※この作品はR-18です。

SLAYER'S CREED +α R-18   作:EGO

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前回の続き。
過去から戻ってきたログハン、剣の乙女に会いに行く。


Memory?? 『修正(リライト)』紀行 ②

 現代、王都。

『修正(リライト)』の奇跡で過去に戻り、剣の乙女を救出したローグハンターは無事に現代に帰還したのだが……。

 

「世界に大きな歪みはなし、か。何よりだ」

 

 とある建物の屋根の上にしゃがみ、夕陽に照らされる王都を見渡しながらそう呟いたローグハンターは、ホッと安堵の息を吐いた。

 彼女を救ったおかげで王都陥落、秩序崩壊となっていれば、それこそ先ほど治した喉を自分で掻っ切らねばならなかった。

 一応、女教諭や灰被りの女王、狐、外交官と、アサシン教団関係者に声をかけて回ったが、彼らの言動にも不審な点はなかった。ただしばらく留守にしていたことになっていたらしく、事情を知る筈の女教諭からも「今までどこに行っていた?」と問い詰められてしまった。

 過去を改竄し、未来を分岐させた影響だろう。自分にとっては全く未知の世界──おそらく、目が見える剣の乙女がいる世界に来た、ということなのだろうが、それはそれで一握の切なさというものも感じる。

 あの世界での出来事を覚えているのは自分だけなのだ。その大半がこの新しい世界と同じ流れだったとしても、その多少の差異を知るのは自分だけ。

 変な気分だ。知っている筈なのに、知らない世界にいる。故郷から転がり込んだ時とは違う、ほんの僅かな不安が背筋を撫でる。

 だが、今はそんな事どうでもいい。今考えるべきは剣の乙女のことだ。

 ローグハンターは深く息を吐くと共に立ち上がり、瞬きと共に『隔世状態』に移行。目を閉じて水の街の法の神殿を頭に思い浮かべる。

 直後、雷鳴と共に彼は姿を消し、通りを歩いていた人々はなんだなんだと彼がいた屋根の上に目を向けるが、そこにはもう何もない。

 見えないものを気にするほど暇でもない彼らは、すぐにいつもの喧騒を取り戻し、何事もなく日常に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 水の街、法の神殿。

 その最奥にある礼拝堂に、彼女の姿があった。肉感的な肢体を白い法衣で隠し、窓から吹き込む風に揺れる金色の髪は夕陽の光に照らされて神秘的なまでに輝いていた。

 天秤剣に縋るようにして祈りを捧げていた剣の乙女は、ふと背後から聞こえた小さな足音に気付き、「どなたですか?」と声をかけた。

 だが声をかけられた相手は返事をせず、どこか迷うように小さく呻くばかり。

 謎の訪問者に対して怪訝な表情を浮かべた彼女は、「どなたですか!」と語気を強めながらそちらに身体ごと振り向くと、すぐにパッと表情を明るくした。

 

「ローグハンター様!いらしていたのなら、お声をかけてくださいな!」

 

 そして先程の警戒に満ちた声と表情はどこにやったのは、満面の笑みと共に弾むような声音で彼に声をかけた。

 肝心のローグハンターはどこか困り顔になるが、すぐに彼女の瞳を見つめて僅かに目を見開いた。

 

「……?どうかされましたか?」

 

 そんな滅多に見せない間の抜けたとも言える彼の表情に剣の乙女が首を傾げると、ローグハンターは「いや」と返してそれとなく顔を手で覆った。

 手の下で彼は歓喜を噛み殺し、目から溢れんとする涙を必死に抑えていた。そう、彼女の中の自分は今の彼女を当然のものとしていた筈だ。それなのに自分が妙に喜んだり、涙を流すなど、あってはならない事だ。

 

「少し、目にゴミが入ったようだ。何でもない」

 

 彼は涙を誤魔化すようにそう告げて涙を拭うと、蒼い瞳で彼女の碧眼を見つめ返し、小さく笑みを浮かべた。

 ああ、どうやらあの行動は無意味ではなかったようだ。それだけでも、やった意味はあったというもの。

 剣の乙女は鈴を転がしたように笑うと「可笑しなお方と」と彼に告げ、そっと彼の懐に入った。

 その勢いのままに彼の胸に飛び込み、背に腕を回してぎゅっと抱き締める。豊満な胸が彼の胸板に押し潰されて柔らかく形を歪め、布越しに彼の体温を感じる。

 

「お久しぶりです。ここ最近音沙汰もなく、心配していたのですよ?」

 

 そしてここ最近、常に抱いていた不安を噛み殺してそう言うと、ローグハンターは小さく「すまない」と謝罪の言葉を口にした。

 その言葉に剣の乙女は微笑みながら顔をあげ、じっと彼を見つめるが、すぐに疑問符を浮かべて首を傾げた。

 

「ローグハンター様、何か辛いことがあったのですか?少し、やつれているような……」

 

 そっと彼の頰を撫で、僅かに陰って見える蒼い瞳を見つめる。

 普段なら星が輝く夜空を思わせるそこも、今に限っていえば曇っているように見える。

 彼女の心配の言葉にローグハンターは強がるように笑うと「大丈夫だ」と返すが、その声にはやはり覇気がない。

 むぅと小さく不満そうに唸った剣の乙女は辺りを見渡して人の目がない事を確認すると、爪先立ちになってちゅっと触れる程度の口付けを交わした。

 突然のキスに驚いたローグハンターは言葉もなく目を見開いて驚いているが、剣の乙女は悪戯が成功した子供のように無邪気な笑みを浮かべた。

 

「何故かはわかりませんが、疲れているのなら後程私の部屋にいらしてくださいな。お話をされるだけでも、楽になれるかもしれませんわ」

 

 けれどその浮かべた笑みもほんの一瞬。すぐに表情を引き締めた彼女は真剣な声音でそう言うと、再びそっと彼に口付けをした。

 二度目のキスは流石に効いていないのか、ローグハンターは神妙な面持ちのまま顔を背け、小さく息を漏らす。

 

「話しても、きっと信じられないぞ」

 

「そうかもしれませんが、話してくださらないことにはなんとも」

 

「お前にとっても、辛いことを思い出させることになる」

 

「なら、覚悟を決めておかなければなりませんね」

 

 ローグハンターは重々しく、墓場まで持っていく筈だった何かを言うように言葉を重ねていくが、剣の乙女はまるで気にする素振りも見せず、むしろどこか彼を揶揄うような声音で言葉を返した。

 困ったように小さく唸ったローグハンターは再び彼女の方に顔を向け、その碧眼を──黒布に覆われることのない彼女の素顔を見つめた。

 何度も見て、何度も触れた筈なのに、真新しく見える最愛の人の顔。ローグハンターはそっと彼女の頰を撫でて、今度は彼の方から彼女を抱き締めた。

 突然の抱擁で歓喜に震える剣の乙女だが、耳元で聞こえる彼の啜り泣く声に気付いてそっと彼の背を撫で始め、「大丈夫、大丈夫です」と幼子をあやすような声で何故か酷く疲弊している彼を励ました。

 これではあの時と──ゴブリンの影に怯えて、夜を眠れなかった自分に寄り添ってくれた時とはまるで逆ではないかと、ありし日の記憶を思い出して微笑みをこぼす。

 あの日の出来事があったから彼を愛し、彼に愛されることになったのだ。自分の弱みを曝け出すというのは恐ろしいが、同時にそれが出来ねばお互いに愛し合うことなどできまい。

 剣の乙女は今度は自分が受け止める番と気合い入れて、優しく彼を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 その後、侍祭の乱入や溜まっていた書類の処理などに時間を費やし、気がつけば双子の月が天上に登っていた。

 満点の星々と双子の月に照らされた法の神殿はまさに神秘の輝きに満ち、荘厳な雰囲気を醸し出していた。

 そんな神殿の一室。大司教、剣の乙女のために用意された広めの部屋は、大人が二人で過ごす分には何の支障もない。

 簡単な書類仕事を手伝っていたローグハンターは、剣の乙女に手を引かれるがままその部屋に通されたわけだが、相変わらずその表情は暗い。

 これは重症ですねと眉を寄せた剣の乙女は彼の手を引いてとりあえずベッドに座らせると、その横に腰を下ろした。

 安産型の尻がベッドに沈み、薄い法衣の隙間から押し潰された臀部の肉が僅かにはみ出す。

 

「それで、お話というのは……」

 

 こてんと首を傾げて問うてくるつるぎの乙女に、ローグハンターは僅かに目を伏しながら言う。

 

「俺、なんだ……」

 

「……?なにがでしょうか?」

 

 そしてぼそりと呟いた一言に、剣の乙女は言っている意味がわからずに疑問符を浮かべた。

 いきなり俺なんだと言われても何がとしか思えないのは当然で、ローグハンターの言葉が足りないのは明白だ。

 だが今こうしている間にも凄まじいまでの罪悪感に襲われているのか、彼は言葉を続けようとはしているが、肝心の言葉が出てこないのか、無意味に口が動くばかり。

 そんな彼を見かねてか、剣の乙女は彼を抱き締めようとするが、ローグハンターは彼女の手を拒み、「大丈夫だ」と返して表情を引き締めた。覚悟が決まった、ということなのだろう。

 ならばと剣の乙女も姿勢を正し、彼の言葉を聞き逃さんと身構えた。

 彼女の碧眼をじっと見つめ、それに自分が映っているのが堪らなく嬉しいが、その為にしたことを告白しなければならない。

 

「俺なんだ。十年前、一人でゴブリンの巣穴にいたお前を襲ったのは」

 

「な、何をおっしゃっているのですか?今更そんな同情など……っ」

 

 だが真実を告げたところで、それを信じてもらえるのかは分の悪い賭けでしかない。現に剣の乙女は彼の告白を信じておらず、タチの悪い弄りをしてきていると思っていた。

 

「本当なんだ、信じてくれ!」

 

 対するローグハンターは切実な思いを込めてそう告げて、聞いてもいないのに言葉を続けた。

 

「信じられないだろうが、俺は違う世界のお前を知ってる。ゴブリンに襲われ、視力を奪われ、会う度に切なそうに俺に触れるお前を、知ってるんだよ……っ」

 

「わ、訳がわかりません。何をおっしゃっているのかも、わかりませんわ!どうされたのですか!?」

 

 そうして彼女からすれば意味不明な言葉を受けてか、彼が行方不明の間に何かされたのではと疑い始めるが、ローグハンターは今にも泣き出しそうな子供のように、目元に大粒の涙を溜めながら言葉を続けた。

 

「お前が失ったものを取り戻してやろうと、どうにか治してやれないかと、考えて、行動して、それでも足りなければまた考えて、行動して、それでも駄目だった」

 

「だから俺は禁忌に触れた。過去に行って、未来を変えてやろうなんて頭のおかしいことを考えた。……そしてそれが出来てしまった」

 

 ローグハンターは頰を伝う涙をそのままに彼女の頰を撫で、心配そうにこちらを見つめてくる彼女の碧眼を優しく見つめ返した。

 そして胸に押し込まれていた感情を爆発させ、涙を流しながら懺悔をするように彼は言葉を続けた。

 

「おかげでお前を救えた。ゴブリン共を皆殺しにして、奴らには何を奪わせなかった。だが、その後、俺はお前を穢した……ッ!」

 

 愛する人を傷つけ、凌辱し、その癖して何食わぬ顔でここにいる。今更ながら、自分の都合の良さに嫌気がさし、やはり遠巻きに見て会わずに去るべきだったと後悔する。

 だが、やはり彼女に会いたいと思ってしまった。彼女と共にいたいと、願ってしまった。

 

 ──俺は、最低な男だ。

 

 傷つけた相手と共にいたいなど、添い遂げたいなど、烏滸がましいにも程があるだろう。

 歴史の変換点を減らすため、世界を救うため、理由など付けようと思えばいくらでもあるが、それが彼女を傷つけていい理由にはなるまい。

 

「泣き叫んで許しを乞うお前を黙らせて、力ずくでお前を──」

 

 そして殺されてもいいという覚悟のもと、ローグハンターが最後の言葉を言い切ろうとした直後、ふわりと柔らかなものが彼を包んだ。

 目を見開く彼は状況の把握にほんの一瞬の時間を要したが、すぐに剣の乙女の胸に抱かれていることを理解した。

 普段なら身を任せる肌の温もりが、胸の柔らかさが、彼の頭を包み込んでいるのだ。

 ローグハンターは彼女を突き飛ばそうとするが、それよりも早く彼女の細指が彼の髪を撫で始め、彼は余計に困惑を強めていった。

 

「大司教、何を……?」

 

 辛うじて口から漏れ出た問いかけに、剣の乙女は答えない。ただ慈愛がこもった手で彼を撫でるばかりだ。

 彼女の手が動く度、抵抗する気力を失っていくローグハンターは、母に甘える子供のように彼女に身を寄せると、無礼を承知で彼女の法衣で涙を拭うように顔を揺らした。

 

「もし、本当にもしですが、あの日私を襲ったのがあなただったとしても」

 

 そんな彼にだけ聞こえるように、囁くような声で剣の乙女が言葉を発した。

 その声に反応して顔をあげたローグハンターは、優しく自分を見下ろしてくる、目が見えていること以外は普段と何も変わらない彼女を見つめ、思わず彼女の名を呼んでしまった。

 それが可笑しかったのか、彼女は鈴を転がしたように笑うと、彼の額に口付けを落とした。

 

「闇に怯えていた私を救って下さったのは、あなたです。それは変わりませんわ」

 

「……っ。だが、その傷を刻んだのは──」

 

「ゴブリンです。誰が何と言おうと、私はゴブリンに穢された哀れな女」

 

 彼女は表情に影を落としながらそう言うと、すぐに微笑んで彼に告げた。

 

「そして今は、かのならず者殺し(ローグハンター)に救われ、彼を愛し、彼に愛されるようになった幸運な女。それでいいではありませんか」

 

 彼女はそう言うや否や名残惜しそうに彼を離すと、法衣の留め紐を解き、するりと布擦れの音と共に法衣を脱ぎ去った。

 そして顕になるのは、透き通るほどに白い肌と、片手では納まらない程にたわわに実った乳房。その先端には薄桃色の乳首があり、外気に晒されているためか、あるいは彼の視線を受けてか、充血してぷくりと勃起している。

 それらを無意識に凝視していたローグハンターは、ふとあることに気付いてハッとした。

 見慣れた筈の彼女の裸体。何か違和感があると思えば、彼女の身に刻まれた傷跡が全くと言っていいほどにないのだ。過去の世界の彼女には、全身に刻まれていた忌むべきものが、綺麗さっぱりなくなっている。

 また一つ成し遂げたと涙が溢れそうになるが、じっと見つめられている剣の乙女は恥いるように頰を赤く染めながら、もじもじと身体をくねらせると、

 

「えい!」

 

 可愛らしい気合いの声を漏らしながら、彼をベッドに押し倒した。

 無抵抗に倒された彼が困惑していると、彼女はそっと彼の唇に口付けし、ぴたりと閉じた彼の唇をちろりと舐めた。

 そしてすぐに顔を離すと無邪気に悪戯っぽく笑い、彼に言う。

 

「随分とお疲れの様子ですから、今宵は私がリード致しますわね」

 

「大司教、いいのか……?」

 

 一人で話を進める彼女の態度に着いて行けないのか、ローグハンターは不安そうに声を漏らすと、剣の乙女は彼の口に指を当てて無理やり閉じさせた。

 それでも彼は何かを言おうとするが、それを遮る形で剣の乙女が言う。

 

「そんなに罰が欲しいというのなら、与えましょう」

 

 どこまでも冷たい、背筋が凍る錯覚さえ覚えるほどの声音。聞いたこともない彼女の声にローグハンターが狼狽えていると、彼女は思いきり彼の首に噛み付いた。

 ローグハンターが突然首を駆け抜けた激痛に呻く中、剣の乙女は構うことなく何度も彼の首に歯を立て、皮膚を貫いた拍子に滲み出てきた血を舐めとっていく。

 咀嚼するように何度も噛みつかれながら、この程度で許されるならと彼女に身を任せていると、不意に彼女は噛むのを止め、唇についた彼の血を舐め取ると、彼の耳元で断固たる意味を込めて告げた。

 

「──私から離れないでください。いつにかなる時も、私と共にいなさい。私を見る度に苦しむのなら、その苦しみが消えるまで私を見ていなさい。苦しみが消えても私の元を去ることを禁じます」

 

 淡々とした、けれどどこか狂気さえも感じる声でそう告げた彼女は、最後の最後に、必死に涙を堪えながら一言付け加えた。

 

「──どうか、いなくならないで。私と共に生きてください」

 

「……っ!」

 

 その一言が、隠されざる彼女の本心であった。

 彼が過去に飛んだ幾日かが、こちらでは数ヶ月経過していたのだ。その期間、彼女は最愛の人の安否を知ることもできず、一人孤独に襲われていた。

 

 ──過去の彼女を救っても、現在(いま)の彼女を救えなければ意味がない。

 

 そしてようやくたどり着いた答えは、普段の彼ならまず真っ先に気付きそうなことでもあった。

 愛する人のために万策を尽くす彼が、最も救うべき相手を見落としていたのだ。赦す赦さないではない。もう彼女は、ローグハンターなしでは生きていけないほど、どうしようもない程に彼を愛してしまったのだ。

 ローグハンターは再び溢れてきた涙をそのままに、彼女の肉感的な肢体を抱きしめた。

 

「わかった。わかった……っ。それが罰だというのなら、俺は一生お前と共にある。お前がどこに赴こうと、例え死後の世界でも、盤の外であろうと、俺はお前と共に行こう」

 

 それは宣言だった。己の人生をかけて彼女と共に生きると、彼女と添い遂げるという、自分の人生を捧げるという宣言だ。

 

「ええ。ですから、離れないでくださいまし」

 

 そんな彼の返答に満足そうに笑った剣の乙女は、彼の唇に口付けを落とした。

 

 

 

 

 

「んっ……。ちゅ、んちゅ……っ」

 

 剣の乙女のベッドの上で、一糸纏わぬ姿になった剣の乙女とローグハンターは、熱い口付けを交わしていた。

 ベッドに仰向けで寝転ぶローグハンターの上に覆いかぶさり、無抵抗に彼女の口付けを受け入れていたローグハンターだが、その手は愛おしそうに彼女の背やうなじを撫でており、その度に彼女はピクピクと身体を揺らしていた。

 

「ん……っ。はっ、ローグ、ハンター様……っ」

 

 頰を朱色に染め、恍惚の表情を浮かべながら彼を呼べば、彼は微笑み混じりに「どうした?」と返し、彼女の額に唇を落とした。

 それだけでも身体が反応してしまい、「ん……っ」と声を漏らしながら身体を震わせた彼女は、辛抱堪らなくなったのか、再び彼の唇に吸い付くと、僅かな隙間から彼の口腔に舌を差し込んだ。

 

「ちゅる……っ!んちゅ!んは、ローグ、ハンター様ッ!好き、愛しております、わ……っ。じゅる、んん!!」

 

 くちゅくちゅと湿った音を立てながら彼の舌に唾液を塗りたくり、口の粘膜を舐め回していく中で、剣の乙女は無意識の内に愛の言葉を口にしていた。

 それを受けたローグハンターは嬉しそうに笑うと、うなじを撫でていた手で彼女の顔を押さえ、二人の顔をさらに密着させた。

 同時に口の中で暴れていた彼女の舌を押し返し、今度は彼女の口腔に自分の舌を入り込ませ、お返しと言わんばかりに舌を絡め、虐めていく。

 ついでに背中を撫でていた手で安産型の臀部を鷲掴み、その触感を楽しむように五指を蠢かせた。

 押し込めばどこまでも沈んでいきそうなのに、途端に押し返してくる弾力を楽しみながら、割れ目をなぞるようにそっと撫でる。

 

「ん……っ!じゅる!じゅるる!んぁ、んん!ひぅ……♡ローグハンター様、そこ、気持ち、です……っ♡」

 

 擽ったそうに漏れていた声に熱がこもり、表情もだらしなく緩み始めた頃、彼女は下腹部に押しつけられる熱した鉄のように熱く、固いものに気づき、彼に気付かれないようにそっとそれを──彼女との前戯で勃起した彼の一物を撫でた。

 ローグハンターは突然背筋を撫でた淡い快感に「くっ!」と小さく唸ると、キスを中断。彼女を解放して顔を離させると、二人の唇を繋ぐように唾液の橋がかかり、ぷつりと切れたそれが自分の口元の傷跡にへばりついた。

 あ、と声漏らした剣の乙女が汚れてしまった彼の口元を綺麗にしようと唾液を舐め取るのだが、余計に彼の口周りがベタベタになってしまうのを二人とも気にも留めない。

 蜜を舐める犬か何かのように夢中になって彼を舐めていた剣の乙女が再び彼の唇に口付けすると、今度は彼も迎え入れるように口を開けた。

 くちゅり、くちゅりと湿った音を漏らしながら二人の舌は絡まり合い、流し込まれてくる彼女の唾液を、ローグハンターは顔色ひとつ変えずに飲み下していく。

 そして満足するまでキスを楽しんだ剣の乙女は顔を離すと、物欲しそうな視線を彼に向けた。

 それを受けた彼は小さく息を吐くと彼女の肩を掴んで寝返りを打たせ、上下を逆転。触れてもいないのに湿り気を帯びている秘裂に目を向け、次いで痛みを覚えるほどに勃起した自分の一物を一瞥。

 だがそこから動くことができなかった。不意にあの日の、彼からすればほんの数日前の光景が──泣き叫ぶ彼女の姿が過ってしまい、身体が動かなくなってしまったのだ。

 

「いいですよ。私は大丈夫です。ですから、何があっても離れないでください」

 

 しかし、そんな彼を剣の乙女が抱きしめ、耳元でそう告げた。

 どこまでも優しく、慈悲に満ちている声は、後ろ向きになっている思考が僅かに前向きに変わる。

 ふーっと深く息を吐いたローグハンターは覚悟を決め、秘裂に亀頭を当て「いくぞ」と一言だけ告げた。

 彼女が小さく首肯した直後、彼は腰を突き出して一物を彼女の秘部に押し込んだ。

 一息で根本まで押し込んだからか、膣肉が途端に萎縮して彼の一物を締め付け始め、蠢くひだが一物を優しく舐め回す。

 その優しい快感を与えられたローグハンターは低く唸って堪えると、亀頭の先端が彼女の子宮口を叩いた。

 

「あん♡」

 

 直後、剣の乙女は甲高い嬌声を漏らし、強張った背中を弓なりにしならせた。

 きゅんきゅんと食いちぎらんばかりに締め付けてから膣肉の感触を感じながら、ローグハンターはそれを振り切るように腰を振り始めた。

 パンパンと乾いた音を立てて腰を彼女の臀部を叩きつけ、子供の腕ほどありそうな一物を何度も挿入し、彼女の胎内を掻き回す。

 

「あ、あん……♡ローグハンター、しゃま♡そこ、もっと、奥、ついてくださいまし……♡」

 

 ローグハンターに突かれる度に身体が揺すられ、合わせて豊満な胸を揺らしながら、彼女は嬌声混じりに催促の声をあげた。

 そんな彼女の意志に反応するように膣肉は余計に締め付けを強くし、早く動けと言わんばかりにひだが動いて一物を責め立ててくる。

 あの時とは真逆。あの時は許しを乞い、一刻も早く終わって欲しいと願っていたが、今は違う。続きを催促し、何より自分を求めてくる。

 ぞわりと背筋が震えた。理由はわからない、だが、下腹部にいつも以上に熱がこもっていく感覚がある。

 現に一物がさらに大きく膨らみ、固くなったためか、不意に子宮口を撫でられた剣の乙女は「ひゃん♡」と嬌声をあげながら腰を跳ねさせ、情欲に潤んだ瞳で彼を見つめた。

 そんな彼女を見つめ返したローグハンターは、彼女の腰を押さえつけて固定すると、腰を前後に振り回して少々乱暴に彼女の秘部を責め始めた。

 

「ひゃ!?ま、急に、激しっ……♡ひぅっ、ああ……♡」

 

 パンパンパンパンと平手打ちのような音を響かせながら、ローグハンターは片手で暴れ回る彼女の胸を鷲掴み、ぷくりと膨らんだ乳首を摘んで転がしてやる。

 

「ひぐっ……♡や、やめ、ひぅ……♡そこ、こりこり、駄目、です……っ。ひゃん♡」

 

 ビクビクと身体を痙攣させながら、嬌声混じりにローグハンターに制止の声をあげるが、彼は止まらない。

 血走った目を見開き、ふぅ!ふぅ!と興奮のままに乱れた呼吸を繰り返すその様子は、見るからにタガが外れてしまっている。

 その姿に僅かな恐怖を覚えた剣の乙女は、彼の肩を掴んだり、叩いてみたりを繰り返し、

 

「ローグハンター様、ひゃん……♡お、落ち着いてください……っ!ひぅ♡怖い、怖いです……っ!どうされたの、ですか……っ♡」

 

 そして嬌声混じりにあげた制止の声に、ローグハンターはハッとして動きを止め、数度瞬きをして彼女をじっと見つめた。

 

「はひゅ……♡激し、すぎますわ……っ♡んっ……♡もう少し、優しくしてくださいまし……♡」

 

 とろんと蕩けた視線を彼に向け、快感の余韻に浸りながらそう告げた彼女は、自分を抑えられなかった自分に狼狽える彼を抱き寄せ、その背を撫でた。

 

「……すまない。落ち着いた」

 

 数度の深呼吸と共に思考は落ち着かせた彼は、ふっと短く息を吐いてそっと彼女の下腹部を──己の分身が納まっている部分を強めに押さえた。

 剣の乙女が「ひぅぅ……♡」と苦しそうに、けれど心地よさそうな声を漏らすと、ローグハンターはそこを何度も撫で回し、肌越しにトントンと子宮を叩いた。

 

「ひぅっ♡しょこ、おしゃないで……♡でも、ください……っ!あなたの、精液、たくさん、射精《だ》してください……っ♡♡」

 

 そして彼のその行動の意味を理解してか、剣の乙女が自分から腰を振りながらそう言うと、ローグハンターはこくりと頷いて再び腰を振り始めた。

 先程のそれよりもゆっくりだがその分一回一回に体重をかけ、彼女の奥底を叩き続ける。

 

「ひぁ……♡んん……っ♡奥、気持ちいい……♡あん、やっ、あん♡」

 

 接合部からどちゅどちゅと湿った音を漏らしながら、彼女の秘部を貫き続けるローグハンターは、少しずつ表情に余裕をなくしていき、彼女の頰に口付けしてから「射精(だ)すぞ」と告げた。

 

「はいっ……!たくさん、ください♡私に、あなたの赤ちゃん、産ませてくださいぃいいいい♡」

 

 身体を突かれる度にビクン!ビクン!と身体を大きく跳ねさせながら、彼女は両手足でぎゅっと彼を抱きしめ、絶対に逃さない姿勢を見せた。

 前の世界でも似たようなことを言われた。だがあの時は『今度こそ、人の親にしてくれ』という願いでもあったが、この世界の彼女は文字通り今回が初めての妊娠、出産だろう。

 ぞわりと再び背筋が震えた。どうやら自分は、過去の彼女と現在の彼女のギャップというものに酷く敏感になってしまったようだ。

 そしてそれを自覚した瞬間、尿道を熱いものが駆け上がっていき、抑える間も無くそれは爆発。

 鈴口から吐き出されたどろどろ熱々の精液が、彼を求めて熱を帯びていた彼女の子宮に注ぎ込まれた。

 

「ひぅ!?ああああ゛ああ゛ああ゛ああああ゛♡♡♡」

 

 直後、彼女は絶頂しながら身体をしならせ、接合部からはぷしゅぷしゅと音を立てて潮を噴く。

 だがローグハンターはそれに構うことなく腰を突き出して一物を子宮口ち押し付け、一滴残さず彼女の子宮に精液を注ぎ込む。

 

「ひぐっ♡あつい、あついのに、気持ちいいですぅ♡あひゅ、あへっ♡」

 

 絶え間なく吐き出される精液の熱さと、それに子宮を舐め回される快感に目を見開いた彼女は、「ひぎぃ♡」と一際強い嬌声をあげた瞬間、ぐったりと身体を弛緩させてベッドに倒れた。

 同時に射精も終わり、彼は疲労から大きく息を吐きながら一物を引き抜いた。

 精液と愛液が混ざり、どろりとした白濁液が彼女の秘裂から溢れ出し、彼女の臀部を白く汚していく。

 

「あひゅ……♡んっ♡ジブリール、様♡もっと、もっとください……♡」

 

 剣の乙女はピクピクと小刻みに身体を痙攣させながら、ローグハンターの本名を呼び、懇願しながら自分の秘裂を広げた。

 それで余計に白濁液が溢れ出してくるが、その様を見せつけられたジブリールはごくりと生唾を飲んだ。

 途端に僅かに萎えた一物が硬さを取り戻し、目の前の雌に更に種付けしてやらんと先走り汁が滲み出てくる。

 がばりと本能のままに彼女に襲いかかった彼を、誰が責められよう。

 そんな彼を受け入れ、彼の欲望を一身に受ける覚悟を決めた彼女を、誰が止められよう。

 二人の夜はまだ続く。それが罰となるのなら、それが救いとなるのなら、止まる理由もないのだから。

 

 

 

 

 

 翌日、昼頃。

 コンコンと窓が叩かれる音をローグハンターは目を覚ました。

 鼻が曲がりそうな程に立ち込める淫臭に眉を寄せ、だるい身体を押して窓を全開に。

 外で待っていた鷲はその臭いから逃げるようにどこかに飛んでいくと、ローグハンターは申し訳なさそうにそれを見送り、踵を返してベッドに戻り、腰を下ろした。

 

「ジブリール様……?」

 

 そんな彼の手を握った剣の乙女が彼を呼ぶと、彼は「どうした?」と返して彼女の方に身体を向けた。

 懐いた猫のように手に擦り寄ってくる彼女の、絹のように柔らかな髪を撫でてやりながら、ローグハンターは微笑んだ。

 

「俺はここにいる。これからずっと、お前と一緒だ」

 

「──はい。末永く、よろしくお願いします」

 

 そして彼の告白とも言える言葉に、剣の乙女は満面の笑みを浮かべた。

 そんな二人を祝福するように、戻ってきた鷲が声を上げた。

 天上で『時』を中心とした神々が、やいのやいのと言いながら微妙に変わってしまった世界を加筆、修正していることにも気付かずに……。

 

 

 

 

 




私事ですが、ゴブスレ原作16巻読み終わりました。
原作もかなり進んだので、スレクリ本編のおまけ(最終決戦のその後)を書こうかなと思っている今日この頃。
収穫祭の後に二人の結婚式とか、砂漠でメジャイごっこするログハンとか、尊敬とか罪悪感とかがごちゃ混ぜになってドギマギする王妹とか、ヴァイキング相手に惚気る銀髪武闘家とか、色々とネタは出来てはいるんですが、問題は銀髪武闘家の妊娠、出産の時期。
ゴブスレは作中で四季の変化や祭りなどで時間経過が言われていますから、そこをどう落とし込むのかを悩み中です。
色々と考えた結果、下手すりゃ16巻の前後くらいには妊娠発覚している可能性も出てきましたので……。

とりあえず、感想、リクエスト等ありましたら、よろしくお願いします。
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