082 噂と推測は尾鰭が付いていく点で酷似している
○秦始皇8年(紀元前239年) 秦国東部 対魏国境地帯 著雍 著雍大要塞○
(……んん…この光は…もう昼ですか…)
対趙前線付近にある秘境で白漂と姫昭がようやく味方の元に戻れそうになっていた頃、
(…いくら今日が非番による久々の休日とはいえ…昨晩に夜襲があったばかりでここまで長く寝るとは…悪い意味で慣れてしまってますね…!?)
ここ数週間は膠着的な中小戦が続いていた事から来るだろう、非戦時のに近い無意識的な弛緩にリーメアリーは顔を引き締め直すが、それに伴い足も動かそうとしたところでその付け根に甘い異物感を覚えてしまう。
「…う…あ…リー…メア…リー…さん」
リーメアリーが視線を下ろすと、そこには穏やかな寝顔で唾を垂らしている漆間の姿があった。
そこで、リーメアリーは昨晩のことを思い出してほんのりと頬を朱色に染める。
「…まあ、こうして剣を置けるときは癒しを求める事が出来るのは良いことでしょうが…」
仰向けで寝ている漆間の上にリーメアリーはいたが、その足の付け根は彼の腰の上にあって、少しでも身を動かすとクチャリと淫靡な水音を奏でてしまっている。
それは昨晩、久方ぶりの交わりを終えた二人が繋がったままの状態で眠りに付いた事の名残であった。
(…こういう人を巻き込んで肝心なところでずぼらになる点は…お仕置きしないと駄目ですね…❤️)
戻ってきた感覚で自身の胎内に萎えた状態ながら収まっている愛しい肉の竿を覚えると、リーメアリーは眉を八の字にしつつも上体を起こして腰をフリフリと小さく回すように動かし始めた。
「…う…くうぅぅ…っ……」
それは始め赤子をあやす母親の手付きのように優しくゆったりとしたもので、足の付け根からもクチュクチュと小さな水音しかしなかったが、漆間の寝息が徐々に悩ましそうな色を帯びていくと変わっていく。
「…ふふふ❤️ 自身の仕込みが切っ掛けで始まった技を持って…自らの浅はかさを夢の中で悔いるといいですわ…んん…❣」
その徐々に快楽で悶え始める愛しい男の顔を間近で眺めて楽しみつつ、リーメアリーは次第に腰の動きをグイングインと速め、それでいて抜けないように男根をギュウギュウと力強く吸い付きつつもじゅるじゅると滑らか且つ細やかな刺激を与える肉襞で凹凸に応じてミリ単位の愛撫も及ぼしていた。
それでいて、相手の精がのぼりそうになると再びくいくいッとした擽ったい動きに変えて、無意識下の焦燥を募らせていく。
「……あぁぁ…っっっ……!」
「…ええ…❣ もうこれくらいならいいですよ…❤️ さあ…今のうちに…再び植えられるのなら…植えて見せなさ…ッッッ❣❓」
その繰り返しを数巡繰り返した後、漆間が寝息こそ静かなままなれどその四肢や背が小さくない仰け反りを見せるようになると、焦らす愛撫をしつつも責め立てていた男根に胎内から脆く解されて痺れるような快楽を増させられているのをリーメアリーは感じており、無理に笑顔を作って彼の寝顔に近づけつつも腰をブルンブルンとまるでポールダンサーのように躍動的且つ巧みに振りたくって、男根にちぎられて飲み込まれるような快楽を与えるがそこで彼の腰が大きく突き上がってしまう。
「ッックァアアアアアァアアアアア❣❣」
それは殿方の寝こみに付け込んで責めばかりに興じて守りを疎かにして蕩け切った膣奥には、脳髄まで一気に貫いて乾いた土へ急速に染み渡る甘露の甘さとそれを走る電の如き鋭い極みを同時に与え、リーメアリーは漆間の耳元に耐え切れず嬌声を上げると共に、そこへ追い打ちをかけるように白濁の爆ぜを胎内で浴びせられて意識が白く染め上がっていった。
○秦国東北部 対趙国境付近 西録 白漂軍本軍駐屯地○
著雍でも戦時の合間にて安らぎを求めての情事が行われていた頃、西録に移された白漂の本陣では各所より謀反に参加していた各城邑の処理が進められていた。
「河了貂軍師ー、六格及び重蘭から降伏の使者が責任者及びその一族の首級を持って到着しましたー」
「西録城の西側に仮の拘置所があるからそこで当面大人しくするように伝えて」
「里甲殿ー、まだ少数ながら抵抗の意思を示している願酪からですがー…」
謀反を起こした者の身内が多い元趙人達が不安そうな表情を浮かべているのが多いに対し、謀反人の始末を進めている秦側は淡々とした色が強かった。
「…大変そうだな。先の黒羊戦の後始末をどうにかやり過ごせたと思ってた元趙人の残留者辺りはまた査察や処分が下るんじゃないかと戦々恐々としているだろうな」
「…ええ、そうでしょうね…」
白漂と姫昭が濁流に流された先の秘境より友軍に救出され、西録城に戻ってきたのはまさにその最中であった。
「…かーーー! 全く叛乱されるわ堤ぶっ壊されて洪水の後始末しなけりゃいけねーわで七面倒くせぇぜったく!」
一方、西録城内の水害を免れた高所に設けられし休息所にて、本日の派遣先で反乱失敗後も抵抗の意思を示した小さな城邑を潰し終えた信達が愚痴を吐いていた。
「だがまー、見方を変えれば今回ので前線に出張っている際に背後を突かれる心配はほぼなくなった。元とはいえ趙人は仲間意識が強いから不穏な事を進めていても庇い合いをするから発覚が遅れた形となったが…今回の反乱で芋づる式に現行犯逮捕でそうした有力な不穏分子を一気に取り押さえられたからな」
一方で、軍師に属する甲など此度の反乱制圧を好意的に捉えるものも居り、そうした層はこれからの対趙・匈奴戦でプラスになると捉えていた。
「それはいいけどよー、今回ので潰した城邑とかにいる領主一族の生き残りや領民とかはどうなるんだ? 鎮圧できたといってもここまで大きいと相当数が罪に問われるだろ?」
「そうだな、今は咸陽との間に伝書鳩や文官が生き介しているが…、大方謀反を起こした城邑の生き残りは監視がしやすい秦内陸部や危険な作業が多い土地に流刑の一環で流され、空いた旧趙西部の地には他の地の秦人や監督しやすい流民を流し込んで一から統治しやすいように行政整理するだろう」
愚痴や好意など様相は様々だが皆が此度の謀反の後始末が及ぼす今後の仕事への影響について言葉を交わし合う中、一人だけ重苦しい表情を浮かべている男がいた。
「……う~~む…」
「? 何だよ魏繕、そんな酷い便秘に悩んだ顔して?」
その重苦しい表情の青年魏繕は、白漂が前世で見た太い首をした常識破りリベロサッカー選手と共に奇天烈な異名を轟かせた公家口調のサッカー選手によく似ていて、モヒカンヘアーを始めとしてお笑い気味な風貌が特徴的だが、実際は郭巨丙隊の副長として彼らをその鋭利な分析力に基づく頭脳と高い武力で見事にサポートする有望な将である。
ちなみに、彼は三代前の秦王である昭王を支えた当時の相国魏冄に連なる一族でもある。
「…郭巨丙に信よ、麻呂の考えでおじゃるが…白漂将軍に里甲ご老人らは…旧趙西部を扱いやすくするためにあえて反乱がおこるように仕向けたように思えるでおじゃる…」
「「「「「…………え…!?」」」」」
その彼が口にした此度の反乱制圧に付いての見解の内容は、その場に集っている者達の表情に引きつりを生じさせるには十分であった。
「…ただでさえ元々趙の地で敵愾心が強い状況で先に元西録城主を公衆の面前で叩きのめしたのが挑発となって彼の男の怒りを掻き立てた。だが、奴の謀反が起きたと同時に王翦軍よりこの地への増援として派遣された江殊幡軍が予定よりも大幅に早く、しかも謀反が発生して言い逃れ出来ない状況で到着してそのまま鎮圧に加わった…偶然にしては出来過ぎでおじゃらんか…?」
「「「「「………………」」」」」
魏繕のその推測は、この場にいる者達の体温、特に元々趙人であった者達のそれを静かに押し下げさせた。
「…ぶへっくし! あーもう何で帰って早々に叛乱騒ぎ起こした連中の後始末でまた館へ缶詰されなくちゃ…!!」
「もとはと言えば貴方があんな公衆の面前であの問題大あり男とは言え元西録城主を半殺しにして恨みを買ったのがその原因みたいなものでしょう! ほら今度は当の謀反を起こしつつも逃げて逃走中の元西録城主及びにそれと加担した戴慈の行方に関する調査報告書も来てますよ」
但し、当の本人は元西録城主の館で今回の反乱の後始末で不本意と言う声を上げており、それを紅華ら側近に急かされていた。
「…ふーー、あの方には内密にして進めておいて正解でしたなー」
「実戦やそれに勝つための下準備は異様に強いが個々人の色恋沙汰系の機微には鋭いとは言えん男だからな」
その様子を廊下の向かい側から見ているのは白漂軍将軍の一人である里甲と、旧趙西部鎮定のために咸陽からの指令で王翦軍より派遣された江殊幡であった。
「…それで姫昭の処分はどうなるかだな」
「そうじゃのー、あの娘さんには落ち度はないがー法律の都合上で推挙された人物が罪を犯したらそれの推薦人も処罰されることになっとる。そうなると今の領地は没収して爵位及び階級は下がって別の地に移転となるじゃろう。実際、元々の地位のままでこの地に残したら影響力が強すぎじゃし、そこでまた趙側に引き戻されたら面倒じゃし、そうでなくてもその嫌疑がかかってないせいで処罰しようとしたら住民の反発が強くなるしのう。今のままなら不穏分子は適当に細かく分けてバラシて、本人共々扱いやすく出来るし、その方が当人たちも当面は安全じゃろうて」
「そうだな。だからほとぼりが冷めてこの地に残る人々が言い訳や抗議できる余裕を取り戻す前に…咸陽と共に姫昭達を適当な場所に移さないとな…」
その二人が小声で交わしていた政治の話は他の誰かに聞こえる事は無かった。
「…!? な、何…ま、また何か悪寒みたいなのが…!?」
但し、その対象の一人である白漂は同時に寒気を感じて筆を誤ったりしていた。
そして数十日後、この密談と自身が数日前に犯した若気の至り的な過ちで再び締め上げられることになるなど、この時点で白漂は知る由も無かった。
○秦国中央部 王都咸陽 後宮○
「肉ー! 下ごしらえが出来たならこっちに回して―!」
「二番の樽に酢で付けてた胡瓜や茄子はあっちよー!」
前線に近い地では愛の営みや労働基準法ガン無視のデスクワークが繰り広げられている頃、後宮にある大厨房は今も大勢の人間と炎の熱気に喧騒で満ちていた。
ここは後宮で働く宮女や宦官たちに振舞われる食事の大半を一手に担っているので、働いている宦官や宮女も厳選な身辺調査を受けて信を深く置ける人員が集まるようになっている。
「はいはいはい! エビの甘辛煮五十人前お待ち―!」
その一角に、大厨房責任者の一人にして最近まではある事情で休職を取っていた球泰も混じって大鍋をその細見に似合わぬ剛力で振るっていた。
「ありがとうございます球泰第八料理長! けれどよろしいのですか!? まだ小さいですけどお腹も目立ち始めているのにこんなに早く戻ってきて…」
「平気平気、寧ろあんなところであと何か月もおとなしくしてたら関節がガチガチになって寧ろ体悪くなるわよー」
今も球泰は中華鍋を白漂前世の給食用巨釜サイズにまで大きくしたような大鍋を荒々しそうに見えつつも正確に振るっており、そこから立ち上る香ばしくも大きな煙は後宮の各所に流れて各人の唾を自ずと増やさせていた。
「………ごくごくごく…ぷはーーー! 久々にいい汗をかいたー」
数十分後、厨房での仕事を終えて近くにある自室に戻った球泰は水瓶を直に持ち上げて豪快に水分補給をしていた。
だが、その直後に部屋の片隅に置いてあった私物を手に取ると表情に曇りが生じる。
「…うーーん、やっと一番不安定な時期が終わったからお医者様たちから鍛錬と業務の再開許可貰えたのに…しばらくおなかの安全のために大人しくしてたから、錘がやけに重く感じるわねー」
球泰が棒切れのように適当に振り回しているその私物は、白漂の前世で言うバーブル風の錘で百キロくらいは有りそうな代物だった。
「…そもそもそんなもの宮女が普通持ち込むものとは思えんが…」
「あ、王様ーーっ…てその小皿と口に運んでいるものは何ですか?」
その球泰に呆れた表情を嬴政が背後より降り注がせるが、当の本人はまだ食事時ではないのに小皿に適当なつまみを乗せてポリポリとかじっていた。
「…散歩してる最中に新しい匂いがしてきたから気になって近づいて見たら新しい料理を作っている最中で味見をしている所だったから、そこに上手く加われた」
「…本当は噂で言う極貧邯鄲時代で身に付いた貧乏性でこっそりすってきたってオチじゃ…?」
「お前…それ本当に他の娘の前では絶対に言うなよ?」
嬴政が微妙に視線を逸らしながら釈明するが、他に人がいないのも手伝って球泰にジト目丸出しで不敬罪ガン無視に問い詰められると体諸共背く。
「そういうお前こそその錘は以前に危険物扱いされて女官長に没収されたがはずだが?」
「後宮料理長の一人に就任した際に倉庫で保管されてたこの子達をー、料理研究のための試作調味料を漬けてる壷の蓋に被せる漬物石名目に再利用するとして返却してもらいましたー。実際に漬物石として使ってるので嘘はいってませー…!?」
そのまま人目が無いのを良いことに両者の屁理屈合戦が始まりそうになるが、そこで二人の身に異変が生じる。
「…ん!? な、何…何だか急に…体が熱くなって…落ち着かなくなって…!?」
(…!? な、何だ…!? どうして急にここに血が猛烈に集まり出して…!?)
二人は体温の急速な上昇と鼓動の高鳴り、足の付け根に覚える親しみつつも過去にない高まりに対して戸惑いを見せるが、そこで扉一枚を隔てた廊下の向こう側より他の宮女の歩く音と談笑が聞こえてきた。
「…でさー今度の作られてる料理がさー、試食目的に天然の精力剤とか媚薬になる様な食材ばっか選んでるって話よー」
「あー、最近西域や南方に更に例の楚の女都督とかが大船で南海より持ち込んできてるっつー話の食材が最近は増えてきてるもんねー…」
「スッポンとか胡桃とかニンニクとかさー…」
「「……………………」」
廊下から響いてくる雑談の内容に、二人はいっそう身の、特に足の付け根の変化が如実に大きくなるのを覚えていく。
少々二人は互いに背を向け合った状態で沈黙するが、やがて意を決した表情で向き合った。
「…球泰…」
「…あーー…王様…」
自然と二人の顔からはギャグパート系の色は薄れていき、代わりに情欲の熱に背化されて潤いと朱色を帯びた表情を向け合って徐々に近づいていく。
「…お互い、このままでは外には出れそうにないな…」
「…そうですねー、今の貴方…特にここって他の女子の目には毒ですし…」
嬴政と球泰の二人は互いに見つめ合いながら身を寄せ合い、特に互いの手は相手を欲して強く反応を示している箇所に衣服越しながら触れてより熱を高めさせていく。
「…さあ、行こうか―――」
そして、嬴政のもう片方の手が球泰の腰帯に触れようとしたその時、二人の真横にあった箪笥がギイッとゆっくりだが大きく開かれた。
「ぐは!?」
「―――あ…!?」
「はっ!!?」
その箪笥から何故か垂れ込むようにして出てきた少女と発せられた廊下にまで達する悲鳴に、嬴政と球泰は間が抜けた声を上げてしまった。
また最後の辺りで新しい子がとんでもないタイミングで出てきましたね…。
次回はその子の説明も混じっている予定です。