なお成人向け描写もかなり薄いです。
○秦始皇6年(紀元前241年) 合従軍大戦函谷関攻防戦一日目夜 秦国中央部 函谷関南側山岳部 秦軍野営地○
「ぶはははははは! どんどん飲めぇぇぇ!」
昼間に対峙している趙軍を相手に戦果を上げた麃公・黒剛・郭備三軍の将兵達はそれを祝いあっていた。
「…ん、どうしたんだー兄貴ー?」
その中で数少ない喜色を見せない兄尾平に尾到が怪訝な顔を浮かべる。
「…いやー、喜ぶべきなんだろうけどなー。昼間で岳嬰軍に殺されそーになったけどどうにか返り討ちにした敵に長平で弟が死んだってー奴がいてさー。武器持ってない堅気も降伏しててもお構いなしに殺るっつー奴らでもなー。やっぱ漂の爺さんが遠因だと思うとー素直に喜べねーつーかば!?」
だが、その理由を哀愁漂わす表情で語りだした尾平は背から勢い良く叩き飛ばされ、出っ歯から酒を溜めている樽に衝突した。
「バハハハハハ! まだ一日目だというのに何をそんな感慨深い顔をしておる! まあそういうのがいるのも面白いがのぉ!」
尾平を張り飛ばしたのはこの区画で秦軍指揮官を務めている麃公であった。
ちなみに、彼の背後には胃の辺りを擦りながら悶えている信達の姿があった。
「いててて…な、何だぁ!?」
「あー、将軍が今日の勝利の祝いに持って来た酒に挑んで一口で沈んじまった連中だよ…」
「郭備に信と黒剛も混ざってるよ…」
「どうしたぁ! この場にいる兵に倒れた将の仇を討たんとする勇者はおらんかぁ!?」
「じゃ、じゃあ私が…」
その惨劇の原因となった自身の酒に満ちた大酒盃を振りかざす麃公に玲花が恐る恐る挙手をした。
「おおおお! こんな腕利きの上玉娘もいるとはぁ! そこで伸びてる今日の勲功筆頭はぁ夜も酒抜きならやるようだのぉ!」
「んぐ!」
河了貂が自身の胸に空虚感に似た痛みを覚えるも玲花を見守り始める。
玲花は酒で満たされた大酒盃を眼前に持ち、静かに口を付けた。
「…ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク…ぷは…」
「「「「「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?」」」」」
そして、一回も途切れることなく数秒で飲み干して、麃公兵含む周囲を唖然とさせた。
「おおーーーー! 中々の飲みっぷりじゃー! どんどん持って来いーーー! こんな娘っ子に負けてよいのかー!?」
「…な、舐めんなぁ! お、俺はこいつの隊長だぞぉ!」
「おー! 復活したかーわっぱー! 周りも応援じゃー! 隣のーババーの垂れ乳もー昔はー!」
「何その掛け声…? グビグビグビグビ……」
その後、信を初め何人かが復活して麃公の酒に挑むも、結局この怪物酒豪二人に適うものは無く、そのまま明日の戦に備えて自然と酒宴は解散となった。
「…くー…くーーーー……」
「あーもー飲みすぎだよー。全く…」
「こいつ…ガキの頃から見た目に似合わず重いんだよなぁぁ…あー着いたー」
大半が就寝した頃、信とステラは玲花を肩から支えながら自分達のゲルまで帰った。
大量の飲酒でようやく酒気による眠気に襲われた玲花を適当に横にすると、信は自分達との間に盾を支えつきで並べて遮りを作りステラと共に尻を付く。
「あら、隊長でもそれくらいの気は配るんだね?」
「あー以前によーゲルが足りないから貂と一緒に同じゲルに入って寝たらー寝相悪いって殴られた。同じ野郎のお前ならーーっていてててて!? 何をいきなり脛をつねんだよ!?」
「先行者特権に対する妬みも備えたその鈍さに対する愚痴だよ愚痴。あーもう明日も何時始まるかわかんないから寝よ」
そのまま信を引き摺る形で無表情で横に付くステラ。
「……………」
それから数十分後、寝息が静かに大気を震わせているゲル内部で玲花が目をパチッと見開かせた。
(…あーーー、久々に強い酒を飲んだせいで昔を幾つか思い出した…何か暗い気持ちになったーーー…あ)
その双眸は何処か薄らと眠気以外に重たそうにしていたが、顔をキョロキョロと動かしていると玲花は盾を挟んで隣で寝ている信に眼が行った。
(…そう言えばー、信君のあそこを見たのって子供の頃に水浴びして岩場に挟まって動けなくなった時に…身が揉みくちゃして精通が起きちゃった時から色々仕込んできたけど最近は見てなかったわね…)
玲花は古い記憶を刺激されて盾を音を立てずに退けると、寝息をたてている信に四つ足で近づいた。
「…う…く…んんん?」
玲花がその寝巻き一枚で凹凸が目立つ身をそっと触れさせ、その柔軟な表層に包まれつつも芯は硬質ゴムのようにしっかりした大きい双乳をふにゅっとその逞しい胸板に降ろすと、信は眼こそ覚めないもののやや心地良さげな寝顔を浮かべる。
そのまま玲花は武道家や裏社会で研ぎ澄まされてきた骨肉に古傷で覆われつつも、女性らしい細さに秀麗さも何処か嗅ぐわせる指で、昼間に付いた戦傷を労わるように撫でつつも下肢目指して這わせていった。
「…あ、まだ血が固まりきってないのもある…ちゅるり…♪」
時折りに指に付着する男の血を指で掬い取って唇に運ばせ、玄人の妓女を思わせる実年齢からは想像出来ない妖艶な光を瞳に玲花は宿す。
気付けば、信のボトムの足の付け根部分には今の年齢以上に大きなテントが張られていた。
玲花はそれに妓女を思わせる微笑みを更に強め、ボトムと割れた腹筋の合間より手を衣服の内部に潜らせ、遂に女をまだ知らない男根に指が触れる。
「…(…ふふ、機械的に相手をしていた男の人たちと違って…子供の頃から鍛えられて大きく堅く育ってても…まだ女の子を知らない青竹のような可愛い震えが…)信君も普段は生殺しさせちゃってるから…夢の間くらいはご褒美を上げても―――」
「はいだめー、これ以上は流石に気づかれるから延期ー」
「―――おってあう」
それに玲花が久方ぶりに下腹部の焼けるような疼きを覚えて、男根の過敏な箇所を眠りを妨げないレベルで刺激しつつ、自身も寝巻きの帯を緩めながら腰をそのテントに合わせて信に跨ろうとしたその時、彼女の顔が呆れ顔のステラにそっと掴まれて信より引き剥がされた。
「同類の香りも感じ取れるし…話も大体聞いてるから情欲を抱くのも無理ないけど…幾らなんでも欲情しすぎよ?」
「…だ、だってぇ…以前に偶然飲んだのは濃くて美味しかったんだもの…それに泥竜に入ってからは温かいご飯に安心できる寝床に安心しきって長く忘れてご無沙汰でもあったし…それが戦場で生存本能刺激されて思い出したというか…酒飲んだら泥竜入る前の頃も思い出したっていうか……あ…」
ステラの窘め顔になおも未練を示す玲花であったが、そこで一瞬だが彼女の背後で揺らめくように生じたゲルの布地の隙間より、羽毛が大きく逆立ちつつも光が無い瞳を浮かべた巨大な梟を一瞬だが目にした。
○秦始皇6年(紀元前241年) 合従軍大戦函谷関攻防戦二日目昼 秦国中央部 函谷関 南端戦場○
「玲花隊はまず右側の白という旗と黒という旗の敵部隊の合間を潜り抜けた後に右に曲がってやや離れてる麃公将軍の前の横腹を突いてる隊の背後を攻撃して! それから間伐無く次に黒剛軍をー!!」
「あー忙しー忙しーー!!」
「「ぎゃあああああああ!?」」
「あー! 白麻様に黒箔様が投槍でー!?」
「何だか娘軍師の玲花副長に対する指示がやけに細かすぎて地味に危ないのが多くないか?」
「でもまあその分相手を削いでるから良いが…」
二日目以降、合従軍が消耗戦を狙って凡戦を連ね始めると、河了貂の玲花に対する指示には何処か殺気を他の将兵達に感じさせたりした。
結果として、玲花の武力が十分に常軌以上だったのもあって毎日普通に生きて帰れて来ていたのでそこまで気にしたりもしなかったが、皆は河了貂にその理由を聞きたくとも聞けなかった。
○秦始皇6年(紀元前241年) 合従軍大戦函谷関攻防戦十四日目夜 秦国中央部 王都咸陽 後宮○
「…ふう」
「大丈夫ー? 体調良くないって聞いたけど…」
「えぇ、どうにかー前よりかは良くなってるわ…」
合従軍侵攻による緊張と動揺がまだ収まっていない秦国後宮の警備が厚い区画にて、寝台の上で紅潮し熱気味の扇琵とその看病をしている陽の姿があった。
「…け、けどー向ちゃんも凄いけど琵ちゃんもまさか一晩で大王様の御子を身篭るなんて…」
「…ま、まー一晩は一晩だけど…色々濃厚というか…あぅぅ…まさかー、合従軍が攻めて来たって報せが来た時につわりで倒れて妊娠が発覚するなんて…」
その会話が示すとおり、扇琵は先日の夜伽で嬴政の子を三番目に身篭ってしまった。
普段の怜悧な知性を感じさせる静かな美貌など吹き飛んだ悶え顔で、扇琵は掛け布団を引き上げて顔の下半分を隠す。
「…で、の、濃厚って言うと…ぐ、具体的にどんなの…?」
「…陽ちゃん…貴女…向ちゃんを先に寝かせたのって…」
ジト目を向ける扇琵に臆せず陽は口元を袖で隠しながら興味心身という表情で顔をぐいっと近づける。
生まれは高貴な武家の娘だが性的なことには年相応以上に関心が強いのが陽であった。
「い、今はー…合従軍が来てるし…いざという時のための逃走とかも準備しなくちゃいけないし…は、早く寝ましょうよー…!?」
視線を斜めに向けながら扇琵は明かりが灯されている、今は秦国で北から流行りだしている蝋燭式提灯のそばにある病人向けの果実を手に取ろうとするも、キッと双眸を細めた陽に籠ごとそれを奪われてしまう。
「…悪いけど、普段仲が良い振りをしてるけど私達は宮女なのよ琵ちゃん、貴女が白状するまではこの果物は口に付けることは許さない」
「なっ!? あ…貴女…と言う人は…!」
「ほ、ほら! お腹の子が本当に大事だと言うのなら如何に大王様から子種を子になるまでふんだくったのか白状なさい! さもないとこの果実は上げないわよ!!」
「っっっ~~~~~~~~~~~!!」
そのまましてやったりという表情の友の裏切り布告に、熱と羞恥で苦悶する恨みがましい顔を向ける扇琵であったが、数十秒程経つと生じていた母性に後押しされ観念した表情で視線を他所の方角にずらしながら言葉を再開した。
「…え、えーーっと掛けた時間は…その日の夜からだけど…陛下の体力が細身の割りに凄くて…クタクタになってお互い眠りだした頃はもう東の空が白くなり始めてて…」
「それってほぼひ、一晩中!?」
「は、始めは正常位だったけど…後から性に喜ぶ姿を見てみたいって理由で指を絡めながら私が陛下の腰の上に跨ったり、他にも私が立って壁に手を付けた状態で陛下が後ろからしたり…中には窓を開けてそこに身を乗り出させられた私の後ろからまた陛下が…一瞬、見張りをしてた知人の宦官の人に親指を上向けにグッと上げられてるのを見たり…」
「け、獣体位にほぼ公開情事!?」
「あ、ある程度精を貰った後で…互いの秘所を見たい合いって流れに何故かなって…お互いに顔を…相手と繋がり合ってた箇所に近づけて唇や舌を―――」
「ぶはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?」
「―――おってぇええええ!?」
その年頃の高貴な女性にはあまりにマニアック且つ過激な暴露に、まだ経験が無い陽は遂に理性と羞恥心が耐え切れずに鼻血を噴出し、その勢いで後頭部から床を盛大に叩いた。
○秦国中央部 函谷関南側山岳部 秦軍野営地○
後宮で猥談が繰り広げられている中でも、咸陽では王と重臣たちによる幕僚会議が深夜遅くも続き、前線でも一部の将兵が心身や戦技の状態を確認すべく寝る前の武技の調整をしていた。
「…………」
地味な消耗戦の連日に多くの兵達が心無く肩を落としつつも諸将達が翌日に来るだろう決戦に眼光を強めていたその時、玲花もまた寝る前に自らの状態を確認している一人だった。
(…あの日から、何年も経ったな……)
防御柵の一部である柱の上で片足の爪先のみで立ち、更に重心や力点の意識制御で姿勢を斜めにしたままでビクとも見せない絶妙なバランス感覚を確認していく玲花。
それと共に記憶の深層も脳裏に蘇りだし、瞳の光が薄れていって代わりに星も浮かばぬ夜を思わせる空虚な色が浮かんでいく。
『間違いなくあの時に逃げ出した女の娘だ。この娘は連れて行く』
まだ物心付かず、ティファという自身の本来の名前と親しい身内だけが暮らす森林と草原の真っ只中が世界の全てであった幼少期、玲花は村から離れた森の中でその終わりの言葉を告げられた。
彼女を草原世界から中華という異世界に連れ去ったのは、嘗て戦乱が続く世界を変えようともがいた賢者が残した意思の残骸の果てというべき者達。
その彼らが住まう、中華の列国の何れの地図にも載らない地で人の形をした機械として玲花は扱われた。
幼少期より身に手術を施されて元々整っていたらしい面貌は人形のように育つようにされ、身も美貌を保ったまま素手で人を屠れるまでになるように筋骨に投薬も含めた調整が施され、相手を喜ばせてその油断を見れるようになるまでの知性を身に付けるまでの学を仕込まれ続けた。
それから、やっと秘境から世界を出た時には、命を奪うのは起床した直後の洗顔と同じ程度になっていた。
そうして、ただ残骸らの教えに連れられて下される命令をこなしていた少女時代に彼に出会った。
「どりゃ」
「のわ!?」
だが、玲花の回想がその次に起きた惨劇に入ろうとした所で、そこから救い上げた存在の蹴りで玲花は柵から地面に受身を反射で取りつつも落とされた。
「…ううう…な、何するの信君…!?」
「あー、明日当たりに多分ガチの決戦が来るからよー。今から夜食作って皆に振舞ってくれー。もう貂とステラ達も起して残りもんで作ってもらってる」
「え、えぇーーーーー……(はぁ、まあ、いいか…昔よりかは幸せだし…)」
受身を取ったかが軽く打って痛む鼻先を擦りつつ恨みがましい顔を愛しい男に向けつつも、慣れた諦めと安らぎの前に過去がすごすごと脳裏の隅に移っていくのを覚えた。
その時に戦友たちの空腹の訴えと食事の期待を乗せた風が吹き、玲花の星を囲う夜空と同じ漆黒の髪が平時と同じくそれに靡き、静かに彼女の脳裏より染み出していた泥竜参加前の汚泥を思わせる過去の匂いも吹き消されていった。
キャラクター設定⑫
容貌/髪結い時ティファ(ファイナルファンタジー7リメイク版)黒瞳及び下記年齢化
ストレートロング時下平玲花(GANTZ)下記年齢化
年齢/17歳(始皇6年(紀元前241年)時点)
出身/秦国北方領土(モンゴロイド主体のコーカソイド若干混じり)
身長/174センチ
体重/58キロ
3サイズ/B92W59H86
得物/カラクリ仕込籠手 カラクリ仕込長靴(職業・殺し屋のマンティスみたいな感じ)
趣味/器械体操(今現在)
渕やステラと共に信三千人隊の副長を務めている女五百人将。
すっぴんでも後宮に入れるレベルの美人だが、色々とまだ詳細が明らかになってない曰く付きの経歴で裏事情含めた兵法や学芸に雑技団張り武技に詳しくて機転に身体能力も高い(故に少女時代に借りが有るとはいえ信に惚れてる点でステラ同様に幾分か残念美人属性あり)。信隊の補給はステラと共に分担で管理している。
主に現在の信隊は信が勘と武勇で最先頭から引っ張り、玲花がそのすぐ後ろから横を固め、後方からステラが弓隊を率いて支援し、渕が三者の間を適時適切に埋めるという形で成り立っている。
ちなみに、経歴のためか夜の方は清楚そうな平時の雰囲気に反して割と積極的で、麃公に迫る酒豪。
我ながら思うのですが、果たしてこの世界の大王様は統一後も現実歴史書みたいな評価を貰わずにすむのか心配になるお話でした(笑)。
次回は、遂に本編での函谷関攻防戦の最終戦を違う視点より描きます。