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○秦始皇9年(紀元前238年) 秦国北部 匩涼系領域内 オアシス都市水階 仮政庁○
魏亶たち妊娠して居城に留まっている女性達が夫からの報せで微妙な気分に陥っていた日、秦国北部での新領域の中心にあたるそのオアシス都市で、岩場砦を後にした白漂達が数日後に来る有力者達の友好促進を目的とした宴会の準備を進めていた。
宴会場に選ばれたのは、同地で表向きは秦への恭順を申し込むも裏で反抗を計画していたが、秦側に把握されていたのを知らずに謀反を起こすも、即座に鎮圧された地元の有力者が使用していた邸宅を再利用した仮政庁である。
「…羊肉及び豚肉はこれでよろしい、けれども酒の方は強めの飲めない方もいるから馬乳酒はもっとこれくらいにして。他に宗教で豚肉の他にも決まった日日は鱗や鰭のない魚の類いも駄目だという部族もあるから。他にはー…」
その中で仕切り役になっていた紅華の表情には真剣さはあっても緩みは無かった。
この時代の宴会とは外交に用いられることもあり、そこで用いられる人員や各種物品のレベルで国のステータスを見せつけて交渉などを有利にできる面もあるので、なおさら手を抜くわけにはいかなかった。
「…宴会中で行われる催し物の人員や物品はこれで順調か。他にはー…」
当然、白漂も今は戦を他に成長や武功を建てる機会を狙う若人に任せて、今は宴会の為の準備に駆り出されていた。
「あなた、そっちからの人員の供出も順調なようね」
「大丈夫、渋る若い武闘派たちの前でも率先して僕が酒を注いで回る場面を見せて見習わせているから」
そこでの白漂の働きぶりは、夫の業務に対して基準が厳しい妻から見ても文句のないものであった。
少年時代から泥竜頭領として周囲の村への出稼ぎの交渉や、紫夏に連れられていた丁稚時代に宴会などにも駆り出されていた経験が生きた形だった。
「…さー、今回の宴会で誼を結ぶべき各部族の名簿だけどー…これは…、燕側に近い“粛慎”系の民族の名が多いな…え…何この名前…?」
そうして、今回は珍しく戦場以外でも(妻による監視もあって)白漂は働いていたが、招待客の名簿の中に混じっていた民族やその客人たちの名に違和感を覚えた。
粛慎と言うのは白漂の前々世では中国東北地方に住んでいたツングース系民族に中華側が付けた総称の一つで、著名な民族には女真族とそれが改名して発展した満州族等がいる。
但し、この世界の粛慎系諸民族は東から進んできた倭寇による圧力に押される形で、西進して前々世で言う中国東北地方西部や外・内モンゴル東部に移住していた。
そうした粛慎系諸民族の中で、今回にて秦国へ恭順の申し込みをした部族の名に、この時代にはまだない筈で、白漂には前世に置いて所縁が深い民族である“満州”の名があった。
そして、その満州族からくる使者達の名簿に、その所縁で最も親しんだ名が乗っていたのである。
「…“康熙”…」
「………漂? それがどうしたの? その名前は…かの地域では珍しくはない名前…ッ…」
その名を呟く白漂の表情は、まるで帰れなくなった故郷から遥々来てくれた旧友に対するようなもので、それを感じ取れた故に紅華は戸惑いつつもまだ深入りすべきではないとも感じ取った。
「…あーそれとー、今回新たに来るところからも含めた侍女達との“夜のお仕事”の方も頑張ってくださいね。今回の賓客達関係で頑張っていた子もいましたから。精が付くものは優先的に回すので」
「…デスヨネー…」
故に紅華は直ぐ真顔で仕事に戻り、その内容で夫に乾いた笑みを浮かべさせた。
「…まー、気を取り直して仕事仕事―…と、こっちにも…と、最近はヘレネス系に加えて…マルタやレベッカ達の同族と思わしき名前が多いな…」
そうしたリーディングサイアー的貢献も求められる状況に良くも悪くもなれていた白漂は十秒くらいで現実に戻るが、愛妾にも何人かいる東遷十氏族出身者の名前が名簿で新旧問わず目立っていた。
「あー、最近は多いですねーマルタちゃん達の同族…国際交易で伝手が多くて且つ見識深い優秀な人が多いですから…、今では秦の北部だけじゃなく咸陽や南方にも役所の補助要員含めて活躍している人が増えているようですー」
その名簿の内容に譜孝もまた興味と関心を示す。
秦における主要産業の一つになっている毛織物や綿織物を中心とした紡績業の立役者にして中心人物の一人として、東遷十氏族の持つ伝手は無視できないものがあった。
「そう言えばー、元々は一緒の同じ地域に暮らしていたけど神話やその解釈の違いで喧嘩別れした“消えた二支族”と言うのがいたらしいけど…その人達ってどうなったんだ?」
「あ、その話は以前に酒宴を共にしたマルタさんから聞いたことがあります…」
資源地帯である太行山脈地域に影響力がある家系で、白家での仕事から近年より東遷十氏族とも付き合いが始まっている姫昭が少し言い辛そうな表情だが説明し始める。
「…そもそも彼女の民族は同じ預言者を祖先に持つ十二氏族が纏まって西方にある故国で暮らしていたらしいです。ですが、国が大きくなって他国との交流も増えると…他国との付き合い方や布教を巡って、排他的且つ閉鎖的政策を主張するその二支族と、交易と布教を積極的に進めようとする十氏族で国の方針を巡って内戦が起きたらしいです…」
「(…そういうところは前々世における彼らの歴史や、前世におけるあの子の出身に近いな…)あー、その流れからして…今のマルタ達の先祖に当たる十氏族は政争に敗れて追い出されたとか…?」
「はい…そうですね。追放された当時の預言者に率いられて…当時存在していたカルデアと言う大国に数十万単位で亡命したらしいです。ですがー、ここから先がやや神話みたいで信じられない内容が続いていて…」
「え? どんな内容?」
「…何でも故国を牛耳ったその二氏族は他宗教や他国民を次々と追い出しても諸外国と揉め事を起こすようになって、それで戦争で窮地に立たされたのですが、それを覆すべく大昔の今よりももっと文明が発達していた時代の強力な兵器を持ちだしたらしいです。それを危険視した十氏族の神は何度も預言者を使わして警告したのですけど無視されるか殺されてしまったそうです。それから二氏族はその兵器を用いるも、その結果は国ごと灼熱地獄に陥って、それで大地は焼け落ちて水の底に沈み、一部の船に乗って西へ脱出できたごく一部を残して二氏族はほぼ全滅状態になったとか…。その影響はすさまじくて、災害が起きるまでは彼らの故国を通じてカルデア国と地続きだったエジプトという国とは“海”と言う塩辛い巨大な湖に遮られるようになってしまったようですよ」
(…え? 何それ…? まさかの前世の時みたいな…古代核戦争説…?)
前々世で多大な影響を世界中に与えたあの民族と思わしその民族と、この世界でマルタ達の先祖が辿ってきた歴史に、白漂はオカルト的意味も含めてシュールな懐かしさを覚えた。
「…ふううぅ、この荷物はこちらでよろしいですね…」
白漂とその妻達が協力して準備を進めていた時、二人がいる宴会用大広間の横を走る廊下を大きな荷物を抱えた李填が歩いていた。
李填もその美貌とそれにそぐわない膂力から、不足していた今回の宴会の為の臨時侍女として雇われた身である。
『…李填…』
「…?」
そうして仕事をしていた李填を、彼女以外には極めて少数にしか聞こえない非常に小さな音声が秦とは違う発音で呼んできたが、始め彼女は気のせいとも思って進もうとする。
『…
「!」
だが、今度はその名で呼ばれると李填は一瞬だけだが瞼が大きく開いた。
すぐさま荷物を運び終えると、即座に人目を避けてその声がした場所に向かう。
『何でしょうか?』
そして、人気のない物置小屋に行きつくと、李填は中華各国での主要公用語*1とは異なる言語で口を開いた。
『…その様子、まだ“本名”で呼ばれるのには慣れていないようですね。家族と再会できた喜びが深いようで嬉しいです』
『…いいえ、未熟の身ということ…恥ずかしいです…』
その物置小屋でまだこの時代にはないはずのノイズがかった音声が小さく響き、それに李填は小さく陳謝した。
『…いいえ、あなたもそういう面がまだある事に安堵していますよ。その上でお仕事が出来ましたよ…“いばら姫”…』
『…………』
それにノイズがかった声が優しい声音のままにその名を告げると、李填の瞳は明るい朱色から黒く固まった血のような色に変わった。
(…ッ…この感じは…こちらへの敵意はないけど…非常に強力な力が別の何者かに殺意を…)
李填が異質な表情を浮かべた時、宴会の準備のために別の部屋に向けて移動していた白漂が、その殺気を感じ取って両眼を細めていた。
(…おい! 秦の白漂だ!)
(数名しか連れを…しかも女しかいない状態で…! これは絶好の好機…!?)
渡り廊下を見下ろせる高楼の物陰から、どこそこの刺客達がそれを目にして嘲笑うが、その彼らが行動を起こす前に、その喉元に無数の棘が生えた蛇らしき何かがブンっと空気を裂く尾を添えて駆け巡った。
「…ん? この気配は…?」
渡り廊下を進みながらそれに気付いた白漂がその高楼を見上げようとするも、一人の女性がスッとそこと繋がる階段を降りて現れた。
女性はこの時代の同性に比べて極めて長躯な180センチ台の長躯を、黒基調の曲線美が目立つ衣服で固めており、長い金髪を中心に私的な美貌を持ち、その身には重そうな大きな皮革製のバッグを担いでいた。
「ああ、カリファ戻ってきたのね」
「紅華さん、お久しぶりです」
紅華と親しい様子で言葉を交わしているその美女の名はカリファ。
彼女はマルタの先祖と古くに枝分かれしたというイシュマエル人に出自を持つとされる美女で、今は紫夏系列の紹介で主に西域人との通訳で働いている身である。
「今回のお客の何名かはあなたも携わっている人もいるわ。ありがとうね」
「仕事として当然のことを下までです。それに、あれを約束させてもらえた身ですから…」
普段や他の世界でなら怜悧な表情や妖しげな微笑みが似合うカリファだが、今回その視線は紅華の傍らにいる人物に対してやや熱が浮かんでいた。
「あー、ちなみに約束は守るから安心してね」
「感謝です」
「え? 何で僕を見るの?」
「あなた、気付かないふりをしても白々しいから」
その視線に嫌な複雑な既視感を覚えた白漂も口から乾いた声が出るが、紅華に綺麗な笑みを添えた威圧感を向けられると、社畜の哀愁オーラを出すほかなかった。
(…ふふ♪ 戦場で見せるキレすぎる表情も…下種を相手にした時に見せる凄惨な微笑みも素晴らしいけど…この可哀そうな表情もまた素敵…❤️)
但し、その白漂と共に戦場込みの仕事で生きている女性の一人カリファにとっては、それもまた女としての欲望を刺激してくれるスパイスに過ぎなかった。
○秦国北部 匩涼系領域内 オアシス都市水階 仮政庁 浴場○
「ん…ふ…あ❤️」
公務のやり取りがなされていた昼が過ぎてその日の夜、仮政庁にある風呂場で女性の艶を帯びた声と肌がこすれ合う音が、水音に混じって静かにだが深く鳴っていた。
昼間では黒基調の長袖の中性的な衣服に身を包んでいたカリファが、生まれたままの姿に多くの泡を纏わせて、艶を帯びた笑みを浮かべて、その身を男の肌に擦れ合わせて互いの身を洗っていた。
「…薪にも困る地でも風呂に困らずに済むようになったのはありがたいけど…一人で湯を楽しむのも中々許されなくなったというのもなぁ…」
但し、その男である白漂は今や中々独りで静かに過ごすことが出来なくなった今の身に複雑な思いを抱いていた。
「あら❓ ご子息がこんなになっていては説得力がないと思いますけど❤️」
一方で男の意思と体は別なもので、白漂の背を長躯相応に大きくも綺麗な引き締まりも持った乳房をスポンジ代わりにして洗っているカリファは、その象徴である彼の男根に指を回して逞しさを感じ取っていた。
「そっちだって反応している方が嬉しいでしょ」
「むしろこの状況で反応していなかったら女性として屈辱です❤️」
カリファは白漂の声を間近から聞きつつ、彼の逞しさを増し続けている男根を己が指で鋭敏に感じ、その熱で自身の子宮とそこへ至る淫道への熱も高めさせる。
「まあ、君みたいな子に求められて悦ばない男はそんなにいないだろうけど…ッ…」
当の白漂もまた何だかんだ雄としての愛欲を高めていたので、風呂場へ共に入る時の約束通りにカリファの奉仕に身を委ね続けようとするが、その最中のほんの一瞬だが冷たい眼光を浮かべた。
「…ええ、貴方様のこれももう限界のようですし…もうそろそろこちらの方で勤めを果たさせてもらいます…」
その一瞬だが濃密な主が纏う空気の変化をカリファは感じ取ったが、それを表情には出さず、情事を自然に続けている風に見せていく。
数秒後、白漂は風呂場の床に敷かれた皮革製のマットの上に仰向けで横たわり、カリファはそれに覆いかぶさる形で彼の男根を両足に包み込み、石鹸とそれ以外で既に深く濡れている淫裂へ深くこすり合わせる。
「…ふふふ…強靭です❤️ ん……ああぁ❣」
淫裂の入り口で愛しい雄の感触を楽しみつつ、それで昂っていく子宮の熱にも押されて尻肉を大きく上げた後、それを勢いよく振り下ろして愛しい男根と己が子宮を巡り合わせた。
雄を知らない身ではないはずだが、始めて交わる愛しい雄の男根はカリファに情事で初めて快楽を味わえるようになった頃を思い出させ、彼女の背は少々だが演技ではなく素で仰け反った。
「…ん…これは確かに…一人だけに相手させるには危険な…存在です…ん…ぅぅ…❤️
数秒掛けて予想以上だった初撃の深さが身に沁み込んで慣れていくのを待った後、カリファはゆったりとだが大きな感覚を付けて腰を動かし始め、それで生まれる我が身の躍動に応じて再び泡立たせ、互いの身をスポンジ代わりとして白漂と素肌を洗い直し始めた。
「…アアァアアアアアァ❣ 良いぃ…ですぅ❣ 貴方のぉ…まるでぇ炉から出したばかりのぉ大太刀のようぅぅぅぅ❣❣」
数分後、カリファは少しでも愛しい男の熱を味わえるように乳房を其の逞しい胸板に押し付けながら激しく泡立たせ続けているが、今にもそれを引きずり上げてしまいそうなまでに腰は狂ったような躍動を見せていた。
常人の男根ならあまりの圧の強さに委縮して抜け出てしまいそうな胎内は最大限に括約筋を振り絞り、鍛造中の鋼のように堅く熱い男根に吸い付いて、互いの淫肉をぶつけ合わせて削らせるような動きを見せた。
「…乱れていても美しいな…」
「…ああ、風呂場に入るまで…ハァァ…情けなさそうな顔がぁ…今ではああ…もっと悶えてぇ❣❣」
そのカリファの背に手を回して彼女が感じたい己が熱を少しでも味わわせつつ、白漂は情欲に浸かる雄の火を宿しつつもその奥底に仕込みを進めていく罠師のような暗みを瞳に浮かべつつあった。
一方で、並みの男根なら血を引かせて引っ込むだろうカリファの強靭な肉壺を蛸のように吸い付いてくる極上の肉の薔薇に変え、男根へ後に加減を加え乍ら送って、溶けて彼女に吸い込まれてそのまま融合してしまいそうな悦びもまた味わっていた。
「…ッ!」
「…い…グウゥ…ッッッッッ~~~~~~~~~~~~~~~~❣❣❣❣❣❣」
その互いに喰らい合って混ざり合いような肉の打ち合いの果てに、白漂は少し唇を堅く結んで精気を天に吸い上げられるような悦びの果てを覚え、それが形に出た白濁の奔流にカリファは胎内から焼き尽くされそうな悦びへ至り、喉が張り裂けそうな嬌声を歯が折れそうになるまで食い縛って封じて意識を保ち、少しでも極みの心地よさを如実に味わおうとする。。
互いの身が肉の悦びの果てに至りつつも、白漂とカリファの手が泡で隠れた皮革製マットの隙間に差し込まれた次の瞬間、浴場を外部から遮断しているカーテンと薄板の壁が外部から突き破られた。
「死ねぇぇ! 白ひょ―――!?」
外部との境界の破壊と共に現れたその強靭を振るう影だが、湯気立ち込める浴場内に雪崩れ込んだその瞬間に、その視界が黒くに塗りつぶされる感覚を眼孔ごとすりつぶされる激痛と共に覚えた。
「人が睦言を営んでいる時を狙うなんて…無礼者」
カリファが皮革製マットレスの下より取り出した茨に似た棘を無数に持つ鞭を横薙ぎに振るい、その無粋な侵入者の両眼をすりつぶしたのである。
「―――おッぎえええ!? な、何だこれ…ばが!?」
漆黒と化した世界でより深く食いついてくる痛みで浴場の床をのた打ち回るはずの侵入者は、床へ触れる寸前に腹部へ叩き込まれた内臓をすりつぶされるような衝撃を添えて外の芝生へと叩き飛ばされた。
「がアアアァ!?」
「い、いでええ…!?」
「な、何だこ…ばご!?」
目標に掠る事すらできないままに実質戦闘不可状態にされてのた打ち回る侵入者たちの身は、容赦ないが業務上の都合で最低限必要な状態で拘束されていく。
「…君たちさぁ、気付いてて通したね」
「だって将軍にしてもらった方が取りこぼす可能性が一番少ないですし…それに…」
カリファの初撃に続けて、皮革製マットレスの下から取り出して第二撃に用いた鉄棍と我が身に付いた付いた白濁を湯で流し、身を拭きながら外に出てジト目を向ける白漂に対し、竜騎の隊員達は無表情で適当に躱しつつ、視線を館の外に向ける。
「…貴方が最も早くお気づきでしょう。今この城に…こいつらの身内を相手に…久方ぶりの常軌を逸した存在が間近にいる事を…」
「…まーねー…」
部下からの警告に普段の間が抜けた声を出す白漂だが、その瞳は罠にかかった獲物を取りに行く罠師の光と、その罠にかかりかけるも難なく通り抜けていった
最近、何やら各作品の著名なスパイキャラ(の同位体)が安易に出過ぎている気がします(…書いている身で何を言うんだとお思いでしょうけど…)。
次回、原作ではいない(もしくはまだ未登場)原作主人公のあの肉親が中心になる予定です。