あの日、僕はたまたま浴室の前のベンチに座っていたんですけど、女風呂の方へアネットとメルセデスが二人仲よく入っていくのを見て、衝動を抑えることができませんでした。井戸の向こうには、僕だけが覗ける秘密の花園があるんだ……!
「あれ、アッシュくんも覗きにきたんですか?」
(イグナーーーーーツ!!!)
先客がいました。誰あろう、エロガキ眼鏡こと、金鹿の変態観察眼、イグナーツでした。クロードとヒルダのときに懲りず、まだ覗きを続けているとは……。
「きょうはすごいですよ、アッシュくん。ベレス先生にドロテアさん、マヌエラ先生に、あとアンナさんまで」
す、すごい……。ガルグ=マク大修道院内の巨乳が勢ぞろい……あ、アンナさんは違うかな。
「イグナーツ。いまからさらにアネットとメルセデスがきますよ。楽しみですね」
「うわあ、あの二人が? きょうはついてますね! あはは」
まさかイグナーツと意気投合できるなんて思ってもいませんでした。これが浴室の効果というものでしょうか。あなどれません。
窓から覗いていると……きました、先にアネット、後ろからメルセデスがやってきます。もちろん全裸です。
「うわすごい……やっぱりメルセデスさんは大きいですね……」
イグナーツが眼鏡をかけ直しながらいっています。たしかにメルセデスは大きいです。でも、アネットの小さい胸も、僕は、好きです……!
観察していると、二人はたがいの髪の毛を洗い始めました。先にメルセデスがアネットの髪を洗い、流す前に場所を交代し、今度はアネットがメルセデスの髪の毛を……二人の体はすぐに泡だらけになっていきます。
「不思議ですね。こうして見ていると、なんだかお母さんと子どもみたいに思えます」
イグナーツの言葉に僕も頷きました。それほど歳は離れていないはずなのに、幼い雰囲気のアネットと母親のようなメルセデス。いつも仲のいい二人の姿は浴室内でも変わることなく、何やら楽しげに話し合い、笑っていました。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
突然、横から荒々しい息づかいが聞こえてきたと思ったら、イグナーツが股間を押さえてもぞもぞしています。
「イ、イグナーツ? だ、大丈夫ですか?」
ひょっとして、もう我慢できないのでしょうか……。
やっぱり、早すぎます……!
「まさか、アネットとメルセデスを見ながらいくつもりですか? させませんよ!」
こんなことをしていて何だといわれそうですけど、中の二人は同じ学級の生徒です。他の学級の、よりによってこの変態ちび眼鏡に見抜きされるのは許せません。
「こんなこともあろうかと、きょうは手斧を持ってきています。ここで勝負しますか? イグナーツ」
僕がいうと、イグナーツは短剣を懐から取り出しました。
「あはは。ボクが手ぶらできてるわけないじゃないですか。ボクの楽しみを奪う人は、ここで永遠に眠ってもらいますからね」
「くっ……イグナーツ、きみっていう人は……!」
僕たちが対峙していたとき、しゅっという音とともにイグナーツの持っていた短剣が地面に落ちました。
(た、短剣が、二本……? まさか)
地面に落ちた短剣はなぜか二本。そのうち一本は狩猟用でした。
「きみたち、ここで何をしている」
シャミアさんが、つかつかと歩きながら訊ねてきます。いつのまに僕らのそばにきていたのでしょう。まったく気がつきませんでした。
「あ、いやその……」
僕が戸惑っていると、
「シャミアさん、ちょうどいいところにきてくれました」
イグナーツが満面の笑みで振り返ります。
「アッシュくんが女風呂を覗いていたので注意していたところなんです」
(イッ、イグナーーーーツ!!!!!)
心の叫びが思わず口から飛び出しそうでした。
このエロガキくそ眼鏡は、いったいどうすればいいのでしょうか。
「ほう。女風呂を覗き見とは、いい趣味をしているな。アッシュ」
シャミアさんが無表情のまなざしで僕の方を見てきます。
「シャ、シャミアさん誤解です! 僕は……僕は……!」
詳しく説明したいのに、肝心な時にうまく言葉が出てきません。
「だが、私が見ていたところ、二人で覗いていたようだが? 実際はどうなんだろうな」
……これは察するに、シャミアさん流の追い込み方、なのでしょうか……。
「悪いが二人とも、これからレア様のところへ一緒にきてもらおう。話はそれからだ」
「レ、レア様ですか!!??」
僕は目の前が真っ暗になりました。よくて退学、最悪の場合、処刑されるかもしれません。
「あの、シャミアさん、ボクは無関係なんですけど……」
この期に及んでまだしらを切り通そうとするイグナーツに、シャミアさんはいいました。
「イグナーツ。これでもう何も悩むことはない。絵描きになることに専念できる。騎士になる夢は閉ざされたのだからな」
「は……ははは……」
イグナーツは笑うと、その場にぶっ倒れました。
(イグナーーーーツ!!!)
自分だけ気を失うなんて……卑怯すぎますよっ……!
「やれやれ、困ったやつだな」
シャミアさんはそういうなり、気絶したイグナーツの襟首をつかみながら引きずり始めました。
「アッシュ、ついてこい。くれぐれも、私から逃げようなどと思わないことだ」
「……はい……」
僕は、これからどうなるのでしょうか……。