※この作品はR-18です。

天下の大将軍になる!! ~夜の睦言~   作:oosima

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今回は白漂の大将軍就任が各地に与えた影響と、最近あまり出ていなかった子達の日常回などが中心です。


066 糸の如く連鎖し繋がり合う謀

 ○秦始皇8年(紀元前239年) 燕国西部 王都薊 王宮○

 

 白漂の秦国三番目の大将軍就任は伝書鳩等によって直ちに各国へ伝わった。

 北中華及び北狄方面での情勢変化に伴い、交戦状態には無いが互いに僻地ながら接するようになった北東部の燕国も同様であった。

 

「遂に白起の孫が大将軍になったぞ!」

「かつてと違って長城より北の領地も広まったがそのために我らも秦と接するようになった! 他人事では済まんぞ!」

「落ち着け! 趙などとは違ってまだ僻地でしかも奴らが当面の相手になる!」

「それに先の二度の合従軍で交戦したがそれ以外なら燕秦は穏便な関係を保っている! 彼の国が匈奴や趙等と交戦している間に我々も僻地併合と開発を進めて力を増しておくのだ!」

 

 同国王宮で重臣達が激しい口調で会議をしている中、それを見下ろす幾層ものカーテンに阻まれて内部を見せない玉座より静かな威風を放っているが姿を見せない人物が口を開いた。

 

「梁渓」

「っ!? ハハ!」

 

 その玉座に座る人物である現燕王喜の言葉を受け、重臣に混じっている小太りとしていて温和な雰囲気が目立つ梁渓なるものがドキリとした感じながら素早く反応した。

 

「朝鮮遠征及び開発に向かわせているお主の長男を呼び戻せ」

「魁を!?」

「お主が育成してきた工人らによって朝鮮の鉱山経営が多大な成果を成し、財も兵も大きく膨れ続けている。その分も含めて軍の再編を進めるからそれをよく知るお前の息子も王都にしばし加える」

「ハハ!」

「それと斉に向かわせておる次男の方も呼んでおけ」

「梁適殿を!?」

「梁適は斉に遊学しておった頃に白漂やその師である紫夏とも交友を結んでいたそうだろう。その辺りも考慮して今後の対秦部署に奴も加えろ」

「…ハ、ハハ!!」

 

 周りも巻き込んで熱気と声量が増していく会議に、梁渓は自身もその一部であることを覚えつつも内心で溜息を吐く。

 

(…ハア、鉱山の落盤事故に巻き込まれて死んだと思えば…まさかこんな生死の境があちこちに潜んでいる時代に生まれ変わるとは…。それにしても…この中華は…儂が知っておる史記や戦国策に秦(・)書(・)には載ってなかったり整合していない部分があるような…? 歴史書自体も後世の添削や政治の都合などで大分変っているし、考古学の調査でもかなり歴史書と大分違う事がわかっておったが…息子たちはこれからますます激しくなっていくこの時代を生き残れようか…?)

 

 そして、梁渓は改めてこの時代において自分の異質さを感じて、この世界で得た家族の身を案じた。

 

 

 

 

 

 ○趙国南部 王都邯鄲 王宮○

 

 一方、その燕と秦に挟まれているこの国にも同報が入り、当然朝廷は騒然となっていた。

 

「宰相閣下! 遂に白起の孫めが大将軍に任じられたと!」

 

 先の六大将軍筆頭白起に長平で歴史上最大のトラウマを刻まれ、本年度でもその孫である白漂に翻弄されて領土を大きく損なった趙国であり、その政治的中枢は当然荒れていた。

 

「くそぉ秦め! 露骨な当てつけをしてきおって!」

「李牧派と太子派が先の敗戦からの復興及び今回への対処を名目に接近して参内の許可を求めてきています!」

 

 だが、そのように荒れている大臣たちとは対照的に落ち着いている存在が一つだけあった。

 

「…くっくっく、狼狽えるでない者共…既に手なら打っておるわ…!」

「宰相閣下!?」

「既に例の者共の仲介で北のあ奴らも動かすことに成功したからのぉ!!」

 

 いつもなら一番狼狽しているだろう郭開が、邪だが根拠も感じさせる自身の有る笑みを浮かべていたのだ。

 

 

 

 

 

 ○秦国東北部 黒羊五丘樹海地帯○

 

「…ごげー…」

「ぐごー…」

 

 白漂の大将軍就任を記念した饗宴の一夜が終わり、見張りを残して多くの者が寝息を立てていた。

 

「……ん、相変わらず健康体だな。ある一点を除けば…」

「はい、ありがとうございます。先生…」

 

 その中で明かりがついている少ない区画の一つたる野戦病院にて、玲花は扁鵲の診断を受けていた。

 白漂軍で始まって今では秦軍で多く広まっている定期健診というものがあり、本日の分には玲花も含まれていたのだ。

 

「…若いというのは呆れと羨みを同時に催させるな。お前の今のここもその証だし…」

「…まーお互い若年と言うか……」

 

 診察台の上で仰向けに寝転んで下着姿になっている玲花だが、ショーツのクロッチ部分が深く湿っていて何本かの筋も流れているのを指摘されると、薄っすらと頬が朱色に染まって苦笑を浮かべた。

 

「…だが、頭ではわかっていてもこうして機あればあの馬鹿に身を委ねているあたり…お前も未練があるだろうな…」

「………………」

 

 その点から扁鵲が切り込むと、玲花の表情から羞恥の色は消えて、代わりに罪悪感と憂いで混濁とした翳が浮かび上がった。

 嘗てこの騒乱の世を変えようとした意志の成れの果てに生を囚われ、そこで数え切れぬ交わりをしていたが、年齢のせいもあるだろうがただの一度も取り返しのつかない事態に成らなかったことから、玲花は女が一番求められる仕事で且つ欲する存在を得られないだろうと諦観を得ていた。

 

(…だが、異常はないが玲花の下腹部の触診のたびに得られる…堅い感触でありながら腫瘍とは異なる異物感の正体はいったい…?)

 

 だが、それとは対照的に扁鵲は玲花の常人とは異なる諸点の中でのある一転に医者として大きな違和感を覚えていた。

 

「…ハア、如何…どうも槍にいつも通りの気を張り切れない……」

 

 ちなみに、その野戦病院の近辺でモヤモヤとした表情で槍を振るう綴の姿があった。

 艶のある朱色に輝く長槍を振るうその姿は演武のように美しくありながら、演武のそれではない鋭敏な殺気が混じっており、偶々彼女の眼前を風に吹かれて通りかかった木の葉が音すら置き去りにする速度で穂先に通り抜けられ、薄っすらとまるで最初から二枚の木の葉であったかのように別れた。

 

(…もう、嘗ての宗家の生き残りも私しかいないだろう。そろそろ…私も誰か婿を取らねばならない時期に来ているからだろうな。奥方達に羨望を抱き始めているのは…それ以上にあの方に女としての渇望を抱いているのもあるが…!?)

 

 だが、そのような雑念で心中が搔き乱されている中でもそれだけの槍技を保っているだけあって、綴は自身の近くに慣れない気配が微少だが生じたのを見過ごしたりはしなかった。

 

(…この気配は…!? もうこの場から姿をくらましたか…!? これは匈奴の…!?)

 

 綴はすぐさまその気配がした茂みに入るも、そこで気配の持ち主ではなく彼女の記憶をよからぬ意味で刺激する、狼を象りし装飾品を発見した。

 

「……? この感じは…?」

 

 綴とほぼ同時に、けれども距離が離れた小丘の頂上に設けられたゲルの内部で、自分達以外の慣れぬ気配を感じた人物がいた。

 

「…? どうしたんだ」

 

 その人物で、四つ足を付いていることと鋭く剣呑とした眼光を宿した事で狼を思わせ始めたペンテシレイアを、夫で白漂軍第一将軍郭備が訝しんだ。

 

「…おや、丘の下より微かだが…いやな意味で懐かしさを感じさせる気配を覚えてな…ん❣❓」

 

 剣呑とした眼光をさらに強めようとするペンテシレイアだが、それを狙ったように自身の胎内を鋭くも愛しい感触が突き上げて思考を甘く搔き乱してきた。

 彼女の真下には、夫である郭備の姿があり、その肉槍はペンテシレイアの淫鞘で蕩けるように絡みつかれつつも常人ならへし折れるような膣圧で包み込まれていた。

 

「…んんん! それにしても…交わるたびにここもより強靭になっていくな…ああ❣❣」

「…く! それはまあ…機があればこうしてこちらも貪欲にされるまでに激しく貪られているからな…っっっ!!」

 

 戦場では見せない淫靡な悶え顔を見せるペンテシレイアを、郭備は上体を起こして密着するように抱きしめ、より彼女の膣肉を穿つように搔き乱して互いの脳髄へ痺れて溶けるような快楽を生じさせあった。

 

「んん!!」

「あああああ❣❣ あ…あの子の…弟か妹になるものがまひゃあぁぁぁああ…♪」

 

 そして、愛する夫の大きい突き上げを添えた白き爆ぜによって、ペンテシレイアは戦場では見せない淫靡な蕩け顔を晒しながら脳髄が焼ききれそうな極みに行き着いた。

 

 

 

 

 

 ○秦国中央部 王都咸陽 後宮○

 

「……それで球泰さん、調子はどう?」

「…あー、まだ熱っぽくてだるいけどどうにか歩けはするわ扇琵―」

 

 各地が白漂の大将軍就任を機に蠢いている中、秦国後宮の一角で宮女たちによる夜の女子会が開かれていた。

 但し、その中で球泰は熱っぽい顔で寝台に横たわっている。

 

「…け、けどー驚いたー…今度は泰ちゃんがー御子を授かるなんて…」

「あーうん、この前に市井に出てた晩に肌を重ねたのが大当たりしたみたいで…あー大変ねーこれからー……」

「何言ってんのよ泰ちゃん!?」

「ぬお!?」

 

 向が何となく呟いたその原因に球泰はやや面倒気な表情を浮かべるが、そこで陽はグイっと顔を近づけて責め立ててきた。

 

「大王様の御子を授かる事こそが私達宮女第一の使命であり誉れなのよ!」

「え…ぇええ…そ、それは理屈で分かるけど…」

「だったらどうしてそんな嫌そうな顔するの!? 殆どの子は大王様とお話しすらしたことないのも珍しくないのよ! 私なんか以前夜伽に呼ばれたのに結局添い寝だけで何もなかったんだから!!」

「陽ちゃん、自分で言ってて悲しくない?」

「ぐは!!」

「琵ちゃん、それは言わないでいてあげるものだよ…」

 

 いつもの身内同士の女子会は平常運転な盛り上がりを見せながら夜の時を経過させていくように見えた。

 だが、そこで小さな鐘の音が後宮中に響き渡ると扇琵がしまったという顔を浮かべる。

 

「あ! 今晩は確か陛下が殿下をお目にしてくれるから琴を弾かなくちゃいけなかったわ! 皆ー途中で抜けるけどごめんなさいね!」

「えーー…」

 

 背後に何名かの悲鳴を浴びながらも扇琵は急いで部屋を後にし、案内役の宦官に導かれて後宮の一室へたどり着いた。

 

「…うぁあー…ちちうえー…ははうえー…」

「ほら、こっちだから…もう少しだ。がんばれ」

 

 数分後、後宮にある一室で嬴政は這い這いする息子嬴慧を愛でており、傍でその光景に表情が和らいでいる扇琵がハーブ型竪琴を奏でていた。

 

「…くううぅ…むにゃむにゃ……」

「ずいぶん言葉を覚えたな。お前に似て賢い子に育つだろう」

「陛下、あまり小さい頃よりお褒めになるのはおよしください。調子に乗りやすい子に育ってしまいます…」

 

 数十分後、遊び疲れて寝息を立て始めた嬴慧を二人は愛で始めていた。

 

「…ずいぶんと色々な人間に接してきたから、見聞が広い子に育つと良いな…」

「はい…まだ、お見せしたいのに返事すらも貰えない方がお一人居られますが…」

「……………………」

 

 可愛い寝顔を見せる嬴慧の頬を撫でて、父である嬴政は穏やかな笑みを浮かべているが、扇琵が言い辛そうにしながらも触れた案件で表情にやや翳が浮かんだ。

 二人が思い浮かべたその人物は、今愛でている嬴慧の祖母でもある太后だ。

 彼女は嬴政に母親らしい情をほとんど抱いていないのの延長からか、生まれた孫に対しても誰一人として会おうとはせず、あまつさえ現在は反乱同然の騒ぎを起こして咸陽より離れてしまっていた。

 その事でほとんど何も出来ていない自らを扇琵は責めていた。

 

「…扇琵、久々に組み手をしようか」

「…!? へ、陛下!? この子が近くにいられるのに!? せめて隣の部屋で―――」

「いや、真面目な意味での組み手だ。最近あまり体をお互い動かしていないからな…」

「―――え…う……」

 

 それを気付いてか嬴政が問いを投げると、扇琵は彼と夜を共にするたびにほぼ毎回起きている伽に触れて顔を赤く染めて視線を彷徨わせるが、困ったジト目に変わった彼の言い直しで今度は羞恥で顔を真っ赤にした。

 

「…では、着替え終えました」

「ああ、こっちも終えている」

 

 数分後、二人は長袖で体に密着し動きやすい胴着に着替えて庭の砂利の上に歩を進めていた。

 ちなみに、庭に面している部屋には嬴慧が静かに寝息を立てている。

 

「…先に断っておきますが、実家の教育の過程で教わる際に叩かれねば伸びないという方針で武は骨身にしみ込まされていますので…」

「大丈夫だ。こっちはこっちで本当に危ない目に何度も会わされているから大事にはしない…」

 

 そして、数秒程静かに構えて見据えあった後、砂利が激しく舞い合う音と五体が裁かれて打ち付けられ合う音がしばし庭の大気を震わせた。

 

「……んん…くうぅぅう…? ち…ちちうえにははうえぇ…?」

 

 数十分後、目を覚ました嬴慧は中庭の砂利の上で仰向けに横たわり、土と汗に汚れて息を荒げて横たわる両親の姿を見て、このままだと二人が風邪になってしまうと思った。

 

 

 

 

 

 ○秦国東北部 毐国 首都太原○

 

 各国が白漂の大将軍就任で蠢いていたその日の晩も、咸陽は例の毐国の内情を探るべく密偵を放っていた。

 夜中に家屋の屋根伝いに音も無く駆け抜けていっているのは、大王派に仕える裏社会で高名な刺客集団朱凶の一員。

 

(…ここが中枢か。以前の報告で寄せられているよりも官庁街が広まっている…それだけ周囲の城邑も靡いて来ているという事か…!?)

 

 朱凶は眼下に見える太原の隆盛に警戒を強め、更に奥へと進んでいくがその先に一室だけ明かりがついている部屋を発見する。

 

「…キャハハハ…」

「…わーい…」

(子供の声…? 何か要人の子弟か…?)

 

 朱凶はそれに違和感を覚えて屋敷に潜入して明かりがついてる部屋の床下に潜り込む。

 

「…ねー、父上と母上はまだ帰ってこられないの―?」

「も、申し訳りません。国主様と太后様のご両名はまだお忙しく…」

(…!? 父上と母上…その呼び方だとまるで……!?)

 

 そして、朱凶が床上より耳にした子供の言葉に胸騒ぎを覚えた直後、新たな足音が複数近づいてきた。

 

「おーし、元気にしてたかい二人とも―」

(!? この声は…まさか!?)

 

 あろうことか部屋の中に新たに表れた集団の先頭にいたのは、現在の毐国騒動の中心人物で嬴政の実母である秦国太后であった。

 

「あ! お帰りなさい母上ー!」

(!!??)

 

 あろうことか、部屋の中にいた子供達は太后に勢いよくしがみ付き、その光景を床板の僅かな隙間ながら確かに見た朱凶は驚愕する。

 

(どういう事だ!? あの言い方だとまるで双方が親子のよう…先王は既にお亡くなり! だとしたら父親は―――!?)

 

 双方の関係に朱凶が思考を恐ろしい方向に向けようとしたその時、彼の肩を何かがチクリと刺し、それから数秒足らずで全身を焼き溶かすような感覚が包み込んでいく。

 

(―――ば、馬鹿な…気付かれていた…と…!?)

 

 そして、朱凶は驚愕と困惑に思考を支配されたまま床下で血を吐いて絶命した。

 

「どうしたんだい?」

「どうやら床下に鼠か猫がいたようで…掃除に取り掛かります」

 

 床の上で太后が抱き着いてきた子供をあやしながら口を開くと、同行していた例の墨意匠の服装の一団が杖を床から離したが、その下端からは細く長い糸のような針が妖しい光を放っていた。

 それはまるで、秦内部にて陰謀が無数の糸の様に巡らされていっていることを暗示しているようだった。




今回の大人向けシーンは他の話への尺の都合で短めとなりました。
次回は件の毐国内部の話も出てくる予定です。
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