※この作品はR-18です。

天下の大将軍になる!! ~夜の睦言~   作:oosima

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今回はヤンキー聖女(が元ネタのこの作品世界におけるその同位体であるあの子)と主人公の本格的な出会いがありますが、交易都市である主人公の現在の地元の日常の一端が描かれています。
それらに尺が取られて、大人向けシーンは無いです。
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番外編
102.1 交易で物品と思想は不可分●


○秦始皇8年(紀元前239年) 秦国北部 朔方郡 朔方城 内城○

 

「西域から届いた香木だよー」

「さー! こっちの生糸に一つあたりに○○銭の値が付いたー! 他にいないかいー!」

(…相も変わらず活気が続いてるなー。今の秦では彼方此方で色々な人種が良く見られるようになったけど…北の地…特にここは取り分け多いなー。その理由に関わっている身としては誇らしい限りだなー)

 

 険水関攻略戦を終えて帰還し、居城で再会した姫昭を自身の書斎で喘がせた朝から数時間後、白漂は自身の膝元である朔方城で異国情緒が多く交差している市場を内城の望楼から見下ろしていた。

 

(ようし、僕も早速あの中へ遊びに…じゃなくて視察に行こう―――)

「はい貴方、脱走する前に本日最初のお仕事です」

「―――ってですよねー……」

 

 その人ごみに無性に理屈抜きで混ざりたくなってきた白漂だが、当然として最愛の妻である紅華には見抜かれて事前に潰されたのであった。

 

「…えーーーっと、何々…前々から竜騎隊所属で且つ糧食も担当してて城の厨房勤めの侍女をしていた子が…新たに同隊と城の厨房の責任者の一人になったから、改めて面接兼挨拶をするようにか…?」

 

 数十秒後、紅華と共に本日最初の仕事である部下の昇進に関わる書類を廊下を歩きながら読んでいた白漂であったが、そこで角の見えない視覚よりも聞き慣れた逃げ足の音と気配を感じ取った。

 

「モガモガモガ!!」

「待てやゴラーーーー!!」

 

 白漂達が気配を感じ取った数秒後、廊下の曲がり角より口に手羽先を咥え乍ら抱えている籠の方にも大量のおかずを入れて逃走している羌瘣と、それを中華包丁片手に美人面だろうにそれを台無しにしている鬼の表情で追う藤色の美しい髪が特徴の女性が姿を現した。

 

「また食い逃げか摘まみ食いをしたのか…ぬぉ!?」

 

 それに見慣れた呆れ顔を浮かべる白漂だが、その姿に気付いた羌瘣が手羽先の一本を投げると反射で受け取り、その真横を羌瘣は脱兎の如き勢いで駆け抜けた。

 

「な、何だったんだ―――」

「ああ!? テメエもあの食い逃げ常習女の仲間かぁ! 鉄(・)拳(・)聖(・)裁(・)ぃぃぃぃ!!」

「―――あ…ぁぐはぁあああ!!?」

 

 白漂はそれに訳が分からず呆けたままであったが、追い付いてきた藤髪の美女に誤解を掛けられてその細見に似合わぬ剛力を乗せた拳を横っ面に叩き付けられて宙を舞った。

 

「あー! マルタちゃん! 何をしてるの!? その人そんなんでもここの城主ーーーーー!!」

「……え…!?」

 

 それを見て驚いた紅華の叫びで暴行を起こした藤髪の美女マルタは目を丸くし、殴られた勢いで中庭の池に沈められた白漂が起こした水飛沫で同じく濡れた。

 これが、ある時間軸や時代ではヤンキー聖女と称された竜騎所属女兵士マルタと、その上司で“大女専”と言われることになる白漂の初の本格的な出会いであった。

 

 

 

 

 

 ○秦国北部 朔方郡 朔方城 内城 応接間○

 

「申し訳ありません申し訳ありません申し訳ありませぇええええええん! うちの娘がご無体な真似をおおぉおおおお!!?」

「ちょ…お父さ…苦し…ぐおおお!?」

 

 数分後、応接間でマルタは遅れて城に入ってきた父親に頭を掴まれて共に土下座をさせられていた。

 

「…あーもーそんな堅くならずに…それにしても妻だけじゃなく侍女の方もまた癖が強い子が来たなぁ…」

「あーサンチョさん、とりあえずその子の頭を上げて。面接を始めたいから貴方は部屋を出て。三人で色々周りには聞けない話もしなくてはいけないから」

「わ、分かりました! ど、どうか奥方様! 私ごときの首でよろしければいつでも差し出しますので娘はどうかお許しください!!」

 

 マルタの父で、ウチャーが口癖な少女型機械人形を作り上げた某ドクターの色違いのようなサンチョはその巨体で何度も土下座しながらや部屋を後にした。

 

「…あー、とりあえずマルタさん、面接といくけど…うちの人についてどう思う?」

 

 サンチョが十分に離れてから数秒後、紅華はマルタに対して率直にそう言った。

 

「…えーーっと、そうですねー…無能じゃなさそうだけど…それ以上に…“怠け癖と逃げ癖が強くてどっちも上手そうなチャラ男”って感じですか」

「うん、それは私もそう思う」

「…儒者とかが聞いたら人物によっては首を要求してきそうなこと言うよねここの女の子って…」

 

 それに対し、マルタが少々難しそうな表情をしつつも悪意も無しに素直にディする答えを返し、紅華も簡潔に同意すると、白漂は引き攣りつつも悲しみも浮かばせた笑みを浮かべた。

 

「…まー戦技と指揮能力については戦場でもその藤色の髪で目立ってたから、こうして話をして名前と顔を知る前から高いのは分かるよ。この前の侵入していた趙の調査部隊を一人で三十人くらいは屠ってたね」

(あ…見た目はチャラいけど見るべきところはちゃんと見てくれてるんだ。それと…何か表情が同じ人物かってくらいに怜悧で落ち着いた感じになって…う、よく見ればいいかも…)

 

 だが、面接なので直ぐに白漂は真面目な状態に切り替わると、色々と生存競争が厳しい流浪の民の女でありながら戦場で生きてきたマルタはその非凡さを何だかんだ感じ取り始めた。

 

「で、マルタさん戦技と体力は戦場と厨房どっちでも見てみたから大丈夫なのは分かるけど、他に特技あるかしら?」

「はい、そうですね紅華様、他には料理が…特に大人数向けのが得意でー…」

「他には?」

「童の頃から族長の子としてなわばりの締め上げをしてきた経緯で話を聞かない子を拳で言い聞かせたり物理的意味込みでの突っ込みが得意です」

「よし、採用。私達の旦那様って怠け癖や嫌なことからは脱走癖があるから見張り要員は多いのが良いわ」

「おい! 正妻!?」

(…あ、何かさっきのまた駄目そうな感じにすぐ戻った…)

 

 だが、紅華も面接に加わっていつもの調子で夫をディスリ始めると、マルタは再び微妙な感じに戻った。

 

「…じゃ、じゃー僕からもマルタの面接で一つ試験を加えます…」

「何かあなたがそう言うとまたひねた条件が付きそうね…それでこの子に何をしろと?」

「明日ー久々の休暇だからさ。マルタ、城内で君達が住んでる地域の案内とー君達の歴史の説明を僕と二人っきりで食巡りや飲みにでも行きながら頼むよ。もちろん周囲に正体は隠して」

「………はい…?」

 

 その微妙な困惑に陥っていたマルタにとって、白漂が出した自身の昇進試験の内容は首を傾げさせるには十分過ぎた。

 

 

 

 

 

 ○秦国北部 朔方郡 朔方城 内城 正門裏側○

 

「…遅いなぁ。確か藍蘭があの子の衣装を用意するって言ってたけど…」

 

 マルタの面接をした日の翌朝、変装した白漂は居城の正門の裏側にて彼女の到着を待っていた。

 

「すまないー。譜孝が作成した衣装の一種だからこの子に着替えさせるのに手間取ってねー」

「ああ、やっと来たか藍蘭。どんな格好なんだ…!?」

 

 そこで妊娠しているため城内で机仕事中心に勤務シフトしていた第二夫人藍蘭が現れるが、彼女に連れられる形で再び姿を現したマルタの格好は予想の斜め上を行っていた。

 

「…う、うーーーん…何か、胸元や…腹に…足の付け根が妙にスースーするんだけど…これって本当に流行りの衣装なんですか藍蘭様?」

 

 そう言いながら少し赤くした表情で落ち着かない様子のマルタが着ていたのは、胸元と腹部が縦に大きく開いて肌の露出が多い白のレオタードを基調とし、下は赤いスカートだが前が大きく開いていてレオタードのクロッチが丸出しで、赤のロングソックスと併せて長足も飾っているこの時代では非常に煽情的に見える衣装であった。

 要するにマルタは異なる時間軸における彼女が着ていた衣裳の第三再臨時の聖女衣裳になってしまっていたのである。

 

「おい! 藍蘭いつもの揶揄いや悪戯にしてもあの子の出身やこの時代の服装文化的にあれは人までは拙いだろ!?」

「あー、心配するな。その上から着れるあの子の出身部族の女性の民族衣装も持ってきた。あれははっきり言って閨に持ち込んだ時の為の勝負衣装だ」

「いやいやそんな人を万年発情期の類みたいに言われても!?」

「まー私達の調きょ…手入れもあるがその方が一族再興や将来にもいいだろ。さー向こうの着替えも終わったみたいだからさっさと行きたまえ発案者」

 

 結局、秘かな護衛兼監視付き乍ら白漂とマルタは面接の最終段階として二人きりで外出することになる。

 

「…ねー、確かマルタさんが着てる衣装って…確か譜孝が直々に編んだ衣装よね?」

「ああ、そうだけどそれがどうかしたのか?」

「何か彼女が直々に作る衣装って…斬新かつ妖艶なのが多いけど…それだけじゃない場合が多いんだけど…」

「まー、そうだったとしても旦那様なら結果よしに繋げてくれるだろ」

 

 その二人の耳に入らなくなった距離で紅華が思い出して呟いたその内容に、藍蘭は下を少しペロッと出した。

 

 

 

 

 

 ○秦国北部 朔方郡 朔方城 外港区○

 

「西域から届いた青玉の装身具は今現在このお値段だ! 更に値を付ける人をいないかねー!」

「その生糸は五番倉庫に運んでくれ! 敦煌行きだ!」

「二十三番倉庫の赤二番の毛織物は河西太源行きだ!」

 

 朔方城は遊牧民多数の草原地帯や技術進歩が結びついて紡績業が盛んになった秦北部で、その最大の工業都市であるが、その品目を要とした大通商都市でもあり、今もその最大の市場である黄河支流に面した外港区は大勢の活気で賑わっていた。

 ちなみに、港区は朔方城の中心とはやや距離がある地にあるものの、白漂の築城術で外港区と中心区は古代アテナイと同様に城壁と水堀で構成された長壁で連結されていた。

 

「…いつ見ても賑やかねー。今日も良い香りがするー…」

 

 その外港区をフードで身を隠したマルタが変装中の白漂と共に出歩いていた。

 

「…そこで主(アドナイ)は悪魔によって不完全な形にされたこの世界をあるべき姿に戻れるようにため、天使を使わして始祖に真言を…」

 

 国際色豊かとなっている秦の中でもとりわけ北部はその様相が強いが、その影響で外来宗教も増えており、その中にマルタの同族である伝道師がちらほら見かけられていた。

 但し、秦では無就労者は普通に処罰の対象になるので、彼らの多くは外国語教師という形で布教をしていた。

 

「(あ、今日もいた。グノーシス主義やキリスト教に仏教とかの要素で矛盾を上手く修正した感じの…前の前の世界では他民族に吸収されたけど前の世界とこの世界では広範囲に存続している北の十支族による布教活動…)最近は多いなー。ああいう宗教の勧誘…いや、洋の東西や時代を問わず人間がお悩み相談の窓口を求めるのは共通なだけか…揉め事にならないように相談して対策を討たないとなー…」

「? 本当の主の身元に戻れる人が増えるのは良いじゃありませんか? それの主の教えを聞かせるのが揉め事になるので?」

 

 多神教や祖霊崇拝が普通の中華圏での前々世よりも大幅に早い一神教系伝播の風景に、白漂は前々世と前世の記憶にある宗教対立の風景から目を細めるが、それを見たマルタに首を傾げられると話しを上手く反らすことにする。

 

「…そう言えば気になっていたけどマルタ達の東遷十支族ってどういう歴史なんだっけ? どういう経緯で秦に来たんだ?」

「あー、それなら親戚の子が働いてる塾が近くにあるのでそこの聖典を借りて説明しますねー」

 

 それから二人はマルタの同族が経営している外国語塾みたいな所に入った。

 

「…えーーっと何々…つまり…まず最初に故郷の地へ帰れた今の十支族の先祖を含めた十二支族は、当時は戦災と飢餓で人口が激減していた故郷の人的資源的な穴に収まる事が出来て、そこで移住せずに残っていたけれど教えを忘れたり間違って受け継いでいた同族や、別の地域から移住してきた他民族の間の仲裁をしたり、場合によっては征服して旗下に置いたりしていく、君主を持たない多数決主体の合議制な政体の期間で故郷の地での足元を固めていった…(あのアニメ映画で海を割ったファラオ義弟みたいな経緯もあるし、あそこに戻った後の経緯は何だか他民族を取り込んで同化させてきた寛容が基本の共和制ローマ時代みたいだな…よく新旧の違いや矛盾で取りざたされる“聖絶”と言うのはカルトみたいな相手を除けばほとんど起きてないし。まー勝ち残った方が書いた歴史書だから実態はわからんけど…)」

「そうそう♪ 何万里も離れたここまで来ても存続している点からして凄いと思うでしょ主の教えって♪ というか聖典を原文のまま読めるなんて城主様ってすごいですねー♪ 何なら言葉だけじゃなく教えの方も本格的に学びません?」

 

 そこにある東遷十支族が受け継いできた聖典の秦語訳や、原語のままのそれを読み進めていく白漂にマルタはウキウキした表情で注釈を入れながら改宗を薦めたりした(なお、白漂は西方や北方など対外交渉にも広く関与している身から、北方民族の主要語と西方で広く用いられている東遷十支族のそれも含めた商業用言語の幾つかも学んでいて、普段の行動はともかく頭の出来は一(・)応(・)非常に良い方なので普通に読み書きや会話が出来る程度に習得していた)。

 

「でもさあ、そんだけすごい教えを何千年も守ってきたのにどうしてその布教の中心として貰った故郷を離れてこんな何万里も離れた中華の地にまで来ているわけ?」

「…あ、いや…それは―――!?」

「脱柵だーーーー!」

「―――あ…え??」

 

 解説しながらさりげなく改宗を薦めてくるマルタに、白漂が窮させる問いをしてきたその時、外から悲鳴と人が何かに跳ね飛ばされていく音が響いて来た。

 

「…ん? 何だぁ…!?」

 

 白漂が塾の二階に上がって窓から見ると、そこには引き千切られた縄を首にぶら下げながら人混みに向けて爆走しているペルシュロンの如き重種馬の姿があった。

 中華圏の馬は農耕が労働の中心でがっしりしているが、馬の中では小さめで足も遅い種が多く、こうしたアラブなどユーラシア西部に多い大型の馬は珍しく、この状況もあって人々は恐慌を掻き立てられて行く。

 

「な、何だあのデカい馬はぁ!?」

「せ、西域から取り寄せた重装騎兵用の馬の一頭が火事で畜舎から脱走したって!」

「あー! 今度は伍鬼さん所の竜川がやられたぁ!!」

「西域の馬は化物かぁ!?」

「俺に任せろぉ!!」

「敦煌ダン族のサムソンが行ったぞぉ!」

「去年に秦国全国力士大会で三位入賞を果たしたサムソンなら!」

「ヴルッヒイイイイイイイイン!!」

「うぼあーーーーーーー!!??」

「サ、サムソーーーーーーーン!!」

「サムソンがやらちまったー!!」

 

 その大きさと速度に人々は逃げまどい、あるいは立ち向かって跳ね飛ばされたりしていく。

 

「やばい。ちょっと抑えないとな―――」

「待ちなさーーーい!」

「―――あ…!?」

 

 白漂は事態を沈めるべく塾の窓から飛び立とうとしたが、それよりも早くマルタが街路に飛び降りて馬に向かって駆け出した後ろ姿を見て呆けてしまう。

 

「落ち着きなさい! そんなガタイが強くて大きな子が大人げない真似をするんじゃ――――」

「ヴるウウゥううゥウウウゥウ!!」

「―――あって大人しくしろっつってんだろうが! ふん!!!」

 

 暴れ馬の眼前に飛び出たマルタは最初丁寧な口調で落ち着かせようとするも、かまわず突進してくるその馬の額に、直ぐに昨日と同じく粗暴な言動が出て鋼鉄製の籠手で固めた拳を叩きつけた。

 

「ビヒィイイイイいいいい!!??」

 

 その細見と女体に似合わぬ剛力を合わせた鋼の拳を額にもろに受けた暴れ馬は、痛みと衝撃のあまりに背後に向けて飛び跳ねて地面をのた打ち回りだした。

 

「…ふーー、何とか間に合った」

「す、すっげーーー! すっげー怪力!! ありがとー」

 

 馬がほぼ無力化された姿に一息ついた表情のマルタだが、彼女が現れなければ馬に踏み倒されただろう童がキラキラした表情で喜びを見せた。

 

「あーもう! 女の子を怪力って呼ぶんじゃ―――」

「ブルアアアァアアアァ!!」

「―――あぁ…!?」

 

 だが、マルタが照れつつも女性に対して相応しくない賞賛に声を荒げたその時、どうにか立ち直った暴れ馬が怒りも載せて大きく振り上げた前の二で彼女を踏みつぶそうとして来た。

 

「はい! そこまで!」

「ビヒィいい!?」

 

 だが、その馬蹄がマルタを踏み付ける直前に追い付いてきた白漂が暴れ馬に鎖を噛ませて引き戻し、更に乗馬して落ち着かせ始めた。

 

「…はいはいはい、もっと動いて動いて…よしよし…ふーーーー……」

 

 そのまま白漂は鞍も鐙も付けられていない暴れ馬をロデオのような動きをさせ続けて疲弊させ、どうにか宥めて大人しくさせた。

 

「あ、あの暴れ馬が…大人しくなって…」

「…あれ? もしかして…この人って城主様じゃ…?」

「(…あ、まずい…暴れられた影響でフードがめくれたから…このままこの場にいたら面倒くさいことになる。なら…)あー、そう言うわけで同僚の皆ー後始末よろしくー。この子を更におとなしくさせるために遠出してスッキリさせるからー」

「え…きゃあぁ!?」

 

 だが、その煽りで自身の正体が勘付かれ始めると、白漂は周囲の通行人を装って同行している護衛達に向けてそう言い残すと、マルタを抱き上げると馬に載せてそのまま馬を走らせて現場を逃げ去った。

 

 

 

 

 

 ○秦国中央部 旧王都雍○

 

「…ん? この衣装は…?」

 

 同じ頃、秦国の旧王都雍にて開かれる予定である加冠の儀の物品責任者の一人として同地に滞在していた白漂第五夫人譜孝は、儀礼用衣装が詰まっている木箱からそれを取り出した懐かしそうな表情を浮かべていた。

 

(あー♪ 酒に酷く酔ってた時の旦那様から上手く聞きだした考えを元に図案ひいて織った衣装が入ってるー♪ 品を選ぶ際に担当の子が間違えて入れたのかしらー? “レオタード”とか“ビキニ”とか殿方の目を引く形態を多数取り込んだ大胆なものを作れたのよねー…あ、そう言えばー中にはいくつか着た子の汗とかの体液に反応する遅効性の媚薬とかも編み込んだ品もあるんだけど…今はどうなってるかしらー?)

 

 箱から見つけた懐かしくもこの時代の中華の表世間での価値観にはそぐわない、その煽情的な衣装を胸に抱きつつも、譜孝はこの場にはないそれらの同類についても首を傾げさせたりした。

 

 

 

 

 

 ○秦国北部 朔方郡 朔方城近郊某山林○

 

「…ふーーー、途中で雨に降られたり、馬を走らせてる途中で土砂崩れが近くで起きて汚れたりで酷い目に遭ったねー」

 

 譜孝の回想から数時間後、朔方城の近くにある清流の小川が流れる山林の洞窟にはそこに避難している白漂とマルタの姿があった。

 そこで白漂は途中での土砂降りと土砂崩れで汚れて濡れた上着を脱いでいく。

 マルタは女だてらの身で戦場に立っているだけにその事には特に口立てしなかったが、普段と違って彼女の心身に変化が生じる。

 

(……うぅ、昨日見た時はチャラ男に見えていたけど…こうしてみると…細身だけど凄く綿密な濃縮されてる筋骨って感じ…、昼間の馬術からして戦技も非常に洗練されてるのは改めてわかって…身体についてる大小いろんな古傷痕からして戦歴と地位は伊達じゃないのは分かる…。う…何か…この服を着てから少しずつしてきたモヤモヤって感じの熱が急に高まって来て…息も苦しくなってきてるような…?)

 

 城内での騒動からの逃亡で汗を掻いていたマルタであったが、白漂の裸身を目にしてそれとは別の熱が胎内より生じてきてモジモジとし始めた。

 実はマルタが着ている衣装は譜孝が昔に作成した媚薬仕込みの衣装で、その機能を知らずに新人弄りの一環で掘り出した藍蘭に着させられていたのだが、その効果が出た形なのであった。

 

「マルター、近くに小川があって身を隠しやすい大岩もあるからそこで身を洗うのが良いね」

「(あ…水浴びも出来るなら丁度いいわ…)そうですね、そこが良いでしょうね」

 

 その最中に白漂が出した提案に、マルタは初体験でわからない欲情による身の熱を下げるにも良いだろうと考えて受け入れた。

 だが、そこで非常に微妙な経緯で大人への階段を下ることになるなど、この時のマルタは思いもよらなかった。




今回は主人公の地元の交易としての場面が中心になりましたが、元ネタは下ネタやパロディで有名なあの農業系SSです。
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