○秦始皇8年(紀元前239年) 秦国北部 朔方郡近隣 始拓 某宿場町○
「……ふふふ、遂にこいつを目にして食う時が来たぞ…!」
昼間にて
彼が注文した料理は、白漂の前々世で言うアメリカあたりで大食いや早食いのチャレンジにでも登場しそうな超巨大ハンバーガーに比肩する、焼いた饅頭に肉などの具材を挟み込んだ肉夾饃(中国で実際にある料理)であった。
「お、おい…遂に竜川があいつを注文したぞ…!」
「これまで信を含めた大勢の馬鹿が挑むも食い切れず、結局倍増し料金を取り建てられたあの化け物肉夾饃を…!」
「おお! 遂に喰いだしたぞ!」
「あ、あいつなら喰い切っちまうんじゃないか…!?」
周囲から上がる畏怖と畏敬が宿った眼差しや声で優越感を覚えつつ、竜川は巨大肉夾饃を食い続けていく。
(…ふ、北方広しと言えどもこの超盛り肉夾饃を食い切れるものなどおいらの他にはおるま―――)
「うおおおおい! 竜川が頼んだものとそれよりも更に一回り大きい尺のをそれぞれ注文した客がそこにいるぞ!!」
「―――い…!?」
だが、その優越感は隣の席より上がったその驚きで大きく揺るがされた。
「…それでなー、その馴染みの店で金が足りないから味でいちゃもん付けて料金踏み倒そうとした奴を捕まえたら趙の奴でよー」
竜川が振り向くと、そこには体型こそ豊満さとマッシブな引き締まりを併せ持った女体だが彼よりも背丈が高くて皮膚が赤黒くて耳の先が尖り、黒髪を長く生やした面貌は黄銅色の瞳を中心に整っているが鋭い面貌で、鋭利な歯をのぞかせた口を大きく開いて、彼が注文したものよりも大きな肉夾饃を悠々と食している異相の大柄な女性であった。
「せこ、けっちくさ」
ちなみにその大柄な女性と同席して、竜川が注文したものと同じサイズの肉夾饃をモグモグと食しているのは羌瘣である。
「ちょっとー! 二人とも食べるのは良いけどそんなデカデカと卓上を使わないでよー! 他のお客さんが入れなくなるじゃないー! それとレキシントンちゃんも座るならイスじゃなくってあそこに用意してる大石に腰掛けて―――」
「かー、またけち臭いのう店ちょ…うおおお!?」
「―――えってまたぁ!?」
「……………」
その二人にお姉言葉で中年オヤジの店長が注意してくるが、それにこの時代ではまだないはずのレキシントンと言う名で呼ばれた大柄の女性の座っていた椅子が彼女の重量に耐え切れずにへし折れ、竜川は意気揚々とした雰囲気は消えて他所の方向を向きながら粛々と食事を再開した。
○秦国北部 朔方郡近隣 始拓 拓景山城○
「…ふう、来週の分の授業に内容もようやくまとめ終ったわ…」
信の北での住居があって一応は彼の居住地とされる拓景山城も、秦北部の開拓の進展と住民の増加で、麓には小都市程度の町が出来ていたが、趙の偵察小部隊を一つ潰してその功労者である晳琥について信達が懸念を示していた夕刻が過ぎ、夜の帳が深くなりだした時間帯にてその町の通りを一人の女性が歩いていた。
この時代の女性より高い背丈だがそれも組み込んだ凹凸ある肢体を黒基調の曲裾で固め、明るい栗色の長髪をポニーテールにした知的で温和な美貌を構成している女性だ。
彼女の名は
泥竜初期世代のメンバーの一人で、戦火で没落した文官の家系に出自を持つ身で、現在はここ始拓の拓景山城の町で学校の先生をしている身であった。
ちなみに信達に読み書きを教えたのも彼女で、その学校の生徒は習い始めの時期に差があったので老若男女が結構ばらばらである。
(…あの頃は手が焼ける弟みたいだった信くんも本当にいろんな意味で大きくなったわねぇ。今はもういない…あの人との娘であるあの子も彼には懐いてるし―――)
「んん…❤️ あ、そこ…三人とも…だ…駄目…アアァ❣」
「―――ぃ…!?」
その水谷も嘗ては夫を持つ身であったが伝染病で無くし、今は娘と共に暮らしつつも仕事の間は信達の元に預けている身であったが、彼らがいる山城に入って進んだところで、その娘を預けている友人女性の艶を帯びた声が鼓膜を震わせてきた。
「…駄目っていうには締め付けが良いな…ほらよ!」
「ちゅうるるるうっる…❤️ ふふ、ヒクヒクしてる…❤️」
「はむ…❤️ じゅるゥウウウゥウ…❤️ 今日もズッシリトしてるわねぇ…♪」
山城にある一番広い寝室の中で、河了貂が逆駅弁スタイルで信に突き上げられながら悶えており、その荒削りの棒を思わせる男根を咥えて広がっている河了貂の必死に広がった淫裂に玲花が舌を這わせ、ステラが彫像を思わせる美貌を甘く蕩けさせつつもその唇で信の子種増産期に入って膨らんでいる陰嚢を口腔内に含ませて舌で遊んでおり、それを物陰より盗み見てしまった水谷は言葉を失ってしまう。」
(…こ、これは…4人で情を通じ合わせているの―――)
「ッ!」
「んんっゆアアアァーーーー❣❣❓」
「―――ッ!!?」
水谷は初めて目にする他人の情事とそれを友人がしているという光景に言葉を失ったまま盗み見に見入ってしまうが、そこで信が河了貂の小さな身相応に締まりが強い肉壺の中で達し、その中で収まり切れなかった子種汁を撒きながらキュポンと彼女の中より抜き出ると、彼の雄々しき雄の象徴を目の当たりにして息を強く飲んでしまう。
(…うそ、亡くなったあの人より歳と背は小さいのに…あそこはとても大き―――)
「ああ❤️ あれだけ出してここはまだこんな…カプ❤️」
「貂はもうくたくただから私達がここから落ち着かせないとね…ちゅうぅ…❤️」
(―――いって他の子の中で果てたばかりの一物を口でそんな…!?)
自身が身をもって知る唯一の男性よりも優に立派な信の陰茎に水谷は唾を静かに飲みながら足の付け根が落ち着かなくなるが、そこで玲花が今度は信の濡れたままの亀頭を咥えこみ、ステラが微笑みながら竿の裏筋を舐め始めるとそれは加速してしってしまい、彼女は4人の交合が終わって寝息が上るまで娘を迎えに来たことを忘れて淫行に魅入られ続けた。
○秦国北部 朔方郡近隣 始拓 開拓地○
「…って何じゃこりゃあアアァ!?」
そうして自身の情事が盗み見られていたなど気付かないまま夜を過ごした信であったが、翌朝に山城から出て練兵の為に通りかかった小村の放牧地で荒らされた収穫済みの西瓜や甜瓜の畑を目にして絶句していた。
「うわぁ!? 餌用や反芻種蒔き用に残してたのが十くらい食い荒らされてるよ!」
「ここに来て初めて見たよこんな大きな野菜泥棒!」
「役所に届けた方が良いぜーこれ」
信以外にも少なからぬ住民が集まってきており、不安の声が上がっていた。
「…昨晩、僕は見ましタ…」
「「「「「!!??」」」」」
その中で大きく目立つ晳琥の言葉に一同の注意が大きく集まる。
「…昨日の夜、僕は用水路の延長工事が長くかかったのデ…門限が過ぎたノデ外でゲル張って野宿をしていまシタ…。その時…寝ぼけて隙間を見タラ…三人くらいの大きな影が…その場で果物を食べたリ…抱えて林に逃げていく姿ヲ目にしましタ…見た時は疲れての幻視ダト思って言わなかったですけド」
「じゃあ、犯人は複数ってことか…」
「すみませーん! さっき近くの林を調べたんですが畑から盗まれたと思わしき西瓜とかの食べ残しが多くありましたー! 更に同じ場所には蹄鉄をはめた馬蹄の痕と人の足跡が少なからず見つかったと-!」
「「「「「!!??」」」」」
「…ちょっとコソ泥程度で済ませられる話じゃねえなぁ…」
その報告で周囲の恐れに混じる緊張が強まり、信が双眸を鋭くした。
「…ん? 何だ? 信が珍しく真面目な表情してる…?」
「あんた身内の男には割と酷い事ズケズケ言うよな」
ちなみに、その様子を練兵の為に参加の部隊を幾つか引き連れて始拓を通りかかろうとした白漂は小高い丘の上から見て怪訝な顔を浮かべ、竜騎の中に混じるレキシントンがそれに少し眉を八の字にした顔を向けた。
○秦国北部 朔方郡近隣 始拓 拓景山城 大広間○
「…えーー、そういうわけで今までにない結構な深度と被害を示した他所の偵察部隊の線が濃厚な事件が起きたのでそれへの真面目な捜査と対策を考えよう会議始めまーす」
事件発覚から数時間後、一応は飛信隊の仲間内や地元の有力者達で宴会とかをやるために整備されているその部屋で、元々は練兵で通りかかっただけだが新兵の実戦訓練にはちょうど良さそうと判断した白漂が地図などの資料を背景に、始拓で開拓史上初めて生じた作物泥棒とその犯人と思わしき他所の偵察隊への対策会議を始めた。
部屋の板の床の上には信を含めたこの地にいる将校達が星座で並んでいた。
「それでは策を考え付いた人は挙手をしてー」
「はい、じゃー俺」
「よし、信から」
信が自信満々な表情で白漂の背後にて地図と共に広がる黒板に近づいてこう書き上げて読み上げる。
『罠で待ち伏せ作戦』
黒板には信にしては真面で且つ効果的さを感じさせる作戦名が書き上げられた。
「…被害が出た畑の周辺の犯人が出そうなところに虎バサミとかの罠を仕掛けるんだ。幸いにも製鉄なら江殊幡所の次くらいに質量は良いのが取れるから仕掛けまくって罠に掛かったら発動する鈴式の警報装置も掛けて待ち伏せすんだよ」
「お、おおーーー…信殿の口からそんな信殿らしさを感じさせない普通で且つ上手く行きそうな策が出るとは…」
「頭どっか打ったのか?」
「明日は大雪でも降るんじゃねえか?」
「おい」
その信にしては普通に効果がありそうな作戦に、周囲から感心と困惑、人によっては恐れも出始めて信の顔が心外だと引き攣る。
そして、意外なことに白漂が反対を口にした。
「なるほど、信にしては悪くない策だ。だが、あまりお勧めできないな」
「え!? 漂よ何でだ!?」
「被害が出ているのはここ始拓だ。だとするとその為の物品を揃えるのはお前の担当になるがーーー…信、ここにそんな罠を大量に設置できる金はまだできてないだろ」
「…あ…」
その至極真っ当な指摘に信はハッとした表情となり、周囲もうあーんうんと頷いた。
『宣伝で帰順させる作戦』
次に上がった作戦は晳琭が口にしたものだった。
「あー、これは今までにも良く有った方法だな」
「言い方悪いけどここへ来たばかりの時に盗賊やってて捕まった晳琭達が更生しながら土地開墾して得たもんな」
「今じゃーそれも含めて他所との国境近くに看板立てて流民とかで人手集まりやすくしてるし…」
「いや、こいつが一番理想的だけど今回は多分無理だ」
だが、その案はこの中で一番賛成しそうな信が以外にも反対を示した。
「え…信、何で?」
「尾到、馬蹄や足跡を見つけた現場を調べたんだが…馬蹄の蹄鉄の跡を象って調べたら趙の正規軍のそれだった。趙人でも向こうの今の馬鹿王から逃げてきた流民なら事前にこっちにも報せが届くはずだ。だけど漂に聞いたらそれは今回無いから連中の偵察隊な可能性が高い。今までの経験からして連中が宣伝や説得だけで大人しく降伏帰順するとは考えづれぇ」
「…とまあ、信の口から割と真面な反対意見が出たので…僕から凡策だけど一つだそう」
信の捕捉で晳琭の案が却下されたところで、白漂が黒板に新たな作戦を書き出した。
『匂いで犯人を追撃して捕縛作戦』
白漂が出したその作戦に周囲が戸惑いを見せる。
「…あ、あのー将軍…どんな内容ですか?」
「幸い、うちは訓練した軍用獣に土地柄と人柄でそういう鼻も込みでもの探しや人探しには長じた人材が大勢いる。これで西遼が新開発した薬品を連中が出そう場所に巻き、それを連中が踏んだ後を追撃するというだけだよ」
「おおー、凡策とは言うけどここでは一番手っ取り早くて且つ確実な作戦だ」
白漂の立場と実績及びそれらも混じる付き合いの経験で、周囲はその策を説明されると抵抗なく受け入れた。
○秦国北部 朔方郡近隣 始拓 開拓地 事件現場近郊農園○
「ど、どうも、よろしくお願いしますべ」
「…面倒くさいなぁ…」
作物泥棒もしたと思わしき結構深めな侵入をしてきた趙偵察部隊と思われる不審者討伐(及びそれも兼ねた新兵訓練)が昼の会議で決まった後、同日の夕刻にて集められる隊が集ったが、越と同じ一族で衣装は似ているがどちらかというと白漂の前世や前々世の肥満オタクを思わせる中年男性のオーモリと、白漂軍では表向き軍用動物の管理と調教をしている西遼の長であるがいつも通り面倒くさそうな空気が全開な
「…隊長、何だこの怪しいふたび?」
「思っても声に出すんじゃね―――」
「何だよ大将ーこの怪しいおっさん二人はぁ?」
「―――えっておいぃ!?」
その二人とは初対面である晳琭が怪訝な表情で思ったことをそのまま口にしようとするも信が口ごと防ぐが、隣に立つレキシントンが訝しんだ表情でそれを台無しにしてしまう。
「心配しなくていい。これでも壄瑮は動植物の扱いにめっちゃ長けてて薬品もそれに応じて強いから今回用いる追尾用薬品の調合にはうってつけ。オーモリは今現在ウチに所属している百越出身者では越に次ぐ吹き矢の達人だ」
「そ、そのと通りでございます! その証拠に一つどうぞ!」
今回の中核となる二人に不安を抱く周囲に対して白漂が説明すると、オーモリは越と同じポンチョに似た衣装の懐から、ピストルに似た形状の吹き矢を取り出した。
「こ、これは拙者がステラ殿の回弩を元に開発した新型吹き矢でござる。弾を噴出してもこの取っ手に内蔵された弾倉よりバネ仕掛けで繰り上がって自動で弾が装填されるというかか革新的な吹き矢でござる。その証拠ココにこれをご覧あれ…フフフン!!」
「カアア!?」
オーモリはその新型吹き矢を口元に構えて宙に向けて矢を撃ち放つと、その辺を高く飛んでいた烏がパタリと勢いよく落下するが、その烏の身には数本の矢が突き刺さっていた。
「うお!? あんだけ小さく見えた烏にこんなにも!?」
「人は見かけによらないとは言ったもんだなぁ…」
「これもすべて通常業務の侵入敵兵相当任務の成果です」
その正確な仕事に昌さんが上がると共に、ぐっと自慢げに親指を立てたオーモリはその見た目の変人っぷりにも関わらず幾分かかっこよく見えた。
「あー、それで皆にはまずこれを指定の位置に撒いてもらうよー」
そんな周囲の感動など我関せずに気怠そうな壄瑮が懐からキャップ式竹筒を懐から取り出して中身を見せるが、その中にあるのは白い砂にしか見えない粉末で特に匂いは感じられなかった。
「何じゃそりゃあ? 特に匂いなんかしねえぞ?」
「あーちょっと待ってねー。人間には一部除けばほとんど嗅げない薄い匂いだけど…しばらくすると―――」
「「「「「ブモオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」
「ってのぐはぁ!?」
「―――ってこのようにウチで訓練して買っている子達が直ぐに追撃してくる変異な匂いを撒くわけだよねー」
それに尾平は怪訝な顔をするが、その彼を撥ね飛ばす形で巨大な猪の群れが畜舎を飛び出して乱入してきた。
「猪は野生動物の中では非常に嗅覚が優れて知能も高く、それでいて匂いについての記憶力は動物界でも最上位だ。その中でもその子達は動物の管理に長けている西遼が子供の頃から育成して訓練を施しているから人間、特に連中のいう事はよく聞く」
「本当っすかい!?」
白漂が西遼の元で飼育されているその軍用犬ならぬ軍用猪に餌を上げて悦ばせながら説明するが、その猪たちに撥ね飛ばされて鼻血を拭いている尾平の姿が微妙に説得力を押し合下げる。
「よーし、じゃー面倒だけど巻きに行くかー八戒号ー」
「ブフォ~~~」
そんな空気など構うことなしに壄瑮は鞍に跨るが、その鞍が装着されているのは肩の高さは2m近く有って体重は五百キロを超しているだろう、熊よりも大きな巨大猪であった。
「おい、壄瑮…お前…それに乗ってるのか?」
「そうだけど?」
「餌とかどうしてんだ? それと何を食わせたらそこまでデカくなるんだ?」
「説明したら知らなきゃよかったとか言いそうだし、取引先が減りそうだからやだ」
「………………」
その巨大猪八戒号を馬の様に扱って騎乗する壄瑮に信は何となく聞くが、いつも通り気怠そうだがドン引きしそうなことを言い出しそうな黒い負のオーラを纏い始めた壄瑮にそれ以上聞くことは出来なかった。
「……こうしてみると、豚と猪って何か似ていて可愛いわねぇ。何で神様は不浄な生き物に設定したんだろ?」
「? 何でお前がここにいるわけ?」
それとは対照的にマルタは意外そうな表情で軍用猪を注視してるが、河了貂は彼女の出自をある程度知っているので気に掛かった。
マルタの出身東遷十支族は宗教上の決まりで一週間に付き一日は安息日と定められていて、彼女の場合は今日がそれであったのを知っているがための疑問である。
「あー、以前にその事で城主に相談したらさあ…そしたらその時メッチャ酔ってた城主に“別に戦争なんて生産性から最も遠い所業なんだからそれとそれに付随する事柄は労働とみなさなければいいんじゃね?”って言われたから別に今回みたいに軍務は良いんじゃないかなーって思って…」
「ある意味正論だけど酔ってる時とは言え一応は軍のお偉いであるあいつの名も添えてそんな事言われたら俺達はどんな顔をすればいいわけ?」
マルタの真顔も添えた色々とこの時代ではまずいその発言に、河了貂は微妙に引き攣った表情を返すほかなかった。
今回、色々と何処かの漫画やラノベで見たようなシーンが中心となりました。
次回は戦闘シーンもありますけどそうしたパロディの要素が多めです。