※この作品はR-18です。

天下の大将軍になる!! ~夜の睦言~   作:oosima

231 / 324
今回は嬴政の北への巡行とその準備、それらの裏側で起きる女性達の動きが中心になります。


230 政務の裏側と女性は不可分

 〇秦始皇9年(紀元前238年) 秦国中北部 朔方群 朔方城 内城〇

 

「…昼間が騒ぐとわかっているからこそこの朝の静けさはいつも妙に響くな…」

 

 世の動きと切っても切れないきな臭い夜の営み(?)を終えた次の日の早朝、白漂は山城化している内城の頂上である望楼から遠くまで見える大地と、その中に浮かぶ自身の城の静かな朝焼けの光景を見下ろしていた。

 

「お前達の動きで今も動き続けているこの北の大地の安らかな合間だ」

「まあね」

 

 その望楼には嬴政も同席しており、その瞳は地平線の向こうに未来を見ているような澄んだ色合いを浮かべている。

 

「さっそく明日から更に北への巡行を行うのか」

「ああ、現地のものが隠そうとしているものも含めて咸陽に多くの情報が届けられているが、それでも実際に目で見て肌で感じたものがあるのとないのでは雲泥の差がある。これから来る最低でも一年、可能なら三年かけるべき内を変える時間の間で…最も重要なのはこの北の大地だ。それはここの現場を仕切っているお前が一番理解しているだろう」

「ああ、そうだね…あ」

 

 遠くの未来を見ている眼差しを地平線から見える朝日に向けている秦王と秦国大将軍第三将だが、そこで盛大に腹の音がグギュルルと二人そろって鳴り響いた。

 

「…お前、その音からして昨晩も派手に種を撒いたな」

「いや、千人の美女軍団相手に毎晩撒いてるそっちほどじゃないから」

「ほとんどは顔も名前も覚えられん侍女や女官達だからお前ほど何十と手当たり次第につまみ食いしているわけじゃないぞ」

「そう言いながら先の靖涼の変からここの恭順を表明した部族から貢物名目で侍女が送られているのはー…」

「それはー…」

 

 そのまま二人は社内で下半身スキャンダルが明るみになった若手社員のような口げんかになるが、少しして飽きて朝食に移った。

 

「とりあえず朝食だ。今日も早いから早めに終わらせて明日の出発の準備だ。実際にもう北涼、特に海に面している沿海地方からは色々と珍味が届けられているらしい」

「え? ここが地元の僕より耳が速くない?」

「ああ、巡行で行くことになる沿海で採れる砂金を用いた食器とか、海の幸とか、他にもこちらの甜菜の砂糖のように使える甘い樹液とか、以前は内陸国だった秦には金品同然の価値を持つものばかり…」

「大王様ー! あたしは何度か沿海に行ったことがありますので此度の道案内と護衛に加わらせて下せー!!」

 

 廊下を歩く二人は朝食に混じる形で今後の予定も口にしていると、漫画なら瞳に金のマークが浮き出ているだろう様子のレヴィが朝から元気な様子の土下座で急に現れた。

 

「却下、あんたはもう妊娠してるからしばらくは後方組でしょ」

「よし、今回の無礼は朝の幻にするから早々に連れて行きなさい」

「そのどっかから持ち出した釣り道具一式と砂金取り道具一式も返せ」

「あーれー…」

 

 だが、その姿を発見した他の同僚に引きずり戻されてすぐに二人の視界から姿を消した。

 

「…お前の閨も相当に喧しい娘がいるな」

「その感じ、そっちにもああいう子がいるんだね」

 

 その光景に王と大将軍は微妙なシンパシーを共有した。

 

「…よし、今日の朝食はゲン担ぎにも色々よかったけど明日の北への出発式の準備はー…」

「予定通りです。出発式に参加する他のオトガンやオンゴット・ボウ達も問題はありませんが…」

 

 数十分後、朝食を終えた白漂は嬴政と別れてその巡行の裏での作業現場で、この地でのシャーマン達の仕切り役であるナトリと打ち合わせしていた。

 支障なく進んでいる裏での作業と比べて、ナトリは静かな水色の髪と瞳が似合うおめめな美貌に一抹の不安を覚えていた。

 

「…やっぱりこれだけ護衛を固めていてもなんか不吉が起きそう」

「…ええ、不吉というよりかは…何か好悪どちらかにもなり得る転機が訪れるという事態が起きると…星達は教えてくれますので…此度の王の護衛にはあなたがおられるというのも酷く気になります。今回の巡行で同行する北のオトガン代表には私も出ます…」

「一部貶されているけどその方が良さそうだね…」

 

 ナトリと言葉を交わし合いつつ、通行人が増え始めた朝の城内を行きかう人々の中に混じる、隠されようとはしているが確かな敵意の存在を感じ取っていた。

 

「杏譚」

「っ! はい! こちらに!」

 

 そこへ先の什虎戦に伴い、桓騎軍との隊交換に伴って那貴と入れ替わる形で向こうに行っていたが、攻略成功に伴って入れ替わりで戻ってきた義弟が呼び出された。

 

「君は今回の北の巡行の間は陛下の護衛に付け。我が身を挺してでも守るんだ」

「!? おおお! 私にそのような大役を!? わかりましたぁ! この不死身の杏譚の名に懸けて我が身だけでなく大王様も無傷でお守り通して見せますぞぉ!!」

「これはその指示書、僕の印も押してあるから昌文君に見せれば速やかにその護衛に着ける。すぐに行ってくれ。但し君は中身を見ないようにしてくれ」

「かしこまりましたぁ!」

 

 杏譚は白漂に封筒入れの指示書を受け取ると即座に動き出した。

 

「…彼で大丈夫でしょうか? 確かに何度占っても豪運ばかり出ますが…?」

「いや、その豪運が今は一番あっちに欲しいんだ。確かに口ぶりは大仰すぎるが実際に何十と戦場を渡ってきて激戦をしているのにー…だいぶ無理やりな感じはあるがー…戦傷をしたことがないというのはあるし、ああ見えて目利きはたって且つ咄嗟の機転や悪知恵もある効く。何よりあの図体でいざという時には盾にもなれるし、昌文君にも死にそうにないからあの指示書にいざってときは盾にもしていいと書いて読み終わったら彼には見せずに燃やして証拠を消せと書いてあるから」

「そんな高評価と何気にひどい思惑を同時に語られて我々はどんな反応を示せばいいんでしょう…??」

「…まあ、こういうことの準備と備えはし過ぎることはないから今夜も念入りにしていこう…。杏譚も含めて死人や凶事が出る確率を減るのに越したことはないし…」

 

 その杏譚への信頼を良くも悪くも口にしつつ、白漂は公務以外の方でも今回の北への巡行の安全強化のための会議にも思索を向けた。

 

 

 

 

 

 〇秦国中北部 朔方群 朔方城 内城 大寝所〇

 

「…夜でもあんなにも篝火を焚いて見張りもあんなに…」

「薪と油で今月は高くなりそー…」

「いや、この国で一番偉い人が泊まられているんだから当たり前でしょ」

 

 杏譚を秦王の警護に付ける決定が下された日の夜、その二人が泊まっている朔方城内城の山を利用して山城化した複合式望楼の夜でも幻想的なまでに明るくなっている姿を、この城に住まう女性達は今宵の話し合いの舞台であるその部屋の窓辺に腰かけながら眺めていた。

 

「…つまり、元趙人達のここまで来ている者達で、此度の巡行に対し怪しい動きをしているのは今のところは…」

「…ん❤️ はいぃ…今のところ暗殺や襲撃やらを目論んでいそうな人はぁ…むしろぉ…こちらにあの王様への中継ぎやぁそのためのぉぉぉ…こちらや向こうへの贈り物をぉ持ってくる方ばかりですやわぁぁぁ…❤️ 贈られてきた合法的なぁ品をぉ一緒に色々調べてもおおぁ怪しいものはアアァ…ですやからぁ種をぉ❤️」

 

 その彼女達が現在いる部屋は大寝所で、中心にある大型寝台の上で仰向けに寝転ぶ白漂の上で、腰を振りながら報告をしているのはココロであった。

 ココロは険水関一帯を纏めていた同城の城主流姞として活動していた時期もあったので、元趙人の間では人脈が広かったので今でも色々な話が聞けていたのである。

 そして、今は情報収集協力への見返りとして、険水関一帯含めた秦領側太行山脈住民の未来のためにも、秦側、特に白漂との繋がりを強固に出来る後継ぎを求めて白漂に抱かれに来ていたのだ。

 

「むしろ一番の懸念は、元から邯鄲中枢に冷遇されていた太行山脈の元趙人達よりも、王様がこれから行く北涼に住まう旧匈奴…改め匩涼系の人達ね。恭順表明の有無に関係なくどの種族も旧匈奴(ヒョンナ)解体と秦燕の北進による混乱でこっちに不満を覚えているのが多いから。特にその混乱と張本人とその主が直接来るとなるとねー…カリ♪」

 

 傍らには紅華の姿もあり、彼女は既に種を注がれた己が淫裂を弄りつつも夫への嫌みを吐きながらココロの乳房の先にある赤い蕾をカリっと強めに甘噛みした。

 

「ヒャあああああ❣❓」

「…っ!! せ…責任は重く感じております…」

 

 白漂による肉の衝車で胎内は既に甘くボロボロにされていたココロは乳房からの痺れるような不意打ちで最後の理性の抵抗が崩壊し、その事で蕩けていた肉壺は暴走したような蠕動を起こして、妻のいびりに気を取られていた白漂から子種汁を吸い上げた。

 

「…はふぅ❤️」

「…少しでも情報は、巡行中でも得られるようにしておかないと…」

「…はい、私達も尽力を惜しみませんわ貴方様…あむ❤️」

「奥方達に比べれば微力ですがそれでも良ければ…ちゅる❤️」

「ええ、義兄さんも私達を遠慮なく使ってね…はむぅ❤️」

 

 極みの最高潮が過ぎて余韻に入ったココロを寝かせて自由になった白漂の男根に、譜孝がその赤黒いキノコの如き亀頭を唇で咥え、レベッカが長いピンク色の三つ編みを揺らしながら左側の陰嚢に舌を這わせ、右側のそれをセレーナが大きく開いた唇の内側に含んで舌でコロコロと転がし始めた。

 このように白漂の閨へ出入りできる女性達は、そのスペックの高さから裏での人脈も広いので、今晩のように彼の閨はある裏の諜報組織兼影の参謀本部的な位置づけになっていた。

 

「…ああ、ありがとう。今晩もちゃんと皆に返すよ。君達が向けてくれる分と同じ愛情と共にね…ん!」

「…アア❣」

 

 その彼女達が報酬として求める種を添えて応えるべく、白漂は今宵もその一人を押し倒して可愛い悲鳴を上げさせた。

 

 

 

 

 

 〇秦国中北部 朔方群 朔方城 城外平野〇

 

「大王様ー!」

「どうかご無事でー!」

 

 ナトリとの打ち合わせや杏譚が護衛任務を下されてたり、白漂の夜の会議も行われた日の翌日、その正午になったところで嬴政は北涼の地への巡行のために既に城を出ており、その姿を拝見しようと群衆達は城外へ多く集まっていた。

 

「相変わらずすごい人気だなぁ。皆も仕事がある人がほとんどだろうに」

「国をその身を張って亡国の危機から救った見た目も中身もかっこいい王様だから当たり前でしょう」

 

 その光景に此度の護衛の実質上最高責任者である白漂は紅華の突っ込みを浴びつつも感心していた。

 

「…しかし、ここまで船で来られたが例の黒竜江の支流の一本までは車か。やはり不便だな…」

 

 夫婦漫才から数分後、朔方城を出発した秦王巡行一団の中心で嬴政は道中から見える見物客の向こうに見える宿場町やそこの通行人たちから繁盛の影を見ぬいていた。

 

「そう、ここは秦本土と北方やそこに接する西域を繋げる交通の要衝に位置していたから発展してこれたんだ。だけどーそれに伴う人口や物流の増加、更に先の匩涼恭順に伴う北部拡大でそれが激増してー今ではー…」

 

 嬴政と同じ車に同乗している白漂が車窓から面倒そうな宿場町の一角を指さした。

 

「おい! なんだよこの料金は!? 一月前よりも料金が更に上がってるじゃねえか!」

「仕方ないでしょ! 宿を借りに来るお客さんが先月よりも更に倍になってるんだから!」

「また車がぶつか…ってまたあんたかよ!」

「普段から車が多いのに今は王様が道をど真ん中から広く使ってんだから仕方ねーだろ!」

 

 二人の指や視線はバブル景気の弊害が表に出ているそれらの光景へ向けられていた。

 

「…交通の便が発展に追い付けていないようだな」

「一度に多くを運べる船と違って、牛馬では同じ量を運ぼうとすると多くのそれで何度も行き来する必要があるし…けれどそれだと現場に負担が集中しやすいというわけ」

「それだとすると、先日にあ(・)の(・)者(・)がこれから行く地を調べて出した計(・)画(・)も…」

「あ(・)れ(・)かぁ…技術はともかく…性格はさあ…」

 

 嬴政と白漂は色々な意味で思索を重ね合っていたが、ある人物に行きつくとお互いに微妙そうな表情を浮かべ合った。

 

「…話に聞いていたけど…本当に似てるわね…一部化粧なのはわかるけど…それでも双子って言われればその方が納得いくくらいに…」

「そうですねー、見た目だけでなく、中身も性格が違ってそうに見えてああいう人の嫌な部分ばっか見抜いてくる目とか…」

 

 その王と影武者の二人はどちらも同じ秦の今の国色である黒を基調として金銀宝石製の装飾で飾られた同じ冕服*1を着ており、今回の巡行で王のお傍に控える女官という形で同行出来ている扇琵と紅華はその色々な意味での酷似ぶりに小声を交わし合っていた。

 

「ん? どうした?」

「何か言ったの?」

「「…あ、いいえ…別にー…((自分への悪口に対する鋭さも何だかんだで察知力高いわねー…))」」」

「「「「「……………」」」」」

 

 但し、近いとはいえそうした小声のやり取りにも自分達が議題だと感じると、即座に嬴政と白漂はジト目で紅華と扇琵へ振り返り、その事で王と影武者の二人は昌文君を含めた周囲に血縁とは異なる深い類似性や絆を覚えさせて微妙な沈黙を保たせていた。

 

「…ここが例(・)の(・)間(・)道(・)か…」

 

 数時間後、嬴政は朔方城と北涼を繋げる主要道路から少し離れてその山間にあるさびれた道へ寄り、車から降りて周囲を眺めていた。

 

「はい、水源から遠く離れていて土も砂利や岩石が多い荒野なので、木々もまばらで荒野が黄河から黒竜江の支流の間まで続いています」

「今現在わかっている利点は、土地の高低差が急ではなくて、もしも水(・)路(・)が出来れば急な流れとはならずに上下への船の行き来がしやすいということです」

 

 その周囲には文官や高位工人、それらに紛れているので同じ衣装や面貌になって影武者モードになりつつも敬語になっている白漂の姿があった。

 

「…“繋恵渠”みたいにここでも二つの大河を繋げられるかどうか…?」

「南みたいなことをここでもやれと…?」

 

 その説明を受けて嬴政が口にしたその仮定に周囲の文官や工人達は難しい顔を浮かべ合う。

 

「土質が違いすぎるよなぁ…」

「前の運河以上に蛇行も増えるし…」

「それにまだ流民の流れ込みによる混乱と緊張も収まっていない状況で…」

「旧匈奴が解体されたことによる混乱も収まっていないし」

 

 周囲から上がるヒソヒソ声も概ね懐疑的や否定的な意見が目立って出ている。

 

「…もしも…あの四(・)天(・)工(・)が揃えば別なんだけどなぁ…今はちょうどそのお一人がここにいるしー…」

「「「「「!!!!!?????」」」」」

 

 だが、その内の一人が王と影武者のどちらかに向けられてそうぼやいた瞬間、周囲は彼にギョッとした驚きと視線を向けた。

 

「おい! 王様の前であの連中について触れるなよ馬鹿!」

「今もただでさえその一人がいるんだぞ!」

「一人だけでも超面倒なのに縁起でもないことを言うんじゃないの!」

「え…ええーーーー…」

「…おい、何だか向こうがこっちそっちのけで内輪もめに走っているが…お前、他のあ(・)の(・)四(・)人(・)と揃っていた時期に何をやったんだ…?」

「さ、さーですねー…」

 

 その全員が同じトラウマから来ていると思われる混乱を受けての王の問いに、影武者は視線をそらすことしかできなかった。

 

「…おい、あの二人…あの面貌にあの意匠」

「ああ、間違いなく秦王とあの男だ…!」

「今こそ匈奴(ヒョンナ)崩壊の時の恨みを晴らすとき…!?」

 

 それ故に、近くの山の中腹にある岩陰より盗み見ているその敵意と殺意を宿した集団は、内輪もめの光景もあって自分達の怨恨が晴れる日を確信するが、そこで彼らの一人の肩を投げ槍がぶち抜いてきた。

 

「あの僕が槍を投げ込んだ岩の裏側に賊がいるぞ。なるべく生きたままふんじばって色々聞いてきて」

「了解しましたー」

「さあ、行くぞー」

「「「「「あーーーーー!?」」」」」

 

 但し、そんな状況でも白漂の勘と眼の鋭さ、それと繋がる彼の部下たちの動きの早さは相変わらずで、岩陰に隠れていたこの場における旧匈奴(ヒョンナ)系と思わしい残党達はあっという間に御用となった。

*1:
中国作品で皇帝や王様が着るあの宝石製の簾みたいなのが付いた帽子が特徴的な服




次回も、嬴政の北での巡行の様子やその裏側での様子が中心になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。