※この作品はR-18です。

天下の大将軍になる!! ~夜の睦言~   作:oosima

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今回、色々な作品のパロディでも有名なあのシーンが下種な形で出てきますが、真面目な心配事が各所より立ち上ります。
それに伴って大人向けシーンは少なめです。
総合評価600突破出来ました。ありがとうございます。
今後もお気に入り登録、感想、評価付与をよろしくお願いします。


143 憂いにも多様性がある

○秦始皇9年(紀元前238年) 龍城攻防戦1日目夜 匈奴(ヒョンナ)領中心部 龍城近郊 燕・秦・匈奴右賢王連合軍野営地 秦側野営地○

 

「……………………」

 

 夜も深まって多くが寝静まっている時間帯にて、捕虜収容所から抜け出したエルサリアは苦渋の表情で敵地の中を隠れながら進んでいた。

 

(……理屈で言えば…彼が言ってくれた策がこの状況を打開する最良の策なのはわかる。だけど…仮にも命を救われた恩義があり…経緯が違っていれば仕えていたかもしれない相手で…何より、あちらの方がここ…北の王にはふさわしい…私はどうすれ…!?)

 

 苦悩しながらも自分の立場からして今現在もっとも討ち取るべき白漂の姿を探していたエルサリアだが、秦側野営地内にある岩場に差し掛かると妙な怒気と臭いをかぎ取った。

 

「…おほほほほ…やってくれましたねぇ皆さん…本当に久々ですよ…。如何に愚息とはいえ…私のムスコをここまでコケにしたお馬鹿さん達は…」

(…え、何なんですの…この光景!?)

 

 数分後、その妙な怒気と臭いを辿って岩場の中を突き進んだエルサリアが目にしたものは、岩場に腰掛けて妙な敬語を使って薄ら笑いを浮かべる白漂と、その前で両手と胸を壁に付けた状態で尻を突き出しているその愛人達の姿であった。

 

(…カジ…今度は何を言っているのかしら…?)

(…よくわかんないけど…衝撃療法ってのでいつもの調子に戻れたんじゃない? まぁ普段の悪ノリみたいな感じが強いから悪い意味でだけど…あ)

 

 微妙に困惑した表情を岩壁に向けているナミの隣は、彼女以上に長躯で且つナイスバディだが筋肉量が多くて、ショートカットの癖が強い金髪で東洋と西洋の中間的な美貌だが切れ目でやや険しい表情が目立つカジ・メイコという同年代の美女の同僚であったが、その二人の背後で白漂が腰かけている岩場から降りて同じ地面の上に降り立った。

 

「本当に重い衝撃を当ててくださりましたね…」

「「「「「……………………」」」」」

 

 女性達はその白漂が吐く言葉を空気越しにその形良くも大きい尻で感じ取っているが、やがて彼の身が不安定に震えだしたのもまた感じ取る。

 

「…ゆ、許さん…!」

 

 そして、岸壁に拳を深々と減り込まされた後、怒りに満ちた咆哮が愛人達に浴びせられる。

 

「絶対に許さんぞこの雌豹共!! じわじわと嬲り孕ませてくれるわ!! 覚悟しろよ貴様ら!!」

(…よくはわかりませんが普段の深酔いした時みたいな調子に戻ったみたいですね)

(コスプレ喫茶で働いてた頃はブルマや18号のコスプレしたことあったけど…まさかドラゴンボールのパクリみたいな場面を自分の身で体験するなんて…。この世界がもしも創作物の中の世界なら版権とか大丈夫かしら…?)

 

 普段の悪ノリした時の白漂に割と近くなった怒り(?)の咆哮を尻で浴びせられた女性達は困惑しながらも、先ほどよりかは自分達が知る普段の白漂に近かったのでシャンディのように気が抜けたような安堵も覚えており、逆にミナイのようにメタな心配が出来る余裕を取り戻す面子もいた。

 

「…偉そうなことを言う暇があるなら早く済ませて…。それとも何? もしかしてパクラの時に弾切れにでもなった…あ❣❓」

 

 その中でカジは一人だけぶっきらぼうな調子を保っていたが、彼女もまたクパッと開いて愛液を垂れ流していたままの淫裂を亀頭で軽く叩かれるとビクッと身が震えて頬に薄っすらとした朱色が滲み出た。

 

『おっほっほ、この状況でもビリギャルさんは相変わらずな態度ですねぇ。ご安心ください。私の過去最高の絞られ回数は53回です。フルモードで戦う事はないのでご心配なく』

(いやいやこの場合心配するべきなのは貴方がカラカラの干物にされた時じゃなくて訴訟だと思いますけど…!?)

 

 そのカジの様子に白漂はニヤリとしながら一部の人間にしかわからない言語で答えて、一部の人間に冷や汗を流させるがその一人であるミナイは真面目な警戒心による表情で背後を見やった。

 

「カジ、これ」

「…? 何…? また無駄に遅漏させようとしてんの…!?」

 

 表情を同じくした白漂は足元に転がっている得物の一つをカジに渡して不満げな顔を向けさせるが、その彼女も直ぐに両目をスッと細めさせて瞬時にビキっと無数の血管が浮き出た利き腕で得物を受け取った。

 

(…え…何ですのこの雰囲気は―――!?)

 

 その様子を岩場の少し上から現場を見下ろせる出っ張りに乗っかり盗み見ていたエルサリアだが、カジが自身に目を向けた瞬間にその彼女が得物を投げつけてその出っ張りを一撃で粉砕してのけた。

 

「―――ァアア!? 何ですかいった…!?」

 

 轟音と同時に砕け散った岩の出っ張りからエルサリアは現場に身を落とされつつも受け身を取って立ち直そうとするが、そこで彼女の片頬を掠れる形で眼前にカジの得物が振り下ろされた。

 

「…誰こいつ? コソ泥にしては動きや受け身が上手いし…」

「僕らが右賢王の野営地から戻る途中で殺されかかってた所を保護して連れてきたB左賢王の娘エルサリア、あんまり驚かせたら駄目だ」

「あー、それか…?」

 

 長い柄の両端に短めの鎖で球体の錘が付けられた自身の得物である“双頭錘”を突き付けながらエルサリアを睨みつけるカジを、白漂は窘めるがその彼が接近するとエルサリアはビクッと上体が上がって赤面して尻を付きながら仰け反った。

 

「は、恥を知りなさい! 天下に名を知らしめた大将軍がこんな女性をものに扱う真似を…というかその前に早く隠しなさい!!」

「いや、そんな取って食うわけじゃないのに何をそこまでビビって―――」

「貴方の隆々としたままの一物を見せつけられたら別な意味で食されると誤解されてもおかしくないでしょう」

「―――え…あ…」

 

 エルサリアの全く落ち着きが感じられない非難に白漂は最初戸惑うが、シャンディの突っ込みを受けて自身が何も来ていない生まれたままの姿であることを思い出した。

 

「おい! 白漂よ大変だ! この前に捕まえた右賢王の娘が逃げ出して―――」

「グハ!?」

「―――え…?」

 

 その直後にエルサリアが落ちる前にいた元々岸壁の出っ張っていた場所にバトゥが現れるが、その煽りで生じた落石を脳天に浴びて意識が飛んだエルサリアと、生まれたままの姿である白漂と愛人たちの姿を見て思考が泊まってしまう。

 

「……いやー白漂…脱走者には相応の罰で報わせねば示しがつかないのはわかるが…貴方の立場でそのような手を使うのは…駄目とは言わないがなるべく人目に付かないようにしないと色々と要らぬ誤解を生むというか…」

「ちょ!? 君それ誤解だから―――」

「閨で色々調教して吐かせるつもりだったって素直に言えば?」

「―――あってカジィ!?」

「…カジさん…珍しく綺麗な笑顔…口では何だかんだ言いつつも良い所で邪魔してきたエルサリアさんと引きのばしてこんな状況に導いた城主様に怒ってますね…」

 

 そのまま見た感じの印象のままに自然な答えに行きつくと微妙そうな表情で退こうとするバトゥも交え、エルサリアの意識がない内にこの場のグダグダは増そうとしていた。

 

「しゃーーーー! 今夜はあそこの出城を攻め落とすぞー!!」

「「「「「ゴラァアアァアアアアアアアァアア!!!!」」」」」

 

 それを止めさせたのは岩場の近くの山道を猛獣の如く駆け下りていった梁魁と(荒くれ者にしか見えない)彼の傘下の将兵達の気勢であった。

 

 

 

 

 

 ○秦国外北方 匈奴(ヒョンナ)領中心部 首都龍城 某邸宅○

 

「…ああ、今夜も始まっちゃった…」

 

 その梁魁軍の攻撃を受けている出城に近いが内壁で遮られた別区画の、今は主がいない貴族の邸宅でバアトルは秘かに匿っている者達の前でそう嘆いた。

 

「…えーーっとバアトル王子ー…匿ってくださるのはありがたいですがどうしてこのような…」

 

 匿われている面子の一人である楽華隊副長胡漸が感謝と不安を綯交ぜにした表情を浮かべていた。

 ちなみに、胡漸は蒙恬が暇を持て余したと聞いて王宮の侍女を口説いてその中へ度々出入りしていると聞き、それを諌止しようとして強引に付いて行ったら梁魁による龍城攻めという事態に出くわしたので、蒙恬が口説き落とした北の有力な一族の女性達に彼諸とも匿ってもらっている状況であった。

 無論、この場にはその主である蒙恬本人もまた神妙な顔で参加していた。

 

「左様です。あまりに不可解な経緯で交戦に至った我らですが敵にある事には変わりません。それをどうして太子というべきあなたがこのような危ない橋を…?」

 

 蒙恬もまた問いを投げ掛けてその身の安全にも触れるが、バアトルは流暢な秦語で説きはじめる。

 

「…それは、こうした方が…妹テノの安全を守れると考えたからです。僕なんかより…白漂殿の方が単于に相応しいし、僕を単于にして実権を握ろうとしている母ですが…あの人はあまりにもこの地の皆から怨みを買い過ぎています。仮に僕が単于にされても…当然収まらず大勢の人が苦しみます。そうなれば反乱がおきて僕では間違いなく弑逆されるし…そうなるとテノも連座で消されます。それなら…白漂殿に単于を継いでもらって僕らを穏便に追放で済ませてもらった方が流血は少なくて済む…」

(…思い切りが良いというか冷静というか惰弱というか…こんなに幼いとはいえ…次の王位を告げられる者が…まさか王位をやるから身内を見逃してくれなんて言うとはねー。だけど…冷静かつ客観的にものを見れる能力がこの幼さ以上に備わっている事を考えても、確かにこの子は漂と比べれば器量や他の全てにおいて幼さを考慮しても遥かに見劣りする…)

 

 王族らしからぬが聡明さを感じさせる提言をその幼い身の上で説くバアトルに、蒙恬は感心しつつも故に白漂とあまりに開いてしまっている差を感じて同情の念を抱く。

 同じ年齢かもしくはそれ以下の齢で、孤児となるも趙との国境戦が多かった当時の秦国北東部国境地帯の孤児や流民を纏め上げて村落や集落を立て直し、あまつさえ趙の蹂躙部隊の侵攻を幾度も退けてきた白漂と比べれば、目の前にいる少年は成長しても良くて平時の堅実な君主にしかなれないだろう。

 

「ちょっと蒙恬様! 確かに身の上からして可哀そうだとは思いますが今はどうすれば脱出できるかの模索が先決でしょう! それにこの子の言う通りになりでもしたら国許にいる者達に危険が及びますぞ―――!」

『し、刺客だーーーー!!』

「―――おぉ…!?」

 

 蒙恬に胡漸は深入りするのは危険だと感じて彼に小声で耳打ちするが、その途中で外の近所から首都衛兵の緊迫とした声が響いてきた。

 

「…ち、全く使えそうな人質を連れて来たから報酬を要求したら、それを支払うと言っておびき寄せた奥の部屋で口封じしようとしに来るなんて…相変わらず舐めた真似ばっかするなーあのおばさん」

 

 その喚声がしてきた現場に近い邸宅の上層階より、羌識が恨み言を吐きながら自分達を探して右往左往している警備兵を小馬鹿にした表情で見下ろしていた。

 

「そんなのんきに構えてる場合じゃないぞ識ー、こんな契約違反を盛大に噛まされて裏切られたのを放っておくと今後の仕事に差し支えるし。何より只働きはごめんだぞ」

「わかってるってー、だったらー外で今面白いことしてるあのおっさんに中まで来てもらおうって♪」

 

 それを仲間に咎められると羌識はここの近くにある外壁に属する出城と、そこを攻め立てている梁魁達に視線が移った。

 

 

 

 

 

 ○匈奴(ヒョンナ)領中心部 龍城近郊 燕・秦・匈奴右賢王連合軍野営地 秦側野営地 本陣○

 

「…そういうわけでー、あのテングリ湖の底の浅さと龍城背後にある城の積雪の状況を利用したこの策…どうだ?」

 

 羌識が梁魁達の城攻めに乗じて何かをやろうとしていた頃、白漂は龍城攻略の策を練っていたが、その内容に作戦会議に参加することを許されていた面々の多くが驚きつつも半信半疑という表情を浮かべていた。

 

「…た、確かに将軍が人工的に起こそうとしているその現象は自然界ではさして珍しくない現象です…。ですが…例の兵器の威力を目にしたものの一人ではありますが…あ(・)れ(・)にそこまで上手く行かせる力があるのでしょうか…?」

「それに飛距離の問題からして届けさせられる距離までこちらの戦線を押し上げられるかどうか…? まだ外壁を攻略できる目途すら立っていないというのに…」

 

 数万単位の軍勢を連れているとは言っても元々は交渉目的で来ていた身で、女性に流されるような経緯で戦争に至っていた彼らの多くは、まだうまく乗り切れていなかったのだ。

 

「それに成功したとしても…それでも市街地にも少なからず影響が出ます。そうなれば向こうにとらわれているご嫡男君の安全にも―――」

「子供一人の命と…前線で戦っている皆の命…今この場で優先すべきなのはどちらだ? 自分の息子を助けるためにそちらの身内を大勢死地に送ってくれと言われて納得できるのか?」

「―――お…い、いや…申し訳ありません。安直でした…」

 

 その彼らは白陵の身も案じる意見を出すが、再び白漂が氷で出来たカラクリを思わせる双眸で睨むと陳謝した。

 

「…(まずい…、戦地にいるからかあの冷たい眼差しへ戻りそうになってる…)確かに、この案なら市街地を直接狙うものよりかは大幅に堅気の減らせられるわ。けれど…それでも皆無というわけじゃない。それに…ここしばらくの風向きからして…そこまで例の兵器を届けさせられるかどうか心配ね…。だとしたらせめて外壁を超えて距離を縮める必要があるんだけど…!?」

 

 他の幕僚に代わって、今回の策で最も必要とされる能力を持つナミが内心で今の主の心理状態を憂いつつ、感情よりも理屈の面で悩ましい表情を見せるが、そこで本陣の天幕に伝令が駆け込んできた。

 

「報告です! 先ほどから夜襲を掛けていた梁魁殿が外壁正門の突破に成功! 既に燕郡と右賢王派軍は城内の第一区画に侵入して敵の首都軍と激しく交戦中です!!」

「「「「「…な、何だってーーーーーー!!??」」」」」

(…あーー、あのおっさんならやりかねんと思ったけど…それにしても速いな…? そういえば今は龍城には羌瘣達が忍び込んでいるほかに、湖上で襲おうとしてきたあの子も戻ってきてるらしいけど…とりあえずこの期に乗じて必要な地点まで抑えておこうか…)

 

 一応の味方がもたらした思わぬ報告に幕僚の殆ど絶句し、いつもの戦時における調子に戻った白漂だけは妙な納得感と一抹の不審を覚え、湖上で出くわした羌瘣の身内の姿を思い起こした。

 

 

 

 

 

 ○秦国外北方 匈奴(ヒョンナ)領中心部 首都龍城 某邸宅○

 

「「「「「……………………!!」」」」」

 

 数分後、変装した状態で内壁の望楼に近い倉庫に隠れ込んだ蒙恬達は、そこから見下ろせる戦場となった外壁側区画のそこに視線が奪われていた。

 

「「「「「………………!!!!」」」」」

 

 そして、それはその現場の間近で龍城防衛軍と戦っている秦・燕・右賢王派双方の兵達も同様で、彼らも各々の得物を振るいながらその光景に魅入られていた。

 

「ごらぁ! 遅れて来たくせによくピョンピョン飛んで目立ち過ぎだぞ白漂! もちっと周りと合わせろ!!」

「そういう魁さんの蛇矛は危なすぎて他が近寄れないから僕が出るしかないんだよ!!」

 

 最前線に立って自分達を引っ張りながら敵兵の血という紅桜で、春の嵐を思わせる暴風を巻き起こしておる梁魁と白漂の姿であった。

 

「す、すごい! 速さ自体は同じだが…怪物真っ青な怪力の梁魁と技が異常に細かい白漂の二人…息がピッタリだ!!」

 

 攻城戦に遅ればせながらも参加して戦線を押し上げている尊舞を始めとして、戦玄人が多い攻め手たちから見て二人の戦技と同調の高さは唾をのませるものだった。

 梁魁が蛇矛を振るえばそれは豪速で周囲の敵を反応の有無を問わず鎧や盾ごと草の如く両断していく。

 一方の白漂は、それらの僅かな隙間を潜って近づく敵兵の零れを十星戟で捌きつつ、続けてくる後続の適当な戦闘の足元からシュンと静かな音を残しながら綺麗な横一文字で切り裂き、彼らが後続を撒き込んで倒れた上を曲芸師のように飛び回りながら瞬時に止めを刺していった。

 

『な、何としても止めろぉ!』

『ほ、本当に石の都の人間かあいつら!?』

『きゃあぁ! 助けてぇ!』

『に、逃げろぉ!!』

 

 だが、二人の暴威を差し引いても都の匈奴(ヒョンナ)兵は弱くはないが、これまで秦燕が戦ってきた同族の将兵と比べると強くはなかった。

 

「…やっぱり…前線の兵と比べて強くはないわね。どういう事かしら…?」

「まードレゲネの裏の評判や汚い裏事情から見ればこういう感じじゃないかしら」

 

 その事に疑問を覚えている一人であるナミがそれを口に出すが、訳知り顔のマルタが口を開く。

 

「自分が跡取りにしている息子君の弱さは母親のドレゲネが一番知ってる。ましてやほぼ無力化してたうちの大将のお母さんも敵国嗾けて消してのけた女が、その息子の近くに有力な後継者になりうる存在を置くわけないでしょ。旦那の頭曼が死んでからは強い将や有力な人物は片っ端から遠方に遠ざけてなるべく龍城には近づけないようにしてたって話よ。味方してる左賢王も普段はこっから早馬で最低五日は掛かる所に手勢は止めさせられて、ご本人とその一族に最低限な護衛だけを残しての監視付き状態で政務の補佐をさせてたって話らしいし」

「うっわ、うちの大将とは逆な意味で馬鹿っぽい。あ、そう馬鹿といえばあんたら漂が馬鹿っぽさを亡くしかけてた時に私達の後頭部目掛けてその馬鹿力乗せた拳向けたでしょ!」

「だってさー、あの時の機械仕掛けみたいにヤバい瞳してた大将を戻すにはー、眼前で仲間のピンチをみせるのが一番だと思ったしー。実際に白漂も元に戻ってあんた達を足で蹴飛ばしはしたけど避難させてくれたから成功だったで…」

 

 マルタとナミの間で口喧嘩が起きそうになるが、その間に白漂は城内で恐慌を起こして逃げ惑う民を見て憂いを抱くも、同時に企みもまた思いついた。

 

「ちょっと、梁魁将軍、耳を貸して…ブツブツブツ…」

「…ほほう、成程…そいつは悪くねえな…おーい! 工兵の頭共こっちに集まれー!!」

 

 そして、馬鹿みたいに高いのは武力だけでなく悪知恵も同じな二人の指示で戦場がまたしても大きく揺れ出した。

 

『…く…梁魁の性格からして夜になっても息継ぎする間も与えんとばかりに責めてくるとは見ていたが…まさか外壁の門をもう破って来るとは…!』

 

 一方、王宮から外壁区画の続く通路を険しい表情のアルクサルトが馬で走り抜けていたが、その様子を高所の窓際より眺めている影が幾つかあった。

 

「おーすっげーなーあのくどい顔のおじさんに面隠したにーちゃん♪ 瘣ねーの落とし前を付けた後はあのおじさんを殺ろっか♪」

 

 その影に混じる羌識の足元には、先ほど梁魁達によって突破された事になっている龍城外壁正門の門番隊長の首が転がっており、彼女はアルクサルトの次に今も城内の市民居住区で荒れ狂う梁魁と白漂に視線を愉悦で満たして向けた。




最後の所で主人公とあの太眉大将の悪知恵が出ましたね。
次回はその悪知恵が及ぼす戦局への影響が描かれる予定です。
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