〇秦始皇9年(紀元前238年) 什虎攻防戦四日目正午 楚国北西部 什虎地方 什虎城付近 桓騎軍側陸橋 同軍占拠陸橋中間点山城〇
「おらぁ! さっさと死ねやぼけぇ!」
「臭ぇし見た目がきもいんだよテメエら!」
韓の朝廷が概ね盛り上がっていた頃、その議題の地である什虎では同国で蛇蝎のごとく嫌われる桓騎軍も好調な士気のまま猩軍を押しているように見えた。
「…ねえ、雷土さぁん…俺らさぁ…あの白漂軍が一緒に参戦…しかも隣り合って戦うって状況に…実はすっげえ期待してたんすよねぇ…」
「…お前もその話かよ巴印…」
その桓騎軍で右翼に位置し、右隣で戦う白漂軍に比較的近い雷土軍*1で、同軍主将の雷土は少しうんざりした感じの表情を浮かべていた。
「いや! だって雷土さん! あの白漂軍ってあの“女兵”が秦で一番多いって評判のとこっすよ! それも美人ぞろいばかりって話で! 噂半分って昔からよく言いますけどいやマジでいい意味でそれ大当たりでしたよ!」
「そうそう! 想像していたのよりも倍以上良かったよなぁ!?」
「髪や瞳の色がマジで人間かよってのが多いけどそれが幻想的っつーか!」
「北部は中華の外とも広く長く繋がってるからそこが地元の白漂の若旦那の閨って後宮よろしくのウハウハの楽園って話だったでしょ!」
それと戦場の熱気に構わず、雷土の周囲の側近や兵達は妄想談議に熱を帯びさせており、彼らの脳内には共通して過激な衣装に身を包み艶やかに微笑んで手招きしてくるナクタやステラのような美女の群れの姿があった。
「だから今回の隊の交換ではそういう子が絶対に来ると思ってたのに―――!?」
「ぬアーーーッはッはっは! こんなでかいだけの図体では私には傷一つ付けられんぞおおおお!!」
そうした妄想に駆られている桓騎兵の一人が疑問と憤りに駆られた叫びを上げた瞬間、それを遮るように前線で好調に十文字槍を振るう杏譚の叫びが割り込んできた。
「―――ぃ…って…何なんすかあの濃い顔のおっさん?」
「何って白漂…の若旦那の女の一人の杏橋って総白髪の不愛想なねーちゃんの弟で、那貴との交換で一旦こっちに五百人くらい率いてきた杏譚って奴だろーが」
「「「「「何であんだけ腕利きの別嬪が大勢いるのにあんなおっさんが!?」」」」」
「…いや、うちみたいなところに普通は女を回したりはしねえだろ…」
その杏譚に疑問符全開の周囲の反応に、雷土は別時間軸と違ってか冷静かつ呆れと自虐が混じった反応を返した。
「…お頭ぁ…他にもこっちから見ても腕と目利きが経つのは結構いたのに…何でよりによってあんなのを那貴さんと交換で指名したんですか?」
ちなみに、そうした下の疑問を違う理由で桓騎軍参謀の摩論が山砦より杏譚を見ながら浮かべていた。
「ギャハハハハ! あのガキが連れてたお引き共を一通り見た時に一番面白かったから!!」
それに桓騎は自軍のある奇妙すぎる千人将を抜擢したような不安すぎる理由を爆笑付きで返した。
「ぬははは! 誰もこの初陣した時よりいかなる激戦や強敵を相手にしても無傷で勝ち抜いてきた杏譚様を討ち取るどころか傷を入れることも出来んば!?」
その桓騎に爆笑されているなど知らず、杏譚は今も十文字槍を超高速で変幻自在に振るい続けて敵を屠っていたが、その勢いを乗せた石突で適当な木を幹から揺らして落ちてきた枝で頭を強打し少し鼻血を吹いてしまった。
「「「「「………………」」」」」
「…これは自分で間違って落とした枝によるものだから戦傷ではなーい!!」
「…ぷ…くくくくく…!!」
「「「「「………………」」」」」
それに周囲の部下たちが微妙な沈黙に陥る中で杏譚は強引な言い訳を繰り出し、望遠鏡越しにそれを見た桓騎は心底腹が痛そうに笑いを押し殺し、摩論ら本陣の参謀達は微妙な不安を覚え始めた。
「…!? 何だ…この集落は…?」
一方その頃、什虎城付近ではほとんど見当たらない住民の姿に不審を覚えた白漂の命令を受け、羌瘣達は什虎地方の地図にまだ詳細が書き記されていない地域に出向き、そこで見つけた集落の一つを目にして困惑を浮かべた。
「サッサト働ケ!」
「…う、うあああ…」
そこは猩族の荘園の一つと思われる寒村で、そこでは見たことのない作物などが猩族に酷使される農奴達の手で栽培されている光景があった。
それだけなら貧民出身者が多い白漂兵は憤りつつ、戦場という現実もあって何か利用出来ないかと下調べも始めるところだが、いくつかの違和感が彼らを少し思いとどまらせた。
「…え? 何だあの村は…? 農奴には老人や童の姿が見当たらない…?」
「それに実際の働かされている者達の多くが…何か片足を引きずるような動きを見せている…?」
兵士たちが口にしたその疑問の数々が彼らを押しとどめさせている中、羌瘣は鋭い表情を浮かべて馬を降りた。
「…何かこの地…近づくと共に嫌な気を強く感じていたが…この集落、深い闇を感じる…他にもこのような集落がないのか調べてみてくれ。私はここを調べる」
「隊長!?」
「安心しろ、先祖代々こういう下調べも含めて生業にしてきた」
そう言い残すと羌瘣は部下たちの制止が出る前に茂みに姿を消した。
「…ま、また姿を消したよあの人…」
「探しますか?」
「いや、無理だ。こうして姿を消した隊長を探し出せるのは大殿(白漂のこと)か紅武将軍、庶徐くらいだ―――!?」
それに微妙な意味で慣れた表情を浮かべ合うしかない羌瘣兵達だが、そこで彼らの合間を一瞬だが霞のような影が通り抜けた。
「―――あ、あれ? 何か馬にぶら下げてた袋が一つ減ってる…?」
「(あー危なかった。昼以降の飯の分を忘れるところだった…)…ポリポリ…」
戸惑う羌瘣兵達からこっそり持ち去ったその袋の中にある、谷物*2、すなわち後代で言うシリアル食品を嚙みながら羌瘣は寒村へ忍び込んだ。
〇秦始皇9年(紀元前238年) 什虎攻防戦四日目昼 秦国中央部 王都咸陽 大学院〇
「…はあ、美味しいですねぇ…この玉蜀黍の谷物の乳漬け…」
羌瘣が盗み食いをしながら偵察に赴き出してから数十分後、同じ谷物に属する
今現在、咸陽の学者を中心に谷物はその栄養価の高さと美味さに手早く食べられることから口にする者の数は急速に広まっていっていた。
「お、今日も相変わらず本の虫ですか司雪公主様」
「ええ、お久しぶりです先生」
「ああ、今日もそれを口にしながら勉強ですか。わからなくはないですが少し姫としては問題がありますなぁ」
「ベ、別に私だけでやってるわけではありませんので…」
「ははは、まあ、最近入られたあの王子様も同じくらい堕落してしまってますからなぁ」
「そ、そうでしょう。当然で…え? 王子?」
その一員となっている現状を知人に触れられて嬴司雪は少し顔を赤らめるが、そこで混じるその単語に反応した。
「? ああ、かの御仁が入られた時期に貴女様は王宮にいたので知りませんでしたな。この前に西域の大国パルティアと国交が我が国との間に位置する西方山界の仲介で国交が結ばれまして、そこから人質として王子の一人が来られまして今は王宮とここを行き来する生活を送られているのですよ」
「そのような方が…一度会ってみたいですね。出来ればその方の国にもこの身で…」
「ははは、そんな自分の身を軽々しく動かされては…」
「…ん? あれは…?」
そこから学者と嬴司雪がまだ見ぬものに対して好奇心を強め合っていくと、その二人を秦国の主要人種とは明らかに異なる金髪と翡翠色の瞳をした少年が上階の渡り廊下が見下ろし始めた。
〇秦始皇9年(紀元前238年) 什虎攻防戦四日目夜 楚国北西部 什虎地方 什虎付近 白漂軍側陸橋 同軍占拠陸橋中間点山城〇
「…そうか、やっぱり…什虎地方の住民の大半…農奴層の調略は今の合戦中には無理そうか…」
咸陽で新たな出会いの芽が芽吹きそうになってから数時間後、白漂は日中での激戦を終えて各所からの報告を受ける夜に入っていた。
「…はい、もう完全に怯え切っている…と言うよりも今の状態が続いて普通になっている感じです。何世代何十年と今の状態が保たれて…その中で生まれ育った世代も多くなって当たり前という感じですね」
机に面して各所からの報告書に目を通しつつ、白漂は帰還してきたマイの報告も聞き受けて思考を深めていく。
(…スパルタ教育での起源で知られるスパルタだけど…、まさかその言葉顔負けの非支配者層には地獄な体制がこの中華で局地的ながらあったなんて…、前から軍事研究に伴う報告などで聞いていたけど…)
まず、白漂が酷似していると思い浮かべたのがスパルタだが、同都市国家は古代ギリシアに存在した主要都市国家の一つで、少数派で後からやってきて征服者の地位に付いたドーリア人が、多数派の先住民の大半を奴隷化させて従えさせているという貴族政民主主義(?)国家であった。
スパルタ人の支配層達は絶対多数派を占める先住民農奴層の反乱を恐れ、力と恐怖で徹底的に押さえつけるという体制を取っていたが、その内の参政権は得られる支配層の内情もまたこの時代の観点からしても異常であった。
まず生まれた時点で虚弱と判断された子供は捨てられ、それから幼少の内から過酷な環境で徹底的に鍛え上げられ、成人しても軍事で満足な成果を果たさなければまともに生きていけない体制を支配層内部は作り上げたのである。
それに対し、大半を占める農奴達は参政権など与えられず、重税を収めながら支配者達が軍務を果たすための作業に従事し、反乱を起こされないように軍事訓練の一環で見習いが殺しに来て見せしめを出すことも行っていた。
(…マイ達が接触した村人達も初めは、助けを求めるようなそぶりを見せて自分たちの主人の猩兵に突き出すような真似をしたから、返り討ちにして帰った後で様子を見に戻ったら、失敗した村の何名かが凄惨な拷問に公開で掛けられていたと…。絶望と陰鬱に支配され切っているのは確かだが、一方で派手に火が付けば一気に不満爆発という火が燃え広がるだろうという状態なのを知っているから、定期的に行っている見せしめの延長だろうか…。何というか、スパルタだけでなく…僕がいた前世の国に滅ぼされたブリタニア連合国が末期でアフリカ系奴隷に対し行っていた政策に似ている面がある。あの猩族が話す英語の訛りも連中が使っていたのと同じかそれが起源にしているものだと考えた方が自然だ…。だとしたら、今現在酷使されている農奴達に火をつけるには…)
そうした情報を頭の中で巡らせ続けて思考が深まると共に瞳に暗みが強まっていく白漂だが、良い悪いかは別としてその思索は結論へ至る前に今宵も来た夜の通常業務の一つに妨げられることになる。
「……あ、愚息が…」
「…すみません、紅華様が今宵のあなたは澱んだ考えを進めそうな顔をしていたっておっしゃられていたので、普段の調子に引き戻してとお願いされたので、ちょっと薬湯や夜食にいくつかお加えしまして…」
戦場故に甲冑を着ている状態のままでも装甲の一部を大きく押し上げてくる男根に、マイは申し訳なさそうな表情をしつつも頬を薄朱色に染め、身に纏う甲冑のパーツの幾つかを取り外していく。
「…とりあえずその頭に血が回りすぎている状態だといけませんので、とりあえずこの身を使って下の方にも程よく血を回した方がよろしいかと…あむ❤️」
そう述べながら近づくマイは胸部の装甲を外してシャツをずらしてその豊満な胸を露わにし、下の方は装甲付ボトムを下ろして、既に内側から漏れ出ている淫蜜で濡れた赤いハイレグショーツのクロッチを見せながら白漂の唇に自身のそれを被せた。
「……ンン…ちゅ…あむ❤️ アア…戦場で子種に回す分がいつもより減ってるけど…その分かいつもより張ってて…あぁ❣❓」
数分後、チャックの部分よりグンと伸ばされてきた男根をマイはその鎧から解放された豊満で美麗にまとまっている双乳で包み込んで捏ね回すように動かし、そのマシュマロの如き胸と一体にされつつあるような快楽を味わいつつ、その乳房に自身も手を這わせて彼女の胸に生じている熱の躍動を高めて互いの肉の悦びを上げさせていく。
「……ん、このままいけば自然に任せたままならもう少しで出るな…。
「…いや❤️ 普段ならそれもいいけどぉ…今はぁ一人に付き一発だけだからぁ…その分のはこっちにして…ね❤️」
互いの性の証から混ざり合っていくような感覚に二人はそのまま極みに上がりたくなっていくが、マイもとい舞は自身の子宮から送り込まれてくる飢えに似た欲求に押されて、白漂を寝台に押し倒してその赤く濡れたクロッチをずらして露わにした淫裂を、自身の双乳で雄々しく血を集めさせられた男根へ近づけていく。
「…あ❣ あ❣ あ…アアアァアアアアァ❣❓」
十数分後、舞は白漂の腰の上で肌が打ち合って装甲が擦れ合う音を奏でながら、互いの足の付け根から濁流同士が真正面からぶつかり合って混ざり合っているような激しくも深い肉の悦びに興じるようになっていた。
くノ一特有の身軽な動きを可能とする細く見えるが高密度に濃縮された筋骨はこの騎乗位でも発揮されており、ロデオマシンに乗った女体のようにブルンブルンと動きながらも、自身で揺れるネジに被されて上下左右に激しく動きながらも決して離れることはない締め付けの強さと動きの器用さを維持してみせていた。
一方の白漂も鎧のほとんどは付けている状態で腰を動かし、舞のブルンブルンと上下左右に激しく揺れている胸を掴んで器用に捏ね回して上体からも溶けていきそうな快楽を与えつつ、それが鎧とぶつかって痛みを覚えないようにする気遣いと器用さを見せていた。
「…ッ…そろそろ君への分が…!」
「フアアアアアァアアアァアア❣ き、来て下さぁアアアイ❣ 今宵こそどうかアアアァ❣ あなたの種をぉぉぉぉ私の子宮に植え付けて―――❣❓」
そうして互いの激しい躍動と細やかな性の技で高まり合う肉の悦びで二人が最初の頂に登ろうとしたその時、短くもだがパァンと雷鳴が鳴り響いたかのような音が響いた。
「…ッ!?」
「―――えッくアアアアアアアアアアァアア❣❓」
それに白漂が天上に精気を下半身から吸い上げられていくような心地を覚えながらも冷静さを保たれている部分で上体を起こしたが、舞はその音に気付きつつも自身に向けられたものではないこと、何より自身の子宮内を直撃し撃ちぬいて脳髄から意識を撃ち剝がして高みへ押し上げたかのような快楽でそれどころではなかった。
「な、何だぁ!?」
「何か険水関みたいに太行で時々鳴ってたのに近い轟音が…!?」
「…ん? 何だぁあの雷が短くなったような音は?」
「ああ、多分、“凶弾一家”辺りだろ」
「夜だからあそこの頭の
「ああ、昔は
その音を受けて白漂軍と桓騎軍の双方で何割かが驚いて騒ぎ始めているが、前者がその過去の良くない記憶で警戒の色を見せているのに対し、桓騎軍は驚いているのは新人ばかりで多くは慣れ親しんだ感じのある表情を多く浮かべていた。
「……‥………」
ただ一人、桓騎は両軍の陣容と、何より先ほどの轟音を受けて少なからず騒めき出している猩族の陣営に不敵な笑みを浮かべていた。
次回より、あのお頭達を中心に戦況が色々と動き始めます。