ローグハンターが長女、次女との一晩を過ごしてから幾日か。
三姉妹が使っている寮の一室では、妙な空気が流れていた。
三つのベッドを真ん中に寄せ、三人が並んで眠れるようにしてあるのはいつものことだが、問題なのはその上。
「んふふ~♪」
「だらしないわよ、まったく……」
ベッドの上に正座した長女の膝に次女が頭をのせ、ふにゃりと気の抜けた笑みを浮かべているのだ。
長女は苦笑混じりに頭を撫でてやれば、その笑みは余計にだらしのないものへと変わる。
あの晩──次女もローグハンターの女にされたあの日に、なし崩し的に行われた姉の膝枕は、彼女にとってひどく懐かしいもの。
それがある種の毒となって次女の頭を侵し、彼女を酷いレベルでの甘えん坊へと変化させてしまったのだ。
他人がいる時や、店に顔を出している時に、そこまでの違いはない。
だが仕事を終え、こうして部屋に戻ってくると彼女は駄目になってしまう。
長女はやれや困ったようにと首を振るが、妹に甘えられるというのは悪くないのか文句を言うことはない。
だがそんな仲睦まじい様子を見せる室内中に、一人だけ不満そうにしている人物がいた。
「……」
露骨にぷっくりと頬を膨らませ、血色のいい唇を尖らせて顔全体で『不機嫌です』と告げているのは、三姉妹の末娘だ。
いつもは結っている黒い髪を下ろし、櫛で梳いていたら、背後から何やら二人の姉の声が聞こえたのだ。
そして振り向いてみればいつもあれ。ほぼ毎日あれでは嫌になる。
「むぅ……っ」
訳ではなく、単純に羨ましがっているだけのこと。
愛する長女に構われている、愛する次女の姿は、別に見ていて嫌な気分になるわけがないのだが、そこに自分が含まれていないのは、酷く疎外感を感じて嫌だ。
「……」
髪を整えた末娘は溜め息を吐くと、相変わらずくっついている姉二人に目を向けた。
長女はそれに気が付くと微笑みながら「どうしたの?」と問い、次女はふにゃふにゃの笑みを浮かべたまま「どした~」と気の抜けた声で問うた。
「えい!」
そして返事の変わりに放った声と共に、末娘は跳んだ。
「「え……」」と間の抜けた声を漏らす姉二人だが、長女は跳んできた末娘にベッドに押し倒され「きゃ!?」と悲鳴をあげ、次女は末娘の下敷きにされて「ふぎゃ!?」と汚い悲鳴をあげる。
「もう、どうしたのよ」
どうにか末娘を抱き止めた長女は、可笑しそうに笑いながら彼女の頭を撫でてやると、嬉しそうに笑って豊かな胸に頬を擦り寄せる。
長女と末娘に挟まれて悶えていた次女は、芋虫のようにぐねぐねと身体を捩りながらそこを脱出すると、長女に抱きつく末娘の姿を見下ろし、ふっと小さく笑んだ。
「ん~」と声を出して甘える末娘の姿は可愛らしいし、それを優しく微笑みながら受け止める長女の姿も、さながら聖母のよう。
──まあ、見たこともないんだけど……。
近場の神殿や、知識神の寺院なんかに絵画の一つや二つ飾られているのかもしれないが。
少なくとも彼女らの日常はこの宿屋で回っているし、遠出する切っ掛けもあまりない。
今度休みをもらって街を一回りしようかなどと思いながら、思い描くのは
姉がいて、自分がいて、妹がいて、表向き護衛の彼もいて、そうやって四人で街を歩き回ってもいいかもしれない。
「あ、そうだ。ねえねえ、一つ頼まれてくれない?」
恥も外聞もなく、幼子の頃に戻ったように長女に抱きつく末娘の背を撫でながら次女は問うた。
末娘が「ん~?」と声を漏らしながら、名残惜しそうに身体を起こすと、「なに、お姉ちゃん」と首を傾げた。
次女はごほんと咳払いすると、ちらりと長女に目を向けた。
長女はこくりと頷くと身体を起こし、そっと末娘の乱れた髪を手梳で整えてやりながら「よく聞いてね」と耳元で告げる。
前々から話していた計画に、末娘を巻き込む時期がきたのだ。
何も知らない彼が何と言うかはわからないが、彼ならきっと大丈夫だろうと信じている。
「私たちが、時々上の部屋に配達に行くのは知ってるわね?」
「うん。えっと、誰の部屋かは知らないけど……」
二人とも教えてくれないしと、しょぼんと俯きながら呟いた言葉に、長女は「ごめんなさい」と謝りながら末娘の頭を抱き寄せた。
豊かな胸に彼女の顔を埋めながら、せっかく整えた髪を崩さないように頭を撫でてやる。
「きっと、教えたら会いたがると思って。あの人にも迷惑をかけてしまいそうだから」
「……?」
姉の神妙な面持ちでの言葉に首を傾げると、次女が「私も最近知ったのよ?」と付け加えた。
そしてにこりと笑いながら、告げる。
「その部屋の人は
「あの人……?」
「私たちを、助けてくれた人」
「……!」
次女の言葉にいまいちわかっていなかった末娘は目を見開いて「あの人が、この宿にいるの!?」と驚きを露にした。
「「ええ」」と二人の姉は同時に頷くと、長女が末娘に告げた。
「だから、次の配達の時にはあなたが持っていって?そして、ちゃんと挨拶をしていらっしゃい」
「うん!えっと、お洒落した方がいいのかな……!」
「……お洒落って、別にあなたは着飾らなくても綺麗よ」
長女は想像以上に乗り気の末娘の様子に多少狼狽えながら返すが、肝心の末娘は聞く耳を持たない。
「どうしよう、どーしよ!」と両手を頬に当てて、身体をくねらせながら困っている様子。
──まるで、恋人とデートする前日みたいね……。
長女が困惑気味に後退る中、前に出たのは次女だ。
ピンと人差し指をたてながら、生徒にものを言う教師のような態度で告げる。
「別に制服なんだから、お洒落もなにもないでしょ?」
そして告げたのは、無慈悲な正論であった。
その言葉を受けた末娘はピタリと止まると、たっぷりと間を開けてから「………それもそうだね」と呟く。
「どうしよう。胸元開ける?でも、お姉ちゃんたちみたいにおっきくないし、足を見せるにしたって──」
ぶつぶつと独り言を呟きながら、あれこれと考えてうんうんと唸っている。
「お姉ちゃん、これ大丈夫かな?」
「えっと、あの人に任せましょう」
一人の世界に入ってしまった末娘を放っておき、ベッドの隅で顔を会わせた長女と次女は、少々心配そうに末娘を見つめた。
当初の予定では嫌がったり、緊張したりして、「お姉ちゃんたちも一緒に来て!」と言われると思っていたのだが、何だか大丈夫そうである。
「へへ。あの人に会えるんだ、ふへへ……」
──大丈夫、かしら?
長女は怪しい笑みを浮かべる末娘の姿を見つめ、途端に強烈な不安を抱くが、彼なら大丈夫と信じることにした。
彼ならよっぽどのことがなければ心配あるまい。冒険者なのだし。
「さ、今日は寝ましょ。明日もお仕事、頑張らないと」
「「は~い」」
長女がポンと手を叩きながら告げた言葉に、妹たちは一斉に応じた。
それを合図に長女がベッドの真ん中に寝転び、その両脇に次女と末娘がそれぞれ寝転ぶ。
おやすみなさいと三人の声が重なり、数分も経たない内に三人の寝息が聞こえ始める。
ただ一人。末娘の寝息だけが、興奮したように激しかったのは、誰も知らないことだ。
そんなやり取りから三日が経った頃。
眠る狐亭、ローグハンターが滞在している一室。
その部屋の扉の前には、制服に身を包んだ末娘の姿があった。
ばくばくとうるさい心臓の鼓動を落ち着かせようと深呼吸をして、落ち着いた頃を見計らって数度ノック。
中からは『誰だ』と淡々とした声音での問いかけに、末娘は「ご注文の料理をお持ちしました!」と緊張で上擦った声で応じた。
『そうか』と扉の向こうから返事が聞こえ、椅子が床と擦れる音が後に続く。
その後は一切の無音で、末娘は疑問符混じりに扉に耳を当てると、無遠慮に扉が開かれた。
それなりに体重を預けていた末娘は「わっ!?」と声を出して体勢を崩すが、すぐに固い何かにぶつかり、逞しい腕に抱き止められた。
落としそうになった皿もどうにか落とさずに済み、末娘はホッと息を吐く。
「あ、あの、申し訳ございません!」
彼女は言葉の通りに謝罪しながら勢いよく顔をあげると、ゆっくりと目を見開き、そのまま身体を強張らせた。
「いや、いきなり開けた俺も悪い。申し訳ない」
肝心の相手──ローグハンターもまた申し訳なさそうに小さく頭を下げながら言うと、彼は末娘の顔を見下ろして「む……」と声を漏らした。
「お前、あの二人の妹か」
「ひゃ、ひゃい!?あ、あの時は、ありがとうございました!」
そして突然声をかけられた末娘は肩を跳ねさせながら小さく悲鳴をあげると、慌てて彼の身体から離れ、勢いよく頭を下げた。
何とも元気な彼女にローグハンターは思わず苦笑を漏らすと、「気にするな」と告げて肩を竦めた。
「冒険者として、当然のことをしたまでだ」
そしてさも当然のようにそう言うと、彼女が持っている皿へと目を向けた。
頼んだ夜食を届けてもらったのだ。
あまり空腹というわけではないのだが、あの姉妹から「注文しろ」と言う圧をかけられて仕方なく頼んだのだが、こうして妹と会わせたかったのかと思えば合点がいく。
なぜだか「お願いしますね?」と意味深な笑みを向けられたのだが、それの意味はいまいちわからないが。
「助かる」と一言礼を言って、夜食のサンドイッチを受け取ろうと手を伸ばすと、その手を末娘の手が掴んだ。
「……?」
その当然の行動と、思いの外力強い握力に首を傾げると、末娘がにこりと笑った。
その笑顔は確かに美しいもので、街ですれ違っただけならば、まず間違いなく振り向くことだろう。
だが、こうして面も向かい合っているからこそわかる。
表情も笑っている。目元も嬉しそうに笑っている。
だがその奥にある何か危険な雰囲気は、隠しようもあるまい。
ローグハンターなら手を払うことも出来るだろうが、彼女の過去を知る彼にそこまで残酷になることは出来ず、言葉による説得が必要だなと頭を働かせた。
そして、とりあえず「手を離してくれ」と無難な言葉を選び、それを口に出そうとした直後のこと。
ふわりと甘い香りがしたかと思えば、柔らかいもので唇を塞がれた。
「……っ!?」
見開いたローグハンターの瞳に映るのは、文字通り目の前にある末娘の顔だ。
彼女はぎゅっと目を閉じ、身長差を爪先立ちをして背伸びをすることで埋めて、どうにか行った口付け。
柔らかく、瑞々しい彼女の唇が、乾いてがさついた彼の唇と触れあい、ちろりと舐めてくるのは彼女の舌だろうか。
舌はそのまま彼の口の中に分け入ると、驚愕しているからか硬直している彼の舌へと絡み付いた。
突然の行動に押し返すことも忘れ、彼女にされるがままの彼を他所に、末娘は閉じた瞼の裏で涙を滲ませた。
それはすぐに目尻から溢れだし、頬を伝って落ちていく。
「っ?!」
そして目を見開いたままのローグハンターにとって、それは予想外の出来事であった。
突然口付けされるまでなら、良くはないのだがいいとして、泣き出されるのは予想外だ。
ローグハンターは彼女の涙で多少の冷静さを取り戻すと、辺りを見渡して彼女を抱き締めた。
末娘はピクリと肩を跳ねさせて驚きを露にするが、彼がそのまま後退を始めたことを合図に身体を弛緩させた。
彼に引っ張られるがまま入室を果たすと、ローグハンターは片手で扉を閉めた。
その間も彼女の舌が口内を暴れまわっているのだが、別に気にする必要はないととりあえずは無視。
そして彼女の手から皿をぶんどるように受け取ると、そっと作業台に乗せた。
それを合図に末娘が顔を離し、赤面しながら「えへへ……」と照れたように笑った。
身体をくねらせて彼を抱き締め、彼の胸板にぐりぐりと額を擦り付ける。
「……」
何から何まで全く把握できていないローグハンターが、現実から目を背けるように天井を見上げて溜め息を吐くと、末娘は「すいません」と謝罪の言葉を口にした。
それでも離れる気はないのか、彼の背に両手を回したままだ。
「えっと、あなたに会ったら、胸の奥の方がぶわーってなって、えと、我慢できませんでした……」
彼の胸に納まったまま、けれど申し訳なさが勝ったのか、しゅんと顔に落としながら行われた彼女の説明は、随分と抽象的なもの。
だがローグハンターは「そうか」と頷くだけで、彼女を責める素振りを見せない。
逆に彼女の頭を撫でて、僅かに乱れた髪を整えてやる程だ。
「──。ふへへ」
彼の手の温もりと優しさを直に感じた末娘は、ほんの一瞬意識に空白が生まれるが、すぐに復活してだらしのない笑みをこぼした。
幸いなことに彼の胸に顔を埋めているため、その顔が見られることはない。
ローグハンターは再び溜め息を吐くと、作業台に乗せたサンドイッチに目を向ける。
腹は空いていないと思っていたが、こうして目の前に出されると意外に空腹を感じるもので、食べたいという思いが強まってきたのだ。
「それで、いつまでこのままなんだ?」
「……もう少しだけ、お願いします」
確かめるように投げ掛けた言葉に、末娘は恥じ入るように赤面したままぼそりと呟いた。
別にそれを無視してしまってもいいのだろうが、ローグハンターは「そうか」と返して逆に彼女を抱き寄せた。
姉二人に比べて小柄で、幼いという印象まで抱く体躯ではあるが、こうして触れてみれば柔らかく、温かい。
「~~~!!!」
ローグハンターが優しげに微笑むのを他所に、末娘は胸の中で嬉しさのあまり声もなく悲鳴をあげた。
彼女が犬の
そしてそれを幻視したローグハンターは可笑しそうに目を細め、撫でてやる手にも力がこもる。
頭だけでなく髪を撫でてやり、肩にかかる黒髪を手で梳いてやる。
髪の毛と間を指が抜けていき、撫でている筈なのに撫でられているような感覚がして、心地がよい。
「あ、あの……」
そうして夢中になって撫でていると、末娘は潤んだ瞳で彼を見つめた。
ローグハンターが無言で彼女を見つめると、彼女はもじもじと身体をくねらせながら言った。
「もっと、触ってください」
瞳の奥に情欲の炎をちらつかせ、続きを催促するようにぎゅっと彼を抱き締める。
姉たちほど大きくはないけれど、ある程度の膨らみがある胸を押し付ける。
彼女の姉二人のおかげで、男としての欲望を持つことになったローグハンターは赤面すると、じっと彼女の瞳を見下ろした。
そのまま髪を撫でていた手で彼女の背を撫でて、反応を確かめる。
背中に触れられたことに驚いたのか、「あ……」と声を漏らした彼女は、背中を這う手の動きに合わせてくすぐったそうに身体を震わせて、口を噤んで声を噛み殺す。
彼の手は少しずつ下がっていき、背中を伝って括れた腰に触れると、ぐいと彼女の身体を引き寄せた。
「~~っ」
ただですら密着していた身体が隙間なくぴたりと触れあい、服越しに彼の体温を感じる末娘は恍惚の表情を浮かべた。
優しく包み込んでくれる姉たちのものとは違う、決して離してはくれなさそうな力強さを感じるのは、やはり男だからだろうか。
そんな思慮をした末娘は、いいや違うと首を振った。
自分たちの過去を知りながら、こうして抱き締めてくれる異性など、彼を置いて他にはいまい。
何より、彼は自分たち姉妹にとっては英雄なのだ。
あの薄暗い洞窟から救い出してくれた、物語から飛び出してきた英雄そのものなのだ。
彼の抱擁だからこそ末娘は逃げず、彼女だからこそローグハンターも彼女を受け入れる。
姉たちに頼まれたからというものそうだが、女性には優しくせよと師からも言われているからだ。
──まあ、優しくしろの基準は今でもよくわからんが……。
ローグハンターは溜め息を吐くと、そっと胸に顔を埋めている末娘を見下ろした。
腰まではいいようだが、果たしてさらに下へと行ってしまっても良いものだろうか。
彼の手が迷うように腰を擦る中で、末娘は物欲しそうに潤んだ瞳を彼に向けた。
「いい、ですよ?あなたになら、何をされてもいいんです」
ポツポツと彼にだけ聞こえるように呟いた言葉に、ローグハンターは動かしていた手を止め、数度瞬きを繰り返して困惑を露にした。
やはりと言うべきか、この三姉妹は自分に向けて絶対の信頼と信用を向けられている。
それは本来なら喜ぶべきものだろうが、長女を除いた姉妹たちのこれは酷く歪で、下手に刺激すれば心が砕けてしまうようにさえ思う。
こちらから拒む気はないのだが、姉たちの言葉もなしに踏み込んでもいいものか……。
『お願いしますね』
『……あの娘にも、分けてあげたいな』
ふと脳裏に過ったのは部屋に戻る直前に言われた長女の言葉と、いつぞやに抱いた次女が呟いた言葉。
それらの言葉とこの状況から察するに。
──あいつらの、
長女と次女の二人が、自分たちの関係に妹を巻き込もうと画策し、そうして今日という日が来たのだろう。
別に嫌ではないのだ。彼女らが妹の身を案じ、自分を頼ってくれたのはむしろ誇らしくもある。
誇らしくもあるのだが、何だかそれが変な方向へと向かっているような気もするのだ。
そして、それを受け入れてしまう自分も、やはり人の感性というものから大きくずれているのだろう。
ローグハンターは小さく溜め息を吐くと、末娘に目を向けた。
そっと髪を撫で、嬉しそうに目を細める彼女を見下ろしながら、ローグハンターは微笑んだ。
そのまま腰に添えていた手をゆっくりと下へと這わせ、制服のスカートに隠された彼女の臀部に触れた。
服越しとはいえ感じる柔らかさに目を細め、指を蠢かせればその弾力を堪能できる。
「……っ」
末娘は覚悟はしていたのだろうが驚いたのか、ぴくりと肩を跳ねさせ、身体を強張らせた。
力が入ったからか、僅かに固くなった臀部の感触もまた心地よい。
むしろそこを解すように力を入れて、ぐにぐにと臀部を揉むように指圧してやれば、末娘の吐息に熱が入り始める。
「ん……っ。ふっ、あ……っ!ん、んん~♪」
尊敬し、敬愛している彼に図らずも
嬉しそうに笑いながら彼に身体を預けるが、受け止める彼の体幹は一切ぶれない。
小娘の一人程度の重さなど、彼にはあってないようなものなのだろうか。
そんな疑問が脳裏に過った直後、末娘は「ひん!」と肩を跳ねさせながら間の抜けた悲鳴を漏らした。
彼に抱きついたまま、ピクピクと小刻みに震える彼女の臀部。
制服のスカートに隠されてわからないが、肉付けもよく、いわゆる安産型と呼ばれる部類に入るだろう。
そしてそこに伸びるローグハンターの手が、その割れ目へと入り込んでいた。
ぐにぐにと割れ目の内側の肉を刺激しながら、どこがいいのかを探るように割れ目を這い回る。
それはさながら虫のようでもあるが、そこに込められた優しさと温もりは、あんな甲殻に包まれた生物にはないものだ。
「んっ……!ふぁ……っ、あぅ……!」
自分自身でも触れる機会の少ない臀部の割れ目を刺激されながら、それでも末娘が感じているのは快感であった。
ゆっくりと全身を侵していくような快感が、遅効性の毒のようにじわじわと身体を蝕み、彼女の理性を磨り減らす。
「ふ……あぁ……ひぅ、んぁぁ……」
そして按摩が続けば続くほど末娘の表情は蕩け、男に媚びる娼婦のようやものへと変わっていく。
彼の手が動けば動くほど身体から力が抜け、膝が笑って立っていられない。
それでもこうして形だけでも立っていられるのは、一重に彼が支えているからだ。
片手で腰を押さえて離さず、もう片方の手で臀部の割れ目を撫でる。
「ひぅ!ふぁ……へぅ、ひぅぅ……」
声からも力が抜け、彼を抱き締めていた手かも力が抜ける。
背中に回されていた手が緩んでいく感覚に「む……」と声を漏らしたローグハンターは一度手を止め、「大丈夫か」と問うた。
「ぁい、じょぅぶれすぅ……」
そして返された言葉は、酷く覇気が欠けて今にも消えてしまいそうなもの。
全体重を預けてくるのは苦ではないが、ここまで蕩けてしまうのは予想外。
一旦寝かせるべきかとベッドに目を向けると、末娘がふにゃりと気の抜けた笑みをこぼした。
「いい、ですよ……?私のこと、滅茶苦茶に……してください……」
どうにか足を踏ん張って背伸びした末娘は彼の耳元でそう囁いて、耳元に口付けた。
それをされたローグハンターは弾かれるように末娘に目を向けて、ぱちぱちと数度瞬き。
「いいん……です、よ……」
小さく首を傾げて、念を押すようにさらに一言。
瞳の奥に情欲の炎を揺らし、目の前の男を誘うように舌舐めずり。
ローグハンターは思わず生唾を飲むと、再びベッドへと目を向けた。
──案外捨てたものでもないか……。
とっくの昔に人としての欲望なぞ捨てたつもりではあったが、やはりこうされると身体が昂る。
男という生物は単純で、何より欲望に忠実だ。
そして、その当たり前を取り戻させたのは間違いなくあの二人。
──なら、いっそのこと開き直るものいいか。
あの二人と会えば会うほど、目の前のこの娘は孤独になっていくだろう。
英雄色を好むではないが、一人の男として、覚悟を決める時が来たのかもしれない。
ローグハンターは目を閉じると、深呼吸を一度。
それを済ませると共に目を開け、そのまま末娘を抱き上げた。
「きゃ♪」と楽しそうな悲鳴を漏らす彼女を見つめながら、ローグハンターは笑った。
「俺に任せろ」
彼の宣言に、末娘は満面の笑みと共に頷いた。
僅かに開いた扉の隙間から、二つの視線を向けられていることにも気付くこともなく。
感想、リクエスト等ありましたら、よろしくお願いします。