○秦始皇9年(紀元前238年) 中華西部 秦国中北部 朔方郡 朔方城 内城 大寝所○
「「「「「………………」」」」」
通常なら女性達の快楽に喘ぐ嬌声と肌を打ちあう音や淫靡な滑りを帯びた水音が響くその部屋は、珍しく女性達が少し微妙そうな顔で互いを観察しあう沈黙に満たされていた。
「…えーっと、ついさっきの僕の発言から何か口を開くのもしづらいってかんじになっているけど…?」
「きゃっきゃ♪」
その契機となった白漂は彼女達の中心で、自分が
「…あ、いやー…そのさー…」
「言われて気付いたんだけど…」
「これまではめっちゃ死にそうな戦の最中やしんどい仕事の合間とかで…他のことをやれそうな暇がほぼない時にやったりしてた結果が割と多いというかー…」
「こんな今までに比べれば戦死とか戦に駆り出される心配がマジで薄まったっぽい感じになって子作りや他に余裕が持てそうだってのは…意外と初めてというかー…」
その問いで白家の女性達は側室や妾の立場問わず、戸惑いや不安を珍しく見せて言葉を交わし始めた。
この時代の名家の閨にしては白家のそれは他家が聞けば信じられないレベルの穏便であった(但し、昼職など別な意味での修羅場が多い)が、それを構成する彼女達も多くは送り出してきた一族や勢力が後ろ盾にあって今もつながりが太いのが多いので、現実味のある言葉と状況で愛する夫から平和な子作りOK宣言を出されると、今まで出す余裕が無かったという感じで隅に置かれてきた女の本能的な意味での不安が生じ始めてきたのだ。
「…あー、たしかに敗戦してしばらく外に出られなくなった国って余った力が内に向きやすいって例が沢山あるけどその影響って家庭に出ることもあるよねー…痛い!」
「そんな不吉な旗になりそうな発言は止めなさい」
そういう事情を察せるのはさすがだが何故かそれを口にしてしまう白漂の頬を(静かだが濃い圧を伴った)微笑んでいる紅華は遠慮なく抓った。
「…まー、うちの人の堅くなりそうな場を柔らかくしようとする身を張った笑いで幾分か真面目に話し合いやすい空気が少しできたから言うけどー、私ももう二人か三人は陵の弟を産むつもり。本音でも形でもいいから質問があったら言って」
「…すみませーん。あたし普通の学は無くて頭の出来もそう良いとは言えないっすけどその理由はー?」
夫に代わって正室として場の主導権を一旦握った紅華の宣告にまず挙手したのは、什虎攻略後の帰り道に開通したばかりの南の大運河繋恵渠を水軍で通って帰っていた間に、白漂の子を宿して今は腹部が相応に膨らんでいるレヴィであった。
「…雪解けしたら漂も含めて私達は北涼安定化再開のためにより北、交通の便とかの事情で龍城…とはいかずともそれに近いテングリ湖のどこかに引っ越す必要があるわ。けれど必要とはいっても、旧単于家の血筋である漂が向こうに行くといくら前回のぶち壊しの前科があっても、やはり独立しようとしてるんじゃないかっていう意見が強まるでしょ。母親としては言いたくないけど、増え続けている
「偉くなると自由に出来そうで大変だよなぁ…」
「じゃー、次に質問があるのは?」
「私達も身籠っている状態の方が良いですねー。外征はない分に国内での遠くへの外回りが増えますので」
続けて譜孝が手を上げて同じく藍蘭や杏橋、庶徐もうなずく。
譜孝は中華で秦が先頭を切る紡績業、杏橋はそれも含めた秦の工業を支える機械製造業、庶徐は秦が北部に次いで影響力を広げていて希少な物産の産地である南方に伝手がある一族の出身、藍蘭はそれらを欲しがるユーラシア内陸部や西方世界に繋がる西域それぞれに強い影響力を持つようになっていた。
来年度も続く秦国内再編事業にはそれらも含まれており、それらに深く関わっている譜孝達もその調整のために各地を回る必要が出てくる。
「…そういう時は事前に旦那様の種を宿した身にすれば下手な勘繰りは薄らぎますから。それに私達も襲ってくるような品がない方は大抵返り討ちに出来るようにしてますけど、この世の中で何が起きるかわからない以上は、たとえ襲われても旦那様の種で船をいっぱいにしておけば他所のお下衆さんがその荷を載せるなど出来ませんし」
「…発言が明け透けすぎますね…」
下世話なネタも混じる譜孝のトークに魏亶は苦笑し、そこからの話は紅華が再び引き継ぐ。
「来年は私達の旦那様には北涼に移ってあそこの再編を大きく進めてもらう必要があるわ。だけどあの姫将アシェリートの息子でその父である先々先代の大単于ラルゴールの孫だからって、北涼の生まれ育ちじゃない旦那様だけじゃ不満を持つ人が多いし、薙鍛や捷璘に康熙さんは私と一緒に北涼現地での旦那様の補佐をしてもらうわ。王京と姫昭は譜孝さんと同じくした後でそれぞれの地元との中継ぎをお願い。侍女や警備に籍を置いている子達は婚姻も結んでる私達の下で働いてもらうけど細かい配置はー…」
「あ、あのー…すみませんがちょっとよろしいですかー…?」
それから閨のメンバーのそれぞれ細かい配役を紅華が発表しようとしたところで、一人がおずおずと挙手をしてきた。
「…あ、ごめんなさい。この中では一番新参だからって忘れてたわ。あなたは勉強もかねて私達とー…」
「はい、よろしくお願いしますーー…じゃなくて!? 今現在までの話って他国から嫁いできてまだ一月も経ってない私に聞かせていいものじゃないんですけど!?」
「!?」
その一人、王元姫は陳謝を受けて始めその流れに乗りそうになるが、すぐ我に返ってその真っ当な懸念を思わず叫んで白香をびっくりさせた。
「…ちょっと元姫さー、この子みたいに小さな子はまだ寝ている時間帯なんだからそんな大声出さなくてもー。ぶっちゃけまだ今の話なんてここで話さなくてもこれからすぐ行う仕事や会議から君たちの耳ならすぐに入ってきて推測できるだろう内容だしー…。ぶっちゃけ今の話まで隠してそれを調べられるのにあれこれ法に触れる真似されて漏れでもしたら国境超えた問題になって面倒くさい」
「いや!? そんな聞くこっちが悪いな感じで言われても!?」
「いやねぇ、あなたが表向き韓から引き抜いてきたって子がさぁ…十数人くらいとそう多くないけど皆がうちの旦那様の好みの子で中身も今のところは許容できる子からして、その辺まで調べられたのを知った後だとねぇ。何より何名か私達の…特に旦那様には全員飲み友達や知り合いばかりなんだけど?」
「…そ、それはー…」
泣きはしなかったが目をパチクリとさせている白香をあやしながら白漂は面倒くさそうな子を見る顔を向け、紅華はジト目を王元姫ら正式な婚姻を結んでいる子達の背後に控えているお妾組のうち、王元姫と共に韓から移籍してきた面々へ向けるが、彼女達は非常にこの場には居づらそうな苦笑いで視線を他所に泳がせていた。
「…い、いやぁ…私…白漂様とは前から関係はありましたけど…、その時はぁせいぜい美形の位が高そうなそちらの将校としか思ってなくてぇ…」
「じょ、情報を聞き出そうとしたことはあってもいつも上手く躱されてぇ毎回他所の国の大事な秘密ばっかりで秦の方はまだぁ…」
「あーそれ、怪しかったし、こっちの技でどうにでも出来る子達なのはわかったけど、何か何も情報を持ち帰れなかったらやばいことになりそうだったし、知られた方がこっちには都合がいい他国のはしゃべってた…」
「私達も変装して客に会うことはあるけど、まさかこんな形で会う日が来るとは…」
「いや、嘘を言ってないのは見てわかりますけど間者も兼ねて入ってきてるのにそんなわかりやすくなってていいんですか? というかこんなところで幸運や奇跡を使われてもこっちも反応に困るのですけど??」
韓からの移籍組も完全に想定の範囲外という状況で視線を彷徨わせ、白漂達も微妙な顔を向けあっており、姫昭はまだ白家の閨に慣れていなかった頃の自分を見ているような微妙な顔になる。
「…あ、あーもー皆してここは一旦難しいお話は止めません? あたしみたいに妊娠している子は何かあったら困るからもうそれぞれの寝所に移りましょう。ささ、今日が都合の良い日だけを残して後はお開きで―…あ、それとこれは夜食用に用意したお茶と茶菓子です」
その空気に居づらさを覚えたマルタは飲食物を置いてそそくさと出て、彼女と同じく身籠っているのがわかる女性達全員を中心として多くは部屋から続々と出ていった。
「…ずず…とまー、先ほどの方でこっちの裏事情は暴露しちゃったから言うけど、国家に永遠の国益はあっても永遠の友人はないとは言うけど、秦は当分だけど君の国との関係は切れないので、そんな悲し涙をさせるようなことをする気はしばらく無いので安心して…
「…互いのその辺りの事情は元から把握していますし。今日の分の驚愕力は使い切ってしまったので…こちらも大丈夫です…
「言葉遣いからしてこの環境に適応し始めている辺りやっぱり素地自体は良いな」
藍蘭が評している通り、王元姫は先ほど何だかんだ驚き声を荒げていたが、今は諦めこそ混じっているものの落ち着きが戻り始めていた。
秦韓同盟強化の一環として行われた白漂と王元姫の婚姻だが、昨今の情勢を鑑みれば両国にとって利益は大きい。
韓は中原の中央に位置して交通の要所で土地は肥えているところは肥えているが、元から国土自体が狭くて更に鉱物資源が多くて工業力が高いといっても、山地も多いので守りには割と強いが成長の余地がほとんどない。
一方、秦と言えば国土自体が今では単純な広さでは楚をしのぐまでになって開発の余地は多く、ユーラシアの他の文明世界と中華を陸で繋げるルートのほとんどを抑えている状況で、開発と貿易を上手く進めれば莫大な巨利を得られる。
しかし、いくら今は他国への大規模侵攻が出来ないとは言っても過去の所業からの他国からの警戒心は強く、陸禁を課せられて輸出入はしづらくなっている。
それが韓というルートを得たことで輸出入は大きくしやすくなり、韓自体もその高い技術力や工業力で付加価値を高めた加工貿易が出来るので経済的な利益は大きい。
国防的には韓は同盟してから日が経っていない南原戦のような大規模な侵攻はともかく、その地形を生かして防御力は高く、更に同盟している間は西に回していた分も回して再構築すれば東からの侵攻は極めて困難となるし、秦としてもその韓を盾にすることで中原方面からの直接的な自国中央部への侵攻に対する防衛コストを減らせるのだ。
「…あ、これ今現在流行っている紅茶というものです。どうぞ」
「あ、これがあのー…ありがとうございます姫昭さん…ぐびぐび…あ、何か独特の香りだけどこれはこれで香り含めて美味しい…!?」
そう言った話をしながら王元姫はこの世界では中華で生まれたそれを口にするが、飲み干していくにつれてその目は丸くなって頬は赤くなっていき、やがてパタリと前のめりに倒れた。
「…あれ? 何かこの朱色…酔いが出た時のと同じー…?」
「あ、この香り…隠し味か酒が薄くも混ぜられていますね」
「何? 匂いからして相当に薄いが…ここまで酒に弱いのかこの子は…!?」
それに白漂達は困惑と少しの驚きを生じさせるが、王元姫を介抱しようとしたところで彼女の身はばね人形の如く宙返りしながらその場を離れた。
「え!? 何この動き!?」
「…ね~~~、色々と~小難しい話をしましたけど~もう夜なんだから夜のお仕事しましょうよ~♪」
「…え?」
その動きに驚く白漂の前で、王元姫は普段の凛としたものではなくて男の情欲を煽る発情した雌猫のような微笑みと声音で、自分が着ている寝巻のスカートの裾をめくり上げ、既に濡れ始めている淫裂を見せてきた。
「…あれ? 酔っているにしても…人が変わってない?」
「うーん、普段真面目な子ほど日常の重圧で内心では反発が強まって夜になると反動で大胆になるって雨雀さんが言ってたけど…」
「…そんな小難しい話はもういいでしょ~♪ もうそちらの何十人って先輩たちに種を仕込んできた愚息ちゃんも~もうギンギンになりだしてるんだから~♪ それとも~割とこういう積極的な子は~初めてなんですか~…あ❣❓」
それに白漂は戸惑いつつもベランダの手摺に胸を預けて誘惑してくれる王元姫との距離を瞬時に詰め、尻をワシっと掴むとその濡れた淫裂へ男根をジュポンと沈めた。
「あはぁ❣ この前にぃお礼で逆夜這いしたけどぉ…やっぱりこのおチンポ凄ぉ…あぁ❣❓」
まだ男性を受け入れるのは二回目なのに、まだ経験が浅い娘特有のキュウキュウとした固めな締め付けをしつつも、戦場で鏢を操る手先のようにくちょくちゅと細かく肉襞が男根を攻め上げている中、その繋ぎ目を紅華が嗜虐心を宿らせた笑みで舌を這わせてきた。
「…まだ二回目だというのにぃ積極的でぇけれど危ない子ねぇ❤️」
「うわ、さすがは我が妻」
「そうね❤️ 才気のある若い子をたしなめるには正攻法だけじゃ上手くいかないのはぁあなたとの付き合いでぇ知ってきたもの❤️ それを上手く楽しむ術もあなたと共に学んできたしねぇえ❤️ ちゅうぅううぅ❣」
「ひあああぁぁぁぁ❣❓ これがぁ…白家のぉ夜の戦場ぉ…おおおおお❣❓」
酒気による変貌と天性の美貌と器用さで始めこそリードしかけていたように見えた王元姫だが、所詮は二十歳寸前の処女卒業から日にちが経ってない夜の経験が薄い小娘なので、夜の戦場でも玄人になっている白家夫妻が少し本腰を入れると、あっという間に快楽でよがり狂わされるようになる。
「…ひあああぁアアアァアアアアアァ❣❓ だ、ダメえええええええええええええ❣❣ も…もうううぅううぅううううぅ頭の中があああ真っ白になってえぇぇ…アアぁ❣ 今度こそはダメええええええええええええええええええ❣❣❓❓」
「…ん…二回目にしては頑張ったね…僕もここへの大急ぎの帰り道の分で溜まった分の一番濃い一発目を…んん!!」
「うわ❣ 二回目で潮吹き…でしかもここまで広くまき散らすなんて…夜も有望そうな子ね…❤️」
その果てに王元姫は前回の破瓜の時以上の極みへ押し上げられた。
「…消えたい…」
翌日、快楽の果てに深い眠りについて疲労と酔いが消えて目が覚めて正気に戻った王元姫は、昨晩の痴態の記憶から真っ白になった状態で内城の中庭をフラフラと散策していた。
「…何というか、色々と懐かしいですね…あの子を見ていると…心配にもなったりもしますが…」
「大丈夫よ姫昭さん、あの子は芯からして弱い子じゃないからすぐ慣れるわ」
「いや、それが一番心配なんですけど紅華さん…!?」
それを白家の先輩女性達は生暖かい眼差しで見守っていたが、そこで地響きが彼女達に伝って来た。
「…え? な、何この震え…!?」
「ブオオオオオオオオン!!」
王元姫がその震えに戸惑って自分を覆ってきた影を見上げると、そこには巨大なマンモスがその長く逞しい鼻を振り上げている姿があった。
「あ、今年の真ん中くらいに通貢してきた部族から貢納されてきた北毛象*2ですね」
「…!? これが新鄭にも噂で届いていた…本当だ。楚からの使節団が連れて来たぞうと違って毛に覆われて…!?」
姫昭の紹介を受けて王元姫は好奇心と驚きからわらべのような笑みでそのマンモス改め北毛象に近づくが、それが彼女に悲劇をもたらしてしまう。
「ブオックシュウ!?」
「…え!?」
北毛象が盛大なくしゃみをかましてしまい、王元姫はその鼻水をまともに喰らって、異臭と粘り気が強いそれで上半身を濡らされてしまう。
「うわ!? ちょっと大丈夫!?」
「こんな雪の中で濡れたままでいると風邪をひくわよ! すぐに拭いて!」
それには白家の先輩女性達は慌てて無言となって立ち止まった王元姫を急いで介抱する。
「…大丈夫? 王元姫さん!? 風呂も急いで準備させてるから―――!」
「帰る…」
「―――あ…え!?」
「韓に帰るーーーー!!」
「「「「「えええーーーーーー!!??」」」」」
どうにか拭きなおして着替えさせられた王元姫だが、あまりにも急すぎ且つ濃すぎる環境変化に、熾烈な南原の戦いでも見せなかった涙を号泣で見せて脱兎の如き勢いでその場から逃げ出した。
結局、先に起きて机仕事に駆り出されていた白漂も呼び戻され、家族大勢で説得されて自分の立場を思い出させられた王元姫はどうにか踏みとどまった。
キャラクター設定78
王元姫
容貌/王元姫(真・三國無双)
年齢/19歳(始皇3年(紀元前244年)時点)
出身/韓国
身長/160センチ
体重/50キロ
3サイズ/B87W58H86
得物/鏢
趣味/乗馬
秦韓同盟の設立に伴う関係強化で、宰相張氏の孫の身で容貌元ネタのこの世界での同位体。
容貌元ネタと同じく聡明且つ礼節を重んじる性格で下のものや弱者にも優しいが、身内と判断すると突っ込みに容赦がない。酒には弱くて少しでも凄く酔って淫乱になる。
白漂は同盟締結に伴って、間者工作も兼ねて嫁入りが進められていて興味を示していたが、南原の戦いで助けられた時に惚れこんでそのお礼も兼ねて逆夜這いして結ばれた。
だが、そこから関係が深まって白家の内情を知るにつれ、今回みたいに素の性格が急速に表へ出るようになってきており、カルチャーショックなどもあって却って今までの嫁達にはあまりなかった新鮮なキャラ感を出してきている。
戦場では鏢を遠近両用で使いこなす子で堅実に功績を重ねてきた子。
次回、新年になってからの秦国内の再編が色々と始まる予定です。