それとオリキャラが出て来ますが、本編と矛盾が生じない範囲にとどめるよう努力します。
○始皇3年(紀元前244年) 秦国北部 山岳地帯 杏族本拠地 工房○
「この水力を動力とするカラクリは本当にすごいよ。そして風力や畜力を利用した水の組み上げ機も山がちで水資源に乏しい秦国には大きな需要が有る」
「そうですか、いやー私達も周辺部族への機械や道具の売り出しのその補修作業で儲けられるんですがねー。もっと大きな市場に食い込みたがってたところでしてー」
漂が杏橋の案内を受けて禿山の水力施設を見て回っていた頃、河了貂は工房のお頭と各種施設や機械に付いて談笑していいた。
(…まず漂の直轄になっている地域に導入して効果を確かに証明するのがいいな。そうすれば灌漑を押し付けられている昌文君も注目し大きく役立つだろうし―――!?)
この工房の機械の有効性に河了貂が大きく期待感を募らせたその時、工房全体を規模こそ遥かに劣るものの先日の人工土石流のものと同じ揺れが襲いかかった。
「いっぶげ!? いっでぇぇ…! 何だこの揺れは! またあの銀色女が山を崩しでもしやがったか!」
「―――っいや! 近くからの音だけど規模はそこまで大きくな……ああ! あそこにある禿山斜面に設けられてる水車施設あたりで山崩れが起きてる!」
その揺れに信が顔を柱に思いっきりぶつけて怒りを見せた直後、河了貂がそれの原因に気づき大声を出す。
それを介して異常事態を知った工房や砦の住民達が大きくどよめきだした。
「いったい何が起きた! ていうかあそこって確か漂が…!?」
河了貂が人混みに押されそうになりつつもどうにか踏ん張り状況を見極めようとしたその時、彼女の頭上を紙一重の差で豪槍が走り抜けた。
豪槍は河了貂の目前で同じく逃げようとしていた工人見習いと思わしき子供の一人の胸に突き刺さり、そのままの勢いで大型高炉の一角に深々と突き刺さった。
「なっ!?」
信が槍の飛んできた方向に目を向けると、そこには銀髪を頭頂部とその周辺の丸刈りを残して切り落としたゴリラを思わせる巨漢が得意げな顔で立っていた。
「ふっ! 愚かな豎子め…私がいない間にコソ泥を働こうとしていたようだがそうはいくか―――」
「テメエが主犯かぁ!」
「―――ぁああぁ!?」
信は半ば条件反射で巨漢に斬りかかるが、男は驚きつつも触れる直前でそばにあった未完成の槍を拾いその剣を受け止めた。
「どっちも速い!」
尾平は驚くが里甲が険しい顔で二人に制止を掛けてきた。
「信殿止せ! そちらの者は敵ではない!」
「おっさん!? そりゃどういう事だよ!」
「あー信! この子供の死体見てみて!」
「あぁ………!?」
里甲に怪訝な顔を向ける信だが、それは河了貂が子供の死体を下ろしてその衣服の下を晒したことで疑問は氷解した。
子供の身には、金銀細工や何やら重要そうな設計図が隠す形で巻きつけられていたのだ
「この子供…この辺りじゃ見かけねえ面だな…? あ、この懐に忍ばせた首飾りは月氏の連中のか!」
「……ふん! 私がいなければ間者のコソ泥小僧に赤っ恥を掻かされている所であったな」
「んだとこのおっさん! 大体テメエは誰だよ!」
「あー皆さん、こちらの者はー………」
巨漢は信にとって癪に障る態度を取るが、二人を宥めすかすようにして里甲は間に割って入ってきて、続けて彼の紹介を始めた。
里甲の説明が終わると、十秒ほどの沈黙をおいて漂に連れられてきた一行より驚愕の声が巻き起こった。
○二日後 秦国外北部 山岳急流地帯○
「…………んん…? ここは……」
漂が意識を取り戻したのは、ゲル(中国北方遊牧民が使うテント型住居)の中に広げられた寝台の上だった。
暖炉にて赤々と燃える薪のパチパチとした音に意識の覚醒を促され、毛布の中でまだ硬い体を漂は起こそうとしつつ記憶を辿り始める。
(……状況からしてここは杏族の街とは別所である事は明白だ。問題はここが何処で誰が此処まで運んだかということ。確か意識を失う前に…!?)
感覚が戻り始めた上体を起こそうとする漂であったが、その直後に彼の毛布で隠れたままの腹部に柔らかな肉の感触を覚えた。
まだ食してから一年と経っていないが、彼が若人特有の飢餓感に似た衝動に押されつつも必死に扱い方を学んできた二つの肉の感触とは違う、けれども別の趣で男心を擽るそれのものであった。
(…そういえば意識を失う前に僕は水利施設を彼女の案内で―――)
「お目覚めに成られましたか白漂将軍?」
漂が毛布に手をかけたその時、真っ先に思い浮かんだ女性の声が平常運転で自身のまだ見えない胸部より響いてきた。
視点を胸部に下ろすと、明らかにそこに掛けられた毛布の箇所が盛り上がっており、柔らかく温かい感触を覚えた腹部の箇所と重なっている。
そして、漂がぎこちない動作で毛布を除けるとその予想は答えとなった。
「どうやらさほどお障りは生じなかったようですね。良かったです」
一切衣服が纏われていない自身の肢体に、同じく生まれたままの姿の杏橋が密着していたのだ。
その無表情の下にある豊満且つ美麗な白いメロンを思わせる乳房は漂の胸部と腹部の合間にみっちりと押し付けられている。
「―――えーーーっと杏橋、何がどうなったらこのような状況に……?」
一応は色事における先輩の矜持にかけて漂は(薄ら赤面しつつも)静かに問いかけるが、杏橋は特に表情の変化を示さないまま地肌が密着した状態で顔を寄せ合ってきた。
「私も巻き込まれた身ですから詳細はまだ分かりませんが、水車を見学していた最中に山崩れが起きてしまったようで、その折に漂将軍が私を庇ってそのまま急流の中にお逃れになり、気を失いしばらく流された先で目を覚ましたら、今この最近打ち捨てられたばかりの村の川辺に流れ着いていたようで、まず先に目を覚ました私が此処まで運び応急処置をさせていただきました」
「だからって何でこのような痴た…ああ、あれか……」
漂は暖炉の上で紐釣りで部屋干しされている自分たちの衣服から事情を察するが、やはり男の性で杏橋に視点を時折向けてしまう。
(………うう、背丈は紅華や藍蘭よりかは背丈は低いけど、それでも僕が生きた時代のヨーロッパのモデル並に背が高いナイスバディ…特にあの胸は二人よりもさらに大きくて柔らかい…ていうか何でこんな羞恥を感じる場面でこの子は平気な表情出来ているんだ…?)
そのまま自身から身を話すと裸体のまま食事の準備を始めた杏橋の後ろ姿を注視しそうになりつつも、漂は身を起こし枕元に用意されていた着替えを纏おうとするが体を違和感を覚える痛みが走った。
「……っ…? この内蔵を強く打たれた時の引きずるような痛みは…?」
「濁流から一族長である私を将軍の身で庇おうとした行動も理解しがたいですが、その中に混じる岩石にも私の身を守るなど短慮すぎる奇妙な行動が見られました。けれども重傷ではありませんしこうして私の身を保護して下さった事はありがとうございます」
「……半分けなされつつも半分感謝されるというのも不思議な気分だな…。聞くけど君はいつまでその格好でいるつもりだ?」
仏頂面のまま耳が痛くなる解説を行う杏橋に、漂はやや悔しさも手伝い彼女の今の装束を咎めるが、それが返って彼の身を別の意味で追い込む羽目になる。
「私も始めこのゲルの中にある衣服を使おうとしたのですが、どれも胸や尻の辺りが痛くなったりいざという時に素早い動きができなくなるしろものばかりでしたからやむなく断念しました」
「はーーーーーそうなのかーあ、あそこには激流に巻き込まれてボロになった衣服がっ……………………って何その寝巻き!?」
出来た粥を受け取るまで漂は顔を疲労もあって俯かせていたが、香ばしい匂いに釣られて顔を上げると、明らかに胸元が弾け飛びそうなYシャツ風衣装に身を包んだ杏橋の姿が間近にあった。
「ああ、もう周囲に敵襲はなさそうですし何より先程の漂将軍の言動に裸体を咎める趣がありましたから、とりあえず最も動きやすい下履きを先ほど纏いました」
「やっぱり早い……(それでいて凄く色っぽい……)」
自身が顔を伏せていた間に手際よく仕事を済ませた杏橋に漂は改めて感心しつつ、この時代の女性の平均より色々高いため丈が短い下履きより溢れて見える彼女の肢体に思わず視線を逸らしがちになってしまう。
(…僕だって二人だけとは言え彼女達から色事は色々学んだり試してきたりしてるのに…この子の無防備なまでの冷静な態度はいったいな―――!?)
「漂将軍、今現在私たちの他には周囲に人はいません。もし体の精がお貯まりでお辛いのでしたなら私が部族の関係強化も兼ねてご協力したいのですがよろしいでしょうか?」
「―――ぶばっほ! ってあっつ…! ちょ、いきなり何を!!?」
明らかに悪意がない状態で自身の情欲を煽ってくる杏橋に漂は生唾を粥と共に飲み干しつつ答えを探そうとするが、その彼女が急に耳元に囁いてきた言葉に思わず粥を噴出して熱いその中身を体に浴びてしまう。
「申し訳ありません、此処まで驚くとは思いも寄りませんでした」
「い…いやね、まだ会ってから日日もそう立っていない女性に情事の話を持ちかけられたら大抵は程度の差はあれど驚くから……」
「? 漂将軍と私はつい数日前に婚姻を結ばれたではありませんか?」
「…………う、確かにそれはそうだけど……」
若干不思議そうな顔で問い詰めてくる杏橋の顔を漂は喉を落ち着かせつつ改めて注視する。
「(…………この時代の中華の美意識からは離れていて無表情なのがやけに目立つけど……杏橋も紅華や藍蘭みたいに何で僕の所に来たのかわからない綺麗で出来る子だよなぁ…)改めて聞くけど……杏橋は僕が夫でも僕に抱かれても良いと思うの?」
「そうですね、公務としての関係を見ればここ数日の交流で私達の統率者として足るに方だと確信しております。その上でそちらの補強も兼ねて私も貴方とは深く知り合いたいと存じます。藍蘭殿もまずは形をしっかとすれば気持ちも後から付いてくると教えてくださりました」
「……えーーっと、藍蘭とは大分前から親交があったようだね」
「経済上の都合で彼女の部族との関係は重要ですから。それと漂将軍の各種情報も彼女から享受したものが多いです」
「(……なる程…だったらこの情事での直球さも理解できる…)そういう事か、じゃあ先ずは起上―――!?」
お気に入りの玩具を得た小悪魔の笑みを浮かべる藍蘭を想像しつつ、漂は身を起こそうとするがそこで体をずっと這うように続いていた鈍痛が鋭いそれになるのを感じた。
「―――痛…っ! まだ痛みが……!」
「あの土石混じりの濁流の中に私を抱えて飛び込んだのですから色々と当たり所が悪いものがあっても不思議ではありません。そもそも大国の将軍の身で一族長を相手にやる貴方の神経が疑われます」
「……ちょ…僕は
「一応と付けてる辺はご自身でも自覚があるようですね。正直言いますともし最悪のことになれば私たちに真っ先に嫌疑がかかります。次からはご自重なさってください」
「……も、もっともです…」
「幸いにも障害が残るような怪我はしておりませんので、ここから先は大きな動作は私が受け持ちます。漂将軍は細かな部分でのご指導をどうかお願いします……」
その痛みの理由を絡めて無表情で毒を吐く杏橋に漂は気落ちするが、杏橋はそんな事などお構いなしに正座を付き一例すると、漂の上体を緩やかに起こして自身が支えとなりその身にゆったりと手を這わせてきた。
「……聞くけど…まだ未通だよね?」
「そうですが何か?」
「いや、幾らなんでも動揺が少なくてさらに慣れているというか…」
「はい、集落の老婆達から細かい手法を学んだり書物からも事前に学んでおきました」
「いや、それってもしかして―――」
「ご安心を、集落の若人夫婦の夜の営みを本人達の合意含みの上で老婆達の解説付きで視聴したまでで実体験はまだです」
「―――(ハプスブルク家かよ…)それはそれでどうだろ…………あ…」
杏橋の色々と問題な説明に漂は色々と突っ込みを入れたくなるが、その直前に彼女の綺麗な指先は毛布越しながら漂の屹立済みの肉竿へと到達してしまう。
「…………これは…まだ体感ですが集落で見た殿方のそれや医学書で読んだ平均を大きく凌ぐようですね……」
「じゃあ、ちょっと本気状態のものをご拝見してみるかい? 初めて見たときは意識喪失中で元気がなかったでしょ」
「ええ」
「じゃあ、ご拝見してもらいます…」
初体験である女性にリードされている状況に男としての矜持を刺激された漂は自身に掛けられた毛布を払い除けた。
外気に晒された男根は竹刀のように勢いよく振るって杏橋の指先を軽く払い除けた。
「……これは予想以上に大きいですね。準備が必要なようです」
杏橋はゲルの中にある小壺の一つを手に取り指を中に差し入れると、中から半透明上に澄んだ黄色い粘液を指に絡めて取り出した。
「杏橋それは……」
「将軍が寝ている間に近所にあった蜜蜂の巣より取ってきた蜂蜜です。塗り薬としても使えますし裂傷を起こした場合に有効ですから」
「あ…まあ…確かに……あ……」
杏橋の説明と明らかに男性の平均を凌ぐ自身の一物に漂は気まずさを覚えたが、それは潤滑油を得た彼女の美麗な指先に男根を握られた興奮で回復させてしまう。
杏橋の手淫は確かに始めこそ初心者ならではの探るようなぎこちなさがあったが、数分と経たない内にカリ首など性感が高い場所を探っていき、不規則的に指の力に強弱を変えて男根の猛りを強めていった。
「……学ぶのが上手いね…杏橋……」
「左様ですか漂将軍……っ?」
「いやー、ここ最近の話が急すぎてよく考えたらこれを抜いてたと思って……」
「……あ…」
血流の相当数が体の一箇所に集まっていく感覚を、事故後で目が覚めた体のためにより深く感じていた漂は、杏橋の腰に手を回し彼女を抱き寄せるとその頬に不意打ちで唇を触れさせた。
「………そういえば初夜の時も互いに仕事や技術の話ばかりで色事に気を回せませんでしたね。それでは……」
「良いよ、僕も君の朱色の味を知りたい…ん…」
頬に生じた温かい感覚に思い出した表情になった杏橋は、余裕を取り戻した漂とを相対させ合うとその白い肌で目立つ薄桃色の唇を彼のそれに触れ合わせた。
初めは早熟な童がしそうな唇だけを触れ合わせるものだったが、杏橋が誘うようにしてゆっくりと唇を開いていくと、それに合わせて漂の舌が彼女の口内に侵入し、その歯茎を宥めるように舐めていき、探るようにして触れてきた彼女の下と触れると互いに絡め合い唾液を交換し合いだした。
「…く…ちゅうぅ……すう……性器とは直接の関係は無いのに…何故か体温の高まりを感じますね…」
「ふうぅ…はむ、それが人として当たり前の反応だよ」
「それが自然でしょうか……あ?」
無表情を保ったままではあるが、女性の本能で肌に湿り気が帯びた杏橋の体を漂の手は薄布越しながら腰から背骨沿いに指の腹で撫でていき、彼女の性感に微かな安心感を与えていく。
そして、幾通りか背筋を撫でて女体が指の感触になれたのを感じると、目前で大きく実っている杏橋の双乳へと手を這わせた。
「………凄いなこれは…今まで触れてきた女性の胸の中では一番大きくて…しかも形は綺麗に保っているのに餅のような柔らかくもしっかとした弾力がある…」
「漂将軍は真面目な顔立ちをしている割には色事に奇妙で細やかな表現を使いますね。藍蘭殿が言っていたむっつり助平と言うものでしょうか?」
「…ぐ…確かに好きになったのは否定しないけど…そういう野暮な事を聞く子はちょっとな……」
「……っ? う……ふぅ……ぅ!?」
漂は少し不機嫌そうな顔をすると、素早くその手を杏橋の衣服の中に潜り込ませてその巨乳を直に揉み出し、特にその薄い桃色を帯びた乳首を弄び始めた。
既に薄らと帯びていた汗が漂の指先に双子の山の蹂躙を許し、既に本人も知らぬ内に勃起していた乳首は漂に摘まれコリっとした音を奏で始める。
「…う…つぅぅぅ……漂将軍……そこはまだ……身篭っていないので母乳は…」
「別に意味のある事をするだけが人の営みじゃないよ。それに…」
「……んん!?」
乳首から細かい針でつついてくる様な擽ったさに杏橋は不快感以外の未知の感覚を得つつも戸惑うが、それを止めようとする前に今度は漂の手に胸を大きく揉まれ始めた。
マシュマロのように柔らかくありつつも芯は硬質ゴムのような弾力で形を保っている杏橋の胸は、漂の痛みを与えない手淫にツボを刺激されながら形を不規則的に変えられていく。
「あっ! あぁっ! ひょ…ぅ…将軍……!」
有意義とは思えない愛撫による快楽に杏橋は無表情ながら声音に隠しきれない動揺が浮かび、漂のそれと絡まり合う舌も不安げに震えを強めて更に密着を深めてくる。
手淫と接吻がしばらく続くと、漂の太ももに汗とは別の雨水のように滴り掛かってくる湿り気が生じてきた。
「………はむ…もう、準備は出来たようだね…」
漂が不安に震える杏橋を口で慰めつつ視線を下ろすと、自身の太ももに馬乗りするようにして広げられた彼女の両脚に、寝巻きのスカートの裾の関係で丸出しになっている恥丘から溢れ出ている愛液が滝を作っているのが見えた。
「表情こそ変わらないけど…上記した顔色に茫洋とし始めた瞳と合わさって凄く綺麗だな…あ、太ももと擦れあってこれだけでも…あ?」
間近から見る杏橋の媚態に既に長大な勃起をしていた漂の男根は、その亀頭を彼女の白くも上気して薄いピンク色を帯び汗で滑りが良くなっていた太ももに擦り付けて、先走り汁のその絹の如き柔肌を汚していたが、それを視認した杏橋は目を少し見開かせて上半身を漂から離れさせた。
「急に申し訳ありません。ですが漂将軍の身に起きた事故を考えると、この勃起を何処まで維持できるか少々不安でしたので…」
普段通りの平静な声音に一瞬で切り返した杏橋は仁王立ちすると自身の腰を漂のそれへと合わせた。
寝巻きがするりと肌を滑り落ち、汗でしとどに濡れた事と天窓より差し込む月光に照らされて輝く杏橋の裸身の全体像が漂の視界に晒され、ちょうど双眸と同程度の高さで洪水の予兆が見えるデルタ地帯が見せ付けられる。
「杏橋、体はそんなに痛むわけではないから僕が―――」
「まだ要安静です」
「―――(こういう女性がリードする処女喪失というのはそうそうないだろうなぁ…)わかった……、けれど僕も少しながら経験者だから尽力するよ」
意思を変えられないと諦めた漂の了承を取り付けると、杏橋は静かに腰を下ろしていきその秘所を漂の今か今かと脈動する男根にそっと触れさせる。
そして、その指先で互いの局部を固定すると一気に腰を下ろし胎内へ男根を導いた。
「……っ!」
「…っ! ふ………うぅぅ…う!」
漂は初めて味わう杏橋の膣壁との急な接合に口を固く締め、杏橋は初めて男根に貫かれる痛みに腰が痙攣して動きが鈍りかけるが、やはり表情を変えぬまま子宮口が亀頭と噛み合う所まで腰を下ろしきった。
そのまま杏橋が深く呼吸を初めて腰を停止させると、二人の接合点より幾筋もの破瓜の血が流れ落ち始める。
「……っ…! 思っていたより多いな。それに処女である事を考慮しても狭い…っ!?」
「…づぅ…! これは……確かに戦傷のものとは違う感覚……ですね………」
漂はその血の量から案じそうになるが、腰が子鹿のように震えつつも表情から杏橋が何処か一安心を覚えている事に気付く。
「……処女を失うとは焼けた杭で体を差し貫かれるのを思わせる痛みだと長老から聞いていましたが、これは工房での修行の時の間違いで太ももに焼けた釘を誤って打ち込んだ時よりかは大丈夫そうです」
「………君さ何をやってるの…? あぁ、ちょっと緩やかだからって処女失った直後に動き出したら…!」
頬に幾筋が脂汗を流しながらも、いつもの仏頂面に戻った杏橋はおずおずとした様子で腰を動かし始めた。
それを下から見上げつつも、体に痛みが走らない程度に腰を上下にではなく横方面に動かしてしばし様子を見る漂だが、しばらく経つと彼女と先に娶った二人との違いがわかってくる。
紅華の胎内を磯巾着、藍蘭のそれをミミズの群れだとすれば、杏橋の胎内は一つの生き物のように蠢くカズノコであった。
「……うぐ…(まるで蜂蜜を纏った非常に細かい魚卵の群れに包み込まれているようだ…! 全体を自身で制御する技巧はまだ処女を失ったばかりだから出来ていないけど…単純な肉襞の気持ちよさらなら二人よりも上…。けれどまだ痛みが強そうだな…何か)……ん…?」
怪我の後遺症で体に力が入らないため、肉竿をみっちりと包み込んでくる柔肉の気持ち良さを鋭敏に感じている漂の目に、杏橋の両脚が見えた。
紅華の21世紀グラビアモデルを思わせる美脚には劣るが、杏橋の足も長く機能的な筋肉美で整っている。
その足が不慣れから来るものとは別に震えており、指先が待ち遠しげに小刻みに動いている。
「(ひょっとしたら…)あのね杏橋。君って戦の間も見てたけど…体が凄く関節の柔軟的な意味で柔らかそうだよね?」
「……はっふ……っ? 確かに人には何度か言われますが…それがどうかしましたか?」
漂の腰の上で破瓜の痛みに耐えつつも、その長大な男根に胎内を馴染ませようをゆっくりと上下左右に動いていた杏橋だが、彼の問いにひと呼吸を得たらしく動きが止まり脂汗が少し薄れた仏頂面を返した。
「繋がったままで足の指が僕の口元まで来るように足を動かしと欲しいんだ」
「漂将軍、それは…」
「君の体ももっと知りたいんだ。それと今は位抜きで向き合ってくれるとよりやりやすい。それと夫婦なんだから名前で呼んで欲しい」
「……分かりました。漂しょ…漂……」
漂の思わぬ要求に杏橋は最初渋るが、その声音から邪なものを感じずに済むと少々戸惑いつつも足を器用に漂の口元へ伸ばしていく。
その際も二人の体は繋がったままであり、漂の男根は足の異動に伴う筋肉の収縮の変化を膣越しに感じて喜びに震え、それにみっちりとまとわり付く肉襞は甘い感覚を生じさせて杏橋の腰を小刻みに震わせた。
そして、杏橋の足の爪先が口元まで来ると漂はそれを掴み、指でなぞりつつ細やかに観察しだした。
「漂……女の足で…何をそんなに熱心に…あ…腹の奥が…?」
漂の奇妙な行為に杏橋は足の指から這い伝ってくる擽ったさも手伝い戸惑うが、その最中に杏橋は足の付け根に生じた避けるような痛みが薄れ、代わりに胎内からじんわりと広がっていく電流のような快楽に襲われ背を少し仰け反らせてしまう。
杏橋は胎奥から登ってくる甘い刺激に眉が僅かに八の字になり、それを見抜いた漂は彼女の爪先を濡れタオルで拭いた後、舌先で軽く彼女の足の指を舐めてみた。
「っつぅあ! ひょ…う……何を…そのような不浄な…ああ! また!」
予想外の愛撫に杏橋は水を引っ掛けられた猫のように驚き止めようとするが、漂は彼女の指と指の間を舐めあげたり、爪先を舌先で弾いたりして彼女に言い知れぬ擽ったさを与えてきた。
戦場で覚えてきた苦痛とは異なる意思を阻害するその未知の感覚に、杏橋は漂の腰の上で無意識に身を激しく捻り仰け反ったりさせてしまう。
それは杏橋の鍛えられた腹筋を介して胎内にも伝わっており、カズノコを思わせる膣壁は激しく緩急の異なる締付を各所で発生させ、漂の男根は更に喜びそれは自身を包む女に己の証を刻み込まんとますますいきり立っていく。
「杏橋…! もうそろそろだから……君もより支えを強く…!」
「……え…あ…! は…い……! んんん……!」
それからもう一戦目の終了が近づき始めたのを感じた漂は彼女の足を脛からより強固に握り締め、杏橋は普段の冷静さを奪われてただ彼の言を頼りにし、背を水平方向に大きく仰け反らせて両腕で今にも床に倒れそうな上体を支え出す。
「あ! あ! あ! あ! あぁぁぁぁぁぁああああぁ! ひょ…うぅぅぅ! 私…体の中で………! 何かが動いて―――」
「よし、つ……!」
「―――っ!!?」
杏橋の胎内で子宮口が子種汁を求めて大いに下へ降りて彼女が理由を知らぬままただ胎内の変化に驚いたその時、漂の限界まで膨張した男根の亀頭が杏橋の大きく開かれた子宮口に食い込み、大量の精液がガラ空きとなった子宮に雪崩込んだ。
「あぁ…❣ か……は……ぅぅうぅ❣❓」
胎内を焼くように敷き詰める快楽の奔流に、杏橋は驚くあまり大きく身を取り乱すのではなく硬直し時折痙攣する魚のようになって頭が絨毯に付くまで背を仰け反らせ、涙が滲み出る瞼をきつく締め、歯を強く噛み締めて絨毯が破けるまでに握力を強めた。
(……この表情、慣れている痛みが薄らいで…代わりに今まで感じたことんない快楽に混乱して無意識に恐れて耐えようとしている表情だな……)
それを杏橋の背後にある略奪品と思わしき上質の鏡で視認した漂は、漂は彼女にもっと多くの表情をさせたい、そして彼女の事をもっと知り深く味わいたいという欲を大きくした。
「杏橋」
「…………………………っ…ひょ…う……?」
漂が上体を起こし杏橋のそれを引き戻すと、彼女の茫洋とした青い瞳と少し開いて唾を一筋流す薄桃色の唇を添え、極みの残滓で艶美な彼女の顔が鼻先で触れる所まで近づく。
十秒ほど立ち意識が現実に戻ると、杏橋は自身の絶頂直後の痴態を見られた事による羞恥心が無自覚に生じ、無意識で眉がやや八の字に曲がり視線が少し彷徨いがちになる。
漂がその些細ながらも確かな変化を見て楽しんでいると、ここ数日ほど精を溜め込まされていたこと、杏橋の名器もあって子宮内を満たした精が膣道を逆流し破瓜の血を点々と交えた状態でこぼれ落ちてきた。
「とりあえず、一度だけでは知り合えたとは言えないと思うけど……君はどうしたい?」
「………私は、色事では貴方からまだ教えを乞わねばならない身です」
「そう、じゃあ………ここからはリハビリも兼ねて僕が動かせてもらうよ」
「…………………ああ…!」
そのまま漂と杏橋は顔を向かい合わせた状態で再び動き出した。
○翌日 早朝 秦国北部 山岳急流地帯 廃村跡地○
「………………」
朝日で東の空が白くなりだした頃、杏橋は廃村の外れを流れる小川で身を洗っていた。
足の付け根からは、昨晩に漂と幾度となく交わった証が白い滝となって流れ落ちてきている。
「………まだ、こんなにも残って―――」
「杏橋」
「―――っ…漂…起きられたのですね」
杏橋が太ももを伝い落ちる白濁のひと雫を指で掬い間近まで近づけたところで、下半身に布だけを巻いた簡単な格好の漂が背後より声を掛けてきた。
漂に見られていたと知ると、昨晩とは違って杏橋は足が自然と閉じて手が胸の先と秘所を無意識に隠してしまう。
「……何というか、一歩は互いに近づけあったと見ていいかな…?」
「あなたの見積もりで私との精神的な距離がどれくらいかは知りませんが……少なくともこういう事は貴方に先導してもらうのが良いでしょうね」
「僕の感覚としてはこういう事は女性からも動かなくちゃいけない時がある気がするんだけどー………ん?」
昨日とは違い動作に何処か恥じらいを見せて背を向ける杏橋に漂は可愛げを感じるが、その背中に昨日には見られなかったあるものを目にして戸惑う。
それに気付いた杏橋は体を向き直しいつもの仏頂面で向き合う。
「……今、漂が見られたものは今となってはさほど意味があるものではありません。それにいつも浮き出ているわけではありませんから…」
「今の
言葉の空白に混じる杏橋の警戒心に漂は深い追求を尚早と判断し、その手に持ってきていた自分の衣服を彼女に渡す。
「察して下さりありがとうございま―――」
杏橋が自身の衣服を受け取った次の瞬間、彼女は衣服の一部となっている鉄製の籠手を瞬時に装着し、その手を漂の方に向けて何かを篭手から射出した。
「…づ…!?」
すると、漂の背後にある茂みから鮮血と共に短い矢が眉間に突き刺さった月氏の兵が倒れるようにして出てきた。
「僕が前にいた時代ならプライバシー侵害で訴えたくなるところだな…し!」
「ぎゃあ!」
自身の片耳を空気越しに震わせた杏橋の攻撃にジト目を浮かべつつ、漂は衣服に隠すようにして持ってきていた短剣の一本を別の茂みへと投げ出し、同じく潜んでいた月氏兵を一人仕留めてみせた。
「ちっ! ついさっきに火が登ってるのを見て戻ったが…気づいておったとは! まあ別に構わん! ここでキサマら二人をなぶり殺しにして醜い首を長の墓前に捧げてくれる!!」
すると、同じくゲルや茂みの陰にいつしか隠れていた月氏の兵が何十人と飛び出て漂達を取り囲んできた。
「やはり紋章からして月氏の東部部族遠征軍の残党でしたか」
「まー僕としては絵的にはあんまり締まらない格好だけど…杏橋、あの車輪刀以外は幾つか持ってきたよ」
「ご安心を、夜中に一度起きた際に水で洗うためにこちらの草むらに隠しておきました」
自身の今の格好に苦笑を浮かべつつももう片方の剣を構える漂に対し、杏橋は草むらより水飛沫と共に鎖を蹴り上げて手に引っ手繰りヨーヨーの如き要領で車輪状の自身の得物を手にとった。
「ひ! し、死の車輪!」
「死の車輪ってそれのこと? 名前はなんて言うんだ?」
「状況が状況ですが…幾つか試験的な装備を備えつつも効率的だと感じて長らく使っていますが特に名称は…」
「じゃあ、乾坤圏というのは?」
「何なのですかそれは?」
「昔に読んだ物語にそういう名前の武器が登場していて似てたか―――」
「舐めおってぇぇぇぇ! 者共殺せぇぇぇぇぇ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
自身が知る兵器類とはあまりに異なり、されとて年相応の好奇心を刺激する杏橋の得物に漂は状況を脳の片隅に置きかけるが、それに激昂した月氏兵が二人に襲いかかった。
「数はーーー…31人とは元々この野営地を築いていた隊の生き残りか」
「ゲルの数や規模からして生存した半数というところでしょう。衣服や体に傷跡や包帯が多々見られます」
「痛みも大分引いたしリハビリにはちょうどいいか」
「では漂、懐に入られた方はそちらにお任せします。私は中距離以上の敵を受け持ちますので」
「隙を見せるなこのボケが―――!?」
襲い来る凶刃に対し自然体の漂と杏橋に激した矛が二人を胴から両断しようと襲いかかるが、それは上方から振り回されるようにして落ちてきた乾坤圏に腕から切り飛ばされてしまう。
「ぎゃぁ!」
「ひ! ま、前よりも早くなってねえか死の車輪!?」
杏橋の周囲で車輪改め乾坤圏はヨーヨーを思わせる変幻自在の動きを高速で見せつけ、近づこうとする敵を次々に切り捨てていった。
何人かはくぐり抜ける猛者もいたが、刃が彼女に触れる前に漂が苦労せず倒していく。
「ええい! 何をしておる!? 敵はたかが二人でしかも先日の敗戦の怨敵二名なのだ…!?」
有利な状況から急速に悪化していく戦況に月氏残兵部隊の隊長が声を荒げるが、そこで漂が拾い投げた敵の剣と乾坤圏が同時にその身に叩きつけられた。
「ガ、ガナル隊長が殺られたぁ!」
「おい! 川上より秦軍と杏族の連中が近づいてきているみたいだぞ!」
「て、撤退だ! 山脈の向こうの本拠地まで退くぞぉ!」
上司の死を間近に見た雑兵達は元々高くない士気をへし折られて一目散に逃げ始めた。
「これで無事に砦まで戻れそうですね―――?」
彼らの背を見送る形で得物を地面に下ろした杏橋は、そこで両脚に痺れるような倦怠感を覚え思わずふらつきかける。
「―――これは…? 足に力が入らない……?」
「あー、東の空が少し明るくなる直前まで睦言を交わし合ってたから当然だね。戦闘の緊張が途切れたから君の弓のように磨かれた肢体が今になって休息を取りたがり始めたか…」
「………交わりの後は腰が抜けるような倦怠感に襲われると聞いていましたが…これは想定以上でした―――?」
漂の考察に新鮮な納得を覚えた杏橋は身を休めようとゲルの一角に尻を付かせるが、そこでゲルの一角が勢いよく布を外して中から白く光る刃を突き出してきた。
「この余所者の血を引く鬼女が! 父ちゃんの敵を取ってやる!」
それは偶然生じた隙を見逃さなかった完全な奇襲。
普段の杏橋なら即座に飛び退いて小距離を取り、乾坤圏を手元に戻しそのままの勢いで両断するか、衣服に忍ばせた武装で返り討ちにしているが、今の彼女にはどちらも出来なかった。
まずは乾坤圏が別の死体にめり込んだままであった事。
そして、杏橋が昨晩の情事の名残で生まれたままの姿でほとんど武装がなく、そして下肢の力が抜けてしまっていたからである。
(…武装の再装着、下肢の回復…駄目だ。いずれも間に合わな―――)
ただ一つだけ迅速に動く思考が杏橋に現実を妙にゆっくりと感じられる時間の中で伝えるが、それは彼女の身に降り注いだ鮮血によってかき消された。
「―――え……?」
それは十分に致死量に達するが、杏橋の口から出たのは悲鳴ではなく間が抜けた困惑だった。
彼女の冷徹な脳髄は痛覚を感じなかったためだ。
「…ひゃご……」
杏橋が惚けている間に、凶刃は彼女の至近で金属音を奏でながら地に落ちた。
フードを深く被ったその残兵には、何故か乾坤圏が深々とめり込まれていた。
「……初めて扱う武器だったけど、どうにか間に合ったな…」
「…………な…」
杏橋が残兵の正反対の方角に顔を向けると、そこには片足を大きく振り上げた漂が一息ついた表情で立っていた。
そこで杏橋は、漂が乾坤圏を残兵に向けて蹴り飛ばした事に気付き、表情の変化こそ乏しいものの内心では深く驚いた。
「はは、君でもそんな顔が出来るんだな」
「……っ、申し訳ありません。まだ戦中であるのにご迷惑をおかけしました」
「いや、戦場でならありえる過失だよ。けれども残兵は体が小さいけど…まさか……!」
漂は杏橋のその反応に男として嬉しく思いつつも、残っていた残兵の体躯に嫌な懐かしさを覚えて近づくが、フードを外しその顔を見た所で彼の予想は当たった。
潜んでいた残兵の正体は、嘗て誼を通じていた村を焼き討ちされた時の彼自身とさして変わらない少女だったからだ。
「………女子供でも、武器と無縁では生き残れず、とっても長生きできる見込みは少ないのは中華と同じか……」
「はい、私も子供の頃からこうした場面はまだ他人事ですが見てきまし……あ…」
そこで杏橋は力なく倒れそうになるが、そこで漂が二の腕で受け止めてそのまま抱き上げた。
それは彼が前に生きた時代なら俗に言うお姫様抱っこというものだった。
「もう皆が近づいてきた頃合だから、向かおうとするか」
「………はい、そうですね…!?」
地肌で直接感じる漂の体温に、杏橋は安堵と何故か鼓動の高まりを感じるが、そこで彼女は親しみのある殺気が猛烈な勢いで近づいてくるのを感じ取った。
「漂将軍! 後ろ!?」
杏橋が声を荒らげた瞬間、漂は一瞬で武将の表情に切り替わると彼女を抱き上げたままの状態で宙高く飛び、一秒未満後に二人の顔があった空を豪槍が飛び抜けた。
二人に紙一重の差で躱された豪槍は、そのままゲルの一つに当たると大穴を開けて更に飛び抜けていって倒壊させた。
「この槍は!? 今まで見えてきた槍の中で飛び抜けて速くて強い―――」
「きっさまーーーー! 我らが杏族の勝利の女神のあられもない姿を晒した挙句にそんな変態同然の格好で襲おうとは良い度胸だぁぁぁぁ!!」
「―――この声は!」
漂が宙を舞ったまま視線を転じると、長槍を構えて騎乗し短く借り上げた銀髪で碧眼の巌のような大男がこちら目掛けて突進してくるのが見えた。
(あの容貌はまるでベルセルクのあの妙に名前が長い騎士団団長の色違いみたいだ。けれど槍の威力はバカみたいに強い―――!?)
男の投槍に漂が舌を巻いた次の瞬間、今度は男の持つ長槍が宙を降りる漂目掛けて瞬時に打ち出されたのを目にした。
(―――って強いだけじゃなく速い! だけどこのリーチはおかしい…あれは!?)
男が振るう槍の速度とそれ以上に明らかに槍の柄以上の範囲を見せつけられて漂は身を捻り避けつつも驚くが、その答えを着地と同時に男の手元を見たことで得る。
「槍の石突き部分で握り締めて突き出してる! そして肩に装着した機械と槍が皮革製ベルトで繋がれていて勢いで抜けたりしてないの―――」
「ほう? コソ泥の分際で一端を見抜くとはやるな。だが道具のせいにするなどまだ二流三流の証よぉ!」
「―――それで地ですっぽ抜けたりしない程に達人級で上手い!」
巨躯に似合わず高速で且つ巧みな槍捌きを見せる男に漂は舌を巻くが、猛者だけにはわかる自身のみを狙い杏橋には掠りもしない動作に違和感を覚える。
(この男、さっき杏橋に敬意を含む言葉を見せていた。だとしたら杏族の男―――)
「
「―――?」
漂が紙一重の差で躱しつつ考えようとしたその時、彼にお姫様だっこされたままの杏橋が眉を潜めた表情で男に言葉を向けた。
それは漂にとって初めて見る表情だった。
「おお! 意識を取り戻されたか! 悪いですが説明はこのあ―――」
「後にするのは貴方の槍です」
「―――え…!?」
譚と呼ばれた男は嬉しげな顔を見せかけるが、次の瞬間には漂の手からバレーボールのように蹴り立った杏橋に馬上のまま首を瞬時に締め上げられた。
「おーい漂、やっと見つけたーーーー………って何だこの状況!?」
数分程経って追いついてきた信は、血で汚れた野営地の真っ只中で腰布一枚だけという格好の漂と、気絶して落馬し地にうつ伏せで横たわる譚を後頭部から足蹴にし裸で立つ杏橋というシュールな光景を目の当たりにした。
「……いや、何かいきなりこのおじさんが襲いかかってきて……? あれ…杏橋が微妙に気まずそうな表情を…あ、そういえば何か羽織るもの持ってきていないか?」
「あ、こっちにあるよ……(俺の目にはいつも通りの無表情にしか見えないけど…様子からして関係が深まった男女にはわかるというものか……?)…ってお前はいつまで鼻の下伸ばしとるんじゃ!」
「いだっ!?」
追いついてきた河了貂は鮮血の中で佇む杏橋に持ってきていた着替えを渡しつつも、落ち着いて今度は倒錯的な艶美を醸し出す彼女に下衆な笑みを浮かべだした信を馬上から蹴り落とした。
だが、女の凶手の対象は信には留まらなかった。
「……いい加減気付けよし―――」
「あ~~ら、人が必死に探してた間に逢引してる貴方に言えることかしらあ・な・た??」
「―――あ、はい………どうも」
信に呆れを見せかけていた漂の背後に、いつの間にか(目元が笑ってない)笑みを浮かべる紅華が回り込んでその背を思いっきり抓ってきたのだ。
「………身内とは言え見掛け倒しではない豪傑の彼を打ち倒すとは相変わらず女子なのが信じられない怪力ぶりですな杏橋殿」
「ああ、女性らしい体型なのにすごい力だね里甲……ん? 身内?」
遅れて追いついてきた面子の一人である里甲の言葉に白漂が訝しむと、杏橋が夫である彼にはわかる程度に沈痛とした表情で向き直し頭を下げてきた。
「申し訳ありません。こちらの者は杏譚と言いまして私の弟です」
「……え!? 兄弟!?」
そして、杏橋の口から出た予想外の言葉に漂は驚いた。
「うんうん、俺も始め聞いたときは髪の色以外全然似てねえってまず思った」
信が同意するように頭を何度も縦に振ると、漂は気絶したままの杏譚をしばし見やるが何かに気づいた表情となりぎこちない動きで再び杏橋に向き直る。
「………え、ちょっと待て…譚が杏橋の弟だということは…歳は?」
「? 私の弟は16才ですけど何か?」
身内の不祥事の直後に出た相応しくない問い掛けに杏橋は少し首を傾げるが、彼女とその部族に詳しい里甲を除いた全員が無言で縦に首を振り同意を示した。
キャラクター設定③
杏橋
容貌/パウラ・ソコウォースキー(トリニティ・ブラッド アスカ版)
年齢/17歳(始皇3年(紀元前244年)時点)
出身/秦国北部 林胡杏族領内
身長/171センチ
体重/67キロ
3サイズ/B99W59H90
得物/乾坤圏(白漂命名 特殊縄付き大型回転可能チャクラム)
趣味/兵器・道具考案及び設計
白漂の二人目の側近。キャラコンセプトは天才肌天然豪傑。
本編でも軍才があると評価されていたので、その才はものづくりでも高い才覚がある。また、白漂が思い浮かべた女性のように身体能力、特に筋力が細身に似合わぬ高い数値を示している。
本人曰く剣など一般的な近接武器の扱いは下手なので乾坤圏という中距離以上の間合いを取れる武器が得意といっているが、隠し武器で人に命中させたり、蹴りで相手を殺傷できる身体能力を持つなど問題にはならず、それでいて地元の地の利が有るとはいえ、敵対する月氏の大軍を崩落の計に嵌めて敗走させるなど文武どちらもオールマイティーに高い。
白漂が思い浮かべた女性のように今現在は表情の変化が乏しく、感情の変化も薄い。また、反応からして作中で口にしたある組織と何らかの関わりがあると思われる。
余談だが、この時点で白漂が娶った三人の女性の中で最も胸が大きい。
自分としても何故なあのキャラを元ネタにしたのかと時々思いますが、基本は良い意味での有能ギャグキャラとして描いていく所存です。
暇な時でよいので評価や感想をお待ちしております。