○秦始皇8年(紀元前239年)険水関攻防戦十四日目朝 趙国南西部 太行山脈西側領域南部 軹関陘山間部○
太行山脈は白漂の前世であろう現代辺りでもセメント原料や石炭など各種資源を算出する地域である。
故に、採掘技術の観点から困難や限界が多々に目立つがこの時間軸における戦国時代でも重要な資源地帯であった。
「早くしろ!!」
「次は水だ!!」
「…あ…ぐぅぅぅ」
そして、その過酷な環境故に費やされている鉱夫は劣悪な待遇にあるか、もしくは奴隷でも最底辺辺りの者達が当てられるのが普通であった。
時代と地域は異なるが産業革命期において狭く複雑な坑道を巡らされていた産業革命期のそれには、大人では入れない個所では小さい子供が従事していた場合も珍しくは無かった。
「うわぁ! 崩れた!!」
「十人生き埋めになったぞぉ!!」
「ゴホゴホ…」
そして、その技術的未熟さ故に崩落や漏水が原因による事故は珍しくなく、生じる粉塵で気管支系に病を起こすものも珍しくは無かった。
「…鉱山というのは何処もこの時代ですから待遇は楽では無いのが普通ですが…ここはとりわけ管理側の技術と労働者に対する扱いは酷いですね…」
「…マルクスとかが革命運動に従事した気持ちがわかる光景だなぁ…」
「誰ですかそれは?」
「いや杏橋、あんまり気にしなくていいから」
軹関陘山間部、特に廃棄された坑道から再び潜入してきた白漂が目にしてきた険水山裏側にある秘密採掘場もそうした闇の通例の一部であった。
「将軍、今度はこの前みたいに二人だけで行商に変装して敵陣偵察なんて馬鹿な真似はしないでくださいよ!?」
「わかってるって。だから今回は向こうにも気付かれていない地下水路から分散して潜入して四千人くらいこの周囲を囲むようにして配置して侵入してるだろ。更に本陣の方はあとから来た後詰を分けて入れる事で見た目の数は誤魔化してここに来られていると気付かれていないようにしてるし…」
現在、白漂達は懐などに得物などを隠してはいるが一部は再び行商などの姿に化けて、他の近場に隠れている護衛達と共にこの地域の裏事情を更に調べるべく再度の潜入をしてきた所であった。
「よし、それでは各員共にこの辺りの調査を開始だ。健闘を祈る」
「「「「「承知!」」」」」
そして、迷彩服に着替えている白漂達は行動を開始した。
○趙国南西部 太行山脈西側領域南部 軹関陘西側地域 険水関内城○
「……っ…く…!」
「じょ、城主様! お耐えくださいませ!」
白漂達が険水山裏側で暗躍を始めていた頃、表側の中腹にある城主の部屋にて流姞が苦悶の表情を浮かべながらも治療に耐えていた。
その背に皮が破けて肉まで抉れた傷が無数にあり、治療を施している現在も血が滲み続けて秀麗な白い素肌を痛々しいものに変えていた。
「くそ! 趙人共が長平でボロ負けするまでは我らを残党だの蛮族呼ばわりだのして遠ざけおったくせに…! それで負けたら急に搾り取ったりこき使いにきおって!」
「それでどうにか持ち直した後はまた蛮族呼ばわりしてまた遠ざけようとしてきおる!」」
「挙句の果てにココ…城主様を肝心な時に呼び出して邪魔ばかり…!!」
その傷に側近達は憤るが城主である流姞はマスク型仮面で表情はあまり伺え知れないが憂いを帯びた瞳を添えて彼らを宥める。
「…皆…落ち着いてぇな…。今は…秦軍を追い返すことのみを考えないとあかんよ…」
だが、流姞より発せられるその言葉は何方かというと華夏族が用いる中華での平均語と比べて、大分古い発音や訛りが混じっているもので、白漂などが聞けば京言葉辺りを思わせるものがあった。
「じょ、城主様…」
「…太子が…趙嘉様が即位なさってくれたらぁ…変われるやろ…」
流姞は呼吸自体も苦しそうな表情を浮かべていて、その胸に手を当てながらそう臣下達を宥め続けていたが、その胸は包帯とは別に胸当てが付けられていて、何かを抑え込んで隠しているように見えた。
○秦始皇8年(紀元前239年)険水関攻防戦十五日目夜 趙国南西部 太行山脈西側領域南部 軹関陘山間部 某洞窟○
「…ご苦労。それでどれくらい情報は集まったかな?」
険水領主流姞と側近達が話し込んだ日より一日後、趙側も察知されていない少人数ずつなら裏側に回れる地下水道の秦側が抑えた区画の一室で、白漂は裏側で情報収集に回っていた部下達を出迎えて話を聞いていた。
「白漂将軍、趙側は情報操作で隠蔽しているようですが…ここ太行山脈の裏事情は我々が考えていた以上に根深い闇に満たされているようで、ここ険水はその一つのようです」
「闇だと?」
「…それがどうやらー…太行山脈は趙における“棄民の流刑地”のようで、この地はどうやらその一つで…三晋成立時にて六卿の負けた側とそれに付いていた白狄が中心らしく、更に同族が建てたものの趙に滅ぼされた中山の流れも汲んでいる者達のようです」
「…“晋の六卿”か」
“晋の六卿”とは、嘗ての大国晋で権勢を振るって晋王家を凌ぐ力を得た現在の魏趙韓王家も含めた六つの有力一族の事である。
三晋の他に范氏と中行氏に智氏が存在したが、この三家は三晋との争いで敗れて表向きは滅亡したことになっている。
「…どうやらこの辺りを治めている流一族というのは智氏の内の寝返った分家辺りの末裔らしいです。最もーそれは智氏の敗戦が見えてきた時期に一族生き残りのために両者共に織り込み済みで分裂してのようですが…」
その報告に白漂はかつての母国であろう国で名を馳せた真田家を思い起こす。
時代と国は違うが彼の前世の国だろうその地での戦国時代では、大勢力に挟まれた小勢力の一族が滅亡を免れるために、敵味方に分かれて生存の選択肢を増やすという外交術が有ったのでさほど驚きはしなかった。
「…おーい、何か新しい事でもわかったか―――」
「…っアアアァ!!」
そうした報告等を白漂が聞き進めようとしていたその時、信がいつも通りな態度で現れるが、彼の声は頭上の僅かな隙間より伝わってくるある女性の声で遮られた。
「―――ぁあ!? な、何だこの声は…!?」
「この声は確かあの時の女性のー…ここから行けるか…」
只ならぬ悲鳴に信を含めて、白漂は竜騎中心の手勢を引き連れて地下水路の一本から地上を目指して駆け上がっていく。
「…くくくく…たまらんなぁ…こう小奇麗な娘が徐々に壊れていく姿を見ていくのは…」
「…あぁぁ…ぐぅぅぅぅ…」
そして、白漂達が地上に繋がっているも藪で隠れた洞窟入り口に辿り着くと、その至近に設置されていた例の豪華な天幕の中で歪んだ貴族少年が、険水の美少女ココロを嘲りながら甚振っていた。
「…あの子、確かここに潜入した一度目の時に見た…ここの要人一族らしい子だ…」
「…何だあの腐った性根丸出しのガキは…? 周りを固めてる連中も妙に派手な鎧来てるしよぉ…」
「将軍どうしますか?」
「…どうするもこうするも…以前はここを調べるための潜入が第一だったから関われなかったけど…、というかもう関わると決めたのが一人いるからなぁ…」
「カカカ、それでこそ俺らの大将だぜ」
その様子を白漂達は藪の中より盗み見た後、早速行動に移った。
「…そうだな、今日は良い道具が入ったから貴様の爪でも一本抜くか―――」
「その前にお前こそ歯を何本か抜けカス餓鬼」
「―――あ…ぶぼべぇ!!?」
そして十数秒後、茂みより飛び出てきた白漂の剛脚が貴族少年を頬より凹む勢いで蹴り飛ばした。
「な!? せ、遷さ…ではなく御曹司!?」
「き、貴様ぁ何者だ…ぐふ!!?」
その思わぬ乱入者に王印騎士団らは驚くが、茂みより気付かれぬうちに接近してきた白漂兵らに完全な不意打ちで襲われて一人残らず始末された。
「……ぅ…く…あ? あ…あなたたちは…?」
「今は喋らなくていい。傷が酷いから眠って…」
その光景にあまりにも血を流した影響から意識が朦朧としていたココロは戸惑うが、白漂の優しい言葉と手付きに安堵を覚え、数秒足らずで睡魔に落ちた。
「よし、目撃者は他におりません」
「そうかー、おい漂よーこのクソガキどうすんだ?」
十数秒足らずで場を制圧した白漂兵が守りを固める中、信が先ほど蹴り飛ばされた少年を引きずってくるが、その顔つきは白漂にとって嫌な意味で見覚えがあるものであった。
「(この顔…人相書きでしか見た事は無いが…確か今のアレの悪い面ばかり受け継いでるって評判の末子の…!? だったら連れていくか…? いや…この険水の現状にこいつの性格を考えると…)そうだな、そいつは殺さずにこの辺りの趙兵に見つかりやすい場所に縛って放置して…死体は遺品全て含めてこちらで回収し…」
やがて、白漂達はその少年だけを縛り上げるがその場に置くと、洞窟を通して姿を消した。
○秦始皇8年(紀元前239年)険水関攻防戦十七日目昼 趙国南西部 太行山脈西側領域南部 険水関○
「…む? 援軍じゃと?」
「はい、どうやらこの場の近隣における後方予備主体ですが…邯鄲の宰相閣下の指示で送られてくるとの事で…」
謎の少女ココロの救出より二日後、急に寄せられてきたその報告に馬南慈が怪訝な顔を浮かべていた。
現在、主である李牧達の工作でどうにか趙西部防衛の要になるここ険水の地へ単独ながら派遣されることに成功した彼は、李牧の政敵で現趙国の実権を牛耳る郭開のその助成が疑わしかった。
李牧が期待している趙の現太子趙嘉の出自から彼の地盤にもなっている太行山脈とその西側は、彼を排斥しようとしている現趙王とその佞臣郭開には何とか弱体化させたい地であったためだ。
それと、二日前よりこの城で起きたある異変が彼の疑念に拍車を掛けていた。
「それと城主の流姞殿は今どうしておる?」
「それが側近方に何度お伺いしても…今は急病のために表に出られないとの一点張りで…」
何度も正体は伏せられている邯鄲要人の子弟からの呼び出しを戦闘中でも受けていたりしたが、今になって完全に姿を見せなくなった仮面の城主もまた馬南慈の疑念を掻き立てていた。
○秦始皇8年(紀元前239年)険水関攻防戦二十日目夜 趙国南西部 太行山脈西側領域南部 軹関陘西側地域 険水関対岸秦側陣地○
「……ぅ…く…(どうにか…痛みは引いたやけど…これは不味いことになってもうたなぁ…)」
険水山での救出劇より二日後、ココロは白漂軍陣地の重要捕虜管理区域で目を覚ますが、自身の傷が手当されて痛みが引いていることに安堵しつつも現状のヤバさに内心で表情を険しくしていた。
(…幸いにも…ウチがここで本当はどういう立場なのか…まだ秦の兵隊はん達には知られとらんみたいやし…何とか隙を見て脱出せんと…!?)
監視が付いた区域内を散策してどうにか脱出の糸口を誘っているココロであったが、そこで彼女を今の状況に導いた男の姿を発見する。
「…それでー向こうの裏側における採掘場等の状況についてですが…」
「あー、完全に罪人の掃き溜め同然の扱いだな。大半は先祖が反逆者だったり討伐された蛮族だからという理由で…」
砦周辺の物見や小規模な戦闘を熟した後で帰ってきたばかりの白漂が近くで部下からの報告を聞きとっていたのだ。
(…あの人が…今のうちらを攻めてきとる秦の大将軍はんか…。確かに…あの若い齢からは普通見えへん物凄い場数踏んでおる気風と才気をみなぎらせとるなぁ…。ほんま…今のうちらのとこに来てるあの末子様には爪の垢を煎じて飲んで欲しいくらいやわ―――)
「漂将軍、今日もお勤めご苦労様」
「―――あ…?」
ココロが物陰より気配を殺して白漂の姿を盗み見ていると、白漂軍二千人将で彼の第二夫人でもある藍蘭が迎えてきたのだ。
その姿を熱心に見やっている存在が彼女以外にもいた。
(……よ、よし…この辺りに度々居そうなことも…石に書いて渡そう…)
先日にステラと信の情事の最中にて怪我だらけの状態で現れ、そのまま保護されていた現地の少年である。
彼は適当に大きな石を幾つか拾うとそこに血で字を記していき、それを監視の目が届きづらい適当な茂みに適当に置いていく。
それから少々してみすぼらしい格好をした子供達が人目を掻い潜るように茂みへ現れた。
「お、おい、石は有るか?」
「前はこの辺りに…あ! あった!」
その少年達は石を抱えるとそそくさと茂みから夜の闇へと戻っていく。
「「「「「……………」」」」」
ちなみに、その行動を茂みのより奥深くの影よりジッと盗み見ている影が幾つかあったが、少年達の中でそれに気付ける者はいなかった。
「…出迎えありがとう藍蘭、ちょっと涼みながら軽く夜食を食べたいな」
「もう既に用意しているよ。良い場所も含めてね」
一方、白漂と藍蘭の方は既に戦の方から一旦身を離して二人だけで身を休め合おうとしていた。
(…良い場所? いったい何を言うとるんやろうか…?)
ココロは収容所から姿を消したことに不審がられるリスクを感じつつも、白漂には公私ともに非常に注意を割かれたのもあって、別の茂みの中を進み始めた彼らの痕を尾行しだした。
「…ほら、ここだよ」
「おー、これはこれは…昨年に発見されたばかりの九寨溝みたいだな」
数分後、白漂が藍蘭の案内で行きついた場所は、この世界では彼の前世であろう時間軸よりも数千年早く発見されたあの湖沼の絶景地を思わせる地であった。
「…水が不純物を含みづらい性質のおかげか…青く澄み切っている。それと今は月光しかないせいで普通には見え辛いが…深い湖底が浅く見えて色が付いて見えるな…」
「この辺りを偵察していた味方が偶然に発見したものだよ。弁当と茶を持ってきているしここで泳ぎながら涼もうじゃないか」
白漂が絶景で素直に感動していると藍蘭は慣れた動作で鎧と衣裳を脱ぎ落していっていた。
「…君もこの秘境に溶け込む時を待ってる皆に守られながら…既に溶け込んでいる者の一員になりたいのか?」
「“君”じゃなくて“僕ら”の間違いじゃないかい?」
藍蘭がその月光で滑る様な光を放っている褐色の女体を曝け出した頃には、白漂もまた鎧は脱いでおり、その下の衣服が破られんばかりに男根を隆起させていた。
ちなみに、二人の言動や自嘲も交えた眼光が示している通り、周囲の森や視界の角度で見えぬ水辺にはこの地で同じく愛欲に引かれた者達の吐息が微かに囁き、その周囲にて羨望や苛立ちににやけた面を浮かべつつも自分も非番になって加わる時を待ちながら警衛している将兵らがいる。
そうした常人には聞き取れぬ距離と音量の吐息を確かに聞き取りつつ、白漂と藍蘭は手を取り合って湖面を望む。
「…それでは…」
「行こうか…」
二人は手を繋ぎ合ったまま湖面へ身を投じ、澄み切った水面に波紋を広げ合いだした。
「…これは…」
「本当に綺麗だね…」
水中へ身を投じた二人が目を見張らせたのは、枯れた古木の成れの果てでありながら澄み切った水の影響で沈みながらもほとんど腐食が進まず形状を保ったまま沈殿している白き森。
白漂と藍蘭は息が続く限り、その森の中を遊泳して回り、触れて感触を楽しみ、追いかけっこをしながら水面へと戻る。
「…ぷっはぁ! ふはーーー…持ち帰れるなら北に持ち帰って何度でも泳いで遊びたい光景だな…」
「気持ちはわかるが止めた方が良い旦那様。大金積めば買えるものであっても買わない方がより楽しめるものだってこの世にはあるさ」
水面に戻った二人は肺に新鮮な空気を送りながら、互いに意を寄せ合って相手の自身に対する情欲の高まりを確かめ合う。
「…ふふふ、これはもう湖水も冷たさも忘れてしまいそうなまでに熱くなっているな…」
「じゃあ藍蘭、それなら今宵の一度目は…息の苦しさを少し忘れるくらいの環境で楽しもうか? 人間…生が途絶える直前が最も感覚が鋭いと言うし…」
「…? それはどういう意味だ―――!?」
互いの性の象徴で高まる血流の脈動とそれに応じて生じ水に溶けていく体液の感触に興じ合っていく二人だが、その合間に白漂は藍蘭の唇を自身のそれで奪って彼女を水中へ押し倒す。
「(―――あ…!? いきなり何を…!? ん…これは…)っっっ❣❓」
奇襲に戸惑う自身の上の口だけでなく、その足の付け根にある下の口も白漂の言葉ではなく精を吐く口によって穿たれるように塞がれ、藍蘭は珍しく情愛で混乱すると共に未知の快楽を身で憶えて仰け反ってしまう。
「んんん!? く…!? ふ(だ)ぁ…ふぁんなさ(旦那さ)…むぐぅぅ❣❓」
顔まで覆う水の冷たさとそれによって息もままならぬ状況に藍蘭は混乱を深める一方だが、その中でもしっかと自身を抱きしめる愛しい夫の温かさ、何よりその中で最も熱く自身を求めている象徴である男根を水に濡れながらも確かに女陰で感じていつも以上に背を仰け反らせている。
「…はむ♪ ちゅうぅうううううぅぅぅ…ちゅるん(…生き物というのは…命の危機に瀕した時ほど…感覚が強まり…子孫を残そうとする本能が強まるものだけど…実際の房事と重ねると麻薬みたいに病みつきになりそうだ…)」
一方、白漂も混乱と呼吸もままならない状況で不安も交えて不安定且つ激しい躍動を見せる藍蘭の肌と淫裂の感触を己が肉体で楽しんでおり、身悶えしつつもしがみ付いてくる彼女を己が肉体であやしながら幻想的な水中を遊泳し直していく。
(…ああぁ…息が出来ず…それで意識が朦朧としていく中で…私は…死した祖先たちが待つという…神々の国が見えている……)
呼吸がろくに出来ない状況で藍蘭は意識が朦朧としだして幻視すら起き始めたが、白漂の目論見通りその身は性の悦びをいつも以上に鋭敏に、そして長くなった時間感覚で感じ取っており、それは尻に敷かれている普段の房事での姿からは想像し辛いが彼女よりも心身強固な白漂も同様であった。
呼吸もままならないので酸素が不足する脳は機能不全を起こして幻覚を起こしやすくなり、そこで命の危機も合わさって感覚が過敏になっている二人の繋ぎ目は海流の繋ぎ目で打ち合い混ざり合うような海水を思わせるまでに蕩け切って、辺りの澄んだ水を広範囲に渡って汚していく。
その中で白漂は肺の内の酸素を幼少期にある老人から習った呼吸法で効率よく長持ちさせつつ、周囲の死し乍ら幻想的な美しさを醸し出す湖底の森を遊泳で楽しんでいき、藍蘭の限界と極みが近づくに応じて徐々に水面へと戻っていった。
(…さあ…藍蘭…共に―――)
「ッッッッッッ❣❣ ぷぅぅぅ…ハアアアァ❣❣❣❣」
「―――ッッ!!!!」
そして、揺らぐ水面に出来た光の天井を共に突き破ったその直後、藍蘭は目にした静かな月光が視界を焼き尽くさんばかりの光明と錯覚してしまうばかりの極みに突き上げられ、それに引きずられる形で白漂もまた彼女の中で自分達の浮上で弾け飛んだ水飛沫の如き白濁を撃ち込んだ。
この状況でも上半身だけじゃなく下半身の戦いにも興じれるとは…良い度胸してますね主人公…(笑)。
次回は、今回の情事の続きとそれから広がっていく趙側の罅の広がりを描いていく予定です。