原作の巻末小話が元ネタに混じってます。
それと作者の好きな他作品キャラが本編には影響が出ない範囲で出てきます。
○秦始皇5年(紀元前242年) 趙燕大戦終結後 秦国北部 朔方郡 朔方城○
新たな年が近づきつつあるその日でも、秦国は他国が裏で進めている大掛かりなれど全容を掴みきれない策謀を把握しようと幾つかの部署は動いているが、人々は1年最後の祝いと新年への準備に向けて祝宴やその準備に勤しんでいた。
河川から水掘も兼ねた水路も引き、防御性を考慮しつつも拡張性も保つべく白漂が前世の記憶にある江戸城から思いついた螺旋状に区画されている朔方も例外ではなかった。
「…ここが、秦から来た例の将の城か…」
その城下町を厚着の赤紫色のコートを羽織り、男物の衣装を着ている露出が少ない何者かがいた。
口元も隠している面貌は赤い大きな瞳をしていて目元から見える肌は白く、僅かに見える髪は気品ある赤紫色をしていた。
その者の周囲には周りに混じっている遊牧民衣装の付き人が何人かいるが、彼らはその者に憂えた眼差しを向けていた。
「お、長…宜しいのですか…? 幾ら現単于の命令とはいえ…貴方様ほどの身でこのような仕事…」
「…構わない。どの道…故郷にいる弟を守り…一族を再興させるには他に道は無い…」
(…っ! 本来なら草原を統べる者の王女たるべき方がこんな…)
小声で耳打ちしあうその内容に周りの者らの爪が掌に食い込む。
『ん? 何だ~あいつら?』
そんな大勢の人が行き交う街路を進む彼らに、秦国西方山界から来た山民族の少女が訝しいものを見る顔を向けた。
薄紫色が基調で腹部が臍だしルックな、この時代の女性相応な背丈だが引き締まった筋骨で身の凹凸もはっきり付き、栗色のショートヘアーは後ろで四つに分かれた元気な美貌の少女だ。
『? 如何したの~キタリちゃん?』
隣に位置する譜孝によって身の寸法を測られているその少女の名はキタリ。
西方の山界から兄である大部族メラの族長カタリと共に来た同部族の(一応)姫である。
ちなみに出身民族が共通の先祖をもっていたので会話は大体通じていた。
『イラ、何か今さっきむかつく紹介された気がする…』
『そんなきつい顔ばかりしてると若いうちから皺が増えるわよー…え、あの子って何処かで見た気が…』
だが、その譜孝もそのコートの者の目元を見やると何処か嬉しくない意味で懐かしさを覚えた。
『あ、漂将軍だわ』
『む? 何だと…っっっ!!?』
一方でさして重要でもなかったので譜孝は直ぐに今現在もっとも関心を寄せている殿方に意識が反れ、キタリも興味津々と言う顔を浮かべるがそれは顎が外れんばかりの驚きに変わる。
「漂、次はどの辺りに行きましょうか?」
「そうだなー、最近にこの付近の山間部でも苗木が流れてきて栽培されだした葡萄の酒をお土産に買いに行こうか」
そこには頭巾を被って特徴的な銀髪を隠している杏橋と、変装で髪を金髪に染めてはいるが却って目立ってしまっていて周囲、特に女人の意識を引いてしまっている事にあまり気付いていない白漂の二人が歩いていた。
(…そ、染めているのはわかるのに地毛の黒髪と合わさって程よい深みのある金の短髪に黒曜石を加工したような大きくも美しい瞳! 体格も細いが濃密な筋骨なのが分かる並みの男より頭一つ分以上は大きい美麗な長躯に北の者特有の白く美しい肌! 知性を感じさせる低くも深い声音…ご、豪勢系の楊端和とは対極に位置する華美さは無いが繊細なれど鋭利なかっこよさ!?)
その初めて目の当たりにする白漂にキタリは両眼が大きな丸になって顎がポカンと開き、何故か足の付け根が落ち着かなくなってモジモジし始める。
それを間近から見た譜孝が玩具を見つけた小悪魔的な笑みを浮かべて耳元に小声で囁きだした。
『あ、惚れちゃった?』
『ぶーーーーー!? ななななな何を言うんだこの馬鹿!?』
『じゃ、先に私があの方の奥に入って良いんだ?』
『な、何ーーーー!?』
『うんうん、ここに集まってきてる族長親族の独身女子の大半があの人目当てだから無理ないわねー』
『なななななな~~~に~~~~~!?』
『ま、努力するだけでもしなさ…』
「よし、次のお店に行こうか橋」
「えぇ、そうですね」
『あ、逃げちゃった』
最初は小声だったが赤面の度合いを増すごとにキタリの声量が昂ぶっていくその密談に、山民族語も堪能な白漂は他人の振りをしたまま小走りで去り、杏橋も無表情のままだが察して早歩きで後を追っていった。
それらを鑑みてキタリは今一度口を閉ざして思考を進める。
(…確かにあの楊端和級はもう女子の私でもウットリする次元だから太刀打ちは出来ない。だが、昨晩の宴会で見たが漂の奥方はこのキタリと同程度と見た。ならば大人しく可愛さを全面に押し出して振舞えば機会は十分に巡ってくるはず…あ、丁度良い所に漂将軍と懇意にしてるあの平地の野郎が来た…)
丁度いいタイミングで胡瓜を買い食いしながら信が歩いてきた。
『ねえ、そこの平地のお方』
『ん? 何だぁぁ…うお! 可愛い!?』
キタリが初対面の人間が見れば可愛いく見える笑顔で近づくと、それに対し信も山民族の主要言語で思わず返した。
頭の地の悪さは別時間軸と同じだが、白漂との出会いから多くの知識や人間と会えて学を習える機会が増えていたので、北方草原地帯と西方山岳地域のそれぞれの主要言語は普通に話せる程度には身に付けていた。
何せ、その直勘が働いてる時以外の方向音痴さから“道迷って遅れました”や“腹が減って死にそうっす”と言えなければ罰されたり餓死したりする可能性があるので当然である。
『(ふふ、やはりこのキタリの可愛さならこういう女っ気の無い野郎なんざ容易い…)貴方ー、白漂将軍と懇意と聞いているのですが、あの方についてそこのお店で共に語り合いません―――』
「あー信、どうしたんだいこんな所で?」
『―――か…あ?』
だが、そこで声を変えて男装しているステラが現れた。
「お、何だーステラかー。何ってあいつへのお土産を買いに歩いてる最中―――」
『あぁ!? 人が話してる最中に何よそに勝手に目ぇ向けてんだごらぁ!?』
「―――だぁ!?」
ステラが女性であることを知らない信は男友達に対する態度で接するが、彼とは違ってその辺りの目利きは鋭いキタリは一瞬で機嫌が悪化し信に詰め寄りだした。
そのまま、信も大体言葉が分かるためにそのまま街中での口論に達する。
それを見たキタリの兄カタリは見慣れた表情で溜息を吐いた。
○秦国北部 朔方郡 朔方城 内城○
螺旋状に渦巻く朔方城の中心には当然の如く城主である白漂の居城があり、小高い丘ごと砦も兼ねて増改築が繰り返されたそこは絢爛豪華さは無いが繊細且つ緻密な意匠が同軍所属の職人達のこだわりで投じられており、それに隠された防備機能もまた一種の機能美を醸し出していた。
「…趙だけでなく燕も…北方から牛馬を多く集めていると…それも軍主体で…」
そこの一角にある自然の樹木を一部残し整理して形作られた城主の居城の中庭に面した大量の書物で埋められた本棚が多く並ぶ書斎で、白漂が寝巻き姿で前世でいうソファーに横たわりながら各地の物資の流通についての報告書を読み漁っていた。
経済において物流は必要不可欠な要素であり、特に陸路でのその要である牛馬の取り引きは北の遊牧民の情報の速さを利用して白漂はその変化を詳細に調べさせているが、それが極めて広範囲且つ複雑に及んでいるのを知覚して眼を細めて更に思考をより多方面的に深化させていく。
「…どうやら北側だけでなく魏や韓という中央内陸部の国、さらには東南の斉も牛馬の買占め続出で高騰が続いているにも拘らず大幅な購入を続けているようだ。楚は長江を用いて東から西へ鉄と米を多く移動させているらしい…」
その白漂のすぐ前面には神妙な表情の藍蘭が両膝を西域から流通してきた多様な異国情緒の柄の絨毯に付かせており、両肘の方は数十人で囲める地形や河川図まで含めた戦国七雄の大地図が広がる机に付けられ、彼女は算盤を弾きながら枝きりバサミに似た構造の棒で地図上に正座のように並んでいる文字が彫られた兵や物資のミニチュアをしきりに動かしていた。
「こういう時は紫夏達とも結びついた藍蘭達の伝が頼りになるな。遠方まで経済を詳細に把握できるから事前にある程度予防策を考えやすい。コネを除いても君の商才に数字に対する強さは脱帽するけど…」
幼少期から北中華周辺の砂漠オアシス地帯で商業民として暮らし、各地の経済や交流に接して経理や語学に堪能な藍蘭は、白漂の留守中は家中の財政を任されて北の役人達との折衷も担っていた。
「女が金に細かいのを煙たがる男が多い中で貴方みたいな存在は貴重だね」
「君のおかげで僕も無視できないけど面倒臭い財政や経済を放置せず深入りせずの楽な付き合いが出来るからな…何せ上半身と下半身を別個に動かせるまで器用な子だし…」
そこで本音混じりの賞賛を放つ白漂の表情に真面目なものから微妙そうな色が強く浮かび上がる。
白漂が視線を書物から下に向けると、彼の寝巻きの下の裾が大きく捲り上げられていて、そこで露になった股間に藍蘭のスカートすら纏っていない褐色の大きな尻が押し付けられていた。
「…えい❣」
「っっ!? ちょ…藍蘭…この間隔にそれは反則…」
白漂が自身に微妙なものを見る顔を向けていることに気付くと、藍蘭は開いていた太股を勢い良く閉じて尻肉を締め上げて、淫靡なハイビスカスを構成する肉ミミズを大きく蠢かせて彼を呻かせる。
「…手紙を読みながらもお腹の縦棒状の膨らみが日に日に増していっている旦那様だと説得力無いな❤️」
若いうちから政務に戦場や情事まで濃密に過ごしてきた結果、白漂達は意識の大半と上半身を仕事に費やしつつも、残った意識の余裕で下半身の甘さを並行して感受し合えるようになり、人間の適応力の高さを互いに実感し合える様になっていた。
「…そういう藍蘭こそ時折り昂ぶって極みが近づいて無意識に動きが激しくなった時は地図上の人形の位置を間違ったりしていただろう」
「…ん❣ く……そういう旦那様は報告書に目を通しながら起用に動かせてる分…口とは違い私たちよりも性質が悪いように見えるが…っ❣❣」
但し激しく動く分は別なので、2人はそういった時間が足りず並行して進めなくてはいけない場合は、ゆっくりとだが丹念に性器を深く嚙みあわせる動きが主体で、一度の極みで満足を得られるように性感を高めつつも溜めていくように愛欲に浸っていた。
「…ん!」
「………っっっ!! っ…………………………かっは………❣」
そして数十ほど互いの腰と尻肉が淫靡に打ち付けられあった後、深々と嚙み合った両者の身は躍動感こそ無いが瞳の光の極度の薄れさから深い極みに達しあい、白漂は丹田に溜めに溜めていた精気を子種に一滴残らず変えて噴出し、藍蘭も白濁の溶解液に自身の蓄積されていた甘い濁流の堰を溶かされて、甲高い嬌声こそ上げなかったが背を大きく仰け反らせた身の震えで極みの深さを示した。
躍動もある程度収まると2人は自然と腰が離れあい、藍蘭の肉薔薇から肉槍がキュポンと愛嬌のある音を添えて抜けると、その褐色の肌と相反する白濁の雫がトプトプと淫靡な滝として流れ出て行く。
「…相変わらず半分熱して溶かした黄油(バターのこと)のような粘り気で凄い量だな…」
その半ば固形物に近い子種汁を惜しんで両手で足の付け根に蓋をして仰向けに寝転がって夫に見せる藍蘭。
二人がいる書斎の隣の中庭には白漂の前世でいうプールを模した広い浴槽が存在しており、今は水で満たされて月が映し出されているそこで杏橋が静かに水面を漂っていた。
「…未だに子が出来ていないのが悪い意味での奇跡としか言いようが有りませんね……」
杏橋は水面を漂いながらほんのりと頬が朱色に染まった能面を斜めに向けて藍蘭の恥部を見やるが、彼女の今の格好は裸体よりもある種の扇情さがあった。
ちなみに白漂の背後にある寝台には先に彼に抱き尽くされて、その証しを大きく開いた脚の付け根より垂れ流しながら疲労で寝ている紅華の寝相があった。
「……そういう君も男に見られたら襲われても余り文句は言えない格好だと思うけどね杏橋」
白漂が微妙な懐かしさを覚えつつもほんのり紅潮を保ったままの顔を向けた杏橋は、僅かな布地に多彩な色合いの宝石や繊細な加工が施された金銀細工で構成された前世の幻想世界物語に出てくる踊り子のような、露出度が高いビキニ衣装を纏っていた。
「これは先月に貴方と共に反抗しているオアシス部族の討伐に向かい、押収した財貨に含まれていたものです。夜に確認しに行ったらこれを目にして固まりつつも注視していた貴方の猫背を見て好みだと判断したのですが…?」
「(衣服や風習は風化などで殆ど残らないこの時代にも、僕の前いた時代とこういうのを考える人間がいるのは共通項なんだな…)まあね、けれどそれって比重あると思うだけど…やっぱり沈んでないのは浮き袋のおかげかな…?」
それを指摘されてやや不思議そうな顔を向ける杏橋の首の下には、出会ってから更に質量を増しつつも美麗なお椀型をキープして重力の法則に逆らっているとしか思えない美巨乳が水面にてプルンと揺れ浮かんでいた。
「ですが嫌いではないのでしょう?」
「まあね…あ」
自身の女性の象徴に杏橋は初期には無かった何処か誇らしげな微笑みを静かに浮かべ、浴槽から水に滴る艶やかな女体で上がると白漂の愛液に濡れてまだ隆々としている男根に近づいた。
「今日は如何なさいますか?」
「…うーん、僕も男だから今日はその踊り子衣装のまま胸で…」
「分かりました…ん…く……っ…❤️」
杏橋は踊り子衣装の上の紐をやや広げ、胸の合間に少々隙間を生じさせると、そこで白漂の男根をムニュッと挟み込んだ。
「…っ…温かくて柔らかいな…いつも…」
「貴方のは…肌を重ねる度に熱と堅さが増していってましゅ…ん…ちゅむ…つぅぅぅうぅ…❣」
武人と女性らしさの両方を併せ持つ三人の妻の乳で頂点に立つ美巨乳の白いマシュマロの如き柔らかさに、白漂は男根にて血流が再び荒ぶりだしたことを覚えて彼女の胸を持ってしても突き出ている亀頭から子種汁の残滓を滲み出す。
杏橋はほんのりと朱色に染まった頬で亀頭に唇を被せ、器用に藍蘭の甘露と混じっている子種の残滓を舐め取りながら、カリ首を舐め上げて夫の脳髄に痺れさせられて削られるような快楽を献上していった。
「…ん…く…杏橋…そこがいぃ…あ、陰嚢の方はまだ…お、その鎖が竿と擦れ合う感覚も…!?」
杏橋の肉を舐め削って唾液と混ざり合うような口淫と、竿の敏感な裏筋を細かい鎖状の金細工がジャラジャラと謎っていく新しい感覚に白漂は呻くが、そこで彼は切っ先を向けられているのに似た他者の感覚を覚え、思わず杏橋の頭を撫でていた両手の力を込めて思わず男根を喉奥まで突き込ませてしまう。
「…んく…ひょく…しょーくん…もっふぉはげしみのぎゃほしいにゅあ…❣❓」
それに杏橋は途惑いつつも喜色を滲ませるが、数秒遅れで夫と同じく敵意に似た感覚が近づきつつあるのを覚える。
「た、大変ですー! 今さっき他の人は気付いてませんですけどなな何者かがってのわあぁああってきゃ!?」
そこで庶徐が切羽詰った表情で結構な高さの生垣を飛び越えて現れるが、白漂達の情事を目にして顔が真っ赤に染まって尻から石畳に不時着してしまう。
「…落ち着いて、どうしたのかな?」
「いたたたた…あ、そ、それがですねぇ…風のように速くて夜の闇に同化してたから他の人は気付かなかったけど…恐らく槍みたいなのをもってた人が影から影へここに近づいてるのを見て―――!?」
だが、庶徐が白漂の言葉に赤面したままながらも過去の情事の場面での仕事を思い出して、落ち着きを取り戻して間が抜けた声ながら報告しようとしたその最中に、彼女の背後の生垣が外側から突き破られ、その頬に一線の切り傷を生じさせながら鋭利な先端が白漂目掛けて襲い掛かった。
「―――え!?」
「「「「!!?」」」」
その凶刃の突然の出現に庶徐は戸惑い、白漂達は一瞬で意識が覚醒し身が動いた。
○秦国北部 朔方郡 朔方城 歓楽街○
「…全く…あの鈍感信君本当に信じられない…はぁ…」
「本当だよったく!」
「まあまあ二人とも落ち着いて」
夜も大分進んで仕事帰りの客を狙う店も大分閉店したりしている歓楽街でまだ開いているその店で、河了貂が同じ職場の女友達1名と酒で荒れ、それを聞き上手なステラが宥めていた。
新しいその女性は男物の衣装を纏っていて、裾が捲れて見える脛は長方形型小箱が付いた独特な形状の長靴で守られており、両手も甲冑魚を思わせる形状をした籠手に包まれていた。
背丈はこの時代の女性の平均よりも高い170センチ台で、太股や腕は猫系統の動物を思わせるしなやかな筋骨で構成されていて健康美があり、黒色の大きな瞳に縮れ毛の無い黒の長髪を腰まで伸ばして下で纏めていて、気品の良さと快活さが同居した美貌の少女だ。
「…なんだい貂ちゃんに玲花ちゃん、まーた信の坊やで痴話喧嘩かねぇ?」
居酒屋の店主の婆さんに可愛いもの見る眼差しを向けられているその少女の本名はティファで秦での戸籍の名前は
元々は匈奴の辺境に暮らす単于ら中枢に存在すら知られてない小氏族の生まれで幼少期に誘拐された後、某所の闇組織に売られて色々習うが、そこで捨て駒として死ぬ所を泥竜で生活していた信に発見されて救われてそこから泥竜に参加した。
今では女人である事は仲間内では知られつつも、それ以上に武勇も秀でている事と機転の良さから認められて、また信の任地と再会できた生来の実家とその部族が近いので彼の三千人隊内では五百人将の位に就いていた。
「…確かに男の子だから我慢できなくなるのは無理ないかもしれないけど…私達の前で林胡の貰い手が無い若い子達を貰おうとするなんて…それを必死に言い聞かせて止めさせたら今度は妓楼にこっそり行こうとするし…。女の子の…その…夜の良さ…が知りたいなら私が…相手――」
「おい、その無駄な贅肉の中身が零れ出てんぞ?」
「―――にいぃ痛い痛い痛い痛いぃぃい!? もげるから止めてぇぇぇぇぇえぇ!?」
酒の入った陶物を手で揺らしながら愚痴る玲花であったが、豊満な胸が引き攣った笑みの河了貂に引きちぎらばかりの握力を掛けられて、戦傷とは異なる激痛に悲鳴を上げてしまう。
「同じ甲斐性はあるけど女心に鈍い男とそれに惚れちまった娘っ子の痴話喧嘩は面倒だねえ。だったらこう見えても昔は武家の側室だった私が一番角が立たない解決策を教えてやるよ。まずね―――!?」
その三人に居酒屋の女主人が経験則から助言を出そうとしたその時、彼女の背後の厨房の屋根を何者かが突き破って秘伝のタレに満たされた壷を破壊してしまう。
「―――えってあーー! 婆様から受け継いできた五十年以上の歴史はある秘伝のタレがーーー!?」
「っ! こんな所で!」
それに悲鳴を上げた女主人の抗議などかまうことなく、屋根を破って転落してきたその誰かは脱兎の如き勢いで厨房を飛び出し、河了貂達の合間を残像しか残さない速度で走りぬけた。
「うわぁ!?」
「な、何あの子!?」
「刺客だー! 白漂将軍の居城に出た刺客が逃げたぞー!」
「!?」
驚く彼女らの耳に屋外から甲高い鐘の音と、急を告げる号令が城内中から飛び込んできた。
ここまで信はモテないだろって思う方はいるでしょうし私もそうは思いますが、普通に性格は悪くは無いし出世コースに入っていて普通にこの時代の女性には十分モテる要素がありますし、嫁の貰い手が不足してるこの時間軸での北中華ならこれくらいは大丈夫だろうと思って書きました。
次回は草原でのあの北の大族との戦です。