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○秦始皇9年(紀元前238年) 秦国中央部 王都咸陽 某所○
宴会場予定地で李填が雑技団張りの動きで周囲を驚かせていた日の昼にて、嬴政は今日も仕事を終えた後の息抜きで市井に変装し地方貴族の正として出ていた。
「正(嬴政)兄様、人々の住居もほとんどは再建したようですね」
今回のお供には異母妹の嬴司雪が付き添っていて、彼女は従妹の
「ああ、今までは市街地の復興に取られて予定通りだが再建は後回しになっていた王宮と官庁街だな。本殿の方は諸外国の目もあるから市街地に次いで進めていたから昨日にて工事完了したようだが…」
「今回、貴士族以上の方と抽選で選ばれた市井の方々に混じって、その方々の視線でそれを見ようという話でしたね」
それから兄妹二人を中心とした一同は大通りに出て、他の通行人の群れに混じって王宮を目指す。
「…おおお…」
「これは…!」
十数分後、兄弟二人を含んだ群衆は王宮内の本殿の前に大きく広がる大広場に集まっていたが、人々からは出身を問わず感嘆の声が上がっていた。
元から咸陽は西域など中華外との経済関係の拡大に伴って、市街地は螺旋状に拡大傾向にあったが、宮殿は中華の辺境に位置していた事と軍事費など実用面に予算が偏っていたため、七国の中では小規模な方だった。
「…韓など三晋の宮殿が今までは中華で随一の宮殿だと思っていたが…」
「これはもう…あれらを凌いでいるぞ…」
群衆の中で見識のある者達には、今の咸陽王宮はそれらの常識を塗り替えるには十分過ぎた。
ちなみに、新しい咸陽の王宮は設計の段階で、支配地及び領民規模の拡大と多様化に伴い、白漂が前々世の後代に当たる唐代の宮殿である太極宮や大明宮を元にした基本設計図を他人名義で出しており、それが色濃く反映されていた。
それを現実に見て感嘆する人々の中で、恐れを強める者達もいた。
「…道中で経過した町も規模が増していて、村落も此度の復興による負担で疲弊しているという感じもなかった…むしろ多くが充実しておったが…」
「これは無視できるものではないぞ…」
そうした声を上げている者達は行商などを装った他国からの間者であり、自国と今現在いる敵国の差が如実に現在進行形で広がっている現状への危機感があった。
「…この動きを阻害するには、やはり中華の外との繋がり…特に“北”か…」
「ああ、最も間者等の被害が出ているが…犠牲などとやかくは言っておれん!」
「最近は燕の北側国境の向こう側から“海”にまで手を伸ばそうという話もある…」
「…特に
故に、秦側の変法から続く防諜体制の強さから情報の奥を秘匿されているものの、多くの犠牲を経ていきついたあの男の存在が彼らの脳裏に浮かび上がっていた。
○秦国北部 匩涼系領域内 オアシス都市水階 仮政庁 寝所○
咸陽で間者達がそのようなやり取りをしていた日の夜、彼らが取り上げていた秦で最も葬るべき男は、まさにその秦の地力を上げる活動の一環をしていた。
「あ❣ あ❣ あぁぁああーーーーーーーーーーーー❣❣」
秦中央部と新規加入勢力の関係強化のため、後者の一つから愛妾も兼ねる形で来たハイルを、その男たる白漂は自身の腰の上に跨らせて激しく喘がせていた。
ちなみに、ハイルは今晩にて白漂が行った女性目隠しプレイの前に行った逆セクハラへのお仕置きとして、その間は劣情を煽られながらも最後に回された影響で、やっと繋がれた今では狂ったように腰を振りたくっていた。
その彼女の咸陽滞在期間でブランコアクロバティックプレイを思わせる躍動的な腰遣いを、相手を捻じ曲げて飲み込もうとしている大蛇のような極上の動きをする肉壺で味わいつつ、白漂の意識の主要部分は他所に向けられていた。
「…つまり、その満州族とは知己が多いんだね」
「ええ、当時
今の時点で白漂と快楽の残滓である薄い朱色を頬に浮かべつつも真面目に言葉を交わしていたのが紅華だ。
ちなみに、彼女もきっかり今宵の分の種は受け取り済みで、それを胎内へ長く押しとどめるために赤い上品な意匠を施されつつも夫好みのセクシーなハイレグTバックのマイクロショーツを付けて足の付け根を塞いでいた。
「…康熙と言う名はその粛慎と呼ばれる人々では珍しくないようですが…、他にもそちらの方々は遠いわりに名前などは華夏式の方が多いですね。何か繋がりがあるのですか?」
繋がって極みを越した後の微睡みが薄れていた姫昭も、紅華が上げたその人物に絡んで問を挟んでくる。
「あー、その満州と言う民族自体が北ではいきなり姿を現してからまだ百年ほどしか経っていない集団でな。どれだけ調べてみても本当にいきなり急に現れた連中だからな…。よくわからんが…“康熙”と言う名はどうやら彼らが北の大地へ来る前に住んでいた地に昔いた名君の通称が由来らしい」
その問いにこの中では一番交流が広い藍蘭もまた難しそうな答えを返したあたり、今回の件における満州と言う存在は本当に情報が少ないようだ。
「ただねぇ、族の編成の仕組みや持っている技術は現れた当初から高度だったっていう話はよく聞きますわね。実際ー、旧
「その中で技術の代表の一つがこれですね」
藍蘭に次いで北の地での人脈が多い譜孝が苦慮している表情を浮かべておると、真横から杏橋がその満州由来の技術を用いた物品を見せるが、それはこの時代では本来ないはずの物品だった。
「…これは!?」
白漂が声こそ小さいが両眼を小さからず見開かせたものは、火縄式の初期のものではあったが確かに火器の代名詞である“銃”だった。
「これは彼らの間では、先祖が粛慎の地に現れた頃から持ち込んでいたという武器で“手銃”と言うものです。筒の底にある薬品を詰めてそれを燃焼させて爆ぜさせ、その推進力で鉛玉を撃ち出すというものらしいです。もっとも使用する薬品の入手の難しさから、今ではごく一部しか使用されていないようですが…」
「たしか太行山脈攻略の際に、小さいが雷を落としたような音を出すと毒を縫った小さな石弾を撃ち出すという奇妙な弩を、捕えた敵方の傭兵から押収されたけど…」
「どうやら、満州と近しい部族がこれを模倣して横流ししたものを使用していたらしくて…」
「奇妙な武器だが、高そうだな…それに音が大きすぎて狙撃手の場所が分かってしまうこともあるというのも」
その鉄砲に女性達から様々な情報や意見が出るが、白漂の脳内はその出自からこれが存在している理由について思考が深まっていく。
(…これを持ち込んだという満州と言う者達からして、僕のように後代に当たる別時間軸の後代から来た可能性は高い…。純粋にこの時代の者たちによって開発されたという可能性は…火薬もその名称が決まる以前から存在していたという説は前々世にもあったが…)
白漂の思念で浮かんだ火薬はその名称が決まったのは宋代だが、実際は方士などの間で秘伝や秘術と言う形でそれ以前からあったという説もある。
だが、そうした学説を考慮しても、自身が異物であることを自覚している白漂は同類の可能性を濃厚に感じていた。
「…満州と言えば、確か…李牧が雁門で匈奴を大負けさせる数カ月前に起きた…マルフの大火災があったわね。趙側…と言うか李牧派が必死に隠したから中華では知られてないけど…」
その白漂の思索を中断させたのは紅華が何となく口にしたその言葉だった。
「マルフの大火災? 何だいそれは?」
「李牧が趙北部司令官止まりだった時期に、異民族討伐の都合で当時の
「そんな事があったのか…」
白漂がその話しに興味を深めた所で、紅華が続けた話には更に信じられない事を話す。
「…それでー、その大火災は実は満州側の火計だったって話があるのよ」
「まあ、そうしたのは真偽のほどはともかく威勢のいい宣伝がされるのは珍しくないけど…?」
「…それでねー、その火計を発案して実行に移したのが…満州の族長の一族だったけど…当時はまだ14歳の女の子だっていう噂があるのよ」
「…え!?」
その内容に一番信じられなさそうな声を上げたのが、趙に内通者として処分されかけるまでは同国所属で李牧に推薦されていたこともあって、その人物の実力を知る身でもある姫昭だった。
「そのような話聞いたことありませんが…?」
「まあ、趙北部軍だけじゃなく
「まあ、その後に黒星が付きまくって今じゃ趙から逃げ出してるけどねー。盛者必衰と言うものかしら」
「…その通りだけどねマルタ……まあ、さすがに14歳の子が与太話なんだけど…でも…もしも~、あの子だとしたら…………」
「え? あの子って…?」
紅華はそうした不審の眼差しが強まっているのは承知で、半信半疑とした表情でその例の人物に付いて話を進めた。
一方で、白漂はその魂の特殊な経歴から、紅華が上げた件の人物に関するその数字に色々な意味で関心を強め始める。
(…14歳? 何か聞き覚えがある数字だなーーー…あ、確かー前世で生まれた時からあの事件で崩壊するまでの幼少期にいた研究所で同じ部屋の友達で、同じく調整体だったあの子の遺伝的及び霊的での原型が…確か、前々世では中華最後の帝国で随一のチート級が親政を開始した齢だったっけ…? それで前世で研究所から逃げ出して別れた後で再開した齢もそれだっけ…っ?)
だが、白漂の真面目な思考は、その契機となった手銃とは別に彼の身に元から有った銃絡みで遅れさせられてしまう。
「フアアアアアァアアアァアア❣ と、殿様のこのおオオオォォ肉筒も更にいいイイいいイイ逞しくなってええええええええ…エッグううううゥウウウゥウゥウウウゥウ❣❣」
今現在、白漂の脳とは半ば分離して動いていた彼の腰遣いで躍動する股間の銃が、今現在そこへ腰を下しているハイルに腰を狂ったように揺らさせていた。
「…っ!!」
そのハイルの密林を蹂躙して這いずり回る大蛇の如く自由自在に曲がり締め付けてくる肉壺に、意識の主な部分が会話に振り向かれていた白漂は無意識に噴火の如き子種汁を噴火のように爆ぜさせて腰から下が空に飛翔して溶け込んだような極みに至った。
「❣❣❣❓❓❓」
それを子宮で直に叩きつけられたハイルは折れんばかりに背を仰け反らせ、天井目掛けて大きく開いた口は声すら出せない極みに達した証しとして、大きく舌を突き伸ばした。
「…ひゃご…」
但し、その間でも閨に集う者達の危険察知本能は相変わらずで、閨から窓を介して豪速で飛び出た得物が庭の樹上まで進んでいた刺客を今夜もくし刺しにして地に落とした。
「……………はえぇぇぇぇぇ…❤️ あれ…❓ 矛が無い…❓」
ちなみに、その投げつけられた得物には極みに達している間もほとんど反射で腕が動いたハイルのものもあり、彼女は自身の得物が近場から無くなっている事に気づいて困惑したりもした。
○秦国中央部 王都咸陽 王宮○
「…………」
ハイルが絶頂の余韻に浸っていた頃、王宮に戻った嬴政は彼女がいる北部からのものも含めた各地からの報告書に目を通していた。
「…あやつ…まさかここまで遠い所まで手を伸ばすとは…ですが極北の地ながら海にまで届きそうになると…これは判断が難しいですぞ…」
その部屋には昌文君もまた同席していて、彼もまた報告書を見ていたが北から届いたそれの内容にその顔に多い皴を更に増やしていた。
「…海を得られればその利は大きいが…如何せん今現在の領域内でも、言語や文化の違いによる問題が増えているからな…」
現在の秦は七国の中で拡大を続けて領域と人口は最大になっていたが、その為に国内に様々な他民族とそれに伴う諸問題を抱え込むようになっていた。
「……やはり現行の法だけでは限界がある。だとすると…この書が必要か…」
そうした現状を把握している嬴政が各地方からの報告書と共に目を通しているのは、今現在の秦で公文書に使用されている紙の冊子型の本ではなく、諸外国から入ってきた昔ながらの木簡や竹簡の巻物であった。
「…まさか儒家が大きく幅を利かせる中原でここまで我々が目指す統治の原理を突き詰めた書があるとは驚いた。この本の著者と語り合えられたら大いなる学びを得られただろう…」
「…それが陛下、その本の著者は今もご存命中の方です」
その嬴政と同室にいた咸陽大学院にも所属し、宮廷では対西方外交部の顧問の一人になっているある学者が口を開く。
「…知っているのか?」
「はい、しかも高齢と言うわけではありません」
「何と、では招くことは可能か…?」
それに関心を強めた嬴政だが、招致に話が及ぶと学者は非常に難しそうな表情を浮かべる。
「…それが、現状では非常に難しいかと…、その方が…今現在もっとも我が国の侵攻を受けているかの国の王族で…、更に…先の反乱で首謀者の一人として投獄されているあの方のご友人の一人で…」
「…あ…」
その理由を聞いて嬴政もまた気まずい表情を浮かべた。
キャラクター設定㊽
イヘイ・ハイル
容貌/伊丙入(東京喰種)
年齢/20歳(始皇9年(紀元前238年)時点)
出身/秦国北部(出生時匈奴領)
身長/160センチ
体重/59キロ
3サイズ/B88W58H87
得物/矛
趣味/食べ歩き
白漂が紫夏と共に中華中を行商で回っていた時期に、ヤバい組織に殺し屋や戦闘員にするべく育てられていた北方系と倭国系の混血の戦災孤児だったが、その組織が別の闇の組織によって滅ぼされて放浪していたところ、白漂に拾われた。
その育ちから普段はほんわかしているが、戦闘時は常軌を逸した反射神経と敏捷性で矛を軽々振るい、躊躇は見えない。
白漂のことは動物のように懐いているが、その経歴の為か常識や羞恥心に乏しい行動を取ることが度々ある。
伊丙入(東京喰種)の同位体でもある。
今回は色々と満州、特にある人物には今後の話にも影響を大きく及ぼしかねない情報込みで出てきました。
次回は、北の地での情勢安定化事業が中心となる予定です。