○秦始皇9年(紀元前238年) 秦国中央部 王都咸陽○
「ぎゃああ!?」
「早く上って後ろから門を開けろぉ!」
「怯むなぁ! 何としても都を守るのだぁ!」
渭水の北岸で信達が討伐軍大将達と合流を終え、向かう先にある後宮で扇琵達が凶報を耳にしていた頃、その咸陽では都を攻め落とすべく秦軍と叛乱軍の戦闘が既に始まっていた。
「わああ!? な、何でこの咸陽が攻められてるんだ!?」
「し、知るか! 早く逃げろぉ!?」
以前の合従軍でも直に攻められることは無かった咸陽の城内は恐慌状態を起こしていたが、実は当の叛乱軍にも混乱が生じていた。
「チ! 全く…戎籊軍め迎撃に出向いた所で早々に大将を討ち取られてこちらに戻ってくるとは…!」
叛乱軍主将の一人が早々に討ち取られた報せと、その混乱で無秩序に渭水北岸から戻ってきた味方に趙から送り込まれた味紺が舌打ちしていた。
「父上、その討伐軍3万以上に雪崩れ込まれると面倒です。私が兵を率いて狭道にて抑え込みましょうか?」
「いや、待て。それをするのは味紺と奴の指揮下に付けさせた戎籊に任せればいい。我らは王都に巡らされている仕込みが効果を出すのを待て…あ、やっと開いたな」
その報せに樊流期が少々面倒そうな顔を浮かべていると、父親である樊於期の視線の先で、今現在攻められている最中である咸陽の東側城壁の正門が開いた。
「おお、これも父上の仕掛けですか?」
「いいや、呂不韋のだ。さー我らも史に悪名を刻みに行くとするか」
「ハハ、望むところです」
呂不韋派の兵団に裏側の開閉装置を制圧された事で開かれた東側正門より、叛乱軍は咸陽城内に突入し始めた。
○秦国中央部 旧王都雍○
叛乱軍が遂に咸陽城内に突入しだした頃、その鎮圧のために雍を出ようとしていた昌文君は昌平君と対面していた。
「…かたじけない。貴殿が漂経由で叛乱の情報を報せてくれたおかげで我らは命拾いした。そして…呂不韋派閥離反までは半信半疑であった故この場に至るまで会談を設けられなかったことをここに詫びる」
「それが最良だ。呂不韋による監視は召使にまで及んでいた故に、会談こそしていれば逆に先回りされて潰されていたからな」
「正直…宮廷の権力争いはこうなってしまえば意味はない。むしろ…今こうして剣戟で決着を付ける場となれば…百の勢力よりも貴殿を味方につけたこの状況こそが勝利への好機と受け止めている!!」
両丞相の短いが重要な対談中に介億もまた参入する。
「大王の護衛及び雍の守備は王弟君とこちらからも兵を出しているので抜かりはありませ…む?」
だが、要地の警備を受け持った一人であるはずの成蟜の視線はどういうわけか別の方向を向いていた。
「意外だったな…あの狸の口から“天下”と言う言葉が出るとは…」
「「「「「………………」」」」」
成蟜のその言葉はここ雍で最も高い建造物に繋がる階段を上っている呂不韋の背に向けられており、それはこの場に集う呂不韋と対峙している要人達全員が抱いていた新たな印象を表していた。
「…十年以上前に見出された時より彼を見てきた。元商人という異質な経歴ではあるが…秦を躍進させてきた四大丞相“百里奚・商鞅・魏冄・范雎”に比肩する大人物である事には違いない」
「「「「「………………」」」」」
「もしかして…いや、我々も含めた全員が呂不韋の“器”を未だに測り切れていなかったのであろう」
昌平君が嘗ての主に対する推論を口にしていた頃、当の呂不韋本人は吹きすさぶ風にも後押しされているような心持で愉快そうに顎髭に指を遊ばせていた。
○秦始皇9年(紀元前238年) 龍城攻防戦日2目昼 秦国外北方
『…ッ…どうにか矢傷を負いはしましたが…何とか逃げ切れましたね…』
咸陽攻防戦が本格化して、そこへ鎮圧のために雍を昌文君らが出発しようとしていた頃、秦・燕・
(あのようなの下種な虚言でしょうが…もしも今の情緒不安定極まる太后の耳にでも入れば斜め上に解釈して面倒なのは先に処理できるものから処理しような愚考で―――)
『!? エルサリア様! 脱出なされたのですか!?』
連合軍陣中での耳にしたその流言とドレゲネが与えてくる彼女への印象で、エルサリアは歯ぎしりしながらも父の姿を探して足を急がせようとするが、そこへ彼女と顔馴染みの一人である城勤め一人が声を掛けてきた。
『―――お…どうしましたの?』
『さっき太后様が護衛も付けずに何やら人目を避けて何やら見慣れぬ連中を密談している場面を見たのですが、どうやら…貴女が敵に捕虜とされて晒されていた姿を斜め上に見て、御父君が向こうとー…』
『………!?』
その城勤めの一人の言葉に、エルサリアは一番否定したかった展開が現実になろうとしつつある事に気付いて絶句した。
○秦国外北方
「あぁ…❤️ あんま音を出す様な動きは出来ないけど…これはこれで…じっくりと大きさを感じられて…より深く染み込んでいく甘さと痺れが…んん…❣」
エルサリアが王宮に如何にか戻れたものの不穏な気配を知らされた頃、連合軍側が占拠した庶民区画にある富裕な外国人商人が使用していた倉庫街の一角で、ナミがそのメリハリの効いた艶ある女体とオレンジのショートヘアーを揺らしていた。
揺れているナミは籠手と足を除けば鎧と衣装を外されていてスポーティーさとグラマラスさを両立した肢体を晒しだして、全身から球のような汗を流していた。
「……ん…く……(美女は美女でも…お転婆通り越して肉食獣な子が多いな僕の閨に住んだり来たりする子は…。気持ちいいし…今は色々用意した手の準備を進め乍ら待つしかないし…)」
その揺れ動くナミの下には貴族が購入しそうな豪奢な椅子に座らされた白漂の姿が有り、上手く寝ている振りをしている彼の身はその骨肉と直に触れ合いたいナミの手で鎧と衣装が外されていて、その上に跨っているナミの肉壺に充血したままに肉槍は包まれて扱かれ続けており、ナミの豊満だが成長中の胸は彼の逞しい胸板に擦り付けられていた。
ちなみに、ナミの前に白漂の寝込みに逆夜這いを掛けていたカジは、彼が情事の途中で再び寝たふりをしたのちに性感の急所を突くような動きをしていたので体力を早く削られ、今は彼の本陣ゲルにある寝台で寝息を立てていた。
ナミはカジが体力尽きて寝入った所で白漂の寝所に侵入し、本陣ゲルが置かれている高所区画の外れにあるこの倉庫へ寝たふりをしたままの白漂を運び込んだのである。
(…今日はいつもなら仕事やら他の子との都合とかで避けられたりしてる
「ちゅるり❤️」
「―――おってひうぅ❣❓」
ナミが雌としての本能に自身の性分からくる欲求に押され、腰を振って収まっている男根と回し合って互いの秘肉が搔き回される感覚を楽しんでいたところ、それと比例してヒクヒクと震えだしているその肛門に陽気な女性の声と赤いその舌が這わされて生娘のような悲鳴を上げさせられた。
「…あって…、ちょっとセレーナァ…そんな所を舐めるなんて不躾すぎ…うぅ❣❓ それにここまで勝手に付いて来て…」
ナミが不快感の混じる独特の快楽で生じた涙目で背後の下を見やると、そこには竜騎衣装で完全武装のままだが瞳はナミほどではものの潤んでいるセレーナの雌豹の如く四つ足で這っている姿が有り、彼女の伸ばされた舌がナミの菊門を責め立ててきていた。
「…ちゅうぅぅぅぅ…❤️ 今でこそ基本残念所々切れ者なこの人に戻ってるけど…現状からして、いつまたあんな氷の悪霊みたいな眼差しになるかわからないでしょ? そうならないようにするにはあんただけに任せるのは危なっかしいし、他との連絡や護衛を考えると二人っきりにするのはとても危険じゃない❓ でもま~皆その給料分の種はもちろん貰いに来てるつもりだけど…私も含めてね❤️」
そのナミの抗議を女としての情欲に押された屁理屈で躱し、セレーナは彼女の背後に回り込むとその胸を掴んで手淫を強め始めた。
「あぁ❣ あ、あんた…これじゃあ…じっくり溜めてた分が来ちゃ…うう❣❓」
(…ん♪ ナミの強すぎない締め付けに…蜜柑の酸味のように染み込んで来る愛液が…不規則的に動いて擦れてくるのが心地よ…ん…?)
「んぁ❣❓」
そうしてグニョングニョンと蠢きだした襞肉の甘い感触と、それで逆に善がり声を強めだしたナミの表情を楽しみだした白漂だが、まだ小さめだが外部より只事ならぬ気配の物音を聞きとると、ナミの尻をガシっと掴んで動きを速め始めた。
「…んーーーー♪ 今までどうも夢の中でも気持ち良くしてくれたねー。その分を一気に返してあげるから覚悟して♪」
「あ、あんた! その様子…やっぱずっと寝たふりをして…はむぅぅぅぅぅ❣❓」
ナミがその動きにハッとして真正面に向き直ると、そこには既ににやにや笑いを浮かべている白漂がおり、彼に唇で大きな嬌声を塞ぎこまれると尻肉を揉み込まれながら上下左右に激しく揺らされて互いの淫肉が搔き混ぜられてそれに理性が飲み込まれていくような強い快楽に襲われ、嬌声を外気に漏らされずに腹立つところはあるが基本は愛しい男に吸い上げられだす。
「…ッッ!!」
「んんんンンンンンンンンンンン❣❣❓」
室外には僅かに零れる程度ながら深々と撃ち込まれる肉の杭とずり下がった子宮口のたたき合いより数分後、互いの一番深くつながり合った肉奥で爆ぜるような極みが二人を襲い、ナミの嬌声は白漂の唇にこそ塞がれたがその潮と胎奥を満たしきった白濁のあまりがビュビュっと勢いよく肉の繋ぎ目より噴出された。
「…白漂様は何処におられ―――」
「どうした? 遂に王宮の方で新たな動きが見えたか?」
「―――えってうぉ!?」
数分後、本陣ゲルより姿を消した白漂を探す伝令が、ナミと共に彼を動かした竜騎の女性隊員の一人の案内で倉庫街に近づいたところ、数分前まで情事を行っていた名残など全く見せない様子で白漂が建物の屋上より降り立って彼を驚かせた。
「は、はい! どうやら龍城内に籠城している左賢王派の民が太后派の将兵と揉め事を起こしているらしく…どうやら、左賢王が吐血して倒れたのですが、それが作戦を巡って対立していた左賢王が実は娘を捕虜という名目でこちらに差し出して内応していたと考えた太后派によって毒殺されかけたからだと城内で急速に広まりだしたらしく…!?」
伝令が再び訪れた事態急変の報告をするが、その途中で白漂は静かだが強い眼差しで彼を押しのけて龍城の方角を見やった。
『…あ…ぐ……』
そこには縄に縛られた状態で、衣服の所々が破けて青痣が幾つか出来た姿で連行されているエルサリアの姿が有った。
○秦国中央部 王都咸陽 庶民区画○
「ギャアァアア!?」
「急げぇ! 市民は北区画に早くぅ!」
龍城城内でも新たに且つ不穏な動きが出ていた頃、秦の主権を巡る咸陽での戦いも城内に広まって非戦闘員も大勢巻き込まれていっていた。
「…江彰さん! まずいぞ! もうこっちの門まで衝車が近づいて来てる!」
叛乱軍の一部は侵入口とは反対側にある西市を中心とする西側区画の正門にまで押し寄せていて、そこで防衛戦の指揮を取っている一人に江彰がいた。
「落ち着け! まだ門は破られていない! それと打って出ようと飛び出そうとしている連中や逃げようとして裏門を開けようとしている連中を落ち着かせろ!」
「そ、そうは言っても代表とかはともかくその一族や従者には言葉が通じない色目人が多くて…」
だが、住民代表の一人がそう口にしている通り、西側区画には西域や北方などから来た商人や技術者などが多く、言葉も通じない者も多数いたのでこの切羽詰まった状況では纏めるのも苦労していた。
「おい! このままだと何れ外が潰されてここまでじり貧で潰れる! まだ外の軍が残っている内に打って出させてくれ!」
「馬鹿を言うな! ここにいるそんな戦力ではそんな無謀な事は認められん!」
「「「「「キャアアアアァ!?」」」」」
実際、住民の自警団員たちと西側区画の警備兵達が口論していたが、そんな最中にも西市にある建物の一つから轟音と火の手が立ち上がった。
『た、大変だ! アイツらどうやら弩砲まで持ってきて大火矢を撃ち込んできてる! このままじゃここまで火の海になっちまう!』
『…! もう時間がない…行くぞ!』
『『『『『……!!』』』』』
その重なる危機の報せに西市住民による自警団が押しとおろうとするが、それが警備隊側も刺激する。
「何を言っているか周りにはまだ伝えん…! だから…退いてくれアルグロー!」
「京伯!?」
遂に双方の間で強硬手段が取られようとするが、その一触即発の所で彼らに対し最も影響力が強い人物が現れた。
「止めなさい!!」
「「「「「し、紫夏さん!?」」」」」
今でこそ宮廷勤めの女官になっているが、嘗ては中華中を回っていた女豪商で嬴政や白漂達とも深い知己であり、ここ西市での顔役の一人になっている紫夏であった。
「こんな状況だから来るのが遅れたけど頼りになる子達がここに向かってきてくれてるわ! この市街戦での詳しい話はその子達に聞いて!!」
「み、皆ー! 正門前に張り付いてた叛乱軍が背後から現れた黒づくめの連中にどんどん討たれていってるぞーーーー!!」
その紫夏の登場に集まっていた住民や警備隊の意識が集まりだした直後、正門付近の高楼にいた見張りから新たな急報が発せられた。
「あー! あの人達はたしか右丞相直下で王の警護を任務としてる近衛兵団ですぞ!」
高楼に上っていた別の自警団員のその叫び通り、咸陽で王に警護を担当しているはずの近衛兵団が西側区画に迫ろうとしていた叛乱軍部隊を瞬く間に殲滅していきだしたのだ。
「開門! 開もーーーん! もう紫夏さんがいるんでしょうから開けて―!」
「ッ! この声は…良いよ開けな! 彼らが入って来たらすぐに門を閉じて!」
迫ってきていた反乱軍部隊を殲滅した直後、西側区画正門が開いて近衛兵団が入った。
「生きてたんだね!」
「当たり前でしょーが、死んでたまるもんですかい」
西側区画に入場してきたその近衛兵団部隊の指揮官は叙加で、知己である紫夏達は久方ぶりの再会もあって喜色を見せた。
「おい! お前まで鎧着てるなんて大丈夫か!? たしかお前…“徐華”がまだ初期だけど妊娠したって先月の手紙で…」
「あーあー、その話しはここでは禁句禁句、それも大事だけどすんごい大事な人達がいるからさー。ここでは見せられないからちょっと部屋を用意してくんない?」
喜色を見せる紫夏に対して江彰は何やら別の知人女性の名を口にするが、それを叙加は微かにだが膨らんでいるようにも見える下腹部を労わるように撫でる素振りを見せつつも、衆目のいない奥の一室に進んで行く。
「…ほら、お二方もう面を見せて良いですよー」
「「………………」」
数十秒後、近くから他人が廃された奥の一室で、顔まで隠している近衛兵団と思わしき二人が紫夏の前で覆面を外すと、ともに部屋にいる紫夏達を驚かせた。
「あ! あんたも脱出出来たの!」
「お久しぶりです紫夏さん、前回の陛下の城外へのお忍びで劇団員と言う事にして連れ出してくれた時以来ですねー」
「じょ、叙加、隣にいるもう一人の金髪のは…」
「せ、斉から秦王に嫁いできた身です。初めまして」
部屋に案内された近衛兵と思わしきその二人は、この秦国の王子をそれぞれ一人ずつ生んで妃になった身である扇琵と田共召であった。
「…てことはあの近衛兵団の連れてた馬に載せられてて、今そも二人が運んできたその荷袋には…」
「…あーー、こんな状況だからバレるわけにはいかないんで…こんな形で脱出させた王子様達です…」
「…ぐぅ…」
「むにゃ…」
若干気まずそうな苦笑いを浮かべた叙加の言葉を受けて、扇琵と田共召が背負っていた大きな荷袋を降ろしてその紐を緩めると、中から眠らされている様子の第二王子嬴慧と第三王子嬴尚の姿が露わになった。
「あー、そういうわけでここの警備と指揮には副長の
「ま、待って
「―――え…ッ…」
そのまま連れてきた近衛兵団の幾割かと王族四名を置いて西側区画の外へ出るべく動いた叙加だが、そこで扇琵にこの場にはいないはずの先ほど江彰が口にした宮女の名で呼び止められた。
「…あの子達も助けに行くのでしょう…嬉しいわ。けど…大丈夫なの? もう…あなたの身体も一人だけの身じゃないでしょう?」
扇琵の言葉に、叙加は戸惑いを覚えたようで己が下腹部を小さく撫でたが、直ぐに手を離して彼女に振り返らないまま言葉を返す。
「…そりゃそうだけどさー、一緒に同じ釜飯食べてお喋りして笑い合って…そんで同じ甲斐性のある男とっ捕まえてそのちみっこを共に獲得した仲として…このまま知らんぷりなんかしたらさー女の株が下がるでしょ…」
「「………………」」
そう言って徐加は靡く黒の後ろ髪から白銀色に見える銀髪を抜き落としながらも部屋を後にし、それを扇琵と田共召は覚悟を決めた無言の拱手で見送った。
今回は扇琵達が久々に登場しましたが、何やら徐加(?)の身にも嬉しいけどこの状況では微妙なあの状況に入ってるようです…。
次回は、ヤンキー聖女(が元ネタのあの宮女)が登場する予定です。