そして、総合評価が700を越えました。ありがとうございます。
今後もお気に入り登録や感想、特に評価付与で応援を時間が出来た時にでもよろしくお願いします。
○秦始皇10年(紀元前237年) 元陽暦1年4月26日朝 中華西部 秦国中央部 王都咸陽 王宮○
白漂が薙鍛に車師郡で嬌声を上げさせた晩が明けて翌朝、咸陽は朝から各地より届く国内再編のための資料の処理に追われていた。
「ご報告ー、この前、仮に設置された車師郡から現状の報告ですー」
「車師? 先週に伝書鳩で安涼公*1が入ったという報せが来たがー…」
「えーっと確かー敦煌から更に西だがー…げ!? これ咸陽・敦煌間並み距離はあるぞ!?」
その中で文官達に悲鳴を上げさせている将軍で一位を多く占めているのは白漂であった。
「…うう、あそこまでの間はまだ空白地が多いから…また増えるぞ…」
「土地の測量や資源の調査まで加わっているというのに…」
「いや、これでも始めたばかりの頃よりは仕事の一つ一つは手間が減って楽になった方だ」
「測量器具が進歩して、人口や土地を図形で示すという手段が確立されてわかりやすくなったからなー…」
「問題は前線から送られてくる量が多すぎる!」
「文句を言うな! 前線や現場は剣戟も交わるから命懸けだぞ!」
「で、ですが昌文君ー…!?」
だが、文官からのヘイトを集める大将軍は今や一人だけではなかった。
「ご報告ー! 蜀南で瑶族*2の四部族が降伏したとー…!」
「今度は南方からか…」
「あ、あの蒙武将軍にも…こっちは寿命をあの大錘で叩き潰されて縮められている心地だ…」
「…こ、今度は対趙国境線付近部からですー。西貴方面に妨害行為をしていた部隊の根拠地を五つ平定したとー…」
「…こ、今度は東か…?」
「さ、先の二人は
文官達のストレスと疲労は色々な意味で今も重く続こうとしていた。
○中華中央部 趙国西部 狼孟○
「ご報告ですー! 西部の小さめですが城邑五つが秦に降伏しましたー!」
「それと西の“晏戒”も王翦軍…正確にはその下の“あの女”に付いたと…」
「ええい! またかぁ!」
一方、同じ頃の趙国、特に秦との前線に近い地域は別な意味でストレスが増加中であった。
「…元から対旧匈奴防衛策の一環である通商制限に難色を示すか、反対したりしていましたが…」
「何故すぐに降伏するのだ!?」
「だって趙の辺境人が秦の豊富な物産を手にするには秦領に鞍替えするのが一番手っ取り早いですからー…」
「どんなに取り締まっても闇市を通して情報も流れてきますしー…」
「だったら闇市を根絶やしにせんかぁ!」
「そんなことをしたら辺境の町村民の生活が破綻しますよー…」
「今でさえ国境近くの闇市を潰された村は生活苦で離散して流民か最悪ー…!!」
前線の司令部各所では
「…全くよぉ、何をしてんだよお偉いさんはよぉ!」
「隣村が秦に付いたことでぇあそこにあった俺が地主の土地まで持ってかれたから稼ぎが減っちまったぁ…」
「秦、というか北の連中との商いはぁ元々寒さから土地が瘦せてるこの辺りでは貴重な稼ぎだったのによぉ…」
そして、そんなほとんど有効な対策を打てないお偉いさんに対し、下の不満は
「…そんで今の対峙している秦の将軍というのは誰だ?」
「あの白起の孫はもう趙には李牧様がいないから安心って言って西域まで飛んだとかぁ…」
「完全に舐め腐ってるじゃねえか!」
「…でもよぉ、今の趙の国境をじわじわと侵している王翦って寛容って話だぞぉ?」
「…ああ、白起の孫よりは降伏しても色々と都合は悪くなさそうだしー…」
現場の兵士やその家族が多い辺境の村人などは前々からくすぶっていた不満は加速度的に増し、揺れつつあった。
「…皆の者、
「ああ、我ら“天安教”の同胞となって根っ子から変えねば意味がない」
「…え?」
「だ、誰だあんたら…?」
その歪に乗じる形で、史実と呼ばれる時間軸では数世紀後になるはずの
○秦始皇10年(紀元前237年) 元陽暦1年4月26日夜 中華西部 秦国西部 車師郡
趙の現場がそんな感じでまた荒れていた日の夜、秦趙双方の文官のストレスの原因となっているその男は、前者の管轄圏内の西のほぼ最果てにいた。
「そうか捷璘、それで恭順している集落とまだ抵抗している集落は?」
「すでに把握しています」
そのストレスの原因である白漂は、山頂は高山ゆえに雪が積もっていて、その雪解け水で中腹や麓などに森林やオアシスが点在する山岳地帯にいた。
「じゃあ、今までの蓄積を生かしつつ切り崩しから始めていこうか」
「ええ、そうですね…あぁ❤️」
白漂の今宵の秘書役として捷璘がその傍にいたが、今の二人は大将ゲルの傍にある試掘で生じた湧き水による泉に浸かりつつ交わっていた。
「…捷璘…ジーク…この点は…?」
「はい…❤️ 抵抗の素振りは見せていませんが…まだ恭順の意を見せていない集落で…んん❣」
捷璘は昔の名であるジークリンデの通称ジークで呼ばれつつ、自分の子持ちになったことで質量を増しつつも美麗な丸みも保つ乳房を置く岩場に資料や地図を広げて夫で主君でもある白漂に説明していた。
「…ん、君の銀髪は星空が線で繋がれたようだね…水面と君の背中で揺れて…それで中も獲物の急所を狙う狼の牙のように、コリコリっとした細かい肉襞の群れのように…あ、だったらこの集落の方はこんな感じにー…」
「…っアアぁ❣ あ…それならー…私の中をぉ穿ち抜くあなたの肉の大槍のようにぃぃ…んん❤️ この道から分断してぇぇ…ああ❣ その前にこの身が裂けてしまいそぉお❣」
腰まで浸かる冷水を冷却剤としての淫肉の交わりは、頭の出来は良くてメンタルも何だかんだ強い二人には思考に閃きという深みを与えるアクセントとなっており、快楽で揺れる指だが盤面の駒は正確に動かしていく。
「…よし、これで行こうか…」
「は❣ はいぃ❣ 明日に皆さんへ提出して修正を…おおおおぉぉぉぉおおお❣❓」
その快楽と思考が高まっていくという矛盾の果てに、ジークは遠吠えする白狼のようにその髪を振り乱させる仰け反りをし、それらの震えを伴う極みに女体は至った。
「…んん!!」
それで狼の牙に細かく男根を咀嚼されてその天まで達する咆哮の燃料にされていくような感覚に、白漂は避妊済みなのは承知の上でジークという強く美しい雌狼を孕ませたいという欲望を白濁として注ぎ込んだ。
○秦始皇10年(紀元前237年) 元陽暦1年4月27日朝 中華中央部 魏国西部 対韓国境線付近 某市場○
「はいこれ、マガダというここから遥か南西の国の宝石ね」
「同じ国から来た珊瑚製の装飾品です」
「これは西域のペルシアという国の硝子*3の器でしてー…」
白漂とジークもとい捷璘の睦言を交わす夜が明けて翌朝、この時代の中華政経の中心である中原は各地で商取引が盛んに行われていたが、そこにも味方からのヘイト(?)も集める秦将達の影響が出ていた。
「…おい、マガダって言えばぁ…秦を通らなくちゃいけない南蛮の国って噂だけど…?」
「何処のだろうと品に罪は無いですよ」
「そうだなー、どっちみち珊瑚は装飾品で高く売れるしー」
「ああ、それと胡椒も多めにー…」
目利きが鋭い中原人は新しく且つ輸入量が増加中のその品々の出所に注意を示すことはあるが、国ではなくて都市に帰属意識が強い中原人は商売を優先した。
「ああ、それと鉄と銅も多めに仕入れて来てますんでー…」
「おお、こんなに…助かるぜ」
「最近は南方の方で戦が多いからなー」
「最近に関係が戻った魏からも武器の注文が増えてるからー…」
現在、韓は自覚や認知の有無を問わず、秦の中原への輸出の中継拠点としての利ザヤで儲けて、魏と組んでの南方進出に注力し始めており、その影響は市井にも出ていた。
○中華南部 楚国北部 王都郢 王宮○
「…ご報告、斉からの難民流入の今月の分ですがー…」
「職種を調べて体つきから整合してそれを欲しがっているちゃんとした領主の元へ送れ。特に技術者と学者は
南方の大国として知られる楚でも昨年の大事件ラッシュの影響は受けており、特に今は新斉王の愚策で生じた大量の難民の処理に追われていた。
「魏と韓が他に攻める余地がない分はこちらが受けねばならん現状では、斉が犯した愚策も今となっては助かったな」
「まーな李園、趙は郭開の豚が燕の誘いに乗って斉救援の名目でその土地と人間をガリガリ削っていってやがる」
「それであの燕のデカブツ馬鹿から煽った時に人の船を勝手に使いおって媧燐」
「ケバ髪のくせして細かく気を配んじゃねー紅剡、代わりに元々中原諸侯系の日和見豚が多いから靡きかけた北部には
「爺さんの方はともかくオヤジの方は乗り気じゃないのが普通に見えるがな」
「じゃーあの居候二人が中原早漏の相手してる間に、テメエの商売敵になってる西域の方にも手を伸ばさねーとなー…」
その楚国の中枢も昨年の数々の大事件、特に秦の中華外重点進出政策と、それで西方からの脅威が薄れて余裕が生じた魏韓による南下の影響を強く受けているが、それで揺れている様子は今の楚の三頭政治には見受けられなかった。
○中華北東部 燕国西部 王都薊 王宮○
「…報告ー! 楚が押されている中原方面ですがあの
「おお! 真か!」
「趙は今現在、こちらの誘いに乗って斉領保護に動いているために楚には向かってはいませんがー…」
「その友好である魏韓と交戦を重ねれば重ねるほど、連中が趙に帰りづらくなるのは間違いありませんな」
中原での魏韓楚三国の不和は中華の北東の端の政策にも影響を及ぼしていた。
「…北東の粛慎方面に向かわせたオルドを呼び戻すのだ。あの者も斉領保護に向かわせる」
その橋の中心である燕の王宮でも、簾越しで顔が見えない状況ながら燕王も朝議に加わっていた。
「おお、なるほど…」
「内陸に意識が向いている秦との北の国境も画定して、東匈奴の降伏もほぼ終わって戦力は過去最大に膨れ上がっていますからな」
「くくく、楽毅大将軍の時に仕留めそこなった無念を晴らせますな」
「それと秦へ人質として出してある“丹”の条約にある定期一時帰国だが、今年は早めにさせろ」
「丹様を?」
「丹は邯鄲での人質時代から同じ状況だった秦王と馴染みの中だったと聞く。早めの内にあの者から聞けるだけ聞かねばならん。それとまた向こうに行っても情報を引き出し続けられるようにしておけ西域の情報も必要になる」
「はは!」
昨年に連続して起きた数々の大事件が残した余波は、まだ各国に中枢や辺境を大きく左右し続けていた。
○秦始皇10年(紀元前237年) 元陽暦1年4月27日昼 中華西部 秦国西部 車師郡
「…おい、そっちの木薯はまだあく抜きをしてないから、そっちの水瓶に一晩漬けたものから用いなさい」
「馬鈴薯は草の部分には毒があるから食うなよ。それと芋も芽の部分と色が変わったものは腹を壊すからー…」
「甘藷から作る酒の壺はー…」
各国の政局が中枢と辺境どちらも揺れていた頃、その注目を集める血の一つである西域は今も地道な開拓中心だが広範囲の開発が行われていた。
「あ、ちょっとそこの水路の曲がり角だけど右隣りの大岩まで移して、あの山の大きさと高さからして推定される水量からして初めの設計図通りだと持たない」
「はい、かしこまりました」
その西域開発の中心の一人に今日も白漂がいた。
「…何度も見ましたけど白漂様は水利が以上に強いですね」
「まあ、築城の時には高確率で出る湧き水へ対処しないと行けないしね。それらは井戸や水堀にしていかないと城が水で壊されるし。こう見えても築城では軍師学校で歴代断然の一位だったんだよ」
「珍しくあなたのドヤ顔を見られましたね」
捷璘は今日も護衛兼秘書役として付き従っていたが、その彼らが通る秦本土から伸びている街道は今も隊商や補給隊が何度も行き来していた。
「…まー、ここまで西へ来ても補給に困らないというのは嬉しいねー」
「あなたが同中の各要所に行く当てのない流民を当てて町や村を作れるようにし、その技術や知恵の蓄積を他の文官にも共有させて互いに有益なそれらをなるべく周囲へ伝播させられるようにしてきましたから…。道中で行きかう行商や隊商達も前より安全に多く旅が出来るようになったと」
「まあ、ここまで来られたのは、こっちが動けない間はその蓄積とそれが必要とするものを持たせて先行させて、先に地ならしをしてもらってきたのが大きいけどー…お」
過去に比べれば大幅に安全となった(秦領限定)陸上シルクロードを実感していた白漂だが、その証に複雑な既視感を覚えさせる一団もいた。
「…ねえ捷璘、彼女達はー…?」
「これまでのあなたの働きで恭順したり、流民として受け入れられた者達の“お礼”ですね。貴方の情愛を受け止める夜伽の相手…失礼、その種を無駄にせぬよう種馬の相手をしてくださる子達です」
「いや目くそ鼻くその差だけど言い直さなくていいよねそれ!?」
いつもの婚姻(?)外交(もとい枕営業)がまた首をもたげてきて白漂は顔を引きつらせる。
「私達の女としての欲をお相手くださる慈愛と屈強さには感謝しますが、貴方のお立場としてその種を無駄に消費されるのはお勧めできません。これまで通り、彼女達とその送られてきた地元への配慮を言葉や物だけでなく行動でも示されてくだされば…」
「いやねぇ、この場合は女の子も同意じゃないとその後が上手く繋がらないし…」
「ご安心ください。年頃の若い男性で秦の大将軍で旧
「…君もうちのぶっちゃけ空気に大分染まってきたね…」
「…まあ、それもありますけど…ほとんどが死ぬしかなかったところを家族もろとも救われた恩を返したい子がほとんどで程度の差はあっても貴方個人にも惚れていますから」
「…まあ、関係持ったら本当にやばそうな子は事前に影から別な仕事や土地に就職させるから…」
「それは程々にしてあげてください。こういう子は送り帰されると送り込んだ先に“どんな粗相をしたんだ!?”と怒られたり、地元は不安を覚えたり自分達を軽く見られていると不満を持たれたりするので…」
「もう色々慣れはしたけど改めて聞くとやっぱり黒い臭いがするね…」
「…けれど、身内や愛する人を失った後の夜を一人で過ごすにはまだ早いという子も多いのは事実ですよ…」
「…………」
そんな白漂を色々理詰め(?)で説得しつつ、彼の背にそっと寄り添う捷璘の顔には、女としての寂しさと愛するものを支えたいとする健気さがあった。
白漂もこれまでの多くの出会いと付き合いに別れの経験から、容易に感じ取れたのでそれ以上は言えなくなる。
「貴方に必要以上の負担は掛けないように最新の医術を用いて子を授かりやすい時期の子をあてがうようにしてもいますからご安心ください」
「…そういう技術的気遣いはこの流れでは蛇足になりやすいから気を付けなさい」
但し、最後辺りの
(…何故だろう。あの人は一族を増やして他所の有力者たちとの繋がりを強化して、それを実際に皆の役に立てている…それだけなのに、もう見れば見るほど胸がムカムカしてくる…)
一方、その白漂の第十二夫人(予定)として彼の傍で勉強中のモリガンは、そういうやりとりは何度と見て来たのに、それを重ねるたびに独占欲が強まっていっていることに戸惑いを覚えつつあった。
次回、比較的平和(?)なパートが中心になる予定です。