それにしても、この話書いた時には少年ジャンプの方での読み切りといい信は意外ともてると思いまして、けれども本編での流れと空白部分も考慮してこういう形にしました。
それとUA1万件突破ありがとうございます。
○秦始皇5年(紀元前242年) 山陽攻略戦決戦5日目昼 魏国西部
中華の要所たる山陽で起きた秦魏両国の大戦は、まだ経過ながら多くの識者の予想から外れつつあった。
魏軍の実質的な総指揮を執っている元趙国三大天廉頗が、かの秦六将筆頭白起の孫とはいえまだ若将と言っていい白漂に翻弄され一日目で大損害を受けた。
更にその廉頗の嘗ての師で彼の参謀も務める軍略家玄峰も、その両国中央軍同士の初戦で大敗させられた後、4日目にて秦軍右翼を率いる桓騎に討たれてしまう。
故に、廉頗は名目上の魏軍総大将白亀西を引き連れて、秦軍左翼王翦軍と魏軍右翼姜燕軍の戦場へ向かう。
その背を追う白漂達の動きも考慮に入れての状態であった。
「むうぅ…な、何だこれうき…?」
「展開が速い…ここで自分の配下の一隊が敗れるのを読んでいたのね…」
そして、その秦軍左翼の戦場の一角にある窪地の囲地で戦局が大きく動こうとしており、それを樹上から索敵と敵偵察隊殲滅を任されていた庶徐たちが見ていた。
王翦軍の一大隊にそこへ追い込まれていた中華十弓の一角たる姜燕が、逆に合図矢を用いて事前に近隣に伏せていた自軍を引き寄せ、逆に囲地の崖を奪ってその秦軍の隊を追い詰めようとした。
だが、今度は王翦軍が現れて再び魏軍が包囲下に置かれ、王翦と姜燕は互いの親衛隊に守られた状態で、一時的に剣戟が止んだ中で対峙する。
「うぬが姜燕だな? まずは…」
その状態であろうことか姜燕に対し降伏と自軍への帰順を勧め出す王翦。
「!!」
それに対し姜燕は瞬時に矢を放つが、王翦の衛兵が翳した盾に大きな傷を付けはしたものの弾かれて堕ちてしまう。
「なっ!? 姜燕様の矢が…」
「ほう、北から取り寄せた鋼鉄の盾に射抜く寸前の傷を付けるとはさすが…」
(あ、あれうちの産物だわ…流石は王一族宗家お金持ち…!?)
驚く魏兵とやや感心した表情の秦兵の様子に庶徐は感心した顔を浮かべるが、そこで一瞬だけだが王翦が自身に冷徹な鑑定士の如き眼光を向けてきたことに気付く。
(……………あの目は…!? 少なくとも味方に向ける類の目じゃ―――)
「ヌァッハッハッハッハ!! ここにやはり来たようじゃのう王翦!!」
それは一瞬で終わったものの、庶徐が言い知れぬ不安を覚えてまた王翦と姜燕の戦況についての言葉の遣り取りの後、彼女からそう遠くない囲地の崖から老人の声音ながらそれとは思えない声量で大笑いが打ちあがる。
「―――あ、あのお爺さんは!?」
庶徐が驚いたその声の主たる廉頗の登場が囲地一帯に数秒足らずで知れ渡り、魏軍に昂揚で満ちた歓声を上げさせて天地が震えた。
続けて士気が爆発した魏軍や私兵を引き連れて、囲地の崖を陣取る王翦兵を次々と落とし始める廉頗軍。
「長! この流れはまずいですきい!」
「ここはまだ気付かれてない私が―――」
「庶徐! 落ち着きなさい!」
「―――あ! 王京さん!」
その流れに危険を感じた庶徐達が樹上を飛び立って廉頗を追おうとしたその時、白漂軍五千が追いついてきて、彼女らの真下に王京が駆けつけてきた。
「王翦軍もここで廉頗を仕留める気よ! あの男は漂様と王翦将軍に任せて私たちは姜燕討ち取りを支援する!」
「く! 王齕様の仇が…」
「…ぬぅ? あの鉞は…尺は違うし細かい所も違うが…?」
「廉頗ァ!!」
「白漂ォ!!」
崖下に降り立った自身を悔しげに睨みつつも救援しようとしている姜燕を討たんとする王京らに廉頗が懐かしさを覚えたその時、彼の心身はその気勢に鼓膜が震わされたと同時に同じく崖下へ降り立った白漂へと向き直った。
“剛矛”の廉頗と“柔剣”の白漂による目にも止まらぬ豪速の剣戟が、乱戦の中でも幾分か注意を広範囲から集める規模で始まる。
「「「「「オラアアアアアアアアア!!」」」」」
「「「「「ガアアアアアアアアアァ!!」」」」」
一方、囲地の中でもっとも激しい血みどろを繰り広げていたのが、魏軍右翼将軍姜燕と白漂軍千人将蒼源らの乱戦であった。
「邪魔する秦兵を殺せぇ!」
「お前達が死ぬベ!」
互いが敵将との遮蔽物になる敵兵を殺すべく激しく入り乱れ、その常人では見出せない瞬間的な隙と間を狙い、秦魏双方の中華十弓の豪矢が飛び交い続ける。
双方の矢は乱戦で飛び交い動き回る兵らの身で、何度も相手の身を掠って皮膚を切り裂くが抜けた先の兵士の身を容易く穿っていく。
「むぅ! あの秦の十弓め予想以上にしぶとい…!」
「いや、それでも姜燕様の方が上だ! 問題は…いかん! ぐぅ!?」
それに姜燕の武勇と知略双方を長らく知る彼の親衛隊らは驚くが、そこでその一人がまた音もなく飛んできた短刀に首を穿ちぬかれて絶命する。
「またか! ぬう…!」
「危にぃ!?」
自身の傍らで絶命した側近に、姜燕が端整な顔をゆがめて瞬時に矢を再装填して短刀の根源である崖上へ放つが、それをコーカソイド系の容姿だが妙に猿顔な男が鋼の手甲で辛うじて逸らしながら再び崖上の森の中に姿を消す。
(また逃げられたか! だが…あの者らの素早さに隠れ方の上手さもあるが…あの装束が更にそれを引き出している)
森の中に身を隠したのは庶徐達であったが、姜燕は彼女達の身体能力だけでなく身に纏う衣装にも着目する。
「くそ! 今度こそやれると思ったのにきなぁ…!」
「皆、今は皆が下で蠢き続けていてこっちに掛かりっきりにはなれないから次に行きましょ!」
森の中を獣の如き速さで殆ど音もなく掛け続けている庶徐達の衣装は、白漂の前世の時代で言うアーミー柄で遠目からだと周囲の森の景色と同化して映りやすいものだった。
防御力では甲冑には劣るが、丈夫な植物繊維の素材で織られていて緑に染められ、その上から濃度の違う地味な色を無数のアメーバ状に塗られたその衣装は森の中だと非常に目立ち辛かった。
「…でも、この漂様が考えたこの柄って本当に周囲の景色と同化しやすいわ…のわ!」
それでも時々彼らの中心である庶徐には姜燕が矢を放ってくるが、如何せん彼自身が激戦の真っ只中で且つ部隊指揮にも集中力が割かれてしまうので、森の中を目立ち辛い衣装で走る彼女には良くて衣装を掠る程度しか出来ていなかった。
更に、強敵との剣戟に意識の多数が裂かれている廉頗たちに対し、フリーハンドを得た王翦は勝機を十分と見出して保険を掛けつつも自軍の陣形を整えていく。
「…むぅ、あれは…」
その中で王翦がまだ一通りの品定めを終えてない一点があった。
「ぎゃあああああぁ!!」
「と、止めろぉ!」
得物を戦斧から二丁の斧へと持ち替え、左右それぞれ別に振るって嵐のように魏兵を薙ぎ倒していっている王京であった。
しかも魏軍のまだ入り混じっていて統率が戻っていない場所を正確に横入りして狙い、彼らが気付く頃には指揮官の首を跳ねている頃合だった。
「麻鉱、崖上も含めて包囲網を整えよ。馬解は念のため退路確保と撤退の算段を付けよ。蘇鉄はあの王京隊を深入りしない程度に助勢だ」
「「「はは!」」」
王翦軍も自軍に傾いてきた天秤を確固たるものにすべく動き続ける。
一方、姜燕もまたその動きの危険性を察知してはいたが蒼源との狙撃戦に加えて別の動きにも警戒せねばいけなかったので上手くそこまでは対処できずにいた。
「プップップ!!」
越が騎馬の隙間や馬脚の合間を狐のように駆け抜け、毒吹き矢で次々と補佐役や将校を射殺してきていたのである。
毒吹き矢も改良が施されていて、蜂の巣状に筒が十本以上付束ねられていて銃床が付けているなど速射性能と取り回しが大幅に向上していた。
当然、将校が次々に減っていっている姜燕にかかる負担は増していき、自然と弓と身の回りに対する意識が浅薄になっていく。
「っ! まずはあの迫ってくる騎馬を倒す!」
焦りを募らせた姜燕がまずもっとも若く動きが読みやすい王京目掛けて矢を放った。
「っ! しまった…!」
敵将校の一人を打ち殺した直後の隙を突かれた王京は対処が一瞬遅れ、手甲でどうにか致命傷こそ防いだものの装甲が切り裂かれて、逸らされた矢は太股に深々と突き刺さり血を噴きださせる。
(急所は外したが今はこれでいい! 次は…!?)
それに一息を付いた姜燕が次に越へ矢を番えたその時、自身の姿勢が大きくぐらつくのを感じた。
自身の乗馬の頭に、鉞が投げつけられて馬が絶命させられてしまったのだ。
「…これは…!?」
倒れゆく愛馬に釣られて身体が斜めに揺らいだ姜燕の視界の片隅には、同じく騎乗から落ちつつあったが、片手が何かを投げた後で伸びきっている王京の微笑みが写される。
(あの顔は…娘め即座にこのように食いつくとは―――)
「!!」
王京の肌艶と顔付きから彼女が男でないことに気付き、意識の意表を突かれて落馬しつつあったことも一瞬だが忘れた姜燕の隙を蒼源は見逃さなかった。
「―――あ…!!?」
乱戦の中、乗馬ごと横転する寸前の角度で並み居る騎兵を潜り抜けた蒼源の放った矢が、姜燕の心臓を正確に穿ちぬいた。
「ば、馬鹿なぁ!」
「この乱戦でぇ!?」
姜燕の最後の視界に映った兵士達に動揺が瞬く間に走る。
「飛竜隊、蒼源、敵将姜燕、射殺したぞ!!」
「廉頗、後はお前だけだぁ!!」
瞬く間に秦軍が号令を発して魏軍の士気が動揺していく。
弓兵として中華全土で間違いなく上位に入る彼が、同じ乱戦下という条件を課せられていた蒼源に弓で射殺されたという事実に特に彼らと共に趙から亡命してきた兵士達に重く圧し掛かった。
だが、それに待ったが掛けられた。
魏軍の表向きの大将である白亀西が激励し、魏軍の士気が再び爆発したのだ。
「白漂将軍!」
それに気を取られた白漂が廉頗の一撃を大きく喰らうも、瞬時に馬を乗り捨てて剣を生贄に背後に飛んで事なきを得るが王京は驚く。
魏軍の昂揚と廉頗の武力の高さを改めて見せ付けられた王翦は即座に撤退の判断を下し、続けて廉頗は遅れて駆けつけた蒙恬と王賁から白亀西を救援すべく向かった。
そして、白漂が追って来ると白亀西を助けて直ちに王翦追跡に切り替え、彼らから離れていく。
その後、白亀西軍の追跡を振り切った白漂達は決戦が始まるだろう中央軍へ戻るべく踵を変えた。
○秦始皇5年(紀元前242年) 山陽攻略戦決戦5日目夜 魏国西部
「木柵には返し杭を結べ!」
「新型弩の部品はこちらに運んで!」
数日にわたる消耗戦の末、遂に決戦が明日に迫っている事を感じた双方の陣地はその準備の大詰めに入っていた。
「ステラ副長ー! こちらの弩の軌道にずれが」
「ちょっと見せて!」
その中で工兵や技術者が慌しく動いている区画で、一人の若い兵士ステラが中心の一人となっていた。
肩に掛からない程度に切り揃えられた金髪に大きな碧眼と柔らかく中性的に利発な面貌の持ち主で、身は華奢な印象を与えるがしなやかなに濃縮された筋肉が付いている。
ステラは白漂による北方平定の時に救出したコーカソイド系部族の長の一族の生き残りで、助けられた後に部族の生き残りを率いて秦に帰順して、直接の恩人である信の千人将昇進の時に賢さに指揮力と武力の高さ、彼の任地と自身の部族の居住地が重なっていた事からそのまま副長の座に収まった身である。
「いやねー、本当にステラ副長が加わってさー連携とか上手くって損害が少なくなって良かったなー」
「策も上手いしねー」
「剣も凄いけどあの自作した変った連弩とか凄いしよー」
「本当にねー。何つーか…あの後姿で歩く時の尻の振り方とか男なのに妙に色っぽいっつーか…」
隊内だけでなく他所の隊からの信頼を集めているステラだが、ある特定の会話を耳にすると何故か大きくよろけたりする事があった。
「ん? 何かさーあいつ時々挙動不審になることあるよなー」
「まー、それを含めてもさーぶっちゃけ信の馬鹿よりも隊長が向いてんじゃねーか―――」
「誰が馬鹿だ出っ歯ぁ!!」
「―――あっでぇ!?」
それに陣の外れにいた尾平が可愛いものを見る眼差しを向けながら本音の一部をコロッと漏らした直後、背後より信が馬上から殴りつけてきた。
「ぬぉ!? し、し―――!?」
「大きな声を出すな尾到!」
「―――んごぉ!?」
そのまま大声を出されて人目を集められる前に、2人を引き連れて白漂軍本陣へこっそり移動する信達。
「……廉頗も明日にやはり仕掛けてくる…か」
白漂軍本陣天幕で地図と軍配置の駒を眺めていた河了貂が帰ってきた信の報告に顔の険しさを増す。
「ああ、蒼源が主将姜燕を射殺した魏の右軍の機能を維持させるために白亀西がその場に留まったから、王翦軍がこのまま後ろで足止め喰らってる間に廉頗も明日中に勝負を決めに来る! あいつは俺達がまだ辿り着けてないと思ってるから、俺達がここにもう戻れたことは黙っててくれ。漂はより守秘を確実にするために玉鳳や楽華と共に本陣近場の森で隊を隠して休ませてる」
白漂の地形読みと庶徐らの先導で敵方の予想より大幅に早く戻れた信の言葉に一同がより気を引き締める。
「……じゃあ、今晩の内に陣背後の清泉で身を清めて置いた方がいいか…」
「……………あー、うん…まーそうだね…」
その中でステラが密かに信の背を見て小声でもらした独り言に、何か訳知り顔なジト目で河了貂は視線を向けた。
「…ま、まさかここまで早く戻れるとは…しかもこんな開けた土地に…」
「気を抜くのはもう少し先にせい黒金! 白漂達と本陣以外の味方にはまだ知れとらんが敵に知れたら意味が無くなるぞ! 食事を済ませたら早く寝るのだ!」
一方、秦軍中央軍本陣から近からずも遠からずな場所の森の中の開けた平野で、玉鳳や楽華の隊員たちが集まっていた。
「あー、何と言うか良い意味でだけど味方に振り回されっぱなしでまだ目立ててないなー俺達ー」
「蒙恬様! 不貞腐れてる場合ではありませんぞ! 戦況とこの緊張感からして下手すれば廉頗がここを通りかかるやもしれませ―――」
「フォッフォッフォ、明日になればそう言うておれなくなるからのう。今は休んだ方が良いのう」
「―――んってももも蒙驁さぶ!?」
その中で早々に横になっていた蒙恬に胡漸が注意しようとした所、あろうことか背後の影から、秦国山陽遠征軍総大将蒙驁がその温和な面貌だがどっしりとした巨体で現れた。
「そう大声を出すでない。人目を避けるために少ない人数でここに来たからの。白漂より話を聞いた。お主らは魏軍には知られるわけにはいかん隠れた後詰じゃからの…」
「蒙驁将軍、遠征軍司令官たる身で軽率がすぎます。何の用でこちらに…」
「フォッフォッフォ、じゃあ他には居らんから手短に話を済ませようかの。祖父と孫としての…」
祖父らしからぬ軽率な行動に蒙恬は不可解な表情を浮かべるが、戦場では見せないその手厳しくない態度に不快な色を浮かべる。
「
「…まあ珍しくむきになるでない。だがまあ…今回ばかりは…儂も退くつもりは無いからの…!」
それに対し蒙驁は温和な表情と声音こそ変化は無いものの、普段にない重圧のある調子で言葉を返した。
「…ふう、こっちの損害は少ないから糧秣に消耗品の計算も早く終われたわ。じゃあ、久しぶりに身を洗いましょっと」
一方、白漂軍本陣を囲む森の一角にある人気のない清泉のほとりで、ステラが甲冑を外して衣服を肌に滑らせて地面へと降ろしていっていた。
「…あ、遠征に来る前よりも更に大きくなったかも…」
そして、胸に巻かれていたサラシが解かれると中から柔らかそうな丸みを帯びた白肉の塊が横並びで二つも現れた。
「で、でか―――」
「っ! 誰!?」
「―――っっっ!!?」
それがプルンと大気を振るわせた直後に背後の茂みから絶望を感じさせる小声が盛れ出て、ステラはキッと鋭い顔で特徴的な形状をした連弩を構えて茂みに向けた。
「…ホ…ホー…ホー…」
「…梟鳴って名前でも鳴き真似はそんな上手く無さそうね…」
「…そんな顔すんな…余計惨めになる…」
少しして茂みから怪しいことこの上ない梟の鳴き声が響くが、ステラが緊張を和らげて苦笑いに転じるとジト目の河了貂が茂みから出てきた。
「…ステラ、やっぱ…女だったんだね……」
「…えぇ、まあね…」
それから同じように衣服を脱ぎ落とし、未成熟さが残りつつも大人へと育ち始めている細い肢体で河了貂は生まれたままのステラと共に清泉に足を付けた。
ステラは北国育ちと人種から来る白く透き通った素肌に包まれた凹凸がはっきりとつきつつも十代後半の瑞々しさを保った女体を持ち、それが金髪碧眼の容姿に泉ごと照らす月光と合わさって月の女神
両者は下半身を水に付け、上体を岸辺にうつ伏せで寝かしつけたまま星空を楽しみつつ戦から離れた雑談を始める。
「…なあ、ステラ…やっぱさー…信の隊に身を置いたのって…近場なのである以上にさ…」
「あなたも付き合いが長い以上の理由で彼の傍によくいるんでしょ?」
「……っ…そうだよ、悪いかよ…?」
そこでゆとりのある微笑みを浮かべるステラとは対照的だが、河了貂は不機嫌そうに口を尖らせつつも人目が他には無いことも手伝って素直に口を漏らす。
「…そうねー、強いのはかっこいいけどあの危なっかしい所はどうも放っておけないなーって感じに可愛いわね。付き合いが長いあなたなら自然とほっとけないって思いから可愛い所も目立っていくだろうから無理ないでしょうね―――」
「それを言うならステラは何であの馬鹿なんだよ? 助けられたからって…他に生き残りいないからってだけど部族の長もしているし見た目も中原とは毛並み違うけど悪くないから他に良い男はいるだろ?」
「―――えーーーっと……………………、そうねー…強いて言うなら…焼き蕎麦料理がおいしい所かしら?」
「っぶぅ!?」
好いてしまった男が同じステラからの思いも寄らぬ返答に河了貂は大きくずり落ちて水面を騒がせた。
「っ? そこまで変なことかしら?」
「ぶは! げほげほ! おえっぷ…そ、そんな理由で…あいつ確かに焼き蕎麦だけは俺よりも上手いけど他のはゲロまずだし! な、何より理屈が通ってないって…!?」
「人が人を愛するのは理屈だけじゃないのよ貂」
「……え…?」
ガボガボと水面から戻って水を吐きながらも抗弁しようとする河了貂の頬をしっかと掴みつつも、少し強めな双眸で顔を寄せ合いながらステラは強めな口調でたしなめるように語りだす。
「人が全ての思いを理屈だけで割り切れるのなら争い事は起きないわ。けれど同時には進歩も発展もない衰え終わりゆくの世界にしかきっとならない。だからこそ人は自然に生じる思いも無視できないの。特に恋は付き合いの長短とかでジワジワと育ったり急に春の嵐のように生じたりするけど、共通して言えるのは理屈だけでは語れないって事よ。さもなければあなたが彼を好きになることは無いわ…」
「………………」
その温かな眼差しと手触りを添えて語られる母性の深い言葉に、河了貂は深い安堵を覚えつつも相反する嫉妬を覚えて口が動かなくなる。
「…だからさー、私が夜の方も含めて色々と教えるからー早く自分からも彼に突貫して結ばれてくれない? 流石に色々世話になってる先輩出し抜いたらねー部族の他所との今後の付き合い大変だからさー。あなたと彼女の次の三番目くらいが丁度良いと思うからーね♪」
「…な、何か一気に現実臭くなっ…ってぇぇえぇ!? ちょ…な、ど…何処に手を回し…あ…む、むぐぅぅぅ…!!?」
だが、数秒の間で身が弛緩してしまっていた河了貂は続けて飢えた雌猫の笑みを浮かべたステラの突然の絡みにそのまま押し流される結果となった。
「……貂、強く生きろ…」
「ここをこんなにして妻とはいえ戦地で女性を抱いてたら説得力ないわね…っ❣❣」
ちなみに、それをやや小高い崖の上の林より立ちバックの姿勢で繫がっている白漂と紅華が生暖かい視線で見守っていた。
やや腰が引けて露になった白漂の男根を、紅華が情欲に駆られた恨みがましい流し目を添えて秀麗な指で掴んで自身の奥底へ引き戻す。
「…それを言うのならここの隠れ天幕で寝ようとしてたら既にあの過激な下着で待ち構えていた紅華も説得力無いと思うけど…?」
「…だってぇ、前線だからって蒙驁軍と合流してからは抱いてくれなかったじゃないですか❓ 溜まるのは男だけじゃないのよ…。実際、ここまで付いて来てる地元生まれの妓女もしてる軍属の子達も大勢夜の仕事を始めてるし…っっ~~~~~❣」
マントの下は以前に朔方で見せたのと同じ赤色のセクシーランジェリーしか纏ってない紅華の臀部に、少し釣り目になった白漂が腰を勢い良くパンと叩きつける。
「…言っとくけど明日には決戦だから一発だけだぞ」
「えぇ…私ももうそれに合わせて何度も先にイってるから…あなたのも余分な気だけを私に…んんん❣❣」
やや顰めつつも頬はしっかり上気している白漂の突き込みは、何度も達しつつも精は漏らしていないドライオーガズム効果で膨張に膨張を重ねており、それが紅華の鍛えられた腹筋も重なり磯巾着で出来た大蛇を思わせる締め付けと合わさって、両者は互いの陰部から激しく削りあって溶けて混ざり合うような快楽の海に沈んでいく。
白漂は腰の動きを激しくさせつつもより深度が深まるに応じて紅華の胸を揉みしだきながら彼女の顔を近づけて口内もまた貪りあい、紅華も片手は彼の空いた手と絡ませあいながらも空いた手は繋ぎ目に伸ばして自身の肉豆と彼の陰嚢を揉み解して互いの子の元を刺激していった。
「っっっっっっっっっっっっ!!!!」
「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~❣❣❣❣」
そして、白漂が紅華の両手を掴んで天へ突き上げるように腰を突き上げたその時、彼の身の全てを押し流すような白濁の奔流が、紅華の脳天まで穿ちぬくような痺れる極みで降りて開いた子宮口を潜り抜けて子袋を文字通り満たして腹部を膨らませていく。
「っっっっっっっ…づ…がは…❣❣」
真の極みが近づいたのを覚えた白漂に声を押さえるために寸前で銜えさせられた鞘を噛み砕く寸前まで、快楽の絶叫を抑えんとしていた紅華の口腔筋が極みの最高潮から解放された途端に大量の呼気を吐き出した。
その間も白漂の男根は最初よりかは収まったものの未だに脈動を続けており、膨らんだ子宮と膣にも収まりきれなかった子種汁が僅かな隙間から勢いよく白いシャーベットを思わせる水飛沫を地面へ落としていく。
「…はぁ…はぁ………こんな…摘めるまでの子種汁がこんなに溜まってたなんて…薬でも消しきれなくて赤ちゃんが出来てしまいそう……❤️」
「…本格的なそっち系の仕事は、北で待ってる皆の元に帰ってからだな…」
自身の中で脈打ってるように感じられる子種の熱を指でも感じている半ば茫洋とした瞳の紅華の身を、白漂は絶頂後の脱力で地面へ打ち倒れる前に抱き止めて衣服を着させ直すと、そのままにやついた表情の衛兵が守る自身の天幕へ戻っていった。
キャラクター設定⑨
ステラ
容貌/ステラ・ブレーメル(マブラヴオルタネイティブ トータル・イクリプス)下記年齢化
年齢/17歳(始皇5年(紀元前242年)時点)
出身/秦国北方領土(コーカソイド系の血が強い)
身長/170センチ
体重/55キロ
3サイズ/B90W59H91
得物/特殊な形状の連弩 弓 剣
趣味/水浴
白漂軍による北方遠征中に信に助けられた部族の長。
原作の飛信隊副長だった羌瘣の代わりに信の副官についた少女。
羌瘣程近接戦は強くは無いが戦場には十分通用する腕前で、彼女に引けをとらない現場指揮官としての高い能力と狙撃能力を見せる。
信には助けられた事から来る好意から始まる一目惚れしているが、北方平定直後に信の嫁選びを必死に止めていた周囲と河了貂の今にも背後から刺して来そうな目つきを見て、まず信頼を得てからにしようと性別を偽って入隊した。
書いた身で言うのもなんですが、何だかんだで戦場でも睦言に回せる余裕がある白漂にイラつきました(笑)。
次回は今回の話でも出てきたあの子の因縁の最初の一区切りも出てきます。