シルに送り出されたリューは、トクトクと脈を打つ心臓の音を聞きながら、階段を降りていく。
従業員エリアと酒場との境にかけられた暖簾の隙間から中を覗けば、件の青年は直ぐに見つかった。
四人のテーブル席に座るベルは、家族であるヴェルフ・クロッゾの愚痴を聞いていた……リリに片腕を掴まれながら。
鍛冶の女神との惚気とも言える愚痴を聞きながら、苦笑するベルの顔はほんのりと赤くなっており、大分酔いが回っているようだった。
そんな彼に、しなだれかかるようにして腕に絡みついている少女は、うっとりとした表情を浮かべながら自身の肉体へ彼の腕を押し付けていた。
「……むぅ」
不満の声を漏らしたのは誰だったか。
リューは自身の内に沸いた感情に戸惑いながら、衝動に突き動かされるようにベルの元へと向かう。
道中、酔っ払った冒険者からの絡みを、声をかけられる前に視線で射殺しながら進んでいくと、ルベライトの瞳にリューが映った。
「あ、リューさん!!」
「っ……はい」
彼に名を呼ばれた瞬間、内に巣食っていた黒い霧は霧散し、日向のような温かさが湧き上がる。
彼に名前を呼ばれただけなのにと内心呟きながら、しかし先程よりも軽快に、足早にベルの元へ向かったリューは何気ない動作で彼の隣に腰かけた。
「あれ? リューさんお仕事はいいんですか?」
「……はい。ベルをもてなせ、と」
自分で決めました。とはいえず酒場の店主にそう言われたかのように濁すリュー。
ベルはリューの目論見度通り誤解し、「そっか」と呟くとはにかむようにして笑った。
「ありがとうございます。リューさん」
「ッいえ」
リューは咄嗟に近くにあったサラダスティックを一本掴むと口に運ぶ。
口を動かしていなければ、顔がにやけてしまうと、そう直感したからだ。
「むぅ」
不満たっぷりの唸り声に、リューは細い糸目で声のした方を見れば、ベルの腕にしがみついたままのリリが頬を膨らませてリューを睨んでいた。
リリとベル様の時間を邪魔しないでください
視線でそう伝えてくる彼女に、リューはしかしそれを無視してもう一本野菜スティックを取り、
「ベル、どうぞ」
彼の口元へと運んだ。
彼女の突然の行動に驚愕に顔を染めるリリとベル。
しかし、ベルは彼女からの好意を素直に受け取り、若干恥ずかしがりながらも目の前の野菜にかじりついた。
「あ、ありがとうございます。んぐ……えへへ」
「」
鼻血が出そう。
ベルのその外見と相まってあまりに可愛い反応に、リューとリリは内心悶え苦しむ。
頬を染めながらポリポリと野菜を齧る姿は、いっそ愛玩動物よりも、かわいいと持て囃される女の子よりも魅力的で誘惑的であった。
もしここに美の女神がいればまず間違いなくお持ち帰りしたであろう仕草に、リューは全身全霊でその衝動を抑え込む。
「ベル、いけない。そのようなことをされては、私が耐えられない」
「?」
精一杯の忠告はベルに欠片も届かず、ニンジンのスティックを加えたまま首を傾げるベル。
リューは咄嗟に視線を外し己を落ち着かせようと床の節を凝視する。
「くっ…………落ち着くのです、リュー・リオン。私は誇り高きアストレア・ファミリアの団員。そしてこれはシルのため、シルのためです。何も疚しいことなどない。そう疚しくはないのだから別にベルをお持ち帰りしてもいいのでは? これはシルのためですからシルの為にベルの頭の撫で心地や頬の感触も知る必要があるのですシルの為にベルの肌の感触とか傷跡とか温もりとか匂いとか————」
……余計悪化した。
呪詛の如くブツブツと囁くリューに、若干引きながらもベルは彼女の肩に手を添える。
「あの、大丈————」
「ッひゃ!!!?」
トン、とベルの指先が触れた瞬間情けない悲鳴を上げながら飛び上がるリュー。普段の彼女なら滅多に見せないであろう隙は、想像以上に彼女を脆くし感覚を鈍らせる。
リューは咄嗟の事に立ち上がろうと腰を跳ね上げるが、ここはテーブル席。
固定されたテーブルにリューの膝がぶつかり、衝撃で机の食器がガシャンと大きく揺れる。
その揺れは隅に寄せられた空のジョッキを倒すには十分で――――グラリと傾いたジョッキが固い床へと身を投げた。
視界の端でそれを見ていたリューは、いつもより数段遅れて反応し不安定な体勢で腕を伸ばした。
「ッリューさん!」
ベルがそう叫ぶのと、リューの体勢が崩れたのは同時だった。
右手でジョッキを掴もうとしたリューの体勢が崩れ、床へと倒れ込むのを見ていたベルは咄嗟に反応し、彼女の細い腕ごと抱え込むようにして抱くと、自身の身体を床と彼女との間に押し入れて彼女を庇った。
ゴッ ガシャアアン!!!!
騒がしい店内に響き渡る破壊音に、辺りは一瞬で静まり返る。
彼等の視線の先では白髪の青年がウエイトレスを庇うように倒れており、そのすぐ横には無残に砕け散ったガラスの破片。
大方の流れを悟った冒険者は、見た目麗しい女を救った青年に温かい野次を飛ばし、同じウエイトレスは少女と知己の青年のもとへ駆けよる。
「いてて。リューさん、大丈夫ですか?」
ベルは背中と後頭部の鈍痛に眉を顰めながら、自身の腕の中にいる彼女に問いかけた。
しかし、彼女からの返答は返ってこない。
怪訝に思うベルだったが、彼女の髪からふわりと香る匂いと女性特有の柔らかい身体に、もうしばらくこのままでもいいかなと会得を感じていたのだった。
そんな風にベルがこの状況を楽しんでいるなか、リューもリューとてこの状況を”愉しんでいた”。
あぁ、ベル……
彼に庇われたとき、リューの内には申し訳なさよりも喜びが勝っていた。
彼が助けてくれた。あの時と同じように。
その事実が否応なくリューの女性としての面を刺激し、彼への想いが際限なく膨らんでいく。
ベルの胸板は厚く、その抱擁はリューの心をとろとろに溶かす。
数か月前、深層域で彼に背後から抱きしめられたことはあったが、こうして正面から抱きしめられたのはこれが初めてだったリューは、無意識のうちに彼に寄り添い、彼の匂いを覚える。
男、引いては多種族を拒絶していたリューは、男性からする汗臭さというのがどうにも苦手だった。あの鼻を刺すような臭いと男油の臭いがどうにも受け付けなかったのだ。
しかし、彼の匂いは何故か大丈夫だった。いや、むしろもっと嗅いでいたくなるような気さえした。
ほんのりとする汗の匂いと、鼻を犯すような甘い香り。
初めはちょっと、次第に大胆に。リューは彼の匂いを目一杯吸い込み、熱の籠った吐息を漏らす。
あぁ、ベル♥
どれだけ吐いても一向に減らない熱はリューの身体を蒸気させ、冷静な思考回路を取り除いていく。
リューは蕩けそうになる顔を隠す為にベルの胸元へ顔を押し付けるが、より濃密な匂いに蝕まれ————————
「あの、リュー、さん?」
「————ぇ?♥」
気がつけば顔を赤くしたベルと目が合っていた。
ベルに全身を預けるように脱力し、細い指先がベルの頬に添えられている。
数秒ほどかけて、その指が自分のものだと気づいたリューは脳を爆発させながら飛び起きた。
「ッッ!?!?!?」
「んにゃ? リュー顔真っ赤にゃんぐぉ!?!?」
自分のしでかしたことを理解したリューは、隣で騒ぐ駄猫を殴り飛ばし、だらしなく蕩けた顔を隠すように店の奥へと逃げ込んでいった。
その彼女の様子を、ベルは呆然と見ていることしかできなかった。
次回からちょっとづつエロ要素が出る…はず
次回ターゲットは誰?
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痴女神 ヘスティア
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駄女神 シル(フレイヤ)
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病み女神 アルテミス
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射精管理人 エイナ
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セックス中毒 春姫
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近親相姦 ウィーネ
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ショタベルvsアイズ・レフィーヤ
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裏酒場の奉仕メニュー リュー・シル
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白濁温泉 アイズ・ティオナ
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神性な決闘 レフィーヤ・リュー