〇秦始皇9年(紀元前238年) 什虎攻防戦八日目昼 楚国北西部 什虎地方 銃虎城〇
「…まだ東側の火災が続いているぞ」
「他にも西側の資料が…」
「猩族の字は暗号みたいだな」
「あ、ありがとうございます! 秦や韓の皆様のおかげで奴隷から解放されましたぁ!」
「D-don't kill me!」
城での攻城戦と簡明原野での野戦のどちらも秦韓連合軍による大勝で終わって数時間後、その要の地である什虎城では占領した秦や韓の兵士による消火や整理、此度の結果で解放された先住民系の奴隷達の喜び、破れた側である猩族側の命乞いが立ち上っていた。
「…こちらも勝利で終わったようですが、今までの恨み辛みが爆発したという痕が丸出しですね…」
簡明原野での戦いを終えて什虎城に戻ってきた白漂軍の渕が、市街戦の惨状が色濃く残るその城内に苦い表情を浮かべていた。
集められている死体は惨たらしく殺されたものばかりで、老若男女問わず原型を留めていないものが圧倒的に多い。
「漂は何処で今は何をしてるんだ?」
「今は城内の高所にて韓側の諸将方との対談に他の皆様と共に臨んでおられるようで…」
「…………」
こうなったこの城の今後を左右する場所を信は見上げた。
「…ここが什虎の“議会場”がある区画か。景色がいいな」
「馬鹿共が猫の額みたいな土地で馬鹿をやり続けるためには都合がよかったのだろう」
その高所へ登る階段を、白漂と蒙武を含めた秦側の諸将が思い思いの表情で登っていっていた。
「おや、韓側が先に上っていたようですねぇ。ココココ」
「こっちが猩の馬鹿共を相手にしてる間に空同然の城を攻めてたんだから当然だろ」
その内の一人である騰達が先に目標の望楼に上ると、そこには長い銀髪が特徴的な長躯の女性で今回の韓側大将である冬史が立って什虎の地を眺めていた。
「………………」
彼女の周囲にはその側近である韓側の将軍達が何名かいたが、そのいずれもが体のどこかを包帯や布で隠しており、その内の一人で蒙武以上の巨躯で力士体型をした巨漢がじっと秦側を睨むように向いていた。
「あ? 何だぁその目つきはぁ?」
「
「…ふん」
「ああ? 何だその言い方はぁ!? 俺がぁ―――」
「ココココ、落ち着きなさい」
「―――ぁ…チ…!?」
それに録嗚味が食いつこうとするも騰が嗜めて一歩退こうとしたところで、今度は別の巨躯がヌッと前に出てきた。
「冬史、長年連絡出来なかった状態で急にこちらからの同盟の申し込みの仲立ちをよくぞ受けていれてくれた。
そうして前に出て感謝の意を示したのは、堅陽軍の副将をしている満羽であった。
「…あの男が柳宗の副将の満羽か…」
「も、蒙武並みかそれ以上にデカいぞ…」
「纏っている武の空気も同じくらいに濃い…」
その満羽の登場に場へ集う秦韓双方の将兵達がその存在感の大きさに自ずと圧倒されてしまう。
「ああ? おい、こっちの大将達を無視して何を前に出てやがる? というかそっちの大将の柳宗はどうした?」
「あの車椅子の身でここまで高いところに来られるわけがないでしょうが。そもそも今はここにいないあの
「だったらよぉ、あの野盗野郎は何処で今は何してやがる? たしかこっちの攻略戦でキレまくった奴隷に紛れて侵入してあちこちの偉そうな馬鹿面を酷く殺りまくったって話だろ?」
「
それに録嗚味が食いついて白漂が嗜めようとしていると、冬史が何処か訳知り顔な様子で話に割り込んできた。
「…それに、今回のでまた居候先をさっさと変えようと逃げている途中だろう
「…!?」
その冬史がすっと目を細めてそうつづけた言葉に、蒙毅は初めて桓騎を見たときにかんじたゾクッとした寒気に近い威圧感を覚えて身構えた。
「…お互い色々としたい話はあるだろうがとりあえずこちらも上に代わり礼を言おう。秦国第二将の騰だ」
「こちらは改めて韓国第三将冬史だ。こちらも色々と見せていただいたことも含めて礼を言う。さっそくそちらにいる弱点丸出しな男の紹介も含めてな」
「ああ!? この若白髪ちょっとこっちに来い!」
「いちいち反応しなくてもいいだろう」
そうして秦と韓双方の大将軍が言葉でさや当てを始めると、弄られた録嗚味が青筋を浮かべて白漂はそれにジト目を向けた。
「俺はじゃれ合いに興味はない。もう帰るぞ」
「構わん。どうせ今回の同盟とて長かろうと短かろうと利害がかみ合わなくなればすぐに打ち捨てられるのは戦国だ」
「コココ、その通り」
蒙武が興味をなくした様子で背を向けるが、冬史と騰はそれもネタにして対談を続ける。
「ああ、ですが今回の同盟で生まれた“利”は秦韓双方にとってもそう簡単には打ち捨てられないものですから
「まあ、少なくともこちらからは今回の同盟は破棄できんな」
そこへ白漂が武官以外の視点も交えてきて、冬史も個人的に不本意そうな部分はあるが同意する。
今回の同盟は秦韓双方にとって大きく利があるものだ。
まず、秦側にとっては水面下で進んでいた楚魏両国による秦本土南北分断化工作に対し、韓を楔として打ち込むことで向こう側のその戦略を実質的に破綻させられた。また中華中央部で韓の勢力が増したことで両国の注意は相応にそちらへ向けざるを得なくなり、秦側の負担は相応に減るのだ。
また、国境を接する魏趙楚三カ国の秦からの輸出に制限を掛ける陸禁に対し、韓という抜け道を得た秦は貿易で大きく有利に立てるので、今後の国内開発の充実に専念しなければいけない時期を考えると経済的に大きな利点となった。
そして、韓にとって同盟で得られる利益は秦のそれよりも大きい。
土地自体はこの時代の中華政経の中心である中原にあるとはいえ、周囲を他国に囲まれて面積が小さい韓は、土地辺りの収益や人口密度はともかく、全体としてみれば戦国七雄最弱である状況には変わらなかったのだ。
そこで今現在だと中華最大の成長の余地があってそれを開発中の秦からの軍事的圧力が無くなり、貿易で縛りが無くなれば西域などより広範囲な市場とのアクセス権を持つ秦市場と繋がれば利益は計り知れない。
更に、今回の件でこの世界でも中華南部の大動脈である長江支流域で要所に意図する青深湖に位置する要害である什虎城を抑えたことで、中華北部だけでなく南部における交通と経済のアクセス権を、高い防衛機能付きで得られた。
これは、此度の件で動揺している楚の北西部の諸侯や少数民族に対して軍事的に大きな優位を持つ。
楚は長江の一異民族国家から他の数十を超す他民族系中小国家を征服して大きくなった国家だが、秦とは異なり地方諸侯の独立色が強い地方分権型連邦制の色合いが強く、機会の平等は少ないのでそうした外様系諸侯の不満は水面下で大きく燻ぶっていた。
そこへ、小国の韓に重要拠点の什虎を奪われたというのはその支配体制に大きく不安を与え、他国、特に韓にとって大きく領土浸食出来る機会を与えたのだ。
更に、今現在秦の青深湖に近い長江及び黄河の中間地で進められている
「…そうなっている頃にはお前たちみたいなのがどれだけ攻め寄せてきても落とせん国に韓はなっているからな」
「コココ、”落とせん”からと言って“勝てない”とは限りませんよぉ? 私も貴国には
「「「「「………………」」」」」
そうした要因を踏まえた後、小馬鹿にしている風な笑みを添えた冬史に対し、騰は亡き主君を真似たお茶目な口調で返すが、周囲を守る秦韓双方の一般将兵達は真逆の軽さのない空気に黙って唾を飲むしかできなかった。
〇秦始皇9年(紀元前238年) 什虎攻防戦八日目夕刻 楚国北西部 什虎地方 什虎城付近 白漂軍本陣 大将ゲル〇
「…ふう、何とか着いてから一週間くらいで什虎は落とせたし、残りは蒙武軍及び中央から派遣されてきた文官に任せて…他の軍は明日中にそれぞれの担当方面へ戻る様にと…よし、さっさと北に帰れるぞー」
「そうですね、北に帰れば未調査地やその部族の制圧も含めて机の方に比率が偏った仕事の山ですから、そこまでの帰り道でゆっくり休めるように明日直ぐ帰り道に付けるための準備をチャチャっと済ませてください」
「…それ休みとは言わなくない?」
什虎城内での韓側主将らとの対談を終えて数時間後、張り直された自軍の本陣で白漂は短いが密度の濃かった什虎攻略戦から解放されたと安堵の息を吐いていたが、その傍らで後始末の一環である机仕事をしている紅華に残酷な突っ込みを浴びせられた。
「ああ、それと帰り道の途中で堅陽によらなくてはいかないようです。あなたの発案で始まって、同地の皆さんや韓から来た
「それさ帰り道も結局休めないよね!?」
「それ以外はただの帰り道なので今はご安心ください。
「君さわかってて不吉な旗を立ててるでしょ!」
結局、その紅華に明日直ぐに北への帰還に出られるようにするためとして、膨大な机仕事を無情な突っ込みを添えて押し付けられる白漂であった。
〇秦始皇9年(紀元前238年) 什虎攻防戦八日目深夜 楚国北西部 什虎地方 什虎城付近 白漂軍本陣 大将ゲル〇
「…はああ、やっと終わったぁ…ここ数日は時期的にまだましだけど蒸し暑い南方にいるのに、夜中もほとんど秘かな移動やら布陣やらで食事と寝る以外ほとんど休めなかったから…風呂入って寝よう…」
最愛の存在であるはずの妻に不吉極まる通達を出されてから数時間後、やっと本日の分の机仕事を終わらせた白漂は自分のゲルをこっそり出て、護衛の目も眩まして入れなかった風呂に入るべく忍び足で進み始めた。
「…ふう、ようやく落ち着いて久々の風呂に入れたわぁ。ここは湿気も多くて蒸し暑いし…今でもまだましな時季なら盛りはどうなるのかしら…?」
「あ、マルタそっちのムクロジの実を貸してー」
数分後、白漂が目的地の簡易風呂車集積地に到着すると、紅華を始め女性達が底を利用して汗を洗い落としていた。
「…ふう、もう戦が終わったからもう一つの夜戦を出来ると思ったのに…明日には帰り道に付くから駄目だって言われたし…」
「昨日と一昨日は担当だったのに夜も移動やら布陣やらで出来なかったし…」
「…あ❤️ ごめん…そんな話を聞かされたら…足の付け根が…❤️」
「おい、こっちも後で入るんだから湯を汚すな!」
そこで女兵達は激戦の疲れを癒すと共に、代わりに戦闘に刺激された性欲に押されて声や行動に艶を帯び始めてしまう。
そんな中、最初に入浴できた紅華が湯船から上がって一人だけ離れたところで、彼女に夕方で虐められていた白漂の復讐心と嗜虐心に火が付いた。
「…ふう、さっさと帰って
そして、身に付いた湯の雫を吹き落とそうとしたところで、紅華はその“あの人”の気配をキャリアウーマン的には嫌な意味で、けれども肉体的には待ち望んだ形で感じてしまう。
「へー? 旦那の身として頑張ってくれた妻にお礼しようと思ったのに馬鹿な真似呼ばわりするんだー。こんないけない妻には夫としてお仕置きしないとねー」
「―――いむぅ!?」
紅華が嫌な予感と気配を感じた直後に鼓膜を震わせたその声の主に振り返った瞬間、彼女の唇はその旦那に奪われ、まだ濡れたままの女体は抱きしめられ、布越しだが薄い寝巻に包まれているだけの雄々しい男根がその子を産んだ豊かさと戦場で生きる筋骨の引き締まりを両立させた豊かな尻タブに挟み込まれた。
「…ちゅるる…ぷは、何だ。口では迷惑そうに言ってても…本音では僕を待っててくれたんだ…♪」
「…ぷっはぁ…はあ…やっぱり来た…ここでばれたらどうなるかわからないわけがないでしょう…!?」
繋がった唇を介して舌を交わさせられて唾液を混ぜ合わされて媚薬を飲まされたかのような感覚で、紅華は身に熱を持たれた感覚に苛まれそうになりつつも、背後から襲って抱きしめてきた夫の白漂に弱々しいが睨む表情を向ける。
「うん、ばれたら皆が不公平だって襲ってくるから、君へ上げられる分は減っちゃうだろうね」
「……っ…」
その紅華に尻タブから男根を擦り付けるように動かし、理性を甘く溶かしながら白漂は彼女の雌としての本能から切り崩していく。
「…まだ仕事が残っている子もいるから…邪魔しないで上げて…あなたのこれが聞かん坊になっているなら…私が静めてあげますから…❤️」
結局、紅華はその目覚めて荒れだした愛欲に屁理屈を付けて屈してしまった。
「…ん? そう言えば…紅華さんの姿が見えないけど…?」
「いや、あの人は一番最初に入ってたからもう着替えも終わって帰ったんじゃない?」
数分後、主君の閨における上司の不在に女性達は気付き始めた。
「…ん、もう気付き始めるんて…君の義妹達なだけはあるね…」
「…あ、あなたみたいなのが主だとぉ…気の休まる時がないからでしょ…っ❣」
その彼女達の目を隠れる形で、白漂と紅華は逆駅弁スタイルで前者のゲルへの帰途の道に付いていた。
「…ん? 何かあっちの茂みを何か水音がしたような…?」
「❣❓」
今も風呂で身を洗っている最中の女性の一人が自分達のいる茂みの方角を怪訝な顔で見やると、紅華は甘い吐息が滲み出ている口を塞ぎ、けれども彼女達に対する警戒から感度が高まっていた肉体は淫裂でグニュっと今も蠢く夫の雄の象徴でビクビクと小刻みに震えていた。
如何に慣れているとはいえ、否、むしろ慣れているからこそこの雄々しすぎる快楽の棍棒に抗うことがどれだけ困難か、紅華は白漂と愛を交わす女性の中で最もその体から知らされていた。
いつ全てを諦めて漏れ出るかわからない嬌声を抑えようと紅華は歯を食いしばるが、その事で注意が薄れる下半身から立ち上る快楽は内臓や背骨まで焼き落としそうな錯覚まで抱かせるようになる。
「…あ、あなたぁ…❤️ わ、私にもぉ立場はあるからぁ…❤️ あの子達にはぁ…どうかぁ…ばらさないでぇ…っっっ~~~❣」
「…わかってるよ…。妻の対面は僕のそれでもあるから…残りはある程度じっくりと且つ深く楽しめるように…僕のゲルでね…」
普段の恐妻要素大目な賢妻ぶりからは想像できない快楽で弱々しくなった紅華の懇願に、白漂は嗜虐心と庇護欲を同時に覚えて、わざとその胎内がズンズンと突き上がるように、けれども周囲には悟られず、彼女が嬌声を上げずに済むギリギリのラインで快楽を留めるラインの歩き方をする。
「…っっッっっ~~~~~❣❓」
「…っ!!」
十数分後、何度か人にばれそうになりつつもどうにか気配を押し殺して白漂のゲルに人知れず戻れて扉を閉めた直後、紅華は唇を旦那のそれで塞がれているのもあって遠慮なく極みの震えに身を委ねてビクンビクンと大きく震え、それで大きくエビぞりとなった女体に応じて激しく曲がり蠢く胎内へ、白漂は数日だけ我慢したそれとは思えない間欠泉のような勢いで濃厚な子種を打ち上げ花火のように解き放った。
「…他の今晩は我慢させている子達に遠慮して、今日はここまでにする?」
「…まだ他に仕事が残っている子もいるからぁ…今日は私が残りも相手をするからぁ邪魔しないで上げて…❤️」
「下の口だけじゃなく上の口も上手くなっているね」
「だってぇ貴方の妻ですから…あむ❤️」
そのドプドプとした重い水音に比例して極みも落ち着いていくと、愛欲へ完全に火をつけてしまった両者は再び唇を交わし合い、身を再び揺らし合い始める。
「………………チク…ショオオ…絶対…このまま…終わるかぁああ…!」
その時、白漂軍陣地の近くに浮かぶ水草の中でも揺れる箇所があったが、その中の水面をボコボコにされた様子で描き分けて進んでいるマタグの姿があり、瞳には少年らしくない暗く澱んだ翳が浮かび上がっていた。
次回、秦への帰路と、前々から何度か伏線が張られていた(?)大きな土木事業について触れる予定です。