※この作品はR-18です。

天下の大将軍になる!! ~夜の睦言~   作:oosima

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今回、本作主人公と原作でのもう一人の主人公が、若さ故も混じる失敗の落とし前を付けるのが中心になっています。
それらに尺が取られて、大人向けシーンは薄目です。


273 大志の為の一時の恥辱

 ○秦始皇9年(紀元前238年)南原防衛戦十八日目正午 中華中央部 韓国南部 南原平原 楚軍本陣○

 

「…それで御大のご様子は?」

「時々現状を確認してすぐに適切な判断を下されるが…それ以外は今も含めて寝ておいでだ…」

 

 秦側中枢で秦王が重大な決定を下してから三日後、楚軍の最前線では将官達が地図を囲んで重い表情を並べ合っていた。

 

「…今はご両名、特に御大の体調が回復されるのを待って今の有利な状況を維持―――」

「そのような余裕は時とともに減るのは皆も知っているだろう!」

「―――っ…」

 

 そこで出た慎重案を蹴ったのは周瑜であった。

 

「…今の我らはあの陸上において精強を誇る秦軍も敗走させる力がある。装備頼みで先の三戦で戦力を削りつぶされた今の韓軍なら一週間と持たず撃破して新鄭まで二週間と掛からず飲み込もう。だが! それも今(・)す(・)ぐ(・)動けばの話だ!!」

「「「「「………………」」」」」

「先の三戦では秦韓の兵力を削りつぶせたといえども主将は誰も討ち取れなかった以上…今も連中は残った兵の補充を進めて我らに今はしたがっている韓南部や東部への調略を進めている」

「「「「「………………」」」」」

「今回の遠征を無駄にするのを防ぐには今すぐ韓を潰すほかない!!」

 

 周瑜の描く予想図とそれへの最良の対策に周囲の多くは押し黙るしかない。

 

「…あの子が動けない状況でも? 今の彼らの動きからして向こうは知ってるわ。これまでの三戦で彼らがあんな手で仕切り直しに持ち込んだ手からしてー…」

「…! それも環西道で君が出し抜かれたのがー…!?」

「ぁアアアァアアアアアァああああああああああ!?」

 

 その中でただ一人だけ冷たい顔で反論を口にした孫雪蓮に周瑜が詰め寄ったその時、二人の間を窓から飛び込んできた男がすり抜けて壁に磔となった。

 

「のわぁ!? 何じゃあ!?」

「ああ!? すみませーん! また襲われたんで返り討ちにしたらそこまで投げ飛ばしちゃいましたー!」

 

 黄蓋がそれに驚いて潜ってきた窓の下を見やると、華やかだが侍女の格好をした康熙の姿があった。

 

「…またかぁ、おい、北からの亡命組はどうにかできんのか?」

「御大が康熙を趙の太子の世話役にさせてから、趙人が刺客とか怪しい動きしたとか言いながら始末しようとしているが…」

「さっきみたいにずっと返り討ちにされっぱなしなんだからいい加減諦めりゃいいんですけどねー…ん?」

 

 それが良くも悪くも緩衝材となってか場を占めていた重い緊張感に緩みが生じ始めたその時、どたどたと慌ただしい足取りで伝令が室内に駆け込んできた。

 

「伝令ー! 伝令ですー! 令尹*1閣下の緊急大権命令で休戦となりました! これは秦韓側とも合意済みだから絶対向こうには手を出してはなりません! もしも破ったら厳罰に処すと!!」

「「「「「…!!??」」」」」

 

 その報せがつたえた衝撃は、先ほどの人間砲丸投げなど比にならないものであった。

 

 

 

 

 

 ○秦始皇9年(紀元前238年)南原防衛戦十八日目夕刻 中華西部 秦国東北部 太行山脈西側 環晩○

 

「…韓での攻防戦が膠着状態に入ってもうこれくらい経つか…」

「殿の予想ではそろそろこちらに韓への救援命令が出ているころだが…?」

 

 今現在は趙王に対外的に酷く消極的な姿勢もあって、史実や原作の時間軸よりも早く秦領となって表向きは平穏なその城で、王翦とその幕僚達は現在の韓南原の戦局を描いた地図を眺めていた。

 

「報告! 咸陽より報告がー…!」

「やっと来たか」

「それで出陣を許された日はー…?」

「そ、それがー…」

 

 そこで伝令が駆け込んでくるが、それが伝えてきた内容は彼らの多(・)く(・)の予想にないものであった。

 

「…何だとぉ!?」

「本気か?」

「め、珍しく王翦様の読みが外れたなー…」

 

 多くは驚くかよくて無理に笑みを作っている中、王翦の瞳は韓での戦況を描いた地図とは別、秦を中心とした惣流の流れを示した地図を見やって呟く。

 

「…この時期にこの早さでこう動くとは…絵図を描いたのは白漂か」

「!?」

「今現在は南(・)方(・)に向かっている江殊幡め…江殊幡様のご学友で同期では最大の出世頭か…」

「損切りを優先したか白漂…」

「…ここまで早く動くとは…だが、白漂めわかっておるのだろうな?」

「今の状況の秦でその手を打つことがどれだけ深く国内に影響を及ぼすか…」

 

 それで幕僚達も同じ地図に視点を移して、表情に苦々しい色が強まり始める。

 

 

 

 

 

 ○秦始皇9年(紀元前238年)南原防衛戦十八日目夜 中華中央部 韓国南部 南原平原 楚軍本陣 趙人亡命部隊駐屯地○

 

「…太子様…」

「趙嘉様…」

「どうかご決断を…」

 

 視点は前線に戻って楚軍の中に小島のように存在しているその区画で、嘗ては期待と尊敬を表情に出している趙国太子派の重鎮たちが、今や主君に対して反発と疑念を隠さない顔を一様に揃えて向けていた。

 

「…何度ももうした通りだ。我々は楚の紅剡将軍にあの者に侍女として預けている間は必要な教育を施すようにと申されているだけだ。処(・)刑(・)などそのような権限は我々にはない」

「…ですがあの女の狼藉はもう黙殺できません!!」

「これまででもう三十人以上が負傷させられているのですよ!」

「それはその者達がこちらの処分命令を偽造して勝手に襲撃を掛けた結果であろうが!」

「それを抜きにしても敵からの捕虜である女を太子の傍に置き続けるなど異聞が悪いのです!」

「本国の大王派も攻撃の材料として悪用し始めているのですぞ!」

「おい! だからあまりそのような大きなことを言うな! でないと…!?」

 

 それを浴びせられている趙嘉は、何か思い出したくない記憶がよみがえった微妙な表情で彼らを何とか宥めすかそうとしていたが、そこで今では彼以上にここでは不安材料となっている存在が側近達の背後に現れる。

 

「でないとは何ですか!? 我々は趙と太子様の未来を案じて―――!?」

 

 側近達はそれで口籠ったとみて好機とばかりにまくしたてようよしたが、数秒遅れてその理由となった存在の殺気と怒気を背後から浴びせられて止まってしまう。

 

「…またそのお話ですか? 以前にもあの子…あの者を粗末ではない扱いにすべき理由は説明したはずですが? そして…これを騒ぎ立てること自体がどれだけ危険な事かも申し上げたはずですが…?」

「―――え…う…り、李牧様…」

 

 趙にいた頃の全てを深く見透かすような怜悧な威厳を宿したものではなく、陰鬱として酷薄な瞳を浮かべた無表情で立って見下ろしている李牧の姿に、文官が大半を占めている側近達は震えて口籠ってしまう。

 

「…皆様どうかお帰りになって落ち着きを。太子様…あなたも趙でのお立場もありますので…くれぐれも会話と接触を含めて彼女とは接点を持ったり、それを疑われる行為はなさらないようにお願いします…」

「…う…うむ…」

 

 その視線は平身低頭でだが趙嘉にも向けられ、趙嘉は期待と信頼を第一に向けるべきだったはずの存在に対し、恐怖と不満が強まり始めていた。

 

 

 

 

 

 ○秦始皇9年(紀元前238年)南原防衛戦二十五日目正午 中華中央部 韓国中央部 王都新鄭○

 

「「「「「………………」」」」」

 

 楚軍中での趙人の間で不可解且つ不穏な空気が強まりだしていたその日から一週間後、中華に存在する七雄の王都の中でも最も華麗な大都市として知られる新鄭は密度が高く重苦しい緊張感の中にあった。

 

「…お、おい…本当に大丈夫か?」

「いくら南蛮でもここでやらかすとは思えんが…」

「これが新鄭…咸陽以上に巨大で華やかだが…今はこれとは別な意味で心臓が…」

 

 新鄭の城壁の内外は、韓秦楚三か国の精兵の大軍が整列して並び、軍民問わず誰しもが気を張り合ってそれに皆が圧迫され合うという状況にあったからだ。

 

「…大王様、頬の内に玉を入れ膨らませてまでごまかせねばならない状況なら私が…もう細かい条件は決まっておいでです故…」

「ならん。人生最後で最大の我儘…それを終えるべき時が来た以上は我が手で後のものが負うべきではないものをあの世に連れて行くべきだからな…」

 

 その中で、韓の王宮本殿の前には豪奢な馬車が二台止まっており、それぞれ楚と秦それぞれの旗が王家の紋章も混じるそれら、何より両国の大勢の精兵に囲まれて守られている光景が広がっており、楚の方では春申君が恭しくも憂いを隠せない表情で車の中の人物に接していた。

 

「…大王様、韓側と楚側も準備が整いましたゆえにこちらへ…」

 

 もう片方の車では苦虫を噛んだ表情の昌文君が秦側の車の中の人物と接していた。

 

「…………うぅ…」

「…お、おい…我らの王の方が今にも吐きそうだぞ…」

「大丈夫なのかこれ?」

 

 王宮本殿を登る階段の前では脂汗をかいて動悸が落ち着きを失いながらも韓王の韓安が、重臣や衛兵と共にその車の中にいる要人二名を出迎えるべく懸命に立っていた。

 

「! 車の扉が開いたぞ!」

「お、おい…本当に…!」

 

 そして、二大の豪奢な車の扉が開き、その中の人物が姿を見せると人々は大きく騒めきだした。

 その中には、楚からの帰国の途中で仕事の都合によって韓に寄ったが、先の斉と倭の全面戦争突入、楚による韓大規模侵攻の煽りを受けて帰国できず、ここ新鄭に足止めを喰らっていた燕国上級大臣の一人梁渓も混じっていた。

 

(…ほ、本当にきおった! 史実に…史記や秦(・)書(・)に載ってなかったことが最近あったからこれはさすがに創作ではと…思っておったが…来た!!)

 

 その時の梁渓の脳裏に、正史や原作と呼ばれる時間軸の後世ではなかった歴史書に載っていた、ある一文が脳裏に強く浮かび上がった。

 

『秦始皇9年(紀元前238年)、秦王政は楚王と和議を結ぶべく新鄭に来訪した』

 

 梁渓が前(・)世(・)においてよく読んだ歴史書“秦書”にある通り、秦王嬴政と楚王熊完が今この場で新鄭に姿を現したのだ。

 

「…お、俺らの王様がここまで…」

「…政…」

「見え始めてきた皆の未来と繋がる道を守るために…自分が一番泥を被りに来たのか…」

 

 秦側から選出された精兵たちの中には飛信隊の主だった面子もおり、玲花は自分達の王がこれから何をやろうとしているのか概ね予想が出来て、深く消沈としていた。

 

「「「「「………………」」」」」

 

 そして、韓王宮本殿の中央に用意された高台にて、周囲が見守る中で韓安と並ぶ形で嬴政は楚王と互いに正座で対峙していた。

 周囲が重々しくも体感では果てしなく長く感じさせられる沈黙の中、嬴政はゆっくりとだが頭を下げながらこう言った。

 

「…中原の安寧はもはや楚の国が担うべきなのは明白。故に兵はこれ以上進まされず退かされよ。さすれば我にもう望みは無し…」

「「「「「…!!!!!!!!!!??????」」」」」

 

 その嬴政が確かに言った内容と見せた平身低頭(土下座)に、周囲は事前に知っていた少数派も含めて声に出せない驚愕に襲われた。

 

(…あの虎狼の国の王が…!!)

(土下座…だと!?)

「「「「「………………」」」」」

 

 六国の関係者達は秦が見せた態度に対するその一念で身を見開き、秦側は深く重々しい沈黙に包まれて視線を下げて肩を落とす。

 

「…うおお!? やったー…ぐふぅ!?」

「この場で騒ぐな馬鹿!」

「……っ!」

 

 それを数日前の捕虜交換の場で楚に戻ってこの場の衛兵の一人として混じっていた項翼が喜びのあまり飛び跳ねようとしたものの、隣に同席していた白麗のボディブローを叩きつけられて蹲ってしまうが、そのやり取りが聞こえていた嬴政は悔しさを表情に強く出して床を深く搔きむしる。

 

「…秦王よ。頭を上げられよ…王たるものがそうやすやすとー…」

 

 それに対して楚王が威圧感を交えながらも寛大に振舞いだしたその時、この場の末席にて思考が動揺と躊躇い交じりで激しく蠢いていた男がいた。

 

(…いや、待て…!? あの間は…あ(・)の(・)子(・)の(・)生(・)存(・)と(・)存(・)在(・)ばかりに気を取られて…私としたことがとんでもない見誤りをしたのではないか!?)

 

 南原での参戦中での陰鬱としてとげとげしい色はだいぶ薄れて普段に近くなったが、それ故に深刻な問題に気づいた時の表情を浮かべている李牧である。

 

「…それでは和平の内容ですが、事前に決めたとおりにー…」

(…あの秦王は野望を一度の敗北で諦めるような意志薄弱の徒ではない! それにもかかわらず…公に開かれたこの場で…土下座をしてでもやり過ごさなくてはいけないまで追い詰められていた状況にあったのだ! そして…それをすれば楚もこれ以上は要求できない状況にあることを見抜いて…! 私としたことが、七国の均衡崩壊を防ぐことばかりに気を取られている間に…均衡崩壊よりも深刻な事態を防ぐ機会を逃してしまったのではないか…!?)

 

 この時点では確証はないし現実の進んでいる歴史にもしもはないが、李牧のその考え通りにこの時点での秦がそこまで追い詰められていたのは事実である。

 その後、取りまとめられた韓秦楚和平条約の内容として、主だったものとして韓は占領されている地の内で安定している要所は楚へ正式に割譲すること、その地からの退避を希望する韓人の移住は韓自身が工面すること、秦が楚に賠償金を支払うことであり、和平条約とは名ばかりで秦側の敗北宣言なのは明白であった。

 

 

 

 

 

 ○秦始皇9年(紀元前238年)南原防衛戦二十五日目夕刻 中華中央部 韓国中央部 王都新鄭 王宮 秦側迎賓館○

 

「「「「「………………」」」」」

 

 三か国和平条約の締結とその歓迎の儀式を終えた後、秦側の面々は韓の王宮に用意されたその迎賓館に入ったが、そこの豪奢で華麗な装飾なども彼らの多くを占めるやるせない気持ちを慰めることは出来なかった。

 

「…くそぉ…!?」

 

 その中で壁が真っ先に声を怒りと共に取り戻そうとしたが、それは苛立ちを隠さない蹴り飛ばされる音で塞がれた。

 

「…だ、大王様!? 落ち着かれください!!」

 

 嬴政が顔こそいつもの能面だが秦より持ち込まれた仮設玉座を荒々しく足蹴にしだし、昌文君を慌てさせた。

 

「物に足で八つ当たりできる元気があるだけでも可愛いものであろうよ」

「成蟜!?」

「俺なんぞここまで我慢できずに車の中で鈍くなった方の足を台に杖を折ったら古傷が開いて同じ個所の骨にまたヒビが入りおったわ…」

(…ああ、毐国反乱の時…雍の方で火の手を上げた輩に負わされたという足の傷が…)

(…何だかんだ兄弟だな…)

 

 それを擁護する王弟も不敵な笑みを何とか浮かべようとしていたが若干涙目になっており、衣服の太もも部分の片割れより血の匂いが薄っすらしていて、周囲はそれを生暖かく見守った。

 

「…しかしまあ、よくあんだけ列国の眼が集まっているところで土下座なんて出来たね…大王様…」

「ああ、うちの大将がここまでの道中で先に合流して、必死に土下座を教えたからなー…」

 

 蒙恬の問いを受けて答える信の脳裏に、泥竜孤児集団時代に皆の仕事の斡旋や納税の延期懇願などから役所などで必死に頭を下げまくっていた白漂(友)の姿が蘇る。

 

「…まあ、ご本人も邯鄲で暮らしていた時期に逃げられなかった頃は同じことをして生き抜いてきたから、身に付けるのは早かったらしいけどー…あ、すみません」

 

 そのまま格好がつかない方向で話はそれそうになったりもするが、距離が距離なので聞こえていた嬴政に無言だが重いジト目を向けられていることに気付いて蒙恬はすぐ陳謝した。

 

「……ううぅ…痛い…(あの謝罪会見の場で…こっちまで土下座を求められたから…相手を少しでもビビらせて交渉を少しでも有利にしようと…あの場の正座した状態の脚力で数メートル飛び上がって回転して…そのまま身の前面から床にヒビが幾つも入る勢いでボディプレスしてジャンピング土下座ならぬフラインジャンピンググトリプルターン土下寝をかましたけど…相手が嘲笑を止めるまでビビらせたのと引き換えに今だヒリヒリする…)」

 

 数時間後、夕日も沈んで西の空に僅かな赤みが残る時間帯になった頃、薬も混ぜられた広大な湯治場に白漂は涙目で深々と浸かっていた。

 

「…若さからくる失敗とは痛みが伴うものだな。色々な意味で…」

「…あ、いたんだ」

 

 その湯治場には先客として嬴政の同じくらい深々と湯に浸かっている姿もあった。

 

「…その割には目にはいつもの猛々しい光が戻っているね…」

「…当たり前だ…。完全に諦めてこれまで皆で培ってきた働きを無駄にするなどそれこそできるか」

「まあ、蔡沢ご老公も…“戦無き世も光も道も和平も実(・)現(・)で(・)き(・)ね(・)ば(・)稚子(ややこ)の戯言と同じです”と帰り道でおっしゃられていたし…」

「賢老の重みを乗せた言葉もすごくこの場で言われるとすごく白々しいな。本来ならそれが最後の言葉になっていそうな蔡沢もまだぴんぴんしているし…」

 

 秦王と秦国大将軍第三将の主従二人は顔以外ほ(・)ぼ(・)全て湯に浸かっている状態で、言葉を交わし合ってお互いの闘志が何だかんだ蘇りつつあるのを確かめ合っていた。

 

「…だからと言ってもその何十日も生きるか死ぬかの戦場とそれを上手く纏めるための机仕事に抑え込まれていた反動でピンピン通し越してビンビンになっている愚(・)息(・)はどうにかしろ」

「いや、その夜の仕事を何十日も出来ずにいて癇癪起こす寸前な王(・)子(・)を連れられて言われてもねぇ…」

 

 そして、顔以外で唯一水面から突き出ているのは、これまでの戦に全てを投じなければいけなかった反動もあって、細かい違いはあっても揃ってギンギンとなっている主従の巨根であった。

 

「…失礼しまーす。手巾と寝間着をお持ちしましたー。この何十日もの間にお辛い夜を過ごされていたのは殿方だけではないのでご注意をー…」

(何を言いながらこんな場に平然と入れてるのこの人!? あアアァアアアアァアアアァアアアアアァ!? とととと殿方のあそこがぁぁあそこまでご立派にぃいいいい!!??)

 

 そこに今宵の湯治場の侍女を臨時で任された譜孝がニヤニヤした表情で入ってきて、その後を後輩侍女に変装させられて付いて行かされた王元姫が恩人とその主君のあられもない姿を赤面しつつも、恩人によって強制的に目覚めさせられた性的本能も交えた好奇心で顔を覆う指の隙間からガン見し続けたりもした。

*1:
楚における宰相の呼び名。現在は春申君




次回、お久しぶりの大人向けパートです。
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