」
「・・・・・・くっくっく、やっぱり君にはばれたか・・・
あの仙人の言った通りだ。」
あの仙人。恐らく、前々からこの宮内に出入りしているあの胡散臭い女の事だろう。
あいつが太子様を変えたらしい。
「あぁ。今夜君を呼びつけたのは他でも無い。
君に『癒し』の仕事をして欲しい。
『女』である私に。」
太子様は女になっていた。
「んっ、あぁっ、 ―――――――っ!!!」
太子様が俺の指で達したのを確認する。
太子様が女体化した原因は仙人になる方法を模索していく中で、女の「胎」が必要だと判明した為に、浴びると女体化するという中国の泉の水を使った結果らしい。
しかし、太子様が溢れ出る女の性欲に日々身を侵され、遂に限界が来たという事。
元々男であったので、突然の性欲の激化に耐えきれなかったのだろうか。
匂いも女の匂いになったので俺は感じ取れた。
「・・・情けないな。聖人と呼ばれた私が、まるで色欲魔だ。」
「・・・」
「性欲の一つも抑えられないとはな・・・」
「・・・太子様」
「ん?」
「満足して戴けたでしょうか・・・」
「・・・あぁ、大満足だ」
嘘だ。
「だから、もう、部屋に戻っていいぞ・・・」
嘘だ。太子様はよくない。
「なぁ、だから、もう・・」
嘘だ。太子様は何で
「もう、泣くのは止めてくれないか?」
「え?」
自分の頬に涙が伝っていた。
なんでか、どうしてか知らないけど、無性に、涙が出てきた。
「女にとって男の涙ってのは、こんなにも心に来るものなんだな。初めて知ったよ。」
「もう、しわけ、ございません・・・」
涙が止まらないのは、きっと、
太子様が居なくなったからだ。
俺の中の太子様。尊敬する太子様。
こうあって「欲」しいと「望」む太子様。
自分勝手なことだ。
勝手に理想像を創っておいて
自分勝手にこれは違うと云う。
目の前の太子様は違う。同じなのに。
頭では解っているのに、心は違うと云う。
もう居ないんだと。
「太子、様」
「ああ・・・君が落ち着くまで待つさ、私は」
「お見苦しい所をお見せしました・・・」
「いや、構わない」
「ありがとうございます。ところで太子様」
「なんだい?」
「本当に、満足しましたか?」
「・・・敵わないな。女になった途端、君に敵わない。」
太子様はまだ満足されていない。
「折角女になったことですし、どうせなら楽しんでみてはいかがでしょう。」
影をチラリと見る。
影は動かない。
了承を得た。
「そうだね。『聖人』の私は居なくなったことだし・・・
残っている『俗人』の私は、君を襲いたくてしょうがないんだ。」
その言葉を待ってた。俺は服を脱・・・
あ、そうだ。その前に一つ
「名前を、教えて頂けますか」
『聖人』ではなく。
今から体を重ねる、一人の女の子の名前。
「神子。 豊聡耳神子だ。」
「いい名前ですね、神子様。」
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神子様と夜を明かした翌日、俺は解雇通知を受けた。
「全く、他の女とヤったら仕事しちゃ駄目だって言ったじゃない」
「仕事は解雇されたぞ?」
「辞めるならヤっていいって話じゃないわよ・・・バカ」
影から出てきたルーミアはとても不機嫌そうだった。
「でもあの時、いいって・・・」
「誰も言ってないわよ!!」
あれ、影が動いたら了承だったらしい。
てっきり、「沈黙は肯定」みたいな感じかと・・・
「まあ、いいわ。今回は許してあげる。」
優しいルーミアさん好きです。
「だって昨夜みたいな激しいやつを、私ともやってくれるってことでしょ?」
昨夜・・・激しかったなあ、神子様。
「欲望丸出しだったわよね。あれ本当に元聖人?」
やめて差し上げろ。
・・・まあ、でも、神子様らしいよなあと。
生にしがみ付いて仙人になろうとしたり
でも、一回死ぬのが怖くて布都様に実験台になってもらったり
最後にあんなこと言うんだもんなあ・・・
《復活したら、先ず君を抱きに行くからな。楽しみに待っていてくれ》
以下、「御伝鈔」より抜粋
『行者宿報設女犯 我成玉女身被犯 一生之間能荘厳 臨終引導生極楽』
「君が女に対する欲望に負けそうになったら、私が美しい女に姿を変えて、一生君を受け止めよう。そして、極楽へ導いてあげる。」
了