※この作品はR-18です。

天下の大将軍になる!! ~夜の睦言~   作:oosima

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今回は戦闘…というより救助活動がメインになって大人向けシーンは無いです。


205 災害は重なって生じやすい●

 ○自由都市(ユラス・アプラス)攻略戦12日目朝 秦国北東部 新領地 某不安定地域(現内モンゴル自治区中東部) 黒竜江流域地帯 自由都市(ユラス・アプラス) 城内某所○

 

『テメエ! やりやがったな!』

『アア!? 先にぶんなぐってきたのはテメエらじゃねえか!』

 

 白漂が夜蘭達の店である彩兎館に再び来てから数分後、街中を覆う混乱はその火の手と比例するかのように増々悪化していっていた。

 

『ギャアァアア!? ここにまで火が来たぁ!?』

『だ、駄目だぁぁ! もう行き止まりで皆が焼け死んでしま…!?』

 

 その中でも必死に火の手から逃げようとしている人もおり、その一部が行き止まりに立って絶望の表情を浮かべたところで、その壁に数本の閃光が煌めいた。

 

『それ!』

『うわぁ!?』

 

 そして、その壁は向こう側からの何者かによる蹴りで撃ち砕かれて道は開かれた。

 

『逃げたいならあちらの右側の裏路地から進んで高い丘を目指せ。死ぬのが嫌なら急いでだが慌てずに』

『は、はい!』

『ありがとうございます!』

 

 そうして開かれた穴からは、後代における都市向け迷彩服や某巨人系作品での主人公サイドの後期装備を思わせるもので顔元も含めて隠した明らかに時代錯誤的な特殊部隊風な兵士達が現れるが、事態が切迫しているので人々はその言葉を疑ったりそれを言葉にせずに素直に従って逃げ出していった。

 

「…よし、こっちも大丈夫だな。次に行こうか」

「お前、こういうどさくさ紛れって本当にうまいよな」

 

 それを見送った特殊部隊員風の兵士達の正体は白漂であった。

 今現在、彼らはこうして自分達の得物で壁を破壊したり、逆に火の手を移したりして人々をこ(・)れ(・)か(・)ら(・)助(・)か(・)り(・)や(・)す(・)く(・)な(・)る(・)場(・)所(・)へ誘導している最中であった。

 

「よし、それでは次の場所へ向かおうか」

 

 そう言って白漂は脱出口を上げた建物の窓から外に飛び出ると、そこは上層階だったらしくその身は重力に引かれて落ち始めるが、特に慌てずに足に装着された装備のスイッチを押すとそこから一本足の下駄のような棒が飛び出てきた。

 

「それ!」

 

 そして、白漂がその状態で路地に着地すると棒は押し込まれるも、直ぐに押し返されてその勢いも載せた脚力で白漂は別の建物のベランダまで飛び上がって着地した。

 

「…凄いな今度のこの“飛靴”という道具は…大抵の壁や建物は飛び越えられやすくなった…」

 

 続けて同じ後代特殊部隊風に身を包んだ羌瘣もベランダに飛び移って、今現在自分達の脚部に装着されているそのロングブーツ型装備“飛靴”に瞳を輝かせていた。

 その今回用いられている新兵器飛靴は白漂が前の世界などにあったホッピングマシンや、パラリンピックなどで陸上選手たちが用いている義足を元にしたもので、内部に仕組まれた合成バネの力で跳躍力を飛躍的に上げるという代物であった。

 

「…凄いわねこの装備…特に緑基調の迷彩服と併せたら森の中で本当に猿みたいに動けるし…」

「その時の訓練でこれを装着して試用していた紅華さんって本当に生き生きした表情をしていましたよね…」

「紅華に玲花、皆も揃って次に行こう次へ」

「「「「「承知!!」」」」」

 

 今回の自分達に回されたその新装備に面々は嬉々とした表情を浮かべあっていたが、白漂に促されるとすぐさまその装備で建物や壁に塀を飛び越えながら城内を再び猛スピードで駆け出した。

 

「…ぜえぜえええ…! あ…あいつは白漂!? 今回もまた城内へ潜り込むとは大胆な…だが、今回のは何のために…!?」

 

 それを見つけた趙遷は追い続けていた疲労と人混みに揉まれ続けたで息が荒くなっていたが、悲鳴を上げている身に鞭を振るう勢いで馬を走らせて彼らを必死に追っていった。

 

 

 

 

 

 ○秦国北東部 新領地 某不安定地域(現内モンゴル自治区中東部) 黒竜江流域地帯 自由都市(ユラス・アプラス) 白漂軍野営地○

 

「…主席軍師! 今度は町の東側23区画の方でも住民誘導を将軍は終えた模様! 今現在は予定通りです!」

「よし! じゃー次はそこに面する東側第二門の方に騎兵を回して住民を外へ誘導させて!」

 

 趙遷の必死な追撃のそんな場面から数分後、それは街全体を見下ろせる秦側本陣とそこに建てられた櫓より河了貂達は見守っており、城外の部隊に素早く指示を出してその動きをサポートしていた。

 

「それで坑道の方の皆は…!?」

 

 その最中にも河了貂は城内で動き続ける白漂達と並んで今回の最終作戦の鍵を握るそれを気に掛けるが、そこで全身を土塗れにした袁羽が本陣に駆け込んできた。

 

「おい! 娘軍師さんよ! もう予定より早いがあの合図の鏑矢を出してくれ!」

「!?」

「途中から地層が今までと違って柔らかい層に当たって坑道が全部予定よりも早く崩壊しだしやが…!?」

 

 だが、その袁羽が駆け込んできた理由を叫んでいたその途中、彼らがいる地面の下から何処か水の音に近い地響きが生じてきて、それは自由都市に向けて近づいていくと同時に音と揺れは大きくなっていく。

 

「これは…まずい! 鏑矢を漂達に向けて放って!」

「!!」

 

 その正体を前もって知らされていた河了貂の指示を受け、同じ櫓の上にいた蒼源は即座に鏑矢の一本を今も城内にて走り回る姿を見せている白漂に向けて放った。

 

 

 

 

 

 ○秦国北東部 新領地 某不安定地域(現内モンゴル自治区中東部) 黒竜江流域地帯 自由都市(ユラス・アプラス) 城内某所○

 

「…!? これは例の鏑矢!? 予定よりも早いが…!?」

 

 数秒後に自身の頭上を飛んだその鏑矢を白漂達は確認すると同時に戸惑いの色を見せるが、白漂は直ぐに例の地響きが城内にまで伝わってくるのを感じて次の命令を下した。

 

「皆! 彩兎館に向けて全力で逃げるぞ!」

「わかった!」

「皆! 急いで!」

「は、はい!」

 

 周りも数秒遅れでその地響きに気付いたのもあって、白漂達は大急ぎで城内の丘の一つにあるその目的地を目指して大急ぎで建物や塀を飛び越えつつ駆け出した。

 

「!? あいつら…今度は何処を目指して…!?」

 

 その動きにどうにか馬を走らせて追いすがっていた趙遷だが、そこで彼も周りの避難民と違って城外から伝ってくる地響きに気づき、それに嫌な懐かしさを覚えた。

 

「…え!? これって…まさか!?」

 

 趙遷がその既視感を口にしたその時、彼らがいる通りを挟む建物の裏路地などから膝丈くらいの高さだが次々と猛烈な勢いの水が飛び出てきた。

 

「ってまた洪水かぁアアアァアア!?」

『『『『『ワアァアアアアアアアァアア!!??』』』』』

 

 その濁流に趙遷は濁流に飲み込まれたトラウマで落馬して飲み込まれ、人々も大火災に続けて生じてきたそれに悲鳴を上げ乍ら流されるほかなかった。

 

 

 

 

 

 ○秦国北東部 新領地 某不安定地域(現内モンゴル自治区中東部) 黒竜江流域地帯 自由都市(ユラス・アプラス) 白漂軍野営地○

 

「城内をものすごい勢いで次々と水が飲み込んでいって広範囲に広がっていった火災が急速に鎮火していってます!」

 

 その城内を濁流が襲っていく光景は秦側の陣地からも見えており、本陣にて事前に話を聞いていた者達は安堵と確信の笑みを浮かべていた。

 

「やった! 予定より早かったけど漂達も上手く丘に間に合った!」

「…し、しかしぃ…普段あれこれ不安にさせるってのに…本当にこういうぶっつけ的な状況には本当に強いですねうちらの大将は…」

「あ、ああ…まさか街を包囲して兵糧攻めにしつつもそれを完全な形にしながらそれを今後も可能とすべく技術向上のために掘ってた坑道を…、まさかあの状況で消火のために転用するとは…」

 

 それに混じる本陣参謀の一人は今も自分達に陣中に掘られた水路と、それを介して坑道を猛烈な勢いで通って都市の内部を満たして火を消していく水流に息を飲んでいた。

 今回の戦の主題は自由都市攻略だが、遠方が故に兵站こそ少々負担は掛かるが今の秦には普通にこなせる程度なのと、何より戦力差が隔絶して有利なので、白漂達は考案した新技術や戦術などの試金石としていたのだ。

 今現在、自由都市を水攻めしながら消火している水路と坑道は、元々は自由都市の水堀となっている河川の流れを変えて干上がらせ、兵糧攻めにしてその資料を取るために掘られたものだったのだ。

 戦力こそ秦側が圧倒的に有利だが、自由都市は周囲を黒竜江とその支流を天然の水堀とした状態で、更に陸軍主体の秦側と違って大河を通して海岸部やその遠方との交易で生計を立てていた縁で船舶を多数持っていたので、今回は水軍を連れられない秦側は向こうの水上補給路を断つ事が出来なかった。

 故に、白漂は例の豪爆筒も用いて坑道や水路の技術向上も兼ね乍ら、自由都市を守る河川から坑道や水路で水を抜くことによって、干上がらせるか人が渡れる状態まで浅くして船が通れないようにし、包囲網を完成させて兵糧攻めすることを当初の作戦にしたのだ。

 

「…まあ、向こうのお偉いさんが先に音を上げて実質降伏を申し込んできたからくたびれもうけになる所だったが、まさか消火用に用いるなんて…咄嗟の事態に強いなあの人…」

「まーもし降伏を申し込まなくてそのまま兵糧攻めになってもあの人のやり方を考えると…相手が飢え切った所で風上にて宴会を開いてその匂いとか会話の内容で内ゲバを煽るくらいはしそうですけどねー」

(((((…いやいや、いくらなんでもそこまではーー…とは言えないから怖い…)))))

 

 その策の変更が招いた思いもよらなかった今の状況と、策通りに進んだ場合に思い描いた場合の予想図の何方にも、白漂軍の中枢の面子は乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

 

 ○秦国北東部 新領地 某不安定地域(現内モンゴル自治区中東部) 黒竜江流域地帯 自由都市(ユラス・アプラス) 歓楽街○

 

『…う、うわぁぁ…火は消えたけど…』

『わーーーん! 町ごと家も何もかも水に沈んじゃったー!』

 

 白漂軍中枢が乾いた笑みを浮かべてからまた数分が経過した後、自由都市城内で高所に位置しているおかげで冠水せずに済んだ歓楽街に逃げ込んでいた人々は安堵と悲嘆の声を上げていた。

 

「…ふうう、作戦というのは最初から最後まで想定通りという方が少ないけど…今回もどうにか死人は少ない方で済んだかな…」

「いや、助かりはした人は多いだろうけどこれはこれでまた大変だと思うわよ」

 

 その歓楽街の一角に位置する彩兎館の屋上より、住民の避難誘導を行っていた白漂とそれを秘かに支援していた夜蘭が苦い表情で街の様子を見守っていた。

 

「…まぁ、とりあえずここへの避難誘導は表向きそちらの主導でしたという事にしたから、これで残っている住民の多くは夜蘭の意見に従いやすくなる。まあ…もうさっきの謎の火災とそれで引き起こされた内ゲバに加えて町中水浸しじゃあもう抗う気力も残ってはいないだろう。あとはーー-…ッ!!」

 

 白漂はそこで今回の得物である戟(本来の得物である十星戟は身元を特定される可能性があるので)で適当な木箱を打ち飛ばし、屋上の一角に積まれていた木箱の集まりに当ててそれを崩した。

 

「ッ!? この…疫病神がぁ! よくもこの街まで!!」

 

 崩れた木箱の中から現れたのは、水害の前に街中各所で起きた爆発と火災の影響で、元強硬派の邸宅の土牢から脱出していたエルサリアであった。

 最初から隠れ潜んでいたことに気づかれていたことに驚きつつも、エルサリアは道中で拾ったものと思わしき剣で襲い掛かろうとした。

 

「む?」

 

 だが、それに恐れの色を見せない白漂が背後より敵意はないが鋭利な視線を感じて身を横へ少しずらした次の瞬間、彼の真横を並みの槍くらいのサイズはある巨大な矢が豪速で背後方向から通り過ぎてきた。

 

「ぶへぇ!?」

 

 その大矢はエルサリアを傷つけはしなかったものの、彼女のマントと肩当てを正確に穿ちぬいて衣服を引っかけ、その推力で彼女ごと彩兎館の屋上からその身を引きずり出して、まだ続いている濁流の中へ叩き落として流させた。

 

「…さーてと、僕達も仲間達の所に戻るから。復興事業とかで良い仕事は回すんで町の生き残りたちを纏めての後のことはよろしくね」

「はいはい、むしろそういう系の仕事であなたに傍へいられたら調子狂うから早く向こうへ戻って安心させてあげて」

 

 それを見届けた白漂は夜蘭とこの場でのやり取りを一応終えると、他の面子達と共に彩兎館を後にした。

 

(……この数日の間に強硬派と穏健派の主な有力者を把握し、想定外の事態で起きた火災を逆用して町を救って被害を必要な分に留め、信を置ける者達を中心に避難誘導と並行して生き残らせ、今後の統治に邪魔な面子は自然に消す…か。基本は前世の時と変わってないけど必要な冷徹さもまた磨きをかけたみたいだね…)

 

 ちなみにその様子は、市内にある離れた別の高楼へいつの間にか潜入していた康熙にも望遠鏡無しにもかかわらず見られて詳細に把握されており、彼女の両腕からは和弓に似た長弓と先ほどエルサリアに向けて放たれたものと同じ矢が降ろされた。

 

「…これならそう遠くない内にここもおとなしくなって色々と外(・)部(・)との付き合いがし易くなりそうだね。それじゃー南のあの国にいるあの蛇(・)好(・)き(・)な(・)王(・)様(・)と、今はその傍にいる燕生まれのあのご老公に手紙を出すよ」

「は、それではどのような内容で出されるので?」

 

 康熙の手から得物が降ろされると同時に、高楼の柱の影から彼女の配下の者達が出てきて今後の行動について話しだした。

 

「…今は通れなくなった中央と南回りの代わりに、少し遠回りで海も介しますが北(・)回(・)り(・)か(・)ら(・)東(・)西(・)両(・)端(・)を(・)繋(・)ぐ(・)道(・)が現実のものになる入り口が開きました。船旅も好きなら我々満(・)州(・)の(・)民(・)が面白きそれを遠くない内に保証しますよってね♪」

「「「「「承知」」」」」

 

 その締めとなる康熙の言葉に、周囲の配下達は彼女のそれに若い身特有の熱とそれには似つかわしくない老獪さすら覚える綿密な準備と予想図がまた既にされている事を悟り、獰猛な笑みを口元に浮かべると彼女と共に高楼から瞬く間に姿を消すのであった。

 ちなみに、街で生き残った穏健派代表の生き残り達が秦側に実質的無条件降伏を申し込んで、白漂達に受諾されたのはそれから数時間後の夕方のことである。




今回、康熙達が口にしていた国や王様って…何処の事なのでしょうか…?(棒)
次回から自由都市編の戦後の後始末に入ります。
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