〇秦始皇9年(紀元前238年)龍城物産展一日目昼 秦国北部 龍城(旧
白漂とその妻達による北での再開発や諜報活動及びそれで最重要人物となっているある女性への精査で思考を深くし、信達が今の地元やご近所付き合いの今後の発展も兼ねて家族計画に勤しんでから数日後、秦の現北部の中心地にあるその広場には大量の出店と人々が集まっていた。
「うわー、有名なお店がたくさん…」
「あ、重慶にもあるあの店の出店が…」
「これを一つー…」
既に始まっているその物産展には秦本土や先に恭順していた地域からの移民を中心に大勢が集まっており、出店の品を物色して買い物を始めていた。
『…うわ、良い匂い…』
『…あ、あんなに大勢集まっているけど…』
『警備兵は鉄棒しか武器は持ってないけど…』
一方、その周囲の建物や物陰より不安を滲ませた表情で物産展の様子を見ているのは、嘗ての
「…何人か来ているけど、やはりほとんどはまだ来ないな…」
「祭りに見せて毒を飲まされるとか悪い例は腐るほどあるから仕方ないけどねー…」
そうした双方の様子を、出店の影より嬴政と白漂は難しそうな顔で見ていた。
「…あの、陛下…それと白漂殿…視察は重要ですが…その、衣装はやはり変えた方が良いかと…?」
その二人に同行しつつも苦言を呈しているのは扇楲であった。
「…いや、でもさー最初から王様とか大将軍とかで行ったら向こうが遠慮して本音を見せてくれる可能性が無くなるでしょ」
「それはそうだが朔方侯…その恰好に問題が…」
白漂は理由を説明するが、今現在の彼と嬴政の格好は頭に頭巾をかぶって髪を隠しつつも鼻のあたりで結ぶという、何処かの弧状列島における泥棒の古典的イメージのような恰好であった。
「おい、漂…こんなの初見の現地民はともかくやっぱり身内が見たら普通にバレるぞ」
「大丈夫、身内なら空気を読んで見てみぬふりをするから。それにこれは意外と効果が高い―――」
「おい、そこの倭人の泥棒初心者みたいな恰好をしている堅すぎそうなのとへらへらして女のヒモになってそうな双子。悪意や害意はないのは感じとれるがそういうのがわからんのが見たら怪しんで面倒くさくなるから止めておけ」
それを指摘されて嬴政が微妙そうな顔を浮かべるが、白漂が自身ありげな様子で説明すると、それを証明するかのように二人の正体には気づいていない様子で微妙な顔を浮かべるナクタが注意してきた。
「―――っ…ほら、ばれない子にはばれないでしょ」
「微妙な所までお前には似ているな」
「? 何を話している…!?」
天然っ気もあることは肌を重ねたこともある故に白漂は苦笑いしつつもスルーし、嬴政は微妙な意味で親しいものを見る表情を浮かべるが、ナクタはそれを訝しむもすぐにキッとした表情に切り替わって大きく身を捻じった。
「し!」
「ばごぉ!?」
するとナクタが背後に向けて放った回し蹴りで、彼女の背後にいた若い青年が顔から蹴り飛ばされて鼻血を撒きながら吹っ飛び、その懐から短剣が零れ出た。
「…む? おい! あっちで武器を隠し持って侵入してきてるやつがいるぞ!」
「縛って連れていけ!」
「え? 何々?」
『あ、あいつは…』
それを見た物産展警備兵は即座にその男を縄で縛って連れて行き、周囲は騒然とするがそれ以上には高まりそうになかった。
「…売り子や客に物陰などへ潜ませて、手練れを配置しておいて正解だったな」
「こういうのはさすがだなお前は」
それに白漂と嬴政は安堵や信頼を抱いた眼差しを浮かべ、とりあえず物産展は初日においては本当の大事には至らずに終了となった。
〇秦始皇9年(紀元前238年)龍城物産展一日目夜 秦国北部 龍城(旧
「…昼間の物産展一日目の売り上げはー…どの店も予想通り好調な売り上げだな。だが…客の内容を見るとー…その比率は最低でも7割以上が秦本土から来たか既に恭順して大分経つ民族の出身のものだなー…あ❣」
照明器具が発達していないこの時代では陽が沈むと多くの職場は休み、他国よりかは技術的に進んでいる秦でも夜間作業は費用が掛かるのでそれに応じて物産展一日目が終わってから数十分後、藍蘭が夜の仕事部屋で声に艶を帯びさせつつも報告していた。
「…そうか、初日目だと行ったらだまし討ちされるかもと考えるから慎重になるから仕方ないな。昼間に出た狼藉の取り締まりは全てほぼ未然に抑え込まれたけど…それも治安面で秦側が信頼できる相手だと思い始めるきっかけになればいいけどね…」
その藍蘭に上体を机に預けさせた状態で報告させて思索を深めているのは白漂。
ちなみに、その綺麗な小麦色の露わになった巨乳を机に預けている藍蘭の下半身はスカートをめくり上げられ、露わになった黒いスモモを思わせる大きく甘美な丸い尻には、ボトムと下穿きを下ろした白漂の腰を押し付けられているからわかるように、いつも通り夜伽を行いながら夜の事務作業である。
「…そう単純にはいかないだろうな…あ❣ まだ中華と違って貨幣経済は普及していないから…物産展準備で雇った労働者には給料の半分は米や麦で支払いをしたけど…働きに来た者達はそれで当分の毎日の食をするし、市中では…労働者を裏切り者と襲撃してそれを奪おうとする動きもある。その動きを予想して事前に市中へ張られた警邏隊が多く取り締まっているが…アアァ❣」
藍蘭は胎内からゆったりとしているが甘く重い快楽の肉槌も思考を刺激するアクセントに変え、雌の悦びを受けつつも蕩けて却って視野が広くなった脳で思索を広めていく。
「…こうした動きはぁ❤️ 統一された指揮系統がなぁい中小多くの組織がぁバラバラにやっているがぁ…❤️ 用いてる道具からしてぇ大きな組織が背後にいるものと見ていいなぁ❣ 労働者に紛れてこちらの内部を調べようとする者もいるからぁ❤️ そうした連中を締め上げていけばぁその大元を辿ってぇ支援の元を立つことも出来…るアアアアアアアアァアア❣❣」
そうして柔らかくなりつつも交差を激しくさせていく性の繋ぎ目から押されるように対策への思考が高まっていった先に、藍蘭は胎内の堰を押し切られて白濁の奔流で意識が天上へ打上げられたような極みに達した。
「…そうだね。じゃあ…こんだけ影ながら抵抗する組織が多いとなると…龍城からそう遠くない場所にそれらへ武器等を支援するために保管場所とそれを管理するための人員もいるはず。それを潰して生け捕りにするときには僕も…おう?」
極みの余韻で小刻みに震える藍蘭の体内よりジュボンと重い水音を鳴らしつつ抜かれた白漂の男根だが、脳が柔らかくなった強みを生かして今後の行動を決めようとした時、敏感になっていた亀頭がまた別の慣れ親しんだ淫裂に飲み込まれる感覚を覚えた。
「…ん❤️ あーーー…それ自体は貴方様には難しくはないでしょうがぁ…❤️ んん…どうやら武器等を手引きしている方が大元というわけではないようですわぁ❤️」
藍蘭と同様に商業の伝手で耳が広い譜孝が、立位で愛する夫の男根を正確に自らの胎内へ導いてその細やかな糸の繊維で折り重なって出来たような膣で柔らかくも細やかに愛撫しつつ、愛欲で朱色を帯びつつも憂慮も浮かべた顔を近づけてきた。
「…康熙さんからの伝手で入った情報なのですが…、どうやら
「…
その譜孝の囁きを受けた時、白漂の瞳に快楽で隠しきれない冷徹な思考の翳が帯び始めた。
〇秦始皇9年(紀元前238年)龍城物産展二日目夕刻 秦国北部 龍城(旧
「…昨日より且つ予想したよりも匩涼人達の客が増えてきているね。女子供の客も…」
新たなきな臭い報せが入ってきた夜も開け、翌日に変わって日も沈み始めた頃の時間帯にて、物産展二日目の成果に白漂と嬴政は安堵の表情を浮かべていた。
「…昼に扇楲殿が汚れ役を引き受けてくれたのが良かったね。物産展に雇われた労働者を襲撃したり、品物に毒を混ぜようとした反抗勢力、そしてこっち側の暴行を起こした兵士を公開で処罰したことで、秦法の公平さを示したのも大きい」
嬴政が視線を向けた会場の端には、度を越した不祥事を起こした秦匩双方の罪人が晒し首の状態であるなど、この乱世特有の血なまぐささは残っていたがそれも新たな統治者の厳正さと公平さを示す材料となっていた。
「扇楲殿が感謝してくださっています。今までは容疑者の血縁者が証拠含めて庇い立てするので取り締まりも中々進まなかったのが、白漂様の方策と支援で嘘みたいな勢いで次々と捕まっていっていると…」
「そうか杏橋、それでー捕まえた罪人で死罪ほどにはならない者達は?」
「ご安心ください。人手が不足している地に送っています。病気などで面倒を見るのが必要な家族がいるというものはその家族も含めて送っています。そうでない者達も基本は家族単位で送っていますが…」
「無駄がないな」
そうした市中の様子を変装状態で観察しながら、主従二人は他からの後ろ暗いものも含めた報告を捌いていく。
『ねー、お兄ちゃーん』
『秦からの人ー?』
『この黄色っぽいごつごつして蒸したの美味しー』
『何て言うのー?』
そんな中、今日から物産展へ出入りするようになった龍城住民の子供が馬鈴薯の蒸し芋を手に聞いてきた。
『ああ、それはね―――』
『こ、こら! 止めなさい! お許しください! すぐに行きますので!』
『―――え…あー、どうぞご自由に…』
だが、白漂がそれを教えようとした時、その子供の母親と思わしき女性が子らを抱き上げて他所へ逃げるように早歩きしたのが示した通り、まだ警戒心の強い住民の方が多かった。
「…どうにか物産展は終わったか…」
数時間後、物産展二日目も終わったところで昌文君は、今現在の龍城にある施設の中で秦側が技術的に最も重要視しているその地に来ていた。
「…長江ほどではないけど、この北の地を極寒の中でも豊かに潤してきた大河がこの黒竜江…それの激流を抑え逸らし、恵みに変えてきたのがこれらの堤…中華のとは大分異なるけど、だからそのまま放置というわけには出来ない…」
その地を走る巨大な堤の上には、将軍としてではなく技術者として白漂も来ていた。
「お前さんも来ておったか。昼間からあれこれ動き回っておるようだから夜くらいは休まなくてもいいのか?」
「…あー、夜になったら夜の仕事もあるから今はその前の一休みで来ているのもあるからねー。ここで会う予定になってる人物が二人いるしー…会ったら会ったで疲れそうだけどー…」
「こっちの今の上司の命令もあるとはいえ呼びかけ人の身でぞんざいな言い方だな」
その二人が歩いていると、向かう先からまた新たな通行人が姿を現した。
「うわ、腹立つけど四天工で一番の頭脳を持つ万能鬼才の江殊幡」
「久しいな。あの四天工で随一の発情狂の白漂」
そうして久方ぶりに再会した昌平君軍師学校の同期のツートップは、お互い非常に微妙そうな顔を向け合った。
「おい! 北の鎮定では欠かせん身なのはどちらも同じなのだから態度くらいは仲良くせんか!」
「そんなにきつい顔しなくてもいいでしょ。お互い、技術者としてだけなら確かなのは信頼し合ってるんだからさぁ」
「まあ、これから来るもう一人も到着すれば仕事上の心配は要らん…!?」
それに昌文君が不安を隠せない表情で詰め寄ると、二人の視線は黒竜江の水上に向けられる。
「…うふふふ♪ 二人とも美しいのに素直じゃないわねぇ♪」
そして、水上より三人がいる堤の上に向けて大きな水飛沫を上げながら近づく船が現れ、その船首より愉快そうな少女の声が近づいてきた。
「…あ、この声は四天工で唯一の他国出身者…! 韓から間者として送られて来て工事中にそれが発覚するもその腕の高さと水利技師としての執念から免罪され…咸陽の北に広がっていた畑に不向きな土地を豊かな土地に変えた…!」
それに白漂が微妙そうながらも懐かしそうな顔を浮かべて経歴を口にしていると、船首からその人物が降り立って月明りでその姿を晒した。
「そう! 韓を飛び出してきた水の美少女鄭国よぉん!!」
そうして降り立ってきた別時間軸で春秋戦国を代表する水工*1の鄭国は、どこかの農業高校に通っていそうな銀髪が似合う小さな身をゴスロリ風の褙子で固めた美少女にしか見えなかった。
「…飛び出したというより半分以上は持て余して体よくこっちへ押し付けてきたの間違いじゃね?」
「君と意見が合うのは癪だが今回ばかりは同感だな」
「「「「「………………」」」」」
その鄭国と彼女に向けられる白漂と江殊幡の非常に微妙そうな表情に、昌文君及び周囲を警備する秦兵達は不安な表情を浮かべ合った。
次回、秦側と地元民などの関係が縮まる事態が起きる予定です。