それとアダルトでなくても読める、キングダム以外の作品由来のシーンもあります。
○秦始皇8年(紀元前239年) 秦魏著雍争奪戦一日目夜 魏国西部 著雍 魏軍要塞型防衛線南側○
大きく押し込まれた魏軍防衛線南側と対峙している白漂軍野営地は、魏軍総大将呉鳳明を作戦通りこちらにまで引きずり出したのを確認して引き上げたばかりの白漂軍将兵が大勢屯していた。
「飯が出来たぞー!」
「今日は坦坦麺とー豚肉炒飯だ!」
戦況の有利な推移と比例して秦軍野営地は疲労の色が強く見えつつも、顔色には暗い色は見えず声も活気が残っていた。
白漂が別人名義で再現した前世イメージに近いこの時代でも作れる献立、各種道具の進歩で彼の軍は秦軍内部では最も飯が美味い軍とも呼ばれていた。
「…は~~、男の子って胃袋と下半身に弱い生き物よね~」
「あー、やっと飯配り終えたー」
そしてもう一つ、この乱世でも珍しい女将兵が比較的多い事でも知られるが、そうした女性達が喜ぶ浴槽が有る事も密かに有名だった。
二頭立ての馬や牛で引けるその簡易風呂車は、近年の秦の工業技術の進歩で人を三人は入れられそうな大瓶を載せていてその下には沸かすための火が燃え盛っている鉄製の櫓があり、木材部分が燃えないように断熱レンガも使用されていて、五右衛門風呂に似た構造で深く身を沈められるようになっており、それが幾十台も野営地の一角に陣幕に隠された状態であった。
「…うっわー、ペンテシレイアさんいつ見ても本当に綺麗な金髪ー。どうやって維持してるのー?」
「そうか? やってる事といえばー毎日朝起きた直後と寝る前に牛乳飲んでるくらいだな」
当然、女子が夜の風呂場に大勢集まっていれば女子トークで花が開くのはいつの世でも同じである。
「…ん? 何か河了貂…何だか胸辺りの膨らみが前より増してる様な…」
「!? ふ…ふふ…そ、そっちもそう見え始めてる…?」
「本当にこの新しく出来た“石鹸”って言うの本当に便利ねー。肌も艶が出るし消毒や掃除に選択にも便利だし…」
「あー最近は他国からも高値付けてでも買う人が増えてるわよねー。但し原料であるエライア油や脂肪が取れる畜産物に恵まれてる西方山界や北方遊牧民の人達の方が生産と質も伸びてるみたいだけどー」
やはり、女子が美容に気を使うのはいつでも同じで、最近に白漂が思い出した知識とこの時代の素材でも作れた石鹸にウットリとした眼差しを向けていた
「…あー、内容は金もかけられるようになってるけど…また孤児集まりで村やってて川辺で水浴びしあってた時みたいなことしてるなんて…のぎゃ!?」
その中の一人で昔の貧乏生活を思い返した玲花がやや拗ねた顔を浮かべた直後、髪を洗っていた紅華が白漂原案のポンプ使用水鉄砲でその背に冷水を浴びせてきた。
「ふふふふふ、子供の頃から幾年か離れてもまだ可愛い声を出せるのねー…っぁあぁ!?」
無防備だった背筋への奇襲で上げられた玲花の可愛い悲鳴に、紅華は可愛いものを見た表情で微笑むが、それに恨みがましい眼差しを向けた玲花が水鉄砲で同様の攻撃を食らわせてきた。
「…ふうぅぅーーーーーー…」
「ぐぬ…これが子持ち人妻の余裕というものかしら……」
だが、玲花みたいな幼さを感じさせるそれではなく妙齢のゆとりを感じさせる甘い嬌声で、それと少し勝ち誇った顔での紅華の流し目に玲花は悔しげに表情を歪めた。
「懐かしいな、久方ぶりにこういう場に戻ってみれば新しい変化も見るが…」
「あ、王偉さん」
その女子トークの最中に、玉鳳隊から他所との情報交換のために一時やってきた王偉と、偵察から戻ってきた後で各関係部署に報告し終えていた庶徐が新たに入場してきた。
「あー王偉、久しぶりねこういう場に戻ってくるのは」
「明日の準備が主でここまで来ました紅華奥方」
「王偉ー、今のここは一杯だけどーあと少しで何人か上がるから庶徐と共にちょっと待っててくれないー?」
「承知した理査氏」
そのまま二人は女子専用野外風呂場を囲う陣幕に近い林に移動し、戦況について確認し合う。
「…そういうわけでー、魏の騎兵さんの後を追っていったら魏軍総大将呉鳳明さんとその先生で魏火龍一角の霊凰さんによる紫伯さんに付いての過去話に出くわしたの」
「そうか、知ってる限りで良いから聞かせてくれないか?」
そこで今現在の自分達が直に対峙している敵の情報に触れられ、王偉は冷静な表情なれど関心が強まりで細くなった双眸で話を進める。
「…それが実はねー、魏国には短期間だけど魏軍ほぼ全体を真っ二つにする内戦があったんだけど…その原因が紫伯さんの義妹の紫季歌という人で…」
そのまま風呂場の席が幾つか空くまで間に、王偉は庶徐より情報を徹底的に聞き取り続けた。
「…なぁ、お約束として覗きにいくか…?」
「いや…確実にばれて寿命が縮むから止めとけ。あそこは女の皮を被った猛獣の巣窟だぞ…」
一方、女子風呂が設けられた泉を囲う森の外れで、男達が見張りをしながらも彼女らについての猥談もしていた。
「なあ、お前ら…この俺らが囲んでる小川…うちの女子達が今使ってる泉から流れてるんだよ…」
「「「「「!!!!!!」」」」」
その一人である尾到の言葉に全員の無言の驚愕を添えた視線が森の中を走る清流に向けられる。
自然と身がその小川に引き寄せられていき、何人かが顔を近づけて水面を貪りまで始める。
「おい! お前らー見張りなのに何をそんな一箇所に集まってんだ! ちゃんと持ち場に戻れ―――」
「「「「「否!!」」」」」
「―――えってぬおおぉ!?」
それに偶々通りかかった信が気付いて注意するも、男達の一片の乱れもない反論の波の前に跳ね返されてしまった。
ちなみに数時間後、別働隊を請け負っていたために戦中湯船に入り損ねた羌瘣がこの湯船の存在を後に知って怒りで静かに振るえたのは別の話。
○秦始皇8年(紀元前239年) 秦魏著雍争奪戦一日目深夜 魏国西部 著雍 魏軍要塞型防衛線西側 玉鳳隊野営地○
「……と、これが私が入手した今この戦線で対峙している魏火龍七師の一角紫伯の過去及び、それが原因となった14年前の魏国の内乱の情報です」
風呂場での旧友らとの談笑や情報交換より数時間後、王偉は北で培ってきた巧みな馬術に故郷から連れて来た愛馬の性能、その知的で且つ鋭い双眸で見定めた最短ルートを通って今現在の職場である玉鳳隊に戻っていた。
「……い、如何に血は繫がっておらんとはいえ兄妹で結ばれるなど…」
「落ち着かれよ番陽殿、それよりもその復讐のために義父と同僚である他の魏火龍三人を討ち取った紫伯を如何するかが問題だ…」
「いや、昼間に感じたあの男の違和感…妙に気がかりだったがこれで納得がいった。これなら討てる…」
「若……?」
それから王偉が語った内容に周囲は引いたり表情が重々しくなったりしたが、故に血色とは裏腹にすっきりした表情となった王賁がやけに目立った。
○魏国西部 著雍 魏軍要塞型防衛線某所○
昼間の激戦と一部では夜間まで続いた死闘の名残で、哨戒を除いて大半が深い眠りに付いた時間帯にて、森の中を気配を殺して潜行している秦側の部隊があった。
「あー、そっちは茂みで隠れているけど沼地があるので気をつけてー。こっちに樹木が崩れ落ちて埋まって馬でも進められる場所があるからー」
その部隊を案内しているのは庶徐で、部隊は主に里了を中心に構成されていた。
中には凱孟と激闘を繰り広げた後にも拘らず、馬を支障なく乗りこなしている綴の姿もあった。
「あ、こちらにまだ気付いて無いが魏の哨戒兵があの崖の上にいるぞ」
「何…あ、いるな本当に…綴」
その綴が指差すたびに魏の哨戒兵は次々に倒されていって、彼らの存在に向こうが気付くのは非常に遅らされてしまっていた。
○魏国西部 著雍 魏軍要塞型防衛線南側○
「……ふう、毎日じゃないけど戦場でも湯浴みが出来るのが白漂軍の一番の自慢ねー」
簡易風呂場でやっと周ってきた自分の番にて湯船にその引き締まりと豊かさをあわせた白き肢体をステラが沈めてしみじみと語っていた。
「…湯浴みも良いけどよー早く済ませて寝た方がいいぜ。この様子じゃー明日にはもう決めにかからねーといけねーだろうからな」
それを陣幕越しにたしなめてくる信は上半身が裸であり、その背や腕に疲労回復用の針が多く玲花によって刺されていた。
「…それはそうだけどー、肝心の別働隊の一方が苦戦中らしいじゃない。前の山陽攻略戦の時に見たけど…お父さんと比べて急ぎがちで身を切るのに躊躇いがなさ過ぎる感じがするわ」
「いや、横槍をあそこで挟んだ身からすりゃーこれくらい働かねーというけねーだろ。少ない出会いの度に余計な事を言うのが多いボンボンだけどよー、それだけならこれだけでかい戦を動かす椅子の一つに割り込むなんざ出来やしねー」
別時間軸の本人よりも戦場に出るのが早く、よき知人にも恵まれている分、この世界の信は馬鹿な所はそのままだがそれ以外はゆとりと冷静さがあった。
「…だったらこっちの見込み以上の結果を出して上げられるように、今回は脇の方を受け持った私達はその分明日も働かないといけないわね。ここまでやらせて駄目そうだったりしたら尻のツボに発破を撃ち込んで上げるけど」
「カカカカ。お前がやると寧ろ良い火付けになりそーだな」
会話の途中でステラは黒い木綿製のスポーツ下着風下穿きに長い腰巻を羽織った状態で陣幕から信の横に出てきた。
「…う、ううううぅ…やっぱ玲花副長だけじゃなく…ステラ副長とも良い感じでいやがる信隊長…」
ちなみにその様子を簡易風呂場を囲う陣幕の外側の茂みより、新兵達が羨望と嫉妬に満ちた表情で盗み見ていた。
「俺ー大将の奥方の隊に配属されたけどー本当は王京さんの所に配属されたかったー…」
「テ、テメェ紅華さんの勇姿を間近から見れてるくせに我がまま言いやがって…!」
ちなみに白漂軍は厳しい試験を経て、そこでわかったデータを元に適性のある隊を幾つか把握してそこから籤引きで入隊先を決めるのだが、その陰でこうした不平不満が上がってもいた。
○秦始皇8年(紀元前239年) 秦魏著雍争奪戦二日目朝 魏国西部 著雍 魏軍要塞型防衛線西側○
「「「「「ワアアアアアアアァアアアアア!!」」」」」
夜が明けて日も完全に地平線から姿を見せた時間より、騰軍と紫伯・霊凰連合軍の激闘が再開した。
「……………」
その中でこちらにおける最強の武力を誇る紫伯は各部隊に指示を行いつつも、自らは本陣に留まっていた。
一つ目の理由として自身が負わせた戦傷で昨日の夕刻に鱗坊が死去しつつも、玉鳳隊の支援で軍の崩壊は防がれて、本日はそれを吸収した隆国軍が録鳴未軍と連携して兵力では大差無くなった自軍と互角の状態を維持していること。
「右の画の旗の隊の右横腹を突け! 5回突いたら次は参の旗の隊を突け!」
「瑛核、右の元鱗坊軍の横腹を邪魔してる分の旗の魏軍部隊を左右から挟撃しろ。薄くなった中央の隙間からその隊長を私が撃ちぬく」
二つ目がその拮抗状態を利用して、自軍の脇腹の繋ぎ目を不規則的に横撃している関常隊と王偉隊の動きも警戒する必要があったためである。
「…ふー、こちらの突いては退く流を結構してるのにまーだ出てきてないっスねー紫伯」
「まーこっちはまだ余裕ありますけど、このままじゃー若は本陣同時急襲には間に合わないんじゃないですか?」
「…ふ、まだお手並み拝見中と言った所か…。お、あちらが動き始めたぞ」
その状況に何処かマンネリ感すらやや出始めていた部下達を関常が窘めようとした時、反対側にいた王偉隊が急に紫伯軍本隊の右側を猛烈に進みだした。
そこは録鳴未軍との接触箇所に近く、それ以上進めば紫伯側の前線が崩壊して秦側が雪崩れ込んでくるだろう箇所であった。
「…ここはしばし任せるぞ。まずはあの千人隊を攻撃して一番面倒なあの槍を引きずり出して先に潰す」
「はは!」
故に、紫伯もそこが真っ先に玉鳳隊が本日大きく仕掛けてくるだろう場所なのも理解しており、すぐさまに本陣代役を立てて王偉を潰すべく動き出した。
「……来たか、合図の鏑矢を」
「承知!」
「っ!」
それを玉鳳隊随一の視力で見抜いた王偉は適当な頃合で鏑矢を放ち、大気が甲高くも済んだ高音に振るわされる。
「……待っていたぞ、嘗ての伝説の時を彩りし中華一の剛槍よ」
「………っ…」
そして、その王偉の隊を目指していた紫伯の前に、今現在の彼が最も警戒している相手が遮るようにして現れた。
「…理不尽な冷遇を修練へと変えて我が身を磨き上げるも、云われなき怒りによって半身を奪われ、その仇を取ったがゆえに暗闇へ14年閉ざされつつも…更なる剛を見せる貴殿の槍捌きに敬意を評し…この玉鳳隊王賁が本日御打ちいたす」
「…………!!」
それから槍の穂先を向けてきたその遮りたる王賁に対し、紫伯の能面としていた表情に初めて幾筋もの血管と感情の色が浮かんだ。
「あ、やはり怒った」
その周囲一帯に張り詰められた紫伯の感情を、王偉はいつもと同じ仏頂面で言い当てた。
キングダムには関係ありませんが、あの高校生ゾンビサバイバル漫画…原作者死去で絶版は本当に悔やまれますねー…。
次回はやっと仮面謎将軍御曹司の死闘に本格的に入れます。