※この作品はR-18です。

天下の大将軍になる!! ~夜の睦言~   作:oosima

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今回はちょっとキングダム本編の設定にはそぐわない子が登場します。けれどもそこまで逸脱しているつもりでもないです。
読者アンケート(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=280174&uid=48501)には寄せられていない子ですが、今後も募集期限は設けていないので見てみたいというキャラがございましたら投稿してみてください。


102 古来より痴情の影響が政治を動かす事がある

 ○秦始皇8年(紀元前239年) 秦国北部 朔方郡 朔方城 内城○

 

 数十日ぶりに姫昭と情を通じ合わせた日の翌日、白漂は膨大な書籍が収められている自身の書斎にいた。

 

「…ほら、君が今もっとも欲している書籍はこちらで…」

「凄い…趙では王都の学校でしか読めない書籍もこんなに…それに、まさか中華の他にも文字を持つ地があるとは知りませんでした…」

 

 その傍らには姫昭もいて彼女も案内されており、そこで彼女はペルシア語やヘレネス語(コイネー)(古代ギリシア語の事。ギリシアというのはローマ人が付けた名称が訛ったもの)で書かれた書物に興味を示していた。

 

「中原、特に儒者は中華の外を非文明と馬鹿にするもの知らずが多いけど、実際に距離や地形の問題でまだ交流がそんなに持てないだけで中華並み以上に文明を発展させてる国や地域は多いよ」

「この国に…この地に移ってからそれだけで見聞が広くなれた気がします…」

 

 その書籍は秦語訳されたものやそれが付記しているものが多く、他にも西域から渡来してきた絵画品も同列にあり、それを読んでいるだけで姫昭は異世界へ実際に引き込まれているような気分になる。

 

(…石造りの祠に、動物の頭と人の身体を持った神々が複数いる国…実際に目にしたらどのような感じかし―――!?)

 

 だが、姫昭が脳裏に浮かぶ異国の風景に引き込まれそうになったその時、彼女の意識は反対側より駆け上がってきたずんっと重くも甘く痺れるような感覚で現実に引き戻されてしまう。

 

「―――い…ぁ…❣❓ ひょ…漂様…」

 

 姫昭が顔を甘くふやけた状態に崩されつつも非難の意を込めた流し目を背後に送ると、彼女の背に密着した形でその美麗な黒髪を嗅いでいる白漂の姿があった。

 

「いやねー、昨晩の情事の疲れで寝てしまった君を僕の寝室の一つを兼ねてるここへ運んだ際にもよく堪能した…、この大きくも綺麗に整った丸尻を見てると…色々と虐めたくなるというか…」

「…そ、そのような理由でこんな朝から困ります…。そもそも…今の姿勢だって今朝に起きた際に読んでもいいかと聞いたら…今回は漂様が私の身を堪能しながらなら良いと理解しがたい事を言ってきて…んんん❣❓」

 

 自身の首元に頭を預けてニヤニヤした悪い表情で囁いてくる白漂に姫昭は困惑と非難を強めるものの、再び疼き出した子宮口をクリクリと亀頭で穿られるように弄られて口籠ってしまう。

 それは胎にいる我が子の一人を気遣う優しいものであったが、姫昭にとっては十分に刺激が強すぎるもので、時折扉を挟んだ廊下側より近づく足音が彼女の五感を警戒心から鋭敏にし、それが胎内から立ち上り広がってくる嬌声の音源を更に強めていった。

 

「…失礼しますー。本日の朝食をお届けに来ましたー」

「っ!?」

「む」

 

 そして、ついに扉がノックされて姫昭はビクッとして白漂はまた一つ悪だくみを思いついた笑みを浮かべる。

 

「…ひょ、漂様…侍女の方を待たせるのは悪いですから…ここは一旦中断に…」

「いや、姫昭…ここは…」

「……!? そ、それは…!?」

「いやならいいけど、もしここで止めるのなら今日のこれはもうそれでお終いね」

「……そ、それはぁ…ウウゥウ…❣❓」

 

 そして、その悪巧みを耳元に囁かれて姫昭は羞恥の色を更に強めるが、更に下腹部内部より焦燥を強めさせられる刺激が広がっていくと、それに悔しそうな色を強めつつも目覚めたばかりで飢えに似た肉欲を抑えきれない我が身にも押されていく。

 

「…遅いなぁ、今日はこの辺りでもうこの時間帯は起きてる頃合いなんだけど―――」

「申し訳ありません。お待たせしました…」

「―――お…あ、姫昭様おはようございます」

 

 一方、廊下側の白漂書斎出入口前で侍女の一人が少々怪訝な顔を浮かべそうになるが、そこで扉が少し開かれて姫昭がやや眉を八の字にした状態で顔を覗かせてきた。

 

「白漂様は?」

「あの方ならもう少し前に起きて、別の部屋に向かう際に朝食が届けられたら受け取って待つようにと仰られて、もう直に帰ってくるかと…っ!?」

 

 侍女の問いかけに姫昭は適当な説明をしようとするが、そこで急に彼女の顔が強張って背は少々仰け反って震え、何か声を堪えるように歯を必死に食いしばりだした。

 

「き、姫昭様?」

「な、何でもありません…実は昨日…部屋の中で間違えて挫いてしまった際の足の痛みが時折生じるので…あまり見苦しい場面は見せたくないのでどうか早くお引きに……」

「…ぁ…わかりました。それではお二人とも…朝からあまり無茶はなさらないでください……」

 

 それに戸惑いつつも何か気付いた侍女であったが、姫昭の苦痛を訴える弁明とそれとは相反する頬に浮き始めた艶のある朱色に、本音を悟ってやや気まずさと羞恥を醸した表情で朝食を差し出すと素早く部屋の前を後にする。

 

「…は、ああぁぁぁ…どうに…か…この痴情は悟られずに―――」

「いやー、気付かれてた表情だねあれは」

「―――い…漂様…」

 

 その侍女の小さくなっていく背に姫昭は一安心という表情を浮かべるが、白漂に無駄な努力であると断言されると、瞳の潤いを増しつつも恨みがましさも込めた流し目で睨んできた。

 

「あーあーもうそんな泣きそうな顔をしないで。その分ご褒美上げるから」

「ご、ご褒美って…この状況でそれは…ああ❣❓」

 

 それに少し困った顔をしつつも白漂はやや強めにこつんと腰を前に動かし、思惑を見抜いた姫昭は苦言を呈そうとしたところで子宮からキュンと刺すように広がっていく甘い刺激で嬌声に変えられてしまう。

 当然、まだ色事になれていない姫昭の手から朝食を盛られた食器が落ちようとするも、彼女と違い性には慣れている白漂が素早くキャッチしたことで床は汚れずに済んだ。

 

「はい、それじゃー机まで移動だね」

「は、はい…ど、どうかゆっくり…っ❣❣」

 

 どうにか手が自由になった姫昭は本棚にもたれ掛かってどうにか歩行を維持し、胎奥から徐々に強まって広がる白漂の責めに視界の朦朧が強まりつつもどうにか机に向けて歩を進める。

 

「…ど、どうにか……持ちこたえられ―――❣❓」

 

 そして、数分かけて姫昭が机に指を掛けようとしたその時、白漂が彼女の眼前で朝食をカツンとやや急に卓上へ降ろすが、その勢いで姫昭にもたれ掛ってグイっと男根もより奥へ突き進ませてしまい、痴情を他人に見られるかもしれないという興奮と夫の焦燥を募らせ続ける責めで解れ切った今の女陰には刺激が強すぎた。

 

「…ん! これは…っ!!」

「―――えってええァアアアアーーーーーーー❣❣❓」

 

 それに応じて膣全体を痙攣したかのような極みの震えと激しい収縮が反射で満たし、白漂はそれと姫昭の羞恥と快楽で悶え切った艶ある姿もあって張り詰めていた陰嚢の栓を緩めて噴火の如く打ち上げられそうな白濁の奔流に我が意思を任せ、姫昭は爆発を伴った噴煙の如く解き放たれる白濁とそれを齎す肉槍の止めの一突きに理性が焼ききれて嬌声を放たせられた。

 

 

 

 

 

 ○趙国南部 王都邯鄲 王宮○

 

「太子! 早まってはなりません!」

「今の王に諫言するのは危険です!」

 

 姫昭が白漂に羞恥プレイで善がらされていた日の正午辺り、邯鄲で良識派に区分される者達で論争が起きていた。

 

「じっとしてはいれん! 今この状況で李牧達が国内にいない事がどれだけ危険か…父を説得して止めねば…!」

 

 現在、趙国内の良識派から希望の星とみなされている現太子とその忠臣達が揉めていたのである。

 

「で、ですが先に起きた江姫の一件からして今の王よりこれ以上不興を買えば太子でもどうなるかわかりません!」

「幸いにも李牧殿達は何とか追っ手を振り切って斉国を経由し例の国へ向かえているとの事です!」

「今はどうにか此度の混乱の収束に尽力しましょう! ただでさえ西貴や離眼の真相に最近起きた険水陥落の内情が流布しているせいで我が国の信用が国内外共に大幅に落ちている状況で…」

 

 その良識派に対し忌々しさを向けている一団もいた。

 先日にて現趙王に李牧討伐を命じられて邯鄲を実質追放された宰相郭開の派閥である。

 

「…うぅぅむぅぅ、先日に李牧がその側近の間抜けで失脚したのは慶事だと思えたのに…まさかそのせいで末子遷様が行方不明になって更にその煽りで郭開様が邯鄲を実質追放される羽目になるとは…」

「西貴と険水を切っ掛けに今の太子の足元である西部と太行山脈一帯が揺らいで秦に靡き始めているとはいえ…頭がいない状況では我らの方が不利だぞ」

「冗談ではない! この趙国を建国より支えてきたのは先祖代々中原に住まう我々だ!」

「それをあのような “范氏”の胎から生まれた小僧に盗られてたまるか! 偶々長男に生まれて正式な后様が男子を生まないまま逝去された成り行きで運よく太子になれているだけのくせに…!」

 

 そして、趙国政界は良識派と宰相派どちらも共に中心人物を欠いたがために、決定打を得られない泥仕合染みた政争に暫く明け暮れる事になる。

 

 

 

 

 

 ○秦国中央部 王都咸陽 王宮○

 

「…相変わらず勝つには勝つが毎回頭を捻らせるおまけも送って来るな漂は…」

 

 邯鄲での政争が混沌を深め始めた日より数日後、秦の朝廷では大王派の集会が嬴政のその言に代表されるように頭を捻らせていた。

 

「…は、はい…最初は現地で生じている戦地で付き物のデマも混じっているかと思われましたが、李牧一党が趙を実質的に追われた現状と…現地で大勢いる元趙兵の証言からしてほぼ間違いないようですな…」

「まさか李牧も要地防衛のために苦労して送り込んだ側近が大ポカを起こしたせいで亡命しなくてはならなくなるとは思ってもいなかったでしょうなぁ…」

「まあ、その件に付いては今後の趙攻略において有利になるから…我々にとっては棚から牡丹餅を通り越して財宝が降って沸いてきたようなものですが…」

 

 空気は概ね喜色が強いものだったが、前線からの報告書に混じるある一書が悩みの種になっていた。

 

「まさか…朔方侯が数月前まで敵だった西貴の女城主に手を付けて…、それで身籠ったから新たな側室に迎えたとは…」

「いやまあ、現趙王と先々代城主姫柏の一件から同情の声は多いですが、交戦してからそう月日が経っていない元敵将を奥に迎え入れるなど…、神経が図太いと言うか…ですがこのままだと外聞が悪いですからある程度情報操作せねばいけませんぞ」

 

 それは白漂個人の身の上話に関するもので、本人達の諸事情からすればそれきりの話であったが、如何せん相手の姫昭が粛清されそうだったとはいえ元々は敵国である趙からの降将だった身で交戦していた相手に嫁ぐという、この戦国時代でもそうそうない珍事であった。

 

「問題は呂不韋がこれらの件で未だに動きらしい動きを見せていない事だな。向こうからすればそれなりの攻撃材料に出来得るだろうに…」

 

 故に、この件で動いている気配をほとんど見せていないその政敵の動向がこの場では最大の懸念となっていた。

 

「…それと、再び北の地でやや衝突が増え始めているという報告が寄せられています。それもーまだ帰順していない部族との境目だけでなく、既に吸収されて年月も経ってこちらからの移民とも折り合いを上手く付けている部族の境目辺りで、他殺されたらしい死体が見つかってそれで揉めたりと言った事例が多数…。それと、東北部国境周辺地域から白漂将軍の帰還に伴う道中での掃討に伴い東北部から姿を消した匈奴が、今度はそうした地域に活動を移しているようで…」

「当分、趙国の政争は収まりそうにないので、下手に軍事的刺激をして呉越同舟を促すよりも、当分は新領土と揉めている辺境の整備を優先しつつ、調略で同国の内争を煽るのを主体にした方が良いと思われます。毐国も近頃は動きが落ち着いてはいますがまだ勢力を地味に増し続けていますので…」

 

 政敵の静寂と、それとは関係が見当たらない前線各地域での不穏な気配とそれへの適切な対処が進んでいる状況に、嬴政達は却って良い意味で自然過ぎると感じて不穏を感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 ○秦国北部 工業都市硝房(しょうぼう)○

 

「…えー―っと、そういうわけでこの辺りの住民達の例の採取は終わったか? 他にも資源探査と測量の方は?」

「はい、そちらも特に支障は御座いません。例の変死体事件で揉めていた各部族もこちらから送った調停役の説得に応じて今は大人しくしています」

 

 咸陽で嬴政達が不吉な気配を覚えてから数日後、白漂達は秦の北部新領域へ整理のために出向いていた。

 その中で、白漂達は自分隊の入れ知恵で底上げ進行中の現在の技術水準で出来ている新資料採集に力を入れていた。

 

「…だが、まさかなぁ…この溶液でより正確にとれるようになって、顕微鏡の技術向上でよく見れるようになった“手形”と“指紋”が…一人一人で違うものだとは…」

「おかげで事件の調査などが大きく進むようになったな」

 

 特に、検分役の文官達が口にしている通り、手形と指紋の採取にそれらの採取方法や鑑定方法の普及に大きく力を寄せており、特に刑事方面ではその便利さから猛烈な普及を見せていた。

 

「…ただし、指紋が見つかったからと言ってそれですぐ犯人を決めるというのは止しにするんだ。違う時間帯に別件で付いた可能性もあるからねー」

「はい、もちろん咸陽大学院を始めとする各研究機関の学者たちが考案した調査方法諸々を用いて多面的な調査をかかせておりません」

「さてと…それじゃーあそこに行くか…」

 

 役人たちの資料収集が上手くいっているのを確認すると、白漂は今現在駐屯している硝房で最重要の施設へ出向く。

 

「おい! 三番溶融窯でしてる方の透明の板硝子を冷やすのはまだだ!」

「望遠鏡用は二番工房に運べ!」

 

 白漂が出向いたそこは、ここ硝房が最も成長している要因である工場で、今では秦の資源地帯各所に分散して成長しているある産業で、その分野で先端を行く場所にして最も規模が大きい場所であった。

 

「うお!? 領主様だ!」

「え!? マジで将軍が!? かっけー!!」

 

 その中の竈と行きかう人々から漏れ出る熱気と煙に白漂は嫌な顔などせず、時折り気付いた人の驚きや歓声にも動じず、最奥にある竈に辿り着くと、冷やしている最中の作品が無数に並んだ棚に囲まれた炉と、その前で厚い耐熱服を脱ごうとしている一人の人物の姿を見た。

 

「…ふーーー、皆さんの技術も向上しましたが…やはり無色透明な方の“ガラス”の製造技術を身に付けられる人はまだ少数ですわねー」

 

 その耐熱服の中より抜け出てこの時代にはまだ本来ないはずの単語を口にしたのは、淡い緑色の短髪と黄緑色の瞳で知的だがほんわかとした雰囲気が強い美貌と、コーカソイド系の血筋を強く感じさせるが何処か妖精を思わせる白い十代後半の素肌に包まれた、労働筋と女性らしい凹凸の成長が調和した肢体を持った美少女だった。

 

「調子はどうかなルナテレジア」

「あ、お久しぶりです漂お兄様」

 

 その背に声を掛けた白漂に気付くとにこやかな笑みを返したその少女の名はルナテレジア。

 前世での面識は無いが、前の世界では白漂と同じ国で生まれ育った欧州系移民の血筋で、この世界にはない亜人種の血筋が薄くながら混じっていて、前の世界ではガラス製造と販売を主な事業としていた父と没落したが軍人系貴族に生まれた母を持つ身で、そこで両者から深い知識と技術を幼くして教わったがまだ十になる前にこの世界へ漂流してきていた身である。

 この世界にはまだ幼いころに霧の中を彷徨っていると何時しか迷い込んで、泥竜に発見されて保護してもらえてから同郷を前世に持つ白漂の面倒を受けられ、その縁で彼を兄と敬慕して敬愛する女性であった。

 そのまま二人は熱気がまだ残る工房から出て、涼風が吹いている縁側に腰を下ろして茶を飲みながら、前の世界で用いていた言語でおしゃべりを始めた。

 

『前回会えたのは太行山脈南部攻略戦の為に出た時以来ですわね』

『その時のルナテレジアは山脈に設けられた新規の植民都市への技術指導のために出張らっていた時期だったね…』

『…ええ、この世界に流れ着いてから十年…色々と濃すぎる時間でありましたわ…』

『ああ、泥竜の縄張りの中にて霧中から怪我だらけの状態で現れた時は驚いたよ。特に信あたりはその髪を染めたものと思って何度も川辺でゴシゴシしてたし…』

『あの陰険なアルウィンから来た東海岸の元ブリタニア人の次に粗野で品が無い彼の話はあまり聞きたくありませんわ』

『あいて…し、仕方ないだろ。(キングダム本編ではどうか知らないけど…)前の世界で言う封神演義辺りに当たる商王朝末期ごろに…、この世界は少なくとも中華では前の世界の魔術とかみたいな神秘とそれに類する技の類はほぼ失われて、それに伴ってルナの祖先の一部みたいな幻想種の類はいなくなって今の世間一般では空想の産物の類になってるんだから…。まあ、シルクロードの向こう側はまだ詳細は伝わってないけど…』

 

 その途中で可愛いふくれっ面になったルナテレジアに頬を抓られたり、この世界の人間には理解できない内容が話されたりしたが、空気は概ね穏やかでのんびりとしたものになっていた。

 

『…それでー、漂お兄様は技術や学問などはともかく…まだ前の世界での自分自身についての記憶は戻られていないのですか?』

『あー、どちらかと言えば…思い出さなくちゃいけないと思う時もあるんだけど…思い出すと、冗談抜きで僕が今の僕じゃなくなるんじゃないかと言う感じもして…けれども何れ避けられない時がある様な気もするような…』

『…そうですわねー。私も…写真も無いこの時代で暮らす時間が長くなるにつれて、イルフィやヘルガと言った…前の世界の友人に家族の記憶が薄れていきますけど…、けれどもそればかり思っていると今度は今の自分を形作ってくれてる人たちをないがしろにしているような気がしまして…』

 

 一方で、白漂のまだ十分に戻っていない深淵に関する記憶など、前の世界での己に触れられると思う空気がしばしば流れたりした。

 

 

 

 

 

 ○秦国北部 工業都市硝房(しょうぼう) 硝子工房某所○

 

「…ふーー、野営地で一人静かに寝れるのは…黒羊戦以来だなー。つってもあそこでも時折り奇襲や待ち伏せみたいな感じで女の子に引きずり込まれたり襲われたりするのが多々あったけど…」

 

 久方ぶりに可愛がっていた妹分の一人との再会を終え、白漂は硝房にある硝子工房の一室を借りて設けられた寝室に戻って眠りに付こうとしていた。

 だが、枕に頭を沈めて瞼を閉じようとしたまさにその時、雄としては嬉しいが妻子持ちとしては複雑さを憶えさせる足音が近づいてきた。

 

(…敵意も悪意も感じられない。それにこの足音…昼間に耳にした…)

 

 そして、外部より少々小声で会話が成された後、ゆっくりと扉が開かれて今宵の訪問者が正体を現す。

 

「…漂お兄様、今宵は私が貴方様の床での護衛…伽のお相手を任されましたわ❤️ 奥様達も了承済みですわ♪」

(完全根回し済みでタイミング式精子提供の依頼が来たー!!)

 

 頬を羞恥でほんのりと赤くしつつ不安と期待が綯交ぜになった表情を見せる寝巻姿のルナテレジアに白漂は心中で悲鳴を上げた。

 そして、男の理性と本能は別物で、これから行われるだろう行為への期待でその足の付け根は彼に気付かれる前にと身体各所から血を集め始めていた。




今回登場した新ヒロインのルナテレジアさん。
彼女の会話でとんでもない情報が幾つか出てきましたが、あくまでもこの世界はキングダム基軸世界なので、原作でそういう描写が出てきたりしない限りは型月や魔法科高校とかみたいなそういうマジでファンタジーな事柄は、主人公達が生きる時代には出さない予定です…(絶対とは言ってない)。
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