○秦始皇9年(紀元前238年) 秦国北部 朔方郡 朔方城 研究所○
河了貂が不機嫌な顔を添えて落成式という言葉を信に言い放っていた頃、白漂が仮眠を取っている研究所の一室の扉が開かれた。
「…葡萄酒と黒麦による酒の製造法も大分進みましたね…。この辺に資料を仕舞いましょう…あ?」
扉からその手に酒類の研究資料を抱えたシャンディが入ってきて、部屋の中にある椅子に座って寝息を立てたままの白漂の存在に気付く。
「…全く、立場を顧みずにお一人でこのような無防備な姿を…あ」
シャンディはそれにやれやれと言う表情を向けていたが、その最中に一匹の毒蜂が白漂に近づいてその肌に毒針を突き立てようとするも、寝たままの状態でその手が動いて扉の方へ叩き飛ばした。
「…色々な意味で人間離れの度合いが進んで行ってる方ですね…」
驚いて慌てて逃げていく毒蜂がもう入らないように扉を閉め、シャンディは白漂と部屋の中で二人っきりの状態に持ち込んだ。
それから白漂に寄り添うと、その夜のような黒を帯びた紫の手袋で覆われた指を彼の身に触れさせた。
「…それで、害がないものには本当に無防備な方…んん❤️」
徐々にシャンディの頬に朱色が強まっていき、その指先は白漂の足の付け根に衣服越しながら這わされていく。
数日前の情事が前戯の所で、紅華の急な出産で流された事による欲求不満がここで火を付けられたのだ。
「…んんん❤️ 貴方もこの数日の奥方達のご出産と抜け目のないお話に時間を取られて…我慢なさっていたようですね…あ❤️」
白漂の危険察知本能と直感はこの状況でも左右していたのか、そのボトムのファスナーに当たる
シャンディは自身の胸元を曝け出し、スカートをたくし上げて結んで髪と同色のエキゾチックなマイクロショーツのクロッチをずらすと、白漂へ静かに跨る。
「…私も貴方も次の仕事まで時間がそこまでないでしょうし…、いついび出汁が掛かるかわかりませんので…んんん…❣」
シャンディは己が妖しげ笑みを白漂の寝顔に近づけた後、その焼けた酒のような蜜を既に滴らせていた朱色の花を、彼の男根へ勢いよく被せた。
「…アアアァ…❤️ ふうう…寝ている間もふしだらで…周りもふしだらに変えてしまう…本当にふしだらな方…ンンんんん…❤️」
数分後、シャンディは激しさこそないがゆったりとしていて且つ上下左右にふり幅の大きい腰遣いで、白漂との愛欲を深く味わっていた。
酒のような酔わせる甘さを持つ愛液は、シャンディ自身の非常に細かい酒糟に蜜を混ぜたような粘性と細かさの高い肉襞と合わさり、白漂に男根を介して名酒が深く染み込んでくるような肉の甘さを味わわせていく。
シャンディはそれに応じて膨張と震えを段々と強める肉棒の味わいをより得ようと、カリ首が見えるギリギリまで腰を上げると、亀頭を基点に腰をクリクリと回して入り口を広げさせられるような解放感ある甘さを味わいつつ、速やかに腰を揺らしながら下していって襞肉の凹凸をより深めさせていった。
それらの肉の逢瀬が更に数分経過する頃には、二人が座る椅子の足元は大きな水溜りを構成するまでに愛液が滴っていた。
「…ふあああああああ…❤️ もうそろそろ来ましたがあぁ…でもおお…もっと深みに来てからぁ極みに行きたくも…オムぅ❣❓」
自らが深めていっている肉の悦びにシャンディ自身が声を抑えきれなくなりそうになったその時、彼女の尻肉が逞しい男の指にガシッと掴まれ、赤紫色に塗られた唇が大きな口にしゃぶり付かれた。
「…ぷっはぁ…、寝ている間に奇襲を噛ましてくれるとは…お返しは短い分に強めだから覚悟ね…んん!」
いつの間にか目をじ~っと細く開けてきた白漂がシャンディの身を堅く掴み、彼女の声が落ち着くと同時に唇を離して、その大きく昂った肉の穂先で無防備に開き切っていた子宮口を穿ちぬいた。
「ふああああああアアァ❣❣❓❓」
自らの子を宿すだろう部屋に雄の証しが容赦なく入り込むその感覚に、シャンディは下半身から脳天まで穴をあけられてそこから意識が勢いよく飛び出るような極みを味わい、それは彼女の酒気を帯びたような愛液も染み込んでいるかの如き白濁の噴水による追い打ちでより深めさせられた。
○秦国北部 朔方郡近隣 始拓○
「…おおー、ここもこんなに緑豊かに…」
河了貂の不機嫌な顔を添えた落成式という発言から数日後、朔方城から数日で行けるその実り豊かな畑の中を走る道を、北から秦へ戻ってきた身の一人である胡漸が穏やかな顔で馬を進ませていた。
「いやー、帰りの途中で態々立ち寄らせて更に外泊まで許してくれてありがたいねー」
蒙恬もまた同行しており、彼らはここで行われる知人のある行事に参加すべく出ていた。
「あー信! やっと戻ってきやがった!」
「いつも遅いぞお前!」
「今回はお前らの屋敷でもあるあの城のあれだぞ!!」
蒙恬達が進んで行く先に遭うその大きな集落では、飛信隊の面々やその家族が蒙恬らとほぼ同時に到着した信達を出迎えており、今日行われる行事について大きく声を上げて祝っていた。
本日は、この世界では伍鬼五千人隊に所属する田有達の組が中心となって、信達が住まう拓景山城(元は趙側の出城)の改修工事が終わったのである。
規模こそ小さな山城だが、朔方郡を通る草原の道と中華を結ぶ大道の一点に属するので、その工事は北の地での秦の拠点防衛事業の一つに組み込まれていて、地味に長い時間と少なくない人員が掛かっていたりしていた。
「おー信、さすがに玲花の書いた図面通りには予算の都合から無理だったけど、俺の組のもんがつい先日に仕上げたぜ」
「おー! 遂に完成したのか信の屋敷…つーか俺らの城!」
「見てみたい人は手を上げてー!」
「あーもう皆ーそんなせっつかさないで。山城は逃げないからさー行こー」
その事業が遂に形となったという報せに沸き立つ一同を宥めつつ、自身も携わった城を見たい気持ちがこの中で一番強かった玲花が皆を先導していった。
○秦国北部 朔方郡近隣 始拓 拓景山城○
「「「「「…………………………」」」」」
合流してからの再出発をして数十分後、幾つか新しい土塀が増えている以外は前の古びた山城のままである拓景山城を、飛信隊の面々は非常に微妙な表情で見上げて、ショックで顎が大きく開いていた。
「おー! 山城を囲んでる土塀が増えていってる土倉みたいで丈夫そうだなー! 前の生け垣や木柵より丈夫そうだ!」
そんな中で信だけが素直に喜んだ表情を見せているが、周囲はヒソヒソ声で心配の声を上げ始める。
(…お、おい…玲花って何処で習ったんだよって感じで野営地作りや砦作り上手いのに…今回は何か調子悪かったのか!?)
(や、山の中腹に俺の家みたいなのが幾つか立ってるけど…)
(もしかして田有の所って悪徳大工だったりするのか…!?)
「あーもう皆ー、そんな昔の所ばっかり見ないで裏回って新築のところ見ましょー」
だが、そのほとんどが微妙な空気に陥っている一同の意識を、やれやれと言った感じのステラの声が引き戻す。
「…へ? 裏側って何だーーーーーーーーーーーーーーー……………!!??」
ステラの案内で一同は戸惑いつつも拓景山の裏側に写るも、そこで見上げ直すと今度は信が驚きで顎が外れそうになる。
「…ごめーん、本当は今まで使ってた砦の所も回収したかったけど…、予算が予想以上に掛かっちゃって…新しくほぼ新築になった他の部分へ集中して昔のは後回しになったの」
そう申し訳なさそうに苦笑を浮かべながら玲花が手をかざしているのは、白漂の前世や前々世で地味ながらもある英雄に大きな役割を果たした、“小牧山城”によく似たこじんまりとしつつも立派な山城であった。
「「「「「………………」」」」」
だが、その玲花の説明などどこ吹く風と言わんばかりに、信達は新しく出来上がった自分達の屋敷に無言だが驚きで顎が先ほど以上に外れそうに開いていた。
「…うおー! すげー!」
「山自体は高さ五十丈(現代に換算するとおおよそ112メートルくらい)くらいしかないけど、周囲が畑と砂漠に草原しかない分に立派に見える!」
「石垣は石の形がまんまだけど三重に山の表面を走って主郭を多段式に囲んでる!」
「つーか玲花いくら役所が資金を半分カンパしたからってやりすぎだろ!」
「ていうか一番下の石垣の石のほとんどの表面に、聞いたことがある店の名前や宣伝が書いてるぞ」
「人足出してくれたところにはお礼に宣伝用に掘ってもいいって条件出して集めたってよ」
「おおー、良い眺めだねー」
「蒙恬様ーそんな崖みたいに突き出た所に身を乗り上げなくてもー…」
数分後、拓景山城は集まってきた信の知人やその家族たちでいっぱいになっていた。
「…うわー、皆が来てくれてー…ありがとー。ちゃんと機密の所は隠してるよね?」
「大丈夫だ。秘密の脱出路などは私とその近しい身内だけで作っているから、他の人足やその家族は知らない」
その中には河了貂と晳琭の姿もあった。
今回の山城の回収などの工事には、晳琭が属する旧
「すごーい、これなら書類仕事や学校のお仕事も前以上に進みそうねー…あ」
水谷もまたここで新たに設けられた子供向けの学校や机仕事用に用意された部屋を見て感動していたが、ある部屋の扉を開けると顔が赤くなって硬直してしまう。
「…ん? どうしたんだよ先生ーそんな急に固まって…!?」
それを不審に思った信が水谷を少し押しのけて部屋を覗き込むが、彼の顎は大幅改修されたこの山城の全容を知った時以上に開いた。
その部屋の中は、朔方城の白漂達専用の大寝所ほどではないが、明らかに男と女が肌を重ねる事を前提とした大型の寝台が大きな枕を六つ付きであり、部屋の中の装飾も質は良いが華美さはないこの城の室内にしては夜のやる気を煽る形で飾られていた。
「…い、いやーまー俺も大身になった以上は一人の子だけを相手にするわけにはいかねーもんなーー…え? でも待て? 貂に玲花やステラに水谷先生がいるからあの枕の数の多さはわかるとして…、残り一つの分は誰のだ…?」
「あ、いやーそれはーーーー…!?」
寝所に入ってご機嫌そうな馬面になった信が何となく言い放ったその言葉に、晳琭が恥ずかしそうに視線をあらぬ方向にずらしながら頬をポリポリ描きだすが、視線を彷徨わせている間に女の本能で震えた。
「……………」
信の斜め後ろに、人混みの中から目が虚ろな引き攣った笑みを浮かべて向けてきている河了貂の姿を見たからだ。
「…うわー、信五千人将だー!」
「おおー、本当に将軍まであと一歩って所まで来たんだなー」
「どうだー? 久々に儂の畑で取れた大根の漬物を食わんかー?」
その女の怒りは一旦後回しにするとして、信の周りには大勢の人だかりが出来ていた。
「…おおー、泥竜が生まれたばっかの頃のよく世話になり合った近場の村々の皆も…」
「何と言うか…嬉しいよ。あの頃…まだ子供の身で趙の連中を引っ掻き回してたお前さん達が…すっかり村の英雄だ」
「ああ、ここに移ってきた者の多くが…お前さんらに助けられた恩を少しでも返したい…少しでもお前さん達のようになりたいと思って移住してきたものばかりだ…」
人だかりで少年時代の信と深い関りの年配者達の中には涙ぐむ者までいた。
「うわー! 隊長さん背が高ーい!」
「剣を教えてよー!」
「僕のところの羊の若子のお肉持って来たんだー。食べてー」
「おいらにも剣を教えてよー」
中にはまだ小さな子供達が憧れた表情でせがんできたりもしたが、そこで場の空気を意に介さない強い口調で言葉を投げかけてくるものがいた。
「童らよ止めておけ、その薄情者に教わっても得るものなど無いぞ」
その声の主は、豪農と思わしき衣装に身を包んだ雀斑顔で前歯が小さからず突き出ていた青年だった。
「あ! 有!」
信が懐かしそうな顔を向けたその青年の名は有。
ある種の人間が原作と呼ぶ世界線で、孤児となった挙句に下僕にまで落ちた信と漂の面倒を見ていた城戸村を纏める里典(役職名。日本で言う庄屋みたいな感じらしい)の息子である。
この世界で一種の修正力でも働いたのか、泥竜本拠地の村の収穫だけでは生活が苦しい時期には、農繁期を利用しての出稼ぎでこの世界にもあった城戸村への手伝いに出た時に知り合って付き合い始めた身の一人である。
「お、おおー、信君ここまで大身になるなんて…」
「あたしたちも鼻が高いよ…」
ちなみに、その時期にて白漂や信達を農繁期にて最も雇っていた有の父母である城戸村里典夫婦の姿もあった。
「来るのが遅いな有、俺が出世しすぎて会うのに気後れしたか?」
「ろくに町営に関わらんお前と一緒にするな。他の村への仕事の帰りに次いでに今回の落成式で使うための、南方産の上等な米を仕入れて来てやったから遅れたんだ」
「!?」
「ちょ、ちょっとぉ旦那!」
素直に嬉しそうな信であるが、有は厳しめな言葉遣いのままで父の里典にあんぐりとさせ、使用人と思わしき付き添いを慌てさせた。
「それじゃ帰るぞ」
「ええ!?」
だが、有は使用人の注意など構わずに
「あいつ…足に態度も可笑しそうだ―――」
「信、有のあの態度は申し訳なさからだ」
「―――あってうお!? ひょひょむ!?」
それに違和感を覚えた信の間際に、この時代の祭礼の場には付き物の拝み屋に変装した白漂が音もなく表れて驚かせるが、信の口を塞いで正体露見を防いだ。
「僕が紫夏と共に秦へ帰ったばかりの時期に、何処からともなく現れて泥竜の縄張りを荒らしていた金城という奴がお前に殴り倒された逆恨みで、趙の部隊が攻めてきたどさくさに紛れて村の子を何人か攫ったことがあっただろう。その時を止めようとしたけど…有は奴に左足を蹴りおられてそれ以来ずっとあの調子だ」
「…あ…」
それから有の身にこの世界でも詳細は異なれど起きた災難を思い出させて信を落ち着かせると、白漂は彼のそれからの話について明かしていく。
「…城戸村を始めあのあたりの村にはお前に対する憧れで戦場に出ていたり、出ようとする若いのが大勢いるが、有は一緒に出たくてもあの足があるから戦場には出られない。だから、あの地に出自を持つものの中で一番お前の話を集めていたのが有だ。代わりに、城戸村で北への移民の募集が出された時期に真っ先に始拓へ移住してきたんだ」
「………」
「お前の目が届かなかったり、お前が戦場に出ていない時期に水谷達と協力して近場を放浪していた浮浪児や流民たちを落ち着かせてこの地を切り開いたり、畑を良くしたり、この地に来たばかりで騙されたと暴れようとした者達を説得したり、水路や道を引いたりするための監督を必死にして…今では緑豊かになったこの始拓で誰もが認める一番の豪農で当代の里典だ。お前からの恩を返して…少しでも力になろうとしてな…」
「………」
白漂の説明で信は重い表情に切り替わると、ゆっくりと屋敷を後にしようとする有に向き直って口を開く。
「有、本当にありがとう!」
「!?」
信の声の大きさと思わぬ内容に有はハッとして立ち止まった。
「…あの時、金城の馬鹿が腐った真似をして…それで何人か仲間が攫われて殺されそうになった時…、あんときにそれを知ったばかりの俺は頭に血が上ってやみくもに突っ込んで行こうとしか出来なかった…。そん時…俺をちゃんと引き戻してくれたのが片足を折れたばっかの状態で俺の頬をぶんなぐってくれたお前だった…」
「……………」
それから、信の感謝の言葉が紡がれるたびに有の方が小さく震えはじめる。
「…あんときにお前がいなかったら俺は多分、ここまで来るその前にぶっ倒れてた。あんがとう」
その言葉と共に信が近づいてくると、有は振り向きこそしなかったが方が大きく震えだした足元がぽたぽたと濡れ始めた。
「…だったら…漂みたいに…手紙を何度か出してくれても良かっただろ…あんま無いと、この足のせいで置いてけぼりになったんだって強く思うだろ…!」
「ハハ、悪い。何度習っても字がまだあんまり綺麗になれてないからよ…」
「…っ…そんなとこばっか昔のままでいんなよ…馬鹿野郎…!!」
「「「「「………………」」」」」
視線こそ再び交わされこそはしなかったが、強い繋がりを再び確認し合った二人の姿を周囲は静かにだが感慨深く見守った。
「旦那様…私達も時間が押してますし、次の仕事場へ行く途中で帰りを待っててくれてる人たちと…」
「…うん、そうだね…あんま長居すると正体ばれするし、他にも落成式を上げている城にもいちいち出向かないといけなくなって大変だし…」
その静かな空気の中で、変装してこの地に立ち寄っていた譜孝と白漂はそっと立ち去り始めた。
原作とは違って、尾平の結婚式とは別個のイベントと絡めての再会イベントでしたが、原作のあのシーンはファンの皆様の多くがほっこりしましたね。